学校のアスベスト調査(石綿事前調査)とは?法令要件・有資格者・報告義務を解説【2026年版】

校舎の改修や解体、統廃合に伴う施設整備を検討し始めたとき、「アスベストの事前調査は何をどこまでやればよいのか」「誰に頼めば法令上有効な調査になるのか」で手が止まっていないでしょうか。石綿に関する規制は、労働者を守る石綿障害予防規則(石綿則)と、周辺への飛散を防ぐ大気汚染防止法(大防法)の二本立てで定められており、しかも義務の内容が施行時期ごとに段階的に追加されてきました。この「段階的」という点が、担当者を混乱させる最大の原因です。

この記事では、学校施設の解体・改修に先立つアスベスト事前調査について、法令上の要件・調査を行える有資格者・報告義務・レベル1〜3の区分・除去工事との関係を、厚生労働省と環境省の一次情報にもとづいて整理します。読み終えるころには、仕様書づくりや業者選定の前提となる制度の全体像がつかめるはずです。

なお、本記事の法令情報はすべて2026年7月時点で確認したものです。私たち光建舎(KOKENSHA)は、学校・教育施設の改修を軸に、調査・設計・施工までワンストップで対応してきました。制度が複雑で判断に迷う段階からでも、アスベスト事前調査の進め方に関する無料相談をご活用ください。

学校のアスベスト調査(石綿事前調査)とは

アスベスト事前調査(石綿事前調査)とは、建築物等の解体・改修工事を行う前に、その工事の対象となるすべての材料について石綿含有の有無を調べる、法令で義務づけられた調査のことです。 石綿則と大防法の両方に根拠があり、工事の元請業者または自主施工者が実施義務を負います。

ここで最初に押さえるべき原則が2つあります。

第一に、工事の規模の大小にかかわらず、解体・改修作業に係る部分のすべての材料が調査対象です(出典:厚生労働省「石綿総合情報ポータルサイト」)。後述する「報告」の義務には規模の閾値がありますが、「調査」そのものに閾値はない、という区別が重要です。

第二に、事前調査は設計図書等の文書による調査と、目視による調査の両方を行う必要があります(2021年4月〜。設計図書等の文書が存在しないときを除く)。学校施設では増改築を重ねた結果、竣工図と現況が一致していない例が珍しくなく、この「両方」の要件は実務上とりわけ重い意味を持ちます。

なぜ学校施設でアスベスト事前調査が重要なのか

学校施設でアスベスト調査が特に重要なのは、多くの校舎が石綿の使用が禁止される前の時期に建てられているためです。 石綿およびその重量の0.1%を超えて含有するすべての物は、労働安全衛生法施行令の改正により、2006年(平成18年)9月1日から製造・輸入・譲渡・提供・使用が禁止されています(出典:厚生労働省)。裏を返せば、それ以前に着工した建築物には石綿含有建材が使われている可能性が残る、ということです。

学校施設の多くは高度経済成長期に建設されており、この禁止時期より前の建物が全国的に相当数を占めます。文部科学省も、学校施設等における石綿含有保温材等の使用状況調査(特定調査)を実施し、調査未完了の機関や措置済みでない石綿含有保温材等を保有する機関に速やかな対応を求めています(出典:文部科学省/令和6年9月6日通知、令和5年10月1日時点の調査)。

現場でよくいただくのが、「過去に実態調査をしているから、改修前の事前調査は省略できないか」というご相談です。しかし、過去の実態調査は目的も対象範囲も資格要件も現行の事前調査とは異なります。工事に先立つ事前調査は、工事のたびに、その工事の対象部分について改めて行うものとお考えいただくのが安全です。

石綿事前調査を義務づける法令と施行時期【一覧表】

制度理解の最大のポイントは、義務が一度に始まったのではなく、段階的に追加されてきたことです。 特に「2022年4月」と「2023年10月」は混同されやすいため、下表で明確に区別してください。前者は電子システムによる報告の義務化、後者は有資格者による調査の義務化であり、まったく別の話です。

