補助を使う公立学校では分けるのが原則です。
設計と施工を分けると、発注者が工事の内容を決めた状態で入札に進めます。各社が同じ設計図書と数量に基づいて金額を提示するため、比較が成立します。
一方、一体で発注すると、各社が別々の提案を出します。提案の内容が違えば金額の比較が成立せず、提案の中身と金額を合わせて評価する形になります。
そして工事監理の役割が変わります。設計者が監理を担えば、発注者の立場で施工を確認する者がいます。一体では、施工する会社が自ら設計した内容を確認することになります。
この記事では、①分離の利点、②一体の利点、③工事監理、④技術者の配置、⑤使い分け、の5点を整理します。
目次
この記事の要点
- 設計と施工を分けると、各社が同じ設計図書と数量に基づいて金額を提示するため比較が成立する
- 一体で発注すると各社の提案内容が異なり、金額だけでは比較できない
- 補助を使う場合、申請には工事の内容と事業費を示す図書が必要で、設計の成果がその材料になる
- 工事監理は発注者の立場で施工を確認する業務で、設計者が担う形と施工会社が自ら行う形で意味が変わる
- 令和7年2月1日施行の建設業法施行令の改正で、特定建設業許可が必要となる下請代金の下限が5,000万円(建築工事業は8,000万円)、専任の監理技術者等の配置が必要となる金額が4,500万円(建築一式工事は9,000万円)に引き上げられた
分離の利点は何か?
同じ条件で比較できることです。
| 利点 | 内容 |
|---|---|
| 比較が成立する | 同じ設計図書と数量で金額を提示させる |
| 工事の内容を発注者が決める | 仕様と範囲を先に確定できる |
| 補助の申請に使える | 設計の成果が申請の図書になる |
| 工事監理が独立する | 設計者が発注者の立場で確認する |
| 発注者が内容を把握できる | 設計の段階で協議する |
比較が成立する
入札では、発注者が示した設計図書と数量に基づいて各社が金額を提示します。各社が別々の内容で見積るわけではありません。
したがって金額の差が、そのまま価格の差になります。安い理由が内容の違いではなく、積算の差になります。
補助の申請に使える
補助の申請には、工事の内容と事業費を示す図書が必要です。設計が進んでいなければ揃いません。
設計の発注が申請の前段にあります。設計が数か月遅れると、その年度の申請に間に合いません。
発注者が内容を把握できる
設計の段階で設計者と協議するため、何をどこまで直すかを発注者が理解した状態で工事に進めます。
一体では、提案を受けて選ぶ形になるため、内容の把握が浅くなることがあります。
分離の考え方
設計と施工の分離の全体像は設計と施工は分けるべきか?で扱っています。
一体の利点は何か?
施工の知見が設計に入ることです。
| 利点 | 内容 |
|---|---|
| 施工の知見が設計に入る | 施工しやすい設計になる |
| 期間が短くなる | 設計と施工の準備が並行する |
| 責任の所在が1つ | 設計と施工の間の責任の切り分けがない |
| 既存建物の対応が柔軟 | 想定外への対応が速い |
既存建物では強みが出る
既存の建物を触る工事では、開けてみて初めて分かることがあります。この場合、設計と施工が同じ会社であれば対応が速くなります。
分離では、想定外が出たときに設計の変更と工事の変更の両方の手続きが必要になります。
期間が短くなる
設計が終わってから入札、契約、着工という順序を踏まずに済みます。工期を急ぐ場合に効果が出ます。
ただし公共の工事では、調達の手続きが別に必要です。
比較が難しくなる
各社の提案内容が違うため、金額だけでは比較できません。提案の内容と金額を合わせて評価する仕組みが必要になります。
評価の基準を事前に決め、透明性を確保する必要があります。
私立学校では選ばれることがある
私立学校では、設計と施工を一体で発注する形も選ばれます。意思決定が早く、工期を優先できるためです。
ただし比較の難しさは残ります。複数社から提案を受ける場合、評価の軸を先に決めてください。
工事監理はどうなるのか?
