この記事は、学校施設の設計・施工を行う株式会社光建舎が作成しています。設計(ウイングスペース一級建築士事務所)から施工まで一社で対応し、専門学校・高校・自治体の学校施設を手がけています。

学校の食堂・厨房改修の注意点は何か?

区域区分と温度管理

区域の区分と温度管理です。

学校の給食室は、一般の飲食店の厨房とは異なる基準で運用されます。学校給食衛生管理基準では、作業区域を汚染作業区域、準清潔作業区域、清潔作業区域に明確に区分することとされています。

区分とは、単に場所を分けることではありません。人と食材の動線が逆流しない構成にすることです。既存の給食室では、この区分ができていない配置が残っていることがあります。

そして温度と湿度です。同基準では、調理施設は換気を行い、温度は25度以下、湿度は80パーセント以下に保つよう努めることとされています。夏季の給食室は、これを大きく超えます。

この記事では、①区域の区分、②ドライシステム、③温度と湿度、④設備と排水、⑤進め方、の5点を整理します。

この記事の要点

  • 学校給食衛生管理基準では、汚染作業区域(検収室、食材料の保管室、下処理室、洗浄室)、準清潔作業区域(調理室)、清潔作業区域(盛り付け室、製品の保管室)を明確に区分することとされている
  • 同基準では、ドライシステム・ドライ運用を導入していることとされている
  • 同基準では、調理施設は換気を行い温度は25度以下、湿度は80パーセント以下に保つよう努めることとされている
  • 既存の給食室では、区域の区分ができていない配置が残っていることがある
  • 改修は給食を止めるか代替の方法を用意する必要があるため、工程の調整が最大の課題になる

区域の区分はどうするのか?

3つに分けます。

区域 含まれる室
汚染作業区域 検収室、食材料の保管室、下処理室、洗浄室
準清潔作業区域 調理室
清潔作業区域 盛り付け室、製品の保管室

学校給食衛生管理基準では、これらを明確に区分することとされています。

区分とは動線を逆流させないこと

区域を分ける目的は、汚染された食材や器具が清潔な区域に入らないようにすることです。壁で仕切るだけでなく、人と物の動線を一方向にする必要があります。

動線 内容
食材 検収から下処理、調理、盛り付けへ一方向
職員 区域をまたぐときに手洗いと着替え
器具 洗浄後に清潔区域へ
食器 返却されたものは洗浄室へ直接
廃棄物 清潔区域を通らない経路

既存の給食室では区分ができていないことがある

旧い給食室では、1つの室で検収から盛り付けまでを行う構成が残っていることがあります。この場合、区分のための間仕切りと動線の見直しが必要です。

面積が足りなければ、区分が成立しません。隣接する室を取り込むか、別の場所に新設するかの判断になります。

手洗いの位置

区域をまたぐ位置に手洗いを設けます。既存の給食室では、手洗いが入口に1か所だけという構成があります。

区域の数に応じた手洗いの設置が必要です。

食器の返却の動線

返却された食器が、盛り付け室を通って洗浄室に向かう構成は避けるべきです。返却用の経路を別に設けてください。

既存の給食室で経路が1つしかない場合、時間で分ける運用になります。

ドライシステムとは何か?

床を乾いた状態で使う方式です。

学校給食衛生管理基準では、ドライシステム・ドライ運用を導入していることとされています。

項目 内容
ドライシステム 床に水を流さない構造と設備
ドライ運用 ウェット構造の施設で床を乾いた状態に保つ運用
床の勾配 水を流す前提の勾配を設けない
排水溝 床の排水溝を減らす
機器 水がこぼれない構造の機器
清掃 水を流さない清掃方法