施行時期 追加された主な義務 根拠
2006年9月1日〜 石綿を0.1%超含有するすべての物の製造・輸入・譲渡・提供・使用の禁止 労働安全衛生法施行令
2021年4月〜 事前調査は文書調査と目視調査の両方が必要/調査結果の記録を作成し3年間保存、作業場所に備え付け、概要を掲示 石綿則
2021年4月〜 石綿含有保温材等(レベル2相当)の除去工事も、吹付け石綿と同様に14日前までに労働基準監督署へ計画届/除去後、隔離を解く前に資格者が取り残しのないことを確認 石綿則
2021年4月〜 規制対象がすべての石綿含有建材に拡大(改正法は2020年6月5日公布) 大防法
2022年4月〜 一定規模以上の解体・改修工事について、事前調査結果を電子システムで報告 石綿則・大防法
2023年10月〜 建築物の事前調査・分析調査を、建築物石綿含有建材調査者等の有資格者が実施 石綿則
2026年1月〜 一定の工作物の事前調査を、工作物石綿事前調査者等が実施 石綿則

(出典:厚生労働省「石綿総合情報ポータルサイト」、環境省「改正大気汚染防止法について(令和2年)」/2026年7月時点)

石綿の規制は、石綿則(働く人の健康を守る=厚生労働省・労働基準監督署)と、大防法(周辺環境への飛散を防ぐ=環境省・都道府県等)の両面から重ねて課されている点にご注意ください。届出先も別で、どちらか一方を満たせば足りるという関係ではありません。

誰が調査できるのか——有資格者の要件

2023年10月1日以降に着工する建築物の解体・改修工事では、事前調査は有資格者が行う必要があります。 具体的には、次のいずれかに該当する者です(出典:厚生労働省「石綿総合情報ポータルサイト」)。

  1. 建築物石綿含有建材調査者講習の修了者。区分は、特定建築物石綿含有建材調査者/一般建築物石綿含有建材調査者/一戸建て等石綿含有建材調査者(一戸建て住宅および共同住宅の住戸内部に限る)の3種類です。
  2. 2023年9月30日以前に日本アスベスト調査診断協会に登録され、調査時点でも引き続き登録されている者

ここで学校施設の担当者に注意していただきたいのが、「一戸建て等石綿含有建材調査者」は一戸建て住宅と共同住宅の住戸内部に限られるという点です。校舎はこれに該当しないため、この区分の資格者に校舎の事前調査を任せることはできません。仕様書では、資格の区分まで指定しておくことをおすすめします。

また、分析調査(試料を採取して石綿含有率を分析する調査)についても、2023年10月1日以降は一定の要件を満たす者が行う必要があります。調査者の資格と分析者の資格は別物ですので、見積書上で「調査」と「分析」の担い手がそれぞれ要件を満たすかをご確認ください。

なお、2026年1月からは工作物についても事前調査者の要件が定められています。校地内の煙突や受水槽まわりなど、建築物と工作物の切り分けが必要になる場面もあり、この判断は個別性が高いため、所轄の労働基準監督署・自治体または専門会社にご確認ください。

レベル1〜3の区分と除去工事の関係【一覧表】

「レベル1〜3」は、石綿含有建材を発じん性(飛散のしやすさ)で3段階に整理した実務上の呼称です。 押さえておきたいのは、レベルという用語は法令上の用語ではないという点です。建設業労働災害防止協会のマニュアルで用いられた区分が実務に定着したもので、環境省・国土交通省の資料でも整理の便宜として参照されています(出典:国土交通省・環境省の関連資料)。

区分 該当する主な建材 発じん性 工事時の位置づけの目安
レベル1 吹付け石綿、石綿含有吹付けロックウール等の吹付け材 著しく高い 大防法の特定建築材料に該当。厳格な隔離等の措置と届出が必要
レベル2 石綿含有の保温材・耐火被覆材・断熱材(吹付け材を除く) 高い 大防法の特定建築材料に該当。2021年4月以降、レベル1と同様に14日前の計画届が必要
レベル3 その他の石綿含有成形板等(スレート、岩綿吸音板 等) 相対的に低い 2021年4月以降、大防法の規制対象。作業基準の遵守は必要だが、事前の届出は原則不要

