この記事は、学校施設の設計・施工を行う株式会社光建舎が作成しています。設計(ウイングスペース一級建築士事務所)から施工まで一社で対応し、専門学校・高校・自治体の学校施設を手がけています。

学校改修の現地調査は何をするのか?【2026年版】5つの調査と頼み方

5種類の調査があります。

劣化の調査、構造の調査、設備の調査、法適合状況の調査、石綿の事前調査。この5つは目的が違い、担う者も異なります。「現地調査をお願いします」という依頼では、どれを指しているかが伝わりません。

そして調査の結果が出ないと、工事の数量が決まらず、事業費も出ません。補助の申請も設計も、調査の後に来ます。

したがって調査は、工事の前年度に行う作業です。当年度に始めると、その年度の工事には間に合いません。

この記事では、①5つの調査、②誰が行うのか、③調査の深さ、④結果の使い方、⑤依頼の仕方、の5点を整理します。

この記事の要点

  • 調査は、劣化の調査、構造の調査、設備の調査、法適合状況の調査、石綿の事前調査の5つに分かれる
  • 石綿の事前調査結果の報告は、大気汚染防止法に基づき令和4年4月1日から義務づけられている
  • 報告の対象は、解体部分の床面積の合計が80平方メートル以上の解体工事と、請負代金の合計額が100万円以上(税込)の改修工事
  • 法適合状況の調査は、国土交通省の「既存建築物の現況調査ガイドライン(第5版)」に手順と方法が示されている
  • 調査の結果が出ないと数量と事業費が決まらないため、工事の前年度に行う

5つの調査とは何か?

目的が違います。

調査 目的
劣化の調査 どこが傷んでいるか、工事の範囲を決める
構造の調査 構造体の状態と耐震性能
設備の調査 電気、給排水、空調の状態と容量
法適合状況の調査 建築基準法令への適合状況
石綿の事前調査 石綿の有無と種類、場所

このうち、どの調査が必要かは工事の内容によって変わります。

劣化の調査

屋上防水、外壁、建具、内装、床。目視と打診で状態を確認し、傷んでいる範囲を特定します。

確認すること 方法
屋上防水 目視、ふくれと破断の確認
外壁の仕上げ 目視、打診による浮きの確認
ひび割れ 幅と位置の記録
建具 開閉、ガラス、金物
内装 目視、床のたわみ
雨漏りの痕跡 天井と壁の染み

この調査で工事の範囲と数量が決まります。建物診断から始める意味は建物診断から始めるとは何か?で扱っています。

構造の調査

コンクリートの中性化、鉄筋の位置と腐食、ひび割れの深さ。これらを確認します。

耐震診断を行う場合、この調査が前提になります。コア抜きによる圧縮強度の試験、中性化深さの測定、鉄筋探査が行われます。

設備の調査

受電容量、分電盤の状態、幹線の容量、給排水管の状態、空調の機器の年式。

設備の更新では、既存の容量が新しい機器に足りるかが論点になります。空調を増やす計画では、受電設備の容量が制約になることがあります。

法適合状況の調査

確認申請を伴う工事では、既存部分の建築基準法令への適合状況が問われます。

国土交通省は「既存建築物の現況調査ガイドライン(第5版)」を令和6年12月に策定・公表しています。既存建築物の増築、改築、移転、大規模の修繕・大規模の模様替をしようとする場合に、建築士が適合状況を調査するための手順と方法を示すものです。

従前の「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」(平成26年7月2日公表)は、令和7年4月1日をもって統合・一本化されました。

検査済証がない場合の進め方は検査済証がないと改修できないのか?で扱っています。

石綿の事前調査

大気汚染防止法に基づき、令和4年4月1日から石綿の事前調査結果の報告が義務づけられています。

項目 内容
施行 令和4年4月1日
対象(解体) 解体部分の床面積の合計が80平方メートル以上
対象(改修) 請負代金の合計額が100万円以上(税込)

調査の進め方は学校のアスベスト調査はどう進めるのか?で扱っています。

誰が行うのか?