構造と運用の2つがある

ドライシステムは、床に水を流さない構造にすることです。ドライ運用は、既存のウェット構造の施設で、床を乾いた状態に保つ運用です。

既存の給食室を改修する場合、構造を変えるか運用で対応するかの判断になります。構造を変えるには床の全面やり直しが必要で、費用が大きくなります。

床を乾いた状態に保つ理由

床が濡れていると、細菌が増えます。また水が跳ねて食材や器具に付着します。

したがって床の水を減らすことが衛生管理の基本になります。

機器の選定が関わる

床に水をこぼさない構造の機器を選ぶ必要があります。排水を直接配管につなぐ、受け皿を設ける。

既存の機器をそのまま使うと、ドライ運用が成立しないことがあります。

床の仕上げ

ドライシステムでは、水に強い仕上げでありながら、滑りにくく清掃しやすい材料を選びます。

既存の床がタイルやモルタルの場合、目地の劣化と排水溝の形状を確認してください。

温度と湿度はどう管理するのか?

25度以下、80パーセント以下です。

学校給食衛生管理基準では、調理施設は換気を行い、温度は25度以下、湿度は80パーセント以下に保つよう努めることとされています。

要因 内容
加熱機器の発熱 フライヤー、回転釜、オーブン
蒸気 調理と洗浄で発生する水蒸気
換気 排気と給気のバランス
空調 冷房の能力
断熱 外気の影響
日射 窓からの熱

加熱機器の発熱が主な要因

回転釜、フライヤー、オーブン。これらが同時に稼働すると、室温が大きく上がります。

局所的な排気(フード)で熱と蒸気を捕集し、室全体の空調で温度を保つ構成になります。

排気と給気のバランス

排気だけを強くすると、室内が負圧になり、扉が開きにくくなります。また隙間から外気が入り、虫も入ります。

給気の経路を確保し、バランスを取ってください。空調の考え方は学校の空調設置はどう進めるのか?で扱っています。

空調の能力

発熱量が大きいため、一般の教室と同じ考え方では能力が足りません。熱源の種類と台数から、必要な能力を算出してください。

既存の給食室に空調がない場合、受電設備の容量が問題になることがあります。

理科室と共通する論点

換気量を増やすと空調の負荷が上がるという関係は、理科室と共通します。理科室の改修で気をつけることは何か?で扱っています。

窓の扱い

窓を開けて換気すると虫が入ります。網戸を設けるか、窓を開けずに機械換気で対応するかの判断になります。

機械換気で対応する場合、換気の能力が十分であることを確認してください。

設備と排水はどうするのか?

電気、ガス、給排水が集中します。

項目 確認すること
受電容量 加熱機器、冷蔵・冷凍、空調の合計
ガス 配管の容量と状態
給水 使用量と水質
給湯 洗浄に使う湯の量と温度
排水 量、油分、グリストラップ
浄化槽 人槽と能力
換気ダクト 経路と油の付着

受電容量が制約になる

加熱機器を電気式にすると、受電容量が大きくなります。既存の受電設備では足りないことがあります。

電気設備の更新は電気設備はどう更新するのか?で扱っています。計画の初期に容量を確認してください。

グリストラップの維持

厨房の排水には油分が含まれます。グリストラップで油分を分離してから排水しますが、定期的な清掃が必要です。

清掃を怠ると機能せず、配管が詰まります。維持管理の体制を確認してください。

排水の量と浄化槽

郊外の学校では浄化槽で処理していることがあります。厨房の排水は負荷が高く、人槽の能力を超えることがあります。

給排水設備の更新は給排水設備はどう更新するのか?で扱っています。

換気ダクトの油

厨房の排気ダクトには油が付着します。定期的な清掃が必要で、放置すると火災の原因になります。

ダクトの経路に点検口を設け、清掃できる構成にしてください。

既存配管の劣化

給食室の配管は、油分と洗剤の影響で劣化が進んでいることがあります。改修で開けて初めて分かることが多いため、予備費を見込んでください。

改修はどう進めるのか?

