この記事は、学校施設の設計・施工を行う株式会社光建舎が作成しています。設計(ウイングスペース一級建築士事務所)から施工まで一社で対応し、専門学校・高校・自治体の学校施設を手がけています。

空き校舎を貸すと税金はどうなる?

学校法人の賃貸と課税の注意点

在籍者が減り、校舎の一棟がまるごと空いた。キャンパスを集約して、旧校地が使われなくなった。こうした空き校舎を、企業や自治体、他の教育機関に貸したいという相談が増えています。

賃料が入れば、維持費の負担は軽くなります。ただし学校法人の場合、貸した瞬間に税の扱いが変わります。法人税、固定資産税、消費税。3つの税で、教育に使っていたときとは違う扱いになる可能性があります。

この記事では、①空き校舎の賃貸とは何か、②法人税、③固定資産税、④消費税、⑤私立学校法と補助金の手続き、⑥売却との比較、の6点を整理します。

この記事の要点

  • 学校法人が空き校舎を継続して貸すと、法人税法上の不動産貸付業として収益事業に当たる
  • 国または地方公共団体に直接貸す場合は、不動産貸付業から除かれている
  • 教育に使わなくなった校舎は、固定資産税の非課税が外れる可能性がある
  • 建物の賃料は、住宅として貸す場合を除き、消費税の課税対象になる
  • 売却の場合は、おおむね10年以上保有した不動産の売却益は課税対象外とされている

空き校舎の賃貸とは何か?

空き校舎の賃貸とは、学校法人が教育に使わなくなった校舎や校地を、一定期間、第三者に使用させて賃料を受け取ることです。

この記事で扱うのは、棟や校地の単位で、月単位・年単位の長期にわたって貸す形です。夜間や休日に体育館やグラウンドを時間貸しする形は学校の駐車場・グラウンドを貸すと税金はどうなるか?で扱っています。

借り手として多いのは、次のような相手です。

借り手主な用途
地方公共団体公共施設、避難所、仮設庁舎
他の教育機関専門学校、フリースクール、塾
企業研修施設、オフィス、倉庫
社会福祉法人保育所、高齢者施設

誰に貸すかによって、税の扱いが変わります。

法人税はかかるのか?

継続して貸せば、原則としてかかります。

不動産貸付業に当たる

学校法人は公益法人等として、政令で定める34業種を事業場を設けて継続して営む場合に、その所得に法人税が課されます。34業種には不動産貸付業が含まれます。

空き校舎を賃貸借契約で継続的に貸すことは、不動産貸付業に当たるのが原則です。収益事業の要件と税率の詳細は学校法人の収益事業にはどう法人税がかかるか?で扱っています。

国・地方公共団体への直接貸付は除かれる

法人税法施行令では、国または地方公共団体に対し直接貸し付けられる不動産の貸付業は、不動産貸付業から除かれています。

空き校舎を市町村に直接貸し、公共施設として使ってもらう場合は、この除外に当たる可能性があります。「直接」がポイントで、市町村が指定する事業者に貸す場合は、借り手が地方公共団体ではないため、この除外には当たりません。

貸し方法人税の扱い
市町村に直接貸す不動産貸付業から除外される可能性
市町村が選んだ民間事業者に貸す不動産貸付業に当たる
社会福祉法人に貸す不動産貸付業に当たる(借り手側の事業とは別)
企業に貸す不動産貸付業に当たる

税率とみなし寄附金

収益事業に当たる場合、学校法人の税率は年800万円以下の部分が15%、800万円超の部分が19%です。賃料収入から減価償却費や維持費を差し引いた所得に課税されます。

収益事業から教育事業に繰り入れた金額は、所得の50%か年200万円のいずれか多い額まで損金に算入できます。賃料を教育事業の財源に回す場合は、この仕組みを使えます。

固定資産税はどうなるか?

非課税が外れる可能性があります。ここが最も影響の大きい論点です。

非課税の条件

学校法人が所有する不動産のうち、その設置する学校において直接保育または教育の用に供するものは、固定資産税と都市計画税が課されません。

空き校舎を第三者に貸すと、その校舎は「直接教育の用に供する」状態ではなくなります。そのため、貸している部分について非課税が外れ、課税される可能性があります。

空いているだけの状態でも注意

貸す前の、単に使われていない状態でも、将来教育に使う予定がなければ非課税の扱いが見直される可能性があります。非課税の判断は、毎年1月1日時点の現況で市町村(東京23区は都)が行います。

試算に入れておく

固定資産税は、土地と建物の評価額に標準税率1.4%を掛けて算出されます。都市計画税は制限税率0.3%です。賃料収入を見積もるときは、この税負担を差し引いて手取りを計算します。

学校法人の税制優遇の全体像は学校法人の税制優遇はどこまで及ぶか?にまとめています。

消費税はかかるのか?

建物の賃料にはかかります。

消費税法では、土地の貸付と住宅の貸付は非課税とされています。一方、校舎を事務所や研修施設、店舗として貸す場合の建物の賃料は課税取引です。

対象消費税
土地だけの貸付(1か月以上)非課税
住宅としての建物の貸付非課税
事務所・研修施設などとしての建物の貸付課税
駐車場など施設を伴う土地の貸付課税

学校法人はもともと授業料などの非課税売上が多いため、課税売上が増えると、消費税の納税義務や仕入税額控除の計算に影響します。賃料の設定時に、消費税を内税にするか外税にするかも決めておきます。

私立学校法と補助金の手続きは必要か?