ここで実務上とくに重要なのが、「規制の対象になること」と「届出が必要なこと」は別だという点です。レベル1・2の除去等は「特定粉じん排出等作業」として、作業開始の14日前までに都道府県知事等への届出が必要です。この届出義務を負うのが元請業者ではなく発注者(=自治体側)である点は、教育委員会・施設担当の方が特に見落としやすいところです。

一方で、レベル3だから規制対象外、ということはありません。2021年4月の大防法改正により、規制の対象はすべての石綿含有建材に拡大しました。レベル3は事前の届出こそ原則不要ですが、飛散防止のための作業基準の遵守や作業結果の記録・保存は求められます。「届出が要らない=何もしなくてよい」ではない、と理解しておいてください。

なお、石綿含有建材の法令上の区分や届出の要否は改正が重なっている領域です。実際の工事にあたっては、着手前に所管の都道府県・市区町村の担当窓口へ確認することをおすすめします。

制度が複数の法令にまたがり、届出の主体も期限も異なるため、庁内の役割分担を早い段階で決めておくことが、工期遅延を防ぐ実務上の鍵になります。どの届出を誰がいつ出すのかの整理からでも構いません。校舎の改修・解体前の石綿調査についてご相談することで、手戻りのない段取りを一緒に組み立てられます。

事前調査結果の報告義務(電子システム)

2022年4月1日以降に着工する工事のうち、一定規模以上のものは、事前調査の結果を電子システムで報告することが義務づけられています。 報告先は労働基準監督署(石綿則)と都道府県等(大防法)の両方ですが、「石綿事前調査結果報告システム」を使えば1回の操作で双方に報告できます(出典:環境省・厚生労働省)。

報告の対象となる工事の規模は次のとおりです(出典:環境省「石綿事前調査結果の報告について」)。

  • 建築物の解体工事:解体作業の対象となる床面積の合計が80㎡以上
  • 建築物の改造・補修工事:請負代金の合計額が100万円以上(消費税込み。材料費を含み、事前調査の費用は含まない)
  • 工作物の解体・改造・補修工事:請負代金の合計額が100万円以上

なお、同一の者が二以上の契約に分割して請け負う場合は、一の契約とみなして判断します。校舎の改修を工区ごとに分けて発注する計画がある場合は、この点を設計段階で確認しておくと安全です。

また、事前調査結果の掲示は、石綿含有建材の有無や届出対象か否かにかかわらず、すべての解体等工事で義務です。掲示は周辺住民と作業者の両方が見やすい場所に行い、大きさはJIS A3判(29.7cm×42cm)以上とされています。在校生や保護者の目に触れる学校現場では、この掲示が不安につながらないよう、事前の説明とセットで進める配慮が求められます。

調査から報告・除去工事までの流れ

アスベスト事前調査から工事完了までは、おおむね次の順序で進みます。 各ステップの所要期間は建物の規模・分析点数・自治体の運用によって変動しますので、日程は余裕をもって設計してください。

  1. 対象範囲の確定:工事の対象部分を特定します。ここが曖昧だと調査の抜けが生じます。
  2. 有資格者による書面調査:竣工図・改修履歴・過去の調査記録などを確認します(2023年10月〜、建築物は有資格者が実施)。
  3. 有資格者による目視調査:現地で建材を確認します。書面調査と目視調査は、いずれか一方では要件を満たしません。
  4. 分析調査(または「みなし」判断):含有の有無が判断できない建材は、要件を満たす者が分析します。なお、レベル2・3の建材については、分析せず石綿含有建材と「みなす」取り扱いも認められています。分析費用は試料の点数に応じて変わるため、対象建材の絞り込みがコスト管理につながります。
  5. 調査結果の記録・保存・掲示:記録を作成して3年間保存し、作業場所に備え付け、概要を掲示します。
  6. 電子システムでの報告:一定規模以上の工事は、着工前に報告します(2022年4月〜)。
  7. 除去工事の届出:レベル1・2に該当する場合、発注者が着工の14日前までに都道府県知事等へ特定粉じん排出等作業実施届出書を提出します(大防法)。あわせて元請業者が14日前までに労働基準監督署へ計画届を提出します(石綿則)。
  8. 除去工事の実施:レベルに応じた隔離・湿潤化等の措置を講じて作業します。
  9. 取り残しの確認:隔離を解く前に、資格者が石綿等の取り残しがないことを確認します(2021年4月〜)。
  10. 工事完了・記録の保管:後年度の工事に備え、調査記録を庁内で引き継げる形で保管します。