誰が発注者の立場で確認するかが変わります。
| 方式 | 工事監理 |
|---|---|
| 分離 | 設計者が担う形が一般的 |
| 一体 | 施工する会社が自ら設計した内容を確認する |
| 一体+第三者 | 別に監理者を置く形 |
工事監理は施工管理と別
工事監理は、工事が設計図書のとおりに行われているかを確認する業務です。施工会社が行う施工管理とは役割が異なります。
発注者の立場で確認する者がいないと、設計と違う施工が見過ごされます。
一体では第三者を置く選択
設計と施工を一体で発注する場合、別に工事監理者を置く方法があります。発注者の立場で確認する者を確保できます。
費用は加わりますが、品質の確認という点では意味があります。
建築士法上の手続き
設計と工事監理の委託には、建築士法に基づく手続きがあります。契約の締結前に重要な事項を説明することなどが定められています。
書面による契約を前提に進めてください。
発注者側の体制
工事監理者がいても、発注者側に判断する人員が必要です。報告を受けて判断する者がいなければ、監理の結果が活かされません。
担当が1人で他の業務と兼務している状態では、報告を読む時間が取れません。
技術者の配置はどう関わるのか?
工事の金額で要件が変わります。
令和7年2月1日施行の建設業法施行令の改正により、次の金額が引き上げられました。
| 項目 | 改正後の金額 |
|---|---|
| 特定建設業許可が必要となる下請代金の下限 | 5,000万円(建築工事業は8,000万円) |
| 専任の監理技術者等の配置が必要となる金額 | 4,500万円(建築一式工事は9,000万円) |
発注の単位で要件が変わる
工事をまとめて発注すると金額が上がり、要件が変わります。分割すれば金額が下がり、参加できる業者の範囲が広がります。
地元の業者の参加を考えるなら、分割する判断があります。
施工体制台帳
一定の要件に当たる工事では、施工体制台帳の作成が建設業法第24条の8により義務づけられています。下請の構成を把握するための書類です。
発注者として、この台帳の内容を確認してください。
一括下請負の禁止
建設業法は一括下請負を禁止しています。受注した会社が実質的に関与せず、丸ごと下請に出すことは認められません。
業者選定の確認事項は工事業者はどう選べばいいか?で扱っています。
許可の区分を確認する
工事の内容に応じた建設業の許可を持っているかを確認してください。建築一式工事、内装仕上工事、電気工事、管工事。必要な許可が異なります。
分離では責任の切り分けが論点になる
分離では、不具合が出たときに設計の問題か施工の問題かが論点になります。設計者と施工会社の双方が、相手に原因があると主張することがあります。
| 不具合 | 切り分けの観点 |
|---|---|
| 雨漏り | 設計の仕様か、施工の品質か |
| 仕上げの不良 | 指定した材料か、施工の方法か |
| 数量の不足 | 積算の誤りか、施工の範囲か |
| 工期の遅れ | 設計変更の遅れか、施工の体制か |
この切り分けを発注者が行うことになります。工事監理の記録と施工の記録を残しておけば、判断の材料になります。
一体では責任の所在が1つになるため、この論点は生じません。ただし自ら設計した内容を自ら確認する構造になります。
使い分けはどうするのか?