どちらも確認が必要です。

私立学校法上の収益事業

私立学校法では、学校法人は教育に支障のない限り、収益を学校の経営に充てるために収益事業を行うことができるとされています。行う事業の種類は寄附行為に定め、所轄庁の認可を受けます。

空き校舎の賃貸を継続して行う場合、寄附行為の変更が必要かどうかを所轄庁に事前に相談します。

基本財産の扱い

校舎や校地が寄附行為で基本財産とされている場合、その処分や用途の変更には、理事会の手続きや所轄庁への届出が必要になることがあります。

補助金を受けた建物の財産処分

国や地方公共団体の補助金を受けて整備した校舎を、補助目的以外に使う場合は、財産処分の承認が必要になることがあります。補助金の返還が求められる場合もあるため、整備時の交付条件を確認してください。

貸すのと売るのはどちらが有利か?

税の面では、それぞれに特徴があります。

売却の場合

文部科学省の監事研修資料では、相当期間(おおむね10年以上)保有していた土地・建物等の不動産の売却益は、法人税の課税対象外とされています。長く保有してきた校舎や校地であれば、売却益に法人税がかからない可能性があります。

また、売却すれば固定資産税と維持費の負担はなくなります。

賃貸の場合

資産を手放さずに済み、将来在籍者が回復した場合に教育用に戻す余地が残ります。一方で、賃料収入には法人税がかかる可能性があり、固定資産税の非課税も外れる可能性があります。建物の維持・修繕の責任も、原則として貸主に残ります。

項目売却賃貸
法人税長期保有の売却益は課税対象外とされる賃料所得に課税される可能性
固定資産税負担がなくなる非課税が外れる可能性
維持・修繕負担がなくなる原則として貸主に残る
将来の再利用できない契約終了後に可能

将来も教育に使う見込みがない建物であれば、売却や除却も選択肢に入れて比較します。面積を減らす考え方は少子化を前提にした校舎のダウンサイジングはどう進めるか?で扱っています。

貸す前に確認すべきことは何か?

税務以外の確認事項もあります。

用途変更の手続き

校舎を学校以外の用途で使う場合、建築基準法上の用途変更に当たることがあります。用途変更する部分の床面積が200平方メートルを超えると、確認申請が必要です。借り手の用途によっては、消防設備の追加も求められます。詳しくは学校の改修で関わる建築基準法の基礎を参照してください。

契約形態

普通借家契約では、借り手の保護が強く、貸主から契約を終了させにくくなります。将来教育用に戻す可能性があるなら、期間の満了で契約が終了する定期借家契約を検討します。

改修費の負担

借り手の用途に合わせた改修費を、どちらが負担するかを契約で決めます。貸主が負担する場合は、その償却が収益事業の費用になります。

建物の安全性

借り手に引き渡す前に、耐震性能、外壁や屋上防水の劣化状況、設備の状態を確認します。長く使っていなかった棟は、給排水や電気設備に不具合が出ていることが少なくありません。賃貸中に事故が起きれば、所有者としての責任が問われます。

よくある質問

Q. 空き校舎を無償で貸せば、税金はかかりませんか。

A. 無償であれば不動産貸付業の所得は生じませんが、教育に使っていない以上、固定資産税の非課税が外れる可能性は残ります。

Q. 系列の別の学校法人に貸す場合も課税されますか。

A. 別の法人に貸す以上、不動産貸付業に当たる可能性があります。借り手がその校舎を教育に使っていても、貸主の学校法人が直接教育に使っていることにはならない点に注意が必要です。固定資産税の扱いは市町村に確認してください。

Q. 校舎の一部の教室だけを長期で貸す場合はどうなりますか。

A. 貸している部分について、同じ考え方が当てはまります。固定資産税は、貸している部分とそれ以外を按分して扱われることがあります。

Q. 公立学校の空き校舎を貸す場合はどうなりますか。

A. 地方公共団体には法人税がかからず、この記事で扱う学校法人の課税とは異なります。公立学校の場合は、廃校後の用途廃止と貸付の手続きが中心になります。廃校の売却・貸付と公募の進め方を参照してください。

まとめ

学校法人が空き校舎を継続して貸すと、法人税法上の不動産貸付業として収益事業に当たるのが原則です。ただし、国または地方公共団体に直接貸す場合は、不動産貸付業から除かれています。

最も影響が大きいのは固定資産税です。第三者に貸した校舎は「直接教育の用に供する」状態ではなくなるため、非課税が外れる可能性があります。建物の賃料には消費税もかかります。

売却の場合は、おおむね10年以上保有した不動産の売却益は課税対象外とされ、固定資産税と維持費の負担もなくなります。将来教育に使う見込み、手取りの賃料、維持・修繕の負担を並べて、賃貸・売却・除却を比較することが大切です。始める前に、所轄庁、市町村の税務担当、税理士に確認しておきましょう。

参考・出典

記載の税制は公表時点のものです。実際の課税関係は、所轄庁・税務署・地方公共団体の税務担当・税理士にご確認ください。

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