この記事は、学校施設の設計・施工を行う株式会社光建舎が作成しています。設計(ウイングスペース一級建築士事務所)から施工まで一社で対応し、専門学校・高校・自治体の学校施設を手がけています。

幼稚園は改修か建替えか?

判断基準・費用比較・長寿命化の考え方

幼稚園の施設の判断には、令和8年度から新しい要素が加わりました。学級編制の基準が引き下げられ、同じ園児数でも学級数が増える可能性が出てきたためです。

学級数が増えれば、必要な保育室の数と園舎の面積が変わります。改修で足りるのか、増築が必要なのか、建て替えるのか。まずこの確認から検討が始まります。

この記事では、①制度の変化、②面積基準の確認、③判断の材料、④費用の比べ方、⑤進め方、の5点を整理します。

この記事の要点

  • 幼稚園設置基準の学級編制基準が、原則35人以下から30人以下に引き下げられる
  • 施行期日は令和8年4月1日、令和14年3月31日までは従前によることができる経過措置がある
  • 園舎の面積は1学級180平方メートル、2学級以上は320+100×(学級数-2)平方メートル
  • 運動場の面積は2学級以下330+30×(学級数-1)、3学級以上400+80×(学級数-3)平方メートル
  • 認定こども園への移行も、施設の判断と一体で検討する

学級編制の基準はどう変わったのか?

35人以下から30人以下に引き下げられます。

文部科学省の資料によれば、幼稚園設置基準の学級編制の基準を、原則35人以下から原則30人以下に引き下げるとされています。施行期日は令和8年4月1日で、令和14年3月31日までは従前によることができる経過措置が設けられています。

項目内容
現行1学級の幼児数は35人以下を原則とする
改正後原則30人以下に引き下げ
施行期日令和8年4月1日
経過措置令和14年3月31日までは従前によることができる

学級数が増えると面積の要件が変わる

同じ園児数でも、1学級の上限が下がれば学級数は増えます。園舎の面積は学級数で算定されるため、必要な面積が変わる可能性があります。

保育室の数も増えます。既存の保育室を分割できるか、遊戯室を転用できるか、増築が必要になるか。この確認が、改修か建替えかの判断の出発点になります。園児数が減っている園では、影響が小さい場合もあります。

経過措置の期間が令和14年3月31日まであるため、時間的な猶予はあります。その間に、どう対応するかを決めることになります。猶予があるうちに調査と試算を済ませておきます。

改修の進め方は幼稚園の改修・リノベーション完全ガイドにまとめています。

面積の基準はどうなっているのか?

学級数で算定されます。

幼稚園設置基準の別表では、園舎と運動場の面積が次のように定められています。

区分算定式
園舎(1学級)180平方メートル
園舎(2学級以上)320+100×(学級数-2)平方メートル
運動場(2学級以下)330+30×(学級数-1)平方メートル
運動場(3学級以上)400+80×(学級数-3)平方メートル

同基準の第8条では、園舎は2階建以下を原則とし、2階建または3階以上の場合は保育室、遊戯室、便所を1階に配置することとされています。ただし、耐火建築物で避難上必要な設備がある場合は2階への配置も可能とされています。

園舎と運動場は、同一の敷地内または隣接する位置に設けることを原則とするともされています。

現在の面積を実測する

まず、現在の園舎と運動場の有効面積を確認します。認可の内容と実際の面積が一致しているかも、この機会に確かめておきます。

学級数が増えた場合の必要面積と比べて、足りるかどうかを判断します。足りない場合、増築か建替えかの検討に入ります。運動場の面積も、学級数で算定式が変わる点に注意します。

判断の材料は何か?

6つあります。

材料見るもの
建物の状態躯体の劣化、耐震性能、非構造部材の対策状況
園児数の見通し10年後、20年後に何学級必要か
学級編制の基準30人以下への対応で学級数が増えるか
面積の余裕園舎と運動場が基準を満たせるか
認定こども園への移行移行するのか、幼稚園として続けるのか
法人の資金力自己資金、借入、寄附、補助金

認定こども園への移行と一緒に考える

園児数が減っている園では、認定こども園への移行を検討することがあります。移行すれば、満3歳未満の子どもを受け入れるための空間を新たに確保する必要が出てきます。

乳児室、ほふく室、沐浴と調乳の設備。これらを新たに確保する工事は、給排水と空調を伴うため、幼稚園としての改修とは内容が違います。

移行する可能性があるなら、改修の内容もそれを前提に決めておきます。移行の要件は認定こども園に移行するには何が必要か?にまとめています。

建物の状態が選択肢を決める

躯体が健全でなければ、長寿命化改修は成り立ちません。まず劣化の状況を調べます。調査の結果によって、選択肢そのものが変わるため、方針を決める前に済ませます。

判断の枠組みは学校は建替え・長寿命化改修・統合のどれを選ぶ?にまとめています。

費用はどう比べるのか?

30年、40年の総額で並べます。

項目改築長寿命化改修
初期費用大きい改築より小さい
学級数の増加への対応設計に織り込める既存の間仕切りと設備に制約される
認定こども園への移行対応しやすい乳児のための設備の追加が必要
工事中の運営仮園舎が必要になることが多い使いながら施工できる場合がある
2階建の制約設計で整理できる既存の配置が前提になる

工事費、修繕費、光熱費を同じ期間で足し合わせます。園舎の規模が小さい園では、仮園舎の費用が総額に占める比率が大きくなり、判断を左右します。

長寿命化改修の内容は学校施設の長寿命化改修とは?を参照してください。

敷地の条件が効く

運動場に仮園舎を建てれば、園児が遊ぶ場所がなくなります。近隣の公園を使う、敷地の一部で工事を分ける、近隣に用地を借りる。いずれの方法も運営に影響します。

敷地に余裕がない園では、長寿命化改修の方が現実的になります。棟が複数あれば、順に建て替える方法も取れます。

工事はどう進めるのか?

