学校の図書館・図書室改修とは?計画と工事のポイントを専門会社が解説

学校の図書館・図書室を改修したいものの、「書架や机を入れ替えるだけでよいのか」「調べ学習やICT利用まで想定すべきか」「今の部屋の広さで対応できるのか」と判断に迷う施設担当者は少なくありません。

既存の図書室には、固定書架によって見通しが悪い、閲覧席が一斉学習にしか使えない、電源や通信環境が不足している、空調の効き方に偏りがあるといった問題が見られます。内装だけを新しくしても、こうした問題が残れば利用のされ方は変わりません。

学校図書館法第3条では、学校図書館は小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校のすべてに置かなければならないとされています。学校図書館は付属的な読書スペースではなく、学校教育を支える施設として位置付けられています。

さらに文部科学省の学校図書館ガイドラインでは、落ち着いて読書できる環境に加え、調べ学習やグループ学習、情報活用、創造的な活動を行う場としての役割も示されています。改修では「きれいにすること」ではなく、自校の教育活動に必要な機能を建築としてどう実現するかを決めなければなりません。

この記事では、学校の図書館・図書室を改修する際に確認すべき空間構成、書架、音、光、ICT、設備、避難計画の論点を、設計と施工の両面から解説します。

学校の図書館・図書室に求められている役割

現在の学校図書館には、図書を保管して貸し出す機能だけでなく、読書、学習、情報収集、交流を支える複数の役割が求められています。

確認事項公表資料に示されている内容改修計画への影響
法的な位置付け学校図書館法第3条により、対象となるすべての学校に学校図書館を置くこととされている余剰室として扱うのではなく、教育課程を支える基幹的な施設として計画する
読書の場児童生徒が落ち着いて読書できる、安らぎのある環境が望ましい静かな閲覧席、居場所となる小空間、照明、音環境を一体で検討する
学習の場調べ学習や課題の発見・解決に向けた学習活動を行える環境が求められている個人閲覧だけでなく、グループ学習や資料を広げる活動に対応する
情報活用の場図書、コンピュータ、視聴覚メディア等を備えた学習・情報センターとしての計画が望ましい電源、通信、映像機器、端末保管、配線経路を建築工事と同時に計画する
閲覧席と家具小学校・中学校では、1学級相当以上の机及び椅子を配置できる面積・形状が示されている書架を置いた後の残余面積ではなく、授業利用を前提に席数と動線を検証する
居場所と交流椅子、ベンチ、畳、カーペット等を用い、自主的な学びや交流を生む工夫が有効とされている閲覧席を均一に並べず、活動や滞在方法に応じて空間を分ける

学校種によって利用方法は異なります。小学校では読み聞かせや図書委員会活動、中学校では調べ学習や自習、高等学校では資料検索や個人学習など、想定される活動を先に整理する必要があります。

「図書室をきれいにしたい」という要望だけで設計を始めると、完成後に席が足りない、授業中の声が読書利用を妨げる、端末の充電場所がないといった問題が起こります。改修前に、誰が、いつ、どのように使うのかを具体化することが出発点です。

学校図書館・図書室改修の主な工事内容

書架の更新とレイアウト変更

図書室改修の中心となるのが、書架の配置です。ただし、書架は収納量だけで選ぶものではありません。高さ、固定方法、通路、見通し、採光、空調の吹出口との関係まで確認します。

高い書架を室内中央に連続して配置すると、教職員から児童生徒の様子を確認しにくくなります。空調の気流も遮られ、場所によって暑さや寒さに差が生じることがあります。中央部には低書架や可動書架を使い、壁際に高書架をまとめる方法など、管理性と収納性のバランスを取ります。

既存書架を再利用する場合も、床や壁への固定状況を確認します。床仕上げだけを更新した結果、書架の固定が不十分になることがないよう、撤去・復旧方法を設計段階で決めておきます。

閲覧・自習・グループ学習スペースのゾーニング

読書をする場所と、会話を伴うグループ学習の場所を同じ室内に設ける場合、家具だけで曖昧に分けると音が干渉します。

静かな閲覧エリア、複数人で使う学習エリア、資料検索エリア、展示エリア、司書作業エリアを整理し、必要に応じて可動間仕切り、吸音パネル、天井吸音材、書架による緩やかな区画を組み合わせます。

壁を新設して完全に分ければ音は抑えやすくなりますが、見通しや避難動線、空調区画、防火区画に影響します。反対に、すべてを開放すると活動の音が広がります。利用方法と建築条件を照合しながら、どこまで区切るかを判断します。

