目次
判断基準・費用比較・長寿命化の考え方
専門学校の施設の判断は、他の学校種と前提が違います。自己所有の校舎を持つ学校と、駅前の賃貸ビルに入っている学校が混在しているからです。
賃貸であれば、建て替えるという選択肢はありません。判断は、契約を継続するか、移転するか、内装をどこまで投資するかという形になります。この違いを踏まえないと、比較の土台が作れません。
この記事では、①制度上の基準、②所有形態による違い、③分野別の実習設備、④費用の比べ方、⑤進め方、の5点を整理します。
この記事の要点
- 専修学校設置基準では、一の授業科目について同時に授業を行う生徒数は40人以下
- 校舎の面積は、別表により生徒定員40人の区分で算定される
- 教室、教員室、事務室が必要で、図書室と保健室は努力義務とされている
- 自己所有か賃貸かで、判断の枠組みが変わる
- 分野ごとの実習設備が、費用の中心になることが多い
制度上の基準はどうなっているのか?
専修学校設置基準で定められています。
文部科学省が公表する専修学校設置基準によれば、一の授業科目について同時に授業を行う生徒数は40人以下とされています。ただし、特別の事由があり教育上支障がない場合の例外が定められています。教室の規模は、この人数を前提に計画します。
校舎の面積は、昼間学科・夜間等学科については別表第二により、通信制学科については別表第四により算定されます。いずれも生徒定員の区分に基づく算定です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 同時に授業を行う生徒数 | 40人以下 |
| 校舎の面積 | 別表による。生徒定員の区分で算定 |
| 必要な施設 | 教室、教員室、事務室 |
| 努力義務 | 図書室、保健室 |
| 授業時数 | 昼間学科は年間800単位時間以上、夜間等学科は年間450単位時間以上 |
面積の算定は分野によって変わる
同じ生徒定員でも、分野によって必要な校舎面積は異なります。実習を伴う分野では、実習室の面積が加わり、必要な床の広さが大きくなります。
学科を改編する場合、必要な面積が変わる可能性があります。設置の認可に関わるため、所管の都道府県に確認します。既存の校舎で満たせるかを先に確かめます。
改修の進め方は専門学校の改修・リノベーションガイドにまとめています。
所有形態で判断はどう変わるのか?
2つに分かれます。
| 所有形態 | 選択肢 |
|---|---|
| 自己所有 | 改築、長寿命化改修、部分改修、売却・移転 |
| 賃貸 | 契約の継続、内装の更新、移転、撤退 |
自己所有の場合
他の学校種と同じ判断になります。躯体の状態、在籍者数の見通し、法人の資金力、敷地の条件。そして、その建物を何年使うかを決めます。年数が決まらないうちは、安全に関わる工事に絞ります。
判断の枠組みは学校は建替え・長寿命化改修・統合のどれを選ぶ?にまとめています。
賃貸の場合
建て替えるという選択肢はありません。判断は次の形になります。
- 契約を継続し、内装を更新する
- 契約を継続し、最小限の維持にとどめる
- 契約の満了に合わせて移転する
- 縮小して、借りる面積を減らす
内装に投資するほど、退去時の原状回復の費用も大きくなります。契約の期間と投資額の関係を、着手の前に整理しておきます。造作を減らして家具で対応する方法もあります。
契約の条件を確認する
躯体に手を入れられるか、共用部の使用条件、電気と給排水の容量、原状回復の範囲、契約の期間。これらが投資できる範囲を決めます。実習設備を入れる場合は、床の耐荷重も確認します。
避難階段の増設や防火区画の追加が必要になった場合、建物全体に関わる工事になります。貸主の同意が得られるか、費用を誰が負担するかを先に確認します。
分野別の実習設備はどう扱うのか?
