この記事は、学校施設の設計・施工を行う株式会社光建舎が作成しています。設計(ウイングスペース一級建築士事務所)から施工まで一社で対応し、専門学校・高校・自治体の学校施設を手がけています。

学校法人の不動産取得税・登録免許税はどう扱われるか?

非課税の範囲と手続き

校地を買い増す。校舎を新築して登記する。隣接する土地を寄附で受ける。学校法人が不動産を取得する場面では、不動産取得税と登録免許税が関係します。

教育に使う不動産であれば、どちらも非課税です。ただし、何もしなくても自動的に非課税になるわけではなく、取得したすべての不動産が対象になるわけでもありません。職員住宅や収益目的の不動産は課税されます。

この記事では、①2つの税の基本、②非課税の範囲、③手続き、④課税される場合の計算、⑤注意すべき場面、の5点を整理します。

この記事の要点

  • 学校法人がその設置する学校において直接保育または教育の用に供する不動産の取得は、不動産取得税が非課税
  • 校舎、寄宿舎、図書館その他保育・教育に直接必要な附属建物や、敷地・運動場・実習用地の権利の取得登記は、登録免許税が非課税
  • 不動産取得税の標準税率は4%。住宅および土地は令和9年3月31日まで3%の特例がある
  • 宅地評価土地の課税標準は、評価額の2分の1とする特例がある
  • 職員住宅、収益事業に使う不動産、取得後に教育に使っていない不動産は、非課税の対象にならない可能性がある

不動産取得税と登録免許税とは何か?

不動産を取得したときにかかる税が2つあります。

税目課税する主体課税の対象学校法人の扱い
不動産取得税都道府県不動産の取得直接保育・教育の用に供するものは非課税
登録免許税国不動産の登記校舎等・敷地等の取得登記は非課税

不動産取得税は、売買、贈与、交換、新築、増築などで不動産を取得した人に、取得のときに一度だけ課されます。登録免許税は、所有権の保存登記や移転登記をするときに課されます。取得しても登記をしなければ登録免許税はかかりませんが、権利を確保するため実務上は登記をするのが通常です。

学校法人の税制全体の中での位置づけは学校法人の税制優遇はどこまで及ぶか?にまとめています。

非課税になるのはどの範囲か?

「直接」教育に使うかどうかが判断の軸です。

不動産取得税

学校法人がその設置する学校において直接保育または教育の用に供する不動産、および寄宿舎の用に供する不動産を取得した場合は、不動産取得税が課されません。

登録免許税

文部科学省の監事研修資料では、学校法人の非課税の範囲として、校舎、寄宿舎、図書館その他保育または教育に直接必要な附属建物の所有権の取得登記、および敷地、運動場、実習用地の権利の取得登記が示されています。

対象になりやすいもの・なりにくいもの

不動産非課税の可能性
校舎、体育館、図書館、実習棟高い
校地、運動場、実習用地高い
学生寮・寄宿舎高い
職員住宅低い
収益事業に使う建物・土地低い
将来の拡張用に取得し、当面使わない土地使用開始までは低い

「直接」という条件があるため、教育活動と結びつかない不動産は対象から外れます。判断に迷う場合は、取得の前に都道府県と法務局に確認します。

手続きは必要か?

非課税でも、届出や証明が必要です。

不動産取得税

不動産を取得したら、都道府県の税事務所に申告します。非課税の適用を受ける場合も、非課税に該当することを示す書類を添えて申告するのが一般的です。

必要な書類は都道府県によって異なりますが、登記事項証明書、寄附行為、学校の配置図や平面図、取得した不動産の用途が分かる資料などが求められます。取得後に申告期限が定められているため、登記が終わった段階で早めに確認します。

申告の窓口は都道府県の税事務所です。市町村ではない点に注意してください。取得した不動産が複数の市町村にまたがる場合も、申告先は都道府県になります。

登録免許税

登記の申請時に、非課税の根拠となる書類を添付します。所轄庁が発行する証明が必要になる場合があるため、登記の予定が決まった段階で、司法書士と法務局に必要書類を確認しておきます。

証明の発行には日数がかかることがあります。決済の日程から逆算し、申請の時期を決めておくと、登記が遅れて引き渡しに影響することを避けられます。

校地取得の全体の進め方は学校法人が校地を取得・拡張するにはどう進めるか?を参照してください。

課税される場合はいくらになるか?

非課税に当たらない不動産を取得した場合の計算を押さえておきます。

不動産取得税

総務省の資料では、不動産取得税の仕組みが次のように示されています。

項目内容
課税主体都道府県
納税義務者不動産の取得者
課税標準固定資産課税台帳に登録された価格(評価額)
標準税率4%(本則)
住宅および土地の税率の特例3%(令和9年3月31日まで)
宅地評価土地の課税標準の特例評価額の2分の1

課税標準は売買価格ではなく、固定資産課税台帳に登録された評価額です。市場価格より低いことが多いため、購入価格に税率を掛けて試算すると過大になります。

なお、新築の建物のように台帳に価格が登録されていない場合は、固定資産評価基準によって評価した価格が課税標準になります。

登録免許税

登録免許税は、不動産の価額に税率を掛けて計算します。税率は登記の種類によって異なります。売買による土地の所有権移転登記、建物の所有権保存登記、売買による建物の移転登記で、それぞれ税率が定められています。

軽減の特例は期限付きで設けられており、適用期限は改正で変わります。登記の時期に合わせて、国税庁の税額表で最新の税率を確認してください。

どんな場面で注意が必要か?