ICT環境と電源・配線の整備

端末を使った調べ学習を想定する場合、机を置くだけでは対応できません。コンセント、無線通信、映像表示、端末の保管・充電、配線経路まで検討します。

床中央の机へ電源を供給する方法には、床下配線、床用配線モール、フロアコンセント、天井からの配線などがあります。既存床を撤去できるか、段差を設けられるか、将来レイアウトを変更するかによって適した方法が変わります。

安易に床面へ露出配線すると、つまずきや台車移動の支障になります。内装改修と同時に床・壁・天井を開けられる場合は、配線を隠蔽しやすく、情報機器の位置も整理できます。ICT環境全体の考え方は、学校施設のICT環境整備とは?一人一台時代の設備と進め方を解説(K012)も参照してください。

照明・日照・内装の改善

図書室では、机上の明るさだけでなく、書架面の見やすさと光の入り方を確認します。照明を一律に配置すると、書架の上部が影になったり、閲覧机に反射が生じたりすることがあります。

窓から直接日光が入る場所では、図書の劣化やまぶしさにも配慮します。ブラインド、ロールスクリーン、日射調整フィルムなどを使い、採光を確保しながら直射日光を制御します。

壁・天井・床の更新では、見た目だけでなく、吸音性、清掃性、耐久性を確認します。カーペットは音を抑えやすい一方、飲み物や汚れへの対応、家具移動、清掃方法を事前に整理する必要があります。

改修計画で確認すべき課題と解決策

検討項目課題・発生するリスク解決の方向
書架の配置と固定収納量を優先して高書架を並べると、見通しと避難動線が悪化する。床仕上げ更新後に書架を置き直すだけでは、固定強度を確保できない場合がある壁面固定書架、低書架、可動書架を使い分け、アンカーの下地と固定方法を図面に明記する
静かな読書とグループ学習同じ空間で会話を伴う授業を行うと、個人読書や自習が成立しにくくなる。家具だけの区分では音を抑えられないことがある吸音天井、壁面吸音材、可動間仕切り、書架による緩衝帯を組み合わせ、活動音の大きさでゾーニングする
電源と通信完成後に端末利用を追加すると、床上に配線モールが増え、つまずきや家具配置の制約が生じる床下配線、フロアコンセント、壁面配線、天井配線から、将来の家具変更を含めて方式を選ぶ
空調と書架書架が吹出口や吸込口を遮り、室内の一部だけ空調が効かなくなる。壁で学習室を新設すると既存空調の範囲から外れることがある書架配置と気流を同時に検討し、必要に応じて吹出口の移設、空調系統の分割、換気経路の見直しを行う
採光と図書の保護窓際の図書に直射日光が当たり続けると劣化しやすく、閲覧机ではまぶしさや画面反射が発生する書架と窓の位置関係を見直し、ブラインド、ロールスクリーン、日射調整フィルムを使い分ける
壁の撤去・開口拡張隣接室と一体化するために壁を撤去すると、構造耐力、防火区画、避難経路、空調・照明系統に影響する。内装工事だけの想定では工事範囲が収まらない既存図面と現地調査で壁の種類を確認し、構造、法規、設備を含む改修範囲を先に確定する
司書・管理作業スペース閲覧席だけを優先すると、返却図書の整理、修理、分類、教材準備の場所が不足し、カウンター周辺に資料が滞留する受付カウンター、作業台、返却資料の一時置場、収納を運営業務の流れに沿って配置する

学校図書館・図書室改修の実務の勘所

書架を決める前に蔵書と運営方法を整理する

図書室改修では、先に家具カタログから書架を選びたくなります。しかし、蔵書の分類、廃棄・更新の方針、展示方法、返却後の整理作業が決まっていなければ、必要な収納量もカウンターの形も決まりません。

既存図書をすべて同じ場所へ戻す前提では、閲覧席や学習スペースを広げにくくなります。保存する資料、日常的に利用する資料、教室や廊下へ分散する資料を整理し、図書の運用と建築計画を同時に検討します。

壁を動かすと内装工事だけでは終わらない

隣接する余裕教室と図書室を一体化すれば、広い学習空間をつくれる可能性があります。ただし、壁の撤去には構造、防火、避難、空調、照明、放送、感知器などが関係します。

既存壁が耐力壁であれば簡単には撤去できません。非構造壁であっても、防火区画を構成している場合や、天井裏で設備配管が通っている場合があります。現地で見えている壁面だけでは判断せず、既存図面、天井裏、床下を確認してから改修範囲を決めます。