調査ごとに異なります。

調査 担う者
劣化の調査 設計事務所、調査会社
構造の調査 構造設計者、試験機関
設備の調査 設備設計者、設備会社
法適合状況の調査 建築士
石綿の事前調査 資格を有する者

施工会社の無料調査との違い

施工会社が営業の一環として無料で行う調査があります。これは工事の受注を目的とした概略の確認で、設計や補助の申請に使える成果物ではありません。

区分 内容
営業上の概略確認 無料。工事の提案のため
業務としての調査 有償。報告書が成果物

補助の申請や設計に使う調査は、業務として発注してください。見積りと調査の関係は学校改修の見積りは無料なのか?で扱っています。

設計者に一括して依頼する形

複数の調査を設計者に一括して依頼し、専門の部分を再委託させる形があります。発注者側の手間が減ります。

ただし調査の範囲と内容を仕様書で明確にする必要があります。「現地調査」という項目だけでは、何をするかが決まりません。

石綿の調査は資格が必要

石綿の事前調査は、所定の要件を満たす者が行う必要があります。誰でも行えるものではありません。

調査を発注する際に、要件を満たしているかを確認してください。

調査の深さはどう決めるのか?

工事の内容から逆算します。

工事 必要な調査
内装の張り替え 劣化の調査、石綿の事前調査
屋上防水 劣化の調査(下地の状態)、石綿の事前調査
外壁改修 劣化の調査(打診)、石綿の事前調査
設備の更新 設備の調査、石綿の事前調査
耐震補強 構造の調査、耐震診断
用途変更 法適合状況の調査
増築 構造の調査、法適合状況の調査

破壊を伴う調査の扱い

コア抜き、仕上げ材の一部撤去、天井の点検口の開設。これらは建物に手を入れる調査です。

使用中の建物では、作業できる時期が限られます。長期休業に合わせる段取りが必要です。

全棟か一部かを決める

複数の棟がある学校で、全棟を調査するか工事する棟だけを調査するかの判断があります。

長期的な計画を立てるなら全棟、当年度の工事のためなら対象の棟だけ。目的によって範囲が変わります。

書類の確認が調査を減らす

竣工図、構造図、構造計算書、改修の履歴。これらが残っていれば、現地での調査の範囲が小さくなります。

まず庁内で書類を探してください。竣工図があれば現地での実測が減り、構造計算書があれば構造の調査の範囲が小さくなります。

想定外は残る

調査で把握できる範囲には限りがあります。壁の中、天井裏、床下、地中。すべてを確認することはできません。

工事中に想定外の劣化が見つかる可能性は残ります。予備費を見込んでください。

結果はどう使うのか?

4つに使います。

使い道 内容
工事の範囲と数量 設計と積算の前提
事業費の算出 予算要求と補助の申請
優先度の判断 複数の工事の順序
説明の材料 議会と地域への説明

事業費が出ないと申請できない

補助の申請には、工事の内容と事業費を示す必要があります。調査の結果が出ないと、これが作れません。

補助の申請は年度の前半にあるため、前年度のうちに調査を済ませておく必要があります。

優先度を決める材料になる

複数の学校、複数の棟の調査結果を並べると、どこから手をつけるかが見えます。

安全に関わるもの、雨水の侵入を止めるものを先に行う判断ができます。

説明の材料として残す

「この校舎は大丈夫か」という問いに対して、調査の結果があれば具体的に答えられます。

報告書は保管し、次の調査のときに前回との比較ができる形にしてください。

建物カルテに蓄積する

棟ごとに築年数、構造、面積、耐震性能、改修の履歴、調査の結果をまとめた一覧を作ってください。

調査を行うたびに更新していけば、計画の精度が上がります。

依頼はどうするのか?