費用の中心になります。
専門学校では、分野ごとに必要な実習設備が大きく違います。建物の判断とは別に、設備の更新計画を持つ必要があります。設備費が工事費を上回る分野もあります。
| 分野 | 主な設備 | 更新の論点 |
|---|---|---|
| 医療・看護 | 実習ベッド、モデル人形、検査機器 | 衛生管理と手洗いの設備 |
| 調理・製菓 | 調理台、オーブン、冷蔵設備 | 給排水、ガス、換気、排気の容量 |
| 美容・理容 | シャンプー台、セット面、給湯 | 給排水と給湯の容量、床の防水 |
| 自動車・機械 | リフト、工作機械、塗装ブース | 床の耐荷重、動力電源、排気 |
| 情報・デザイン | 端末、ネットワーク、電源 | 分電盤の容量、配線経路 |
| 建築・土木 | 製図室、実習ヤード、測量機器 | 面積と作業スペース |
設備が建物の判断を縛る
給排水、ガス、動力電源、排気。これらの位置と容量が、実習室の配置を決めます。長寿命化改修では、既存の条件に制約されるため、配置の自由度は下がります。
学科を新設したり構成を変えたりする場合、既存の配置では対応できないことがあります。その場合は、移転や改築の方が目的に合います。
設備の更新周期は建物より短い
建物の判断がつかない段階でも、設備の更新は進められます。安全に関わる部分から先に処理し、建物の方針は別に検討する組み立てです。順序が逆になっても、設備の投資は無駄になりません。
分野別の実習室の考え方は専門学校・専修学校で使える教育環境整備の補助金も参考になります。
費用はどう比べるのか?
契約期間または使用年数で割ります。
| 項目 | 自己所有 | 賃貸 |
|---|---|---|
| 比べる期間 | その建物を使う年数 | 契約の期間 |
| 初期投資 | 改築または改修の工事費 | 内装と設備の工事費 |
| 毎年の費用 | 修繕費、光熱費、固定資産税等 | 賃料、共益費、光熱費 |
| 退去時 | 除却費または売却収入 | 原状回復費 |
| 縮小のしやすさ | 建物を減らすのは難しい | 借りる面積を減らせる |
賃貸では、縮小しやすいことが利点です。在籍者数が減った場合、借りる階数を減らすという対応が取れます。自己所有では、建物を減らすことは簡単ではありません。除却にも費用がかかります。
移転という選択肢
賃貸であれば、契約の満了に合わせて移転できます。より条件の良い物件、より小さい面積、より通学しやすい立地。
ただし、移転には内装工事が必要です。実習設備を持つ分野では、設備の移設と据付が加わります。移転の費用と、残る場合の改修費を並べて比べます。通学のしやすさが変わる影響も見ます。
長寿命化改修の内容は学校施設の長寿命化改修とは?を参照してください。
在籍者数の見通しはどう立てるのか?
分野ごとに分けて見ます。
専門学校の在籍者数は、分野によって動きが違います。資格につながる分野、産業の需要に連動する分野、留学生の比重が大きい分野。それぞれ前提がまったく異なります。
- 資格の需要が安定している分野は、見通しを立てやすい
- 産業の動向に連動する分野は、数年で変わる
- 留学生の比重が大きい分野は、制度と国際情勢に左右される
- 大学との競合がある分野は、進学先の変化に影響される
学校全体の合計ではなく、分野ごとに置いてみます。縮む分野と伸びる分野があれば、面積の配分を変える判断になります。実習室の転用が可能かどうかも確認します。
募集への効果はどこに出るのか?
オープンキャンパスの動線です。
専門学校では、オープンキャンパスや体験入学で実際の実習を見せることが募集の中心になります。見られる場所が、そのまま投資の優先順位になります。
| 場所 | なぜ効くか |
|---|---|
| 入口・受付 | 第一印象。案内の分かりやすさ |
| 実習室 | 学ぶ内容を具体的に想像させる |
| 設備・機器 | 就職後に使うものと同等かどうかが見られる |
| 作品・成果の展示 | 卒業後の姿を示す |
| 就職相談の場所 | 進路支援の体制を示す |
| トイレ・休憩の場所 | 清潔感が印象を左右する |
設備の新しさが最も効く
実習中心の分野では、設備が古いことが直接の不利になります。就職先で使っている機器と大きく違えば、学ぶ意味が伝わりません。
内装の見栄えより、設備の更新に投資を寄せる方が効果が出ることがあります。分野によって優先順位が変わるため、卒業生の就職先の状況も確認します。
見せ方も設計に含める
実習室を廊下から見える構成にすると、来訪者に活動が伝わります。ガラスの間仕切り、動線の配置、照明の当て方。改修の機会に検討できる部分です。
在校生の作品を展示する場所も、あらかじめ計画しておきます。後から場所を探すと、廊下に置く形になりがちです。
どう進めるのか?