給食を止めるか代替を用意します。

手順 内容
1 現在の作業の流れを確認する
2 区域の区分ができるかを検討する
3 設備の容量を確認する
4 工事中の給食の提供方法を決める
5 工期と時期を決める
6 設計に入る

工事中の給食が最大の課題

給食室を改修する間、給食を提供できません。代替の方法を決める必要があります。

方法 内容
弁当の持参 保護者の負担が増える
外部からの配食 業者の確保と費用
他校の給食室から搬入 容量と配送の体制
簡易な献立に変更 提供できる範囲を絞る
長期休業に工事を集中 工期が足りるか

工事の期間が長期休業に収まらない場合、学期中の対応が必要になります。保護者への説明も含めて、早い段階で決めてください。

保健所との協議

改修後の施設が基準に適合するかについて、保健所と協議が必要です。設計の前に相談してください。

学校給食の場合、教育委員会の所管部署と保健所の両方が関わります。

工程を逆算する

給食の提供方法の決定、保護者への説明、業者の手配。これらに期間が必要です。

工事の時期を先に決めて、そこから逆算してください。

全面改修か部分改修か

区域の区分ができていない給食室では、部分的な改修では基準を満たせないことがあります。

全面改修になると工期が長くなり、給食の代替の期間も長くなります。この判断を早い段階で行ってください。

よくある質問

Q. 給食室の改修で最も重要なのは何ですか。

A. 区域の区分です。学校給食衛生管理基準では、汚染作業区域、準清潔作業区域、清潔作業区域を明確に区分することとされています。

Q. 区域の区分とは壁で仕切ることですか。

A. 壁だけではありません。人と食材の動線が逆流しない構成にすることです。区域をまたぐ位置に手洗いを設ける必要もあります。

Q. ドライシステムとは何ですか。

A. 床に水を流さない構造にすることです。同基準では、ドライシステム・ドライ運用を導入していることとされています。既存の施設では運用で対応する形もあります。

Q. 温度と湿度の基準はありますか。

A. 同基準では、調理施設は換気を行い温度は25度以下、湿度は80パーセント以下に保つよう努めることとされています。

Q. 工事中の給食はどうしますか。

A. 弁当の持参、外部からの配食、他校からの搬入、献立の変更、長期休業への集中。いずれかの方法を早い段階で決めてください。

Q. 部分的な改修で基準を満たせますか。

A. 区域の区分ができていない給食室では、部分的な改修では満たせないことがあります。全面改修になるかを早い段階で判断してください。

まとめ

学校の給食室の改修では、区域の区分と温度管理が中心になります。

学校給食衛生管理基準では、汚染作業区域(検収室、食材料の保管室、下処理室、洗浄室)、準清潔作業区域(調理室)、清潔作業区域(盛り付け室、製品の保管室)を明確に区分することとされています。区分とは壁で仕切ることではなく、人と食材の動線が逆流しない構成にすることです。

旧い給食室では、1つの室で検収から盛り付けまでを行う構成が残っていることがあります。面積が足りなければ区分が成立せず、隣接する室を取り込むか別の場所に新設するかの判断になります。

同基準では、ドライシステム・ドライ運用を導入していることとされています。床に水を流さない構造にするか、既存のウェット構造で床を乾いた状態に保つ運用で対応するかの選択です。

温度と湿度については、換気を行い温度は25度以下、湿度は80パーセント以下に保つよう努めることとされています。回転釜、フライヤー、オーブンが同時に稼働すると室温が大きく上がるため、局所的な排気と室全体の空調を組み合わせます。排気だけを強くすると室内が負圧になるため、給気の経路も確保してください。

設備では受電容量が制約になります。加熱機器を電気式にすると容量が大きくなり、既存の受電設備では足りないことがあります。

そして最大の課題は工事中の給食です。弁当の持参、外部からの配食、他校からの搬入、献立の変更。いずれかの方法を早い段階で決め、保護者への説明を含めて準備してください。

参考・出典

記載の基準および制度は公表時点のものです。施設の基準の解釈、必要な設備および協議の進め方は所管部署および保健所の運用により異なります。個別の適用は教育委員会の所管部署、保健所および設計者にご確認ください。

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