学校の場合、この工程を夏休み等の長期休業期間に収める必要があるケースが大半です。届出に14日、分析に相応の日数を要することから逆算すると、調査は工事着工の数か月前から着手する段取りが現実的です。

よくある質問(Q&A)

Q1. 2022年4月からと2023年10月から、それぞれ何が義務になったのですか。
A. 2022年4月からは「一定規模以上の工事の事前調査結果を電子システムで報告すること」、2023年10月からは「建築物の事前調査・分析調査を有資格者が行うこと」が義務になりました。この2つは混同されやすいのですが、まったく別の義務です。報告の義務化(2022年)が先、有資格者化(2023年)が後、という順序で覚えておくと整理しやすいでしょう。

Q2. 小規模な改修でも事前調査は必要ですか。
A. 必要です。事前調査そのものに規模の閾値はなく、対象部分のすべての材料について行う必要があります。 一方、電子システムでの「報告」には80㎡・100万円といった閾値があります。「調査は常に必要、報告は一定規模以上」という区別が要点です。

Q3. 2006年9月より後に建てられた校舎なら、調査は不要ですか。
A. 石綿を0.1%超含有する物の使用等は2006年9月1日から禁止されていますので、それ以降に着工した建物で石綿含有建材が使われている可能性は低くなります。ただし、事前調査の義務そのものが免除されるわけではありません。着工時期の確認も、書面調査の一部として有資格者が行うべき手続きです。増改築の履歴がある学校では、部分ごとに時期が異なる点にもご注意ください。

Q4. 過去にアスベストの実態調査を行っています。その記録は使えますか。
A. 書面調査の資料として有用ですが、それだけで事前調査に代えることはできません。過去の調査は目的・対象範囲・資格要件が現行制度と異なる場合があるためです。既存資料が充実しているほど調査は効率化できますので、発注前に庁内で図面・改修履歴・過去の調査記録を集約しておくことをおすすめします。

Q5. 届出は誰が出すのですか。自治体側の作業はありますか。
A. 法令ごとに異なります。大防法の特定粉じん排出等作業実施届出書は「発注者」が、石綿則の計画届は「元請業者」が提出します。つまり、レベル1・2の除去工事では自治体側にも届出の実務が発生します。個別の運用は自治体によって異なる場合がありますので、所轄部署へのご確認をおすすめします。

まとめ:制度を正しく押さえることが、工期と信頼を守る第一歩

学校のアスベスト事前調査で押さえるべき要点は3つです。第一に、事前調査は工事の規模を問わずすべての材料について、文書調査と目視調査の両方で行うこと。第二に、2022年4月からの「電子システムでの報告義務」と、2023年10月からの「有資格者による調査義務」を混同しないこと。第三に、石綿則と大防法の両面から規制されており、届出の主体も期限も異なることです。

(本記事の法令情報はすべて2026年7月時点。運用は改正され得るため、実施にあたっては最新の一次情報および所轄の労働基準監督署・自治体にご確認ください。)

アスベスト事前調査は、それ単体で完結する手続きではありません。調査の結果によって除去工事の範囲・工法・費用・工期が決まり、それが統廃合や改修計画全体のスケジュールを左右します。上流の調査段階から、後工程の設計・施工まで見据えて組み立てることが、手戻りと工期遅延を防ぐ有効な方法だと私たちは考えています。

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