所有形態の確認が最初です。
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 1. 所有形態の確認 | 自己所有か賃貸か。契約の期間と条件 |
| 2. 在籍者数の推計 | 分野ごとに10年後の見通しを置く |
| 3. 設備の台帳整理 | 分野ごとの設備の設置年と更新予定 |
| 4. 方針の決定 | 継続・改修・移転・縮小のいずれか |
| 5. 実施 | 設計、手続き、工事 |
1と2が決まらないまま工事の検討に入ると、前提が崩れます。特に賃貸では、契約の期間が投資の範囲を決めます。更新の条件も、契約書で確認しておきます。
手続きを確認する
校舎の変更や学科の改編は、設置の認可に関わります。所管の都道府県に、必要な手続きと時期を確認しておきます。
建築基準法上の用途変更や、消防法上の手続きが必要になる場合もあります。物件を決める前に、設計者に確認してもらう方が安全です。契約した後で対応できないと分かると、損失が大きくなります。
よくある質問
Q. 専修学校設置基準では何人まで同時に授業ができますか。
A. 一の授業科目について同時に授業を行う生徒数は40人以下とされています。特別の事由がある場合の例外が定められています。
Q. 校舎の面積の基準はありますか。
A. 別表により、生徒定員の区分で算定されます。昼間学科・夜間等学科と通信制学科で別の表が用いられます。
Q. 賃貸の場合、建替えは検討できますか。
A. できません。契約の継続、内装の更新、移転、縮小のいずれかになります。
Q. 内装にどこまで投資してよいですか。
A. 契約の期間内に回収できる範囲です。原状回復の費用も含めて計算します。
Q. 実習設備の更新はどう計画しますか。
A. 分野ごとに設置年を台帳にまとめ、更新の順序を決めます。建物の判断とは別に進められます。
Q. 学科を改編する場合、何を確認しますか。
A. 必要な校舎面積と実習設備が変わります。設置の認可に関わるため、所管の都道府県に確認します。
Q. 移転と改修のどちらが有利ですか。
A. 移転には内装工事と設備の移設が必要です。残る場合の改修費と比べて判断します。
Q. 募集に効くのは内装ですか、設備ですか。
A. 実習中心の分野では設備です。就職先で使う機器と同等かどうかが見られます。
Q. 在籍者数の見通しはどう立てますか。
A. 学校全体ではなく分野ごとに置きます。資格、産業の需要、留学生の比重で前提が変わります。
まとめ
専修学校設置基準では、一の授業科目について同時に授業を行う生徒数は40人以下とされ、校舎の面積は別表により生徒定員の区分で算定されます。必要な施設は教室、教員室、事務室で、図書室と保健室は努力義務とされています。
専門学校の判断が他の学校種と違うのは、自己所有と賃貸が混在している点です。賃貸であれば建替えという選択肢はなく、契約の継続、内装の更新、移転、縮小のいずれかになります。投資できる範囲は、契約の期間が決めます。
分野ごとの実習設備が、費用の中心になることが多くなります。給排水、ガス、動力電源、排気。これらの位置と容量が実習室の配置を決めるため、学科の構成を変えたい場合は既存の条件で対応できるかを先に確認します。
在籍者数は、学校全体の合計ではなく分野ごとに見ます。縮む分野と伸びる分野があれば、面積の配分を変える判断になります。まず所有形態と契約の条件を確認することが、すべての出発点です。
参考・出典
- 文部科学省「専修学校設置基準(昭和五十一年文部省令第二号)」 https://www.mext.go.jp/a_menu/shougai/senshuu/04062901.htm
- e-Gov法令検索「専修学校設置基準」 https://laws.e-gov.go.jp/law/351M50000080002/
- 学校教育法、建築基準法、消防法
記載の制度・基準は公表時点のものです。認可の手続きは都道府県によって異なります。個別の適用は所管の窓口にご確認ください。
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