家具配置と設備設計を別々に進めない

家具レイアウトを後から決めると、照明が書架の真上に入る、コンセントが家具の裏に隠れる、空調の吹出口を高書架が塞ぐといった不整合が起こります。

書架、閲覧机、カウンターの配置を基本設計の段階で仮決めし、その配置に合わせて照明、電源、通信、空調、防災設備を重ねます。将来のレイアウト変更を想定する場合は、可動家具を採用するだけでなく、設備側にも変更の余地を持たせます。

工事中の図書保管と粉じん対策を計画する

図書室工事では、大量の図書をどこへ移すかが施工計画に直結します。室内の一部へ寄せながら工事を進める方法では、作業範囲が狭くなり、粉じんが図書へ付着するおそれがあります。

仮保管場所、運搬経路、養生方法、再配架の担当範囲を着工前に決めます。床や天井を撤去する工事では粉じんが広がりやすいため、図書を残したままの施工が可能かを慎重に判断します。

改修範囲を決めるための判断基準

図書館・図書室の改修は、内装の劣化だけでなく、現在の利用上の問題から工事範囲を決めます。

  • 読書席と授業利用のスペースが干渉していないか
  • 書架の間から室内全体を見渡せるか
  • 端末を使う場所に安全な電源経路があるか
  • 書架によって照明や空調が遮られていないか
  • 司書や図書委員が作業する場所を確保できているか
  • 隣接する教室や廊下と連携できる配置になっているか
  • 図書に直射日光が当たり続けていないか
  • 避難経路や出入口付近に書架・家具が張り出していないか

家具の入れ替えで解決できる問題と、壁・床・天井・設備まで工事しなければ解決できない問題を分けることが大切です。

床、壁、天井を更新する場合は、図書室単独で工事するより、校舎全体の内装改修やICT整備と合わせた方が配線や設備工事を整理しやすいことがあります。内装改修全体の対象と考え方は、学校施設の内装リフォームとは?対象・効果・進め方を専門会社が解説(K006)で解説しています。

図書室をラーニングコモンズ化する場合の違い

図書室にグループ学習や発表、ICT活用の機能を加えると、ラーニングコモンズに近い空間になります。ただし、名称を変えたり可動机を置いたりするだけでは機能しません。

会話を伴う活動と静かな読書をどう両立するか、授業時間外に誰が管理するか、家具を動かした後の避難経路をどう確保するかまで決める必要があります。

図書室の読書機能を残しながら学び合いの場をつくる場合は、ラーニングコモンズの設計ポイント|学び合いを生む空間(K266)も参考にしてください。

学校図書館・図書室改修を専門会社へ相談すべき理由

図書室の改修には、書架や家具の選定だけでなく、構造、内装、照明、空調、電気、通信、防災設備、避難計画が関係します。

家具業者だけに相談すると、収納や製品選定は進められても、壁の撤去や設備移設まで含む建築的な判断が残ります。一方、内装だけを先に設計すると、完成後に書架の固定下地や電源位置が合わないことがあります。

そのため、計画段階から設計者、施工者、学校側、図書館運営担当者が利用方法を共有し、建築と家具と設備を同じ図面上で調整する必要があります。

学校改修全体の調査・計画・設計・施工の流れは、学校改修の進め方ガイド(K296)を参照してください。施工会社を選ぶ際の確認事項は、失敗しない施工会社の選び方(K297)で整理しています。

株式会社光建舎にご相談ください

光建舎は教育施設の設計・改修を専門とし、現況調査から設計・施工管理までを一貫して対応します。図書室の書架・家具だけでなく、壁の撤去、音環境、照明、空調、電源、ICT、防災設備まで含めて、自校に必要な改修範囲を整理します。全国対応・現地調査とオンライン協議の併用で、構想段階からのご相談を承ります。

関連記事

参考・出典

  • 文部科学省「1.学校図書館の位置付けと機能・役割」
    https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/dokusho/meeting/08092920/1282744.htm
  • 文部科学省「学校図書館ガイドライン」
    https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/dokusho/link/1380599.htm
  • 文部科学省「小学校施設整備指針」
    https://www.mext.go.jp/content/20220624-mxt_kouhou01-000023406_02.pdf
  • 文部科学省「中学校施設整備指針」
    https://www.mext.go.jp/content/20220624-mxt_kouhou01-000023406_03.pdf
  • 文部科学省「高等学校施設整備指針」
    https://www.mext.go.jp/content/20220624-mxt_kouhou01-000023406_04.pdf
  • 文部科学省「第2章 長寿命化改修各論 ~機能向上編~(3)」
    https://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2014/01/15/1343018_08.pdf

※記載の制度や法令は公表時点のものです。最新情報は各所管の公表資料をご確認ください。