長期休業が使えます。

幼稚園は、小中学校と同様に長期休業があります。ただし、預かり保育を実施している園では、休業中も園児が登園しています。

  • 大きな工事は、夏休みに集中させる
  • 預かり保育の場所を、工事の区画から分離する
  • 学期中は、区画を分けて小規模な工事を行う
  • 騒音を伴う作業は、午睡の時間を避ける
  • 工事車両の動線と、送迎の動線を分離する

保護者への説明

工事の期間、内容、安全への配慮を、事前に伝えます。送迎の動線が変わる場合は、図を使って具体的に示します。

説明が不足すると、工事そのものより問い合わせの対応に時間がかかります。近隣への挨拶も、着工前に済ませておきます。園庭からの音は、工事中も日常も苦情の元になります。

園児の安全

園児が使う動線と工事の区画を完全に分けます。仮囲いの高さ、資材の置き場、作業員の出入口。幼児の行動を前提に計画し、隙間から入れない形にします。

保育室を分割できるかどうかで決まる

既存の部屋の形が鍵になります。

学級数が増えたとき、最も費用が小さい対応は既存の保育室の分割です。ただし、分割できる部屋には条件があります。

確認項目内容
面積分割後の各室が必要な面積を満たすか
採光窓が各室に確保できるか
換気機械換気を追加する必要があるか
出入口各室から直接廊下に出られるか
空調・照明系統を分ける工事が必要か
手洗い各室または近接した位置に確保できるか

窓が片側にしかない細長い部屋では、分割すると採光の取れない部屋ができます。この場合、分割では対応できないため、別の方法を検討します。

遊戯室の転用も検討する

遊戯室を保育室に転用する方法があります。ただし、遊戯室が必要な行事や雨天時の活動に影響します。

転用するなら、その機能をどこで代替するかを決めます。ホールを兼用する、近隣の施設を使う、といった対応になります。運動会や発表会の場所も見直しが必要です。

増築の余地を確認する

分割も転用もできない場合、増築か建替えになります。建ぺい率、容積率、隣地との距離、運動場の面積。敷地の条件で増築できるかが決まるため、設計者に確認します。

財源はどう組むのか?

設置形態で変わります。

公立幼稚園では、自治体の予算で整備されます。学校施設環境改善交付金の対象に幼稚園が含まれる区分があるため、どの事業で申請できるかを都道府県の担当課に確認します。

私立幼稚園では、自己資金、借入、寄附、補助金が財源になります。認定こども園に移行する場合は、就学前教育・保育施設整備交付金の対象となる事業があります。

移行のタイミングと補助

認定こども園への移行を伴う整備では、こども家庭庁の交付金の対象となる事業が挙げられています。幼稚園としての改修と、移行を伴う整備とで、使える制度が変わります。

どの制度を使うかによって、工事の内容や時期の調整が必要になる場合があります。設計の前に、市区町村と都道府県の窓口に確認しておきます。窓口が分かれている点にも注意が必要です。

よくある質問

Q. 学級編制の基準はいつ変わりますか。

A. 施行期日は令和8年4月1日です。令和14年3月31日までは従前によることができる経過措置があります。

Q. 1学級の上限は何人になりますか。

A. 原則35人以下から原則30人以下に引き下げられます。

Q. 園舎の面積基準はどうなっていますか。

A. 1学級180平方メートル、2学級以上は320+100×(学級数-2)平方メートルです。

Q. 学級数が増えると何が必要になりますか。

A. 保育室の数と園舎の面積です。既存の部屋を分割できるか、増築が必要かを確認します。

Q. 認定こども園への移行も一緒に考えるべきですか。

A. 移行すれば乳児のための空間が必要になります。移行の可能性があるなら、改修の内容もそれを前提に決めます。

Q. 仮園舎はどこに建てますか。

A. 運動場に建てる例が多く、その場合は園児が遊ぶ場所がなくなります。敷地に余裕がなければ長寿命化改修が現実的です。

Q. 保育室は分割できますか。

A. 分割後の各室で面積、採光、換気、出入口が確保できるかによります。窓が片側だけの細長い部屋では難しくなります。

Q. 遊戯室を保育室にしてもよいですか。

A. 転用は可能ですが、行事や雨天時の活動に影響します。代替の場所を決めてから判断します。

Q. 園舎は3階建にできますか。

A. 2階建以下が原則です。耐火建築物で避難上必要な設備がある場合の扱いは所管に確認します。

まとめ

幼稚園設置基準の学級編制基準が、原則35人以下から原則30人以下に引き下げられます。施行期日は令和8年4月1日で、令和14年3月31日までは従前によることができる経過措置があります。

同じ園児数でも1学級の上限が下がれば学級数は増え、保育室の数と園舎の面積の要件が変わります。園舎の面積は1学級180平方メートル、2学級以上は320+100×(学級数-2)平方メートルです。まず現在の有効面積を実測し、学級数が増えた場合に足りるかを確認します。

判断の材料は、建物の状態、園児数の見通し、学級編制の基準への対応、面積の余裕、認定こども園への移行、法人の資金力です。移行の可能性があるなら、乳児のための空間を前提に改修の内容を決めます。

敷地の条件が選択肢を絞ります。運動場に仮園舎を建てれば園児が遊ぶ場所がなくなるため、余裕がない園では長寿命化改修が現実的になります。経過措置の期間があるうちに、方針を決めておいてください。

参考・出典

記載の制度は公表時点のものです。最新の内容は所管省庁および都道府県の公表資料でご確認ください。

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