4つの条件で判断します。
| 条件 | 分離が向く | 一体が向く |
|---|---|---|
| 補助を使うか | 使う | 使わない |
| 比較の透明性 | 重視する | 提案で評価する |
| 工期 | 余裕がある | 急ぐ |
| 既存建物の不確実性 | 調査で把握できる | 大きい |
補助を使うなら分離
補助の申請には設計の成果が必要です。したがって補助を使う計画では、設計を先に発注する形になります。
公立学校の工事では、この条件からほぼ分離になります。
調査を充実させれば分離でも対応できる
既存建物の不確実性は、調査で減らせます。調査を充実させれば、分離でも想定外を抑えられます。
調査の種類は学校改修の現地調査は何をするのか?で扱っています。
工期を急ぐ場合
工期を急ぐなら一体が有利になりますが、公共の工事では調達の手続きが別に必要です。
工期の短縮が本当に必要かを確認してください。前年度から段取りすれば、分離でも間に合うことがあります。
見積りの読み方は共通
どちらの方式でも、見積りの内容を読む必要があります。見積書の読み方は見積書はどこを見るのか?で扱っています。
一式で並んだ見積りでは、何が含まれているか分かりません。
よくある質問
Q. 分離だと責任の切り分けで揉めませんか。
A. 不具合が出たときに設計の問題か施工の問題かが論点になります。工事監理の記録と施工の記録を残しておけば、判断の材料になります。
Q. 設計と施工は分けるべきですか。
A. 補助を使う公立学校では分けるのが原則です。補助の申請に設計の成果が必要で、入札でも同じ条件で金額を比較できます。
Q. 分離の利点は何ですか。
A. 各社が同じ設計図書と数量に基づいて金額を提示するため、比較が成立します。また工事監理が発注者の立場で行われます。
Q. 一体の利点は何ですか。
A. 施工の知見が設計に入ること、期間が短くなること、責任の所在が1つになること、既存建物の想定外への対応が速いことです。
Q. 一体にすると品質の確認はどうなりますか。
A. 施工する会社が自ら設計した内容を確認することになります。別に工事監理者を置けば、発注者の立場で確認する者を確保できます。
Q. 工事をまとめると何が変わりますか。
A. 金額が上がり、技術者の配置の要件が変わります。令和7年2月1日施行の建設業法施行令の改正で、特定建設業許可が必要となる下請代金の下限と、専任の監理技術者等の配置が必要となる金額が引き上げられました。
Q. 工期を急ぐ場合は一体ですか。
A. 一体が有利になりますが、公共の工事では調達の手続きが別に必要です。前年度から段取りすれば、分離でも間に合うことがあります。
まとめ
補助を使う公立学校の改修では、設計と施工を分けるのが原則です。補助の申請には工事の内容と事業費を示す図書が必要で、設計の成果がその材料になります。
分離の利点は、同じ条件で比較できることです。各社が発注者の示した設計図書と数量に基づいて金額を提示するため、金額の差がそのまま価格の差になります。また設計の段階で協議するため、何をどこまで直すかを発注者が理解した状態で工事に進めます。
一体の利点は、施工の知見が設計に入り、期間が短くなり、既存建物の想定外への対応が速いことです。既存の建物では開けてみて初めて分かることがあり、設計と施工が同じ会社であれば対応が速くなります。ただし各社の提案内容が違うため、金額だけでは比較できません。
工事監理の意味が変わる点に注意してください。分離では設計者が発注者の立場で施工を確認します。一体では施工する会社が自ら設計した内容を確認することになるため、別に工事監理者を置く選択があります。
技術者の配置は工事の金額で変わります。令和7年2月1日施行の建設業法施行令の改正で、特定建設業許可が必要となる下請代金の下限が5,000万円(建築工事業は8,000万円)、専任の監理技術者等の配置が必要となる金額が4,500万円(建築一式工事は9,000万円)に引き上げられました。まとめて発注すると要件が変わります。
使い分けは、補助を使うか、比較の透明性を重視するか、工期を急ぐか、既存建物の不確実性が大きいかで判断してください。調査を充実させれば、分離でも想定外を抑えられます。
参考・出典
- e-Gov法令検索「建設業法」 https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC0000000100
- e-Gov法令検索「建設業法施行令」 https://laws.e-gov.go.jp/law/331CO0000000273
- e-Gov法令検索「建築士法」 https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC1000000202
- e-Gov法令検索「公共工事の品質確保の促進に関する法律」 https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC1000000018
- 国土交通省「建設業法令遵守ガイドライン」 https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/totikensangyo_const_tk1_000124.html
- 文部科学省「公立学校施設整備に関する実務」 https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyosei/zitumu.htm
記載の法令および制度は公表時点のものです。技術者の配置要件、発注の方式および調達の手続きは工事の内容と発注者の運用により異なります。個別の適用は所管部署、設計者および専門家にご確認ください。
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