4つあります。

取得してすぐ使わない土地

将来の校舎用地として取得しても、教育の用に供するまでの期間は非課税の対象にならないことがあります。取得の時期と使用開始の時期を、都道府県に事前に確認します。取得から一定期間内に使用を開始する見込みがあるかどうかが問われることもあります。

一部を教育以外に使う場合

建物の一部を収益事業や職員住宅に使う場合、その部分は非課税の対象から外れる可能性があります。どの範囲をどの用途に使うかを図面で示し、面積按分の考え方を取得前に確認しておきます。貸付を伴う場合の扱いは空き校舎を貸すと税金はどうなる?で扱っています。

寄附で取得する場合

寄附を受けた場合も不動産の取得に当たるため、同じ扱いになります。教育の用に供するものであれば非課税ですが、申告は必要です。寄附を受ける前に、その不動産を教育にどう使うかを決めておきます。寄附する側には譲渡所得の課税の問題が生じることがあり、国税庁長官の承認を受ければ非課税になる特例があります。

会計処理との関係

取得した不動産は固定資産として計上し、第1号基本金に組み入れます。借入金で取得した場合は、返済に合わせて組み入れる扱いになります。取得に伴う諸費用のうち、どこまでを取得価額に含めるかは会計上の論点です。学校法人会計で施設整備はどう処理するか?を参照してください。

公立学校ではどうなるか?

地方公共団体が取得する不動産には、不動産取得税が課されません。地方公共団体は不動産取得税の課税の対象から外れているためです。登録免許税についても、国や地方公共団体が受ける登記は非課税とされています。

このため、公立学校の用地取得や校舎の登記では、これらの税を資金計画に見込む必要は通常ありません。ただし、公立学校の用地を民間から取得する場合、売主側には譲渡所得の課税の問題が生じます。公共事業として買収する場合には特別控除の制度があるため、用地交渉の段階で税務上の扱いを整理しておくと、交渉が進めやすくなります。

取得の形によって扱いは変わるか?

取得の原因によって、かかる税と手続きが変わります。

取得の形不動産取得税登録免許税留意点
売買取得に当たる所有権移転登記契約前に非課税の可否を確認
新築・増築取得に当たる所有権保存登記完成後の用途で判断される
贈与・寄附取得に当たる所有権移転登記寄附者側の課税も確認
交換取得に当たる所有権移転登記双方の評価額の差にも注意
相続課税されない移転登記は必要学校法人では通常生じない
借地・賃借取得ではない地上権・賃借権の設定登記設定登記をする場合は登録免許税の対象

校地を借りる形にすれば取得の税は生じませんが、私立学校では校地・校舎の自己所有が原則とされています。借地にするかどうかは、税の負担だけでなく所轄庁の基準と合わせて判断します。

取得前に何を確認すべきか?

4つあります。

用途と使用開始の時期

取得する不動産を、いつからどの教育活動に使うかを具体的にします。非課税の判断は、この点に基づいて行われるためです。

評価額

課税される可能性がある場合、固定資産課税台帳の評価額を確認します。売買価格ではなく評価額が課税標準になるため、税額の試算はここから始めます。

建物の有無

土地に既存の建物がある場合、建物も取得するのか、解体してから取得するのかで扱いが変わります。解体を売主が行うか買主が行うかも、費用と税の両面で確認します。

諸費用の総額

登記費用、司法書士報酬、測量費、仲介手数料、契約書の印紙税を含めた総額を把握します。非課税で税負担がない場合でも、これらの費用は発生します。

よくある質問

Q. 校舎を新築した場合も不動産取得税はかかりますか。

A. 新築も不動産の取得に当たりますが、直接教育の用に供する校舎であれば非課税とされています。申告は必要です。

Q. 借りている校地を買い取る場合はどうなりますか。

A. 所有権を取得するため、不動産取得税と登録免許税の対象になります。すでに校地として使っている土地であれば、非課税の適用を検討できます。借地権の解消の方法によって扱いが変わることがあるため、事前に確認してください。

Q. 認定こども園や専修学校でも同じ扱いですか。

A. 学校法人が設置する学校で、直接保育または教育の用に供する不動産であれば、同様の考え方が当てはまります。ただし法人の種類や施設の位置づけによって扱いが分かれることがあるため、都道府県に確認してください。

Q. 非課税の申告を忘れるとどうなりますか。

A. 納税通知が届き、課税される可能性があります。気づいた時点で都道府県に相談してください。還付の可否や手続きは自治体によって扱いが異なります。

Q. 職員住宅を取得した場合はどうなりますか。

A. 直接保育・教育の用に供する不動産には当たらないのが一般的です。課税される前提で資金計画を立てます。

Q. 固定資産税はどうなりますか。

A. 取得後、直接保育または教育の用に供している不動産は、固定資産税と都市計画税も非課税です。教育に使わなくなった場合や、第三者に貸した場合は、扱いが変わる可能性があります。

まとめ

学校法人が直接保育または教育の用に供する不動産の取得は、不動産取得税が非課税です。校舎、寄宿舎、図書館などの建物や、敷地、運動場、実習用地の取得登記は、登録免許税も非課税とされています。

ただし、非課税は自動的に適用されるものではなく、申告と書類の提出が必要です。職員住宅、収益事業に使う不動産、取得後に教育に使っていない土地は、非課税の対象にならない可能性があります。

課税される場合、不動産取得税の課税標準は固定資産課税台帳の評価額で、標準税率は4%、住宅および土地は令和9年3月31日まで3%の特例があります。取得の計画を立てる段階で、都道府県の税務担当と司法書士に確認し、税負担を資金計画に織り込んでおくことが大切です。

参考・出典

記載の税制は公表時点のものです。実際の課税関係は、都道府県の税務担当・法務局・税理士・司法書士にご確認ください。

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