仕様を書きます。

仕様書に書くこと 内容
調査の目的 何のための調査か
対象の建物 棟、階、範囲
調査の項目 5つのうちどれを行うか
方法 目視、打診、破壊を伴うか
成果物 報告書の形式と内容
期間 いつまでに
立入りの条件 作業できる時期と時間帯

目的を明記する

「補助の申請のため」「長期計画の策定のため」「当年度の工事の設計のため」。目的によって必要な深さが変わります。

目的を書かないと、必要以上に詳細な調査になるか、逆に足りなくなります。

成果物の形式を決める

写真の数、図面への記入、数量の算出、所見の記載。これらを決めておかないと、受け取った報告書が使えないことがあります。

特に数量の算出が含まれるかは重要です。数量がなければ積算に使えません。

作業できる時期を伝える

学校では、授業中に立ち入れない範囲があります。破壊を伴う調査は長期休業に限られます。

年間行事予定を示し、作業できる時期を伝えてください。

複数年度の計画で考える

全棟の調査を一度に行うのは費用が大きくなります。計画に沿って、年度ごとに対象を分ける方法があります。

ただし優先度を決めるための概略調査は、全棟を一度に行う意味があります。

よくある質問

Q. 現地調査では何をしますか。

A. 劣化の調査、構造の調査、設備の調査、法適合状況の調査、石綿の事前調査の5つに分かれます。工事の内容によって必要な調査が変わります。

Q. 石綿の調査は必ず必要ですか。

A. 大気汚染防止法に基づき、令和4年4月1日から事前調査結果の報告が義務づけられています。解体部分の床面積80平方メートル以上の解体工事と、請負代金100万円以上の改修工事が対象です。

Q. 施工会社の無料調査で足りますか。

A. 足りません。無料の調査は工事の提案を目的とした概略の確認で、設計や補助の申請に使える成果物ではありません。

Q. いつ調査しますか。

A. 工事の前年度です。調査の結果が出ないと数量と事業費が決まらず、補助の申請も設計もできません。

Q. 調査の範囲はどう決めますか。

A. 工事の内容から逆算します。長期的な計画を立てるなら全棟、当年度の工事のためなら対象の棟だけという判断になります。

Q. 調査すれば想定外はなくなりますか。

A. なくなりません。壁の中、天井裏、床下、地中をすべて確認することはできません。工事中に想定外の劣化が見つかる可能性は残るため、予備費を見込んでください。

まとめ

学校改修の現地調査は5つに分かれます。劣化の調査、構造の調査、設備の調査、法適合状況の調査、石綿の事前調査。目的が違い、担う者も異なるため、「現地調査」という依頼では何をするかが伝わりません。

石綿については、大気汚染防止法に基づき令和4年4月1日から事前調査結果の報告が義務づけられています。解体部分の床面積の合計が80平方メートル以上の解体工事と、請負代金の合計額が100万円以上の改修工事が対象です。

法適合状況の調査には、国土交通省が令和6年12月に策定・公表した「既存建築物の現況調査ガイドライン(第5版)」に手順と方法が示されています。従前の検査済証のない建築物向けガイドラインは、令和7年4月1日をもって統合・一本化されました。

施工会社が営業として行う無料の調査は、工事の提案を目的とした概略の確認です。設計や補助の申請に使う調査は、業務として発注してください。

依頼の際は仕様を書いてください。調査の目的、対象の建物、調査の項目、方法、成果物の形式、期間、作業できる時期。特に数量の算出が含まれるかは重要です。数量がなければ積算に使えません。

そして調査は工事の前年度に行う作業です。結果が出ないと数量と事業費が決まらず、補助の申請も設計も進みません。当年度に始めると、その年度の工事には間に合いません。

参考・出典

記載の法令および制度は公表時点のものです。事前調査の報告の要否、必要な調査の範囲および資格の要件は工事の内容と所管の運用により異なります。個別の適用は所管の環境部署、労働基準監督署、特定行政庁および設計者にご確認ください。

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