目次
背景・判断の基準・手続きと施設の扱い
学校統廃合とは、複数の学校を統合し、使わなくなった学校を廃止することです。
「統合」と「廃止」を合わせた言葉です。2つの小学校を1つにまとめる場合、片方に統合して片方を廃止する、あるいは両方を廃止して新しい学校を設置する。どちらの形でも統廃合と呼ばれます。
市町村立の小中学校の場合、廃止には市町村の条例の改正が必要です。あわせて学校教育法施行令第25条により、都道府県の教育委員会への届出が求められます。
判断の基準となる文部科学省の手引は、令和8年8月5日に10年ぶりに改訂されました。広域化・総合化・現代化の3つの観点が加わり、これから検討に入る団体は改訂版を前提に体制を組む必要があります。
この記事では、①言葉の意味、②なぜ行われるのか、③判断の基準と改訂された手引、④手続きの流れ、⑤施設はどうなるのか、の5点を整理します。
この記事の要点
- 学校統廃合とは複数の学校を統合し、使わなくなった学校を廃止すること
- 市町村立小中学校の廃止には市町村の条例の改正が必要
- 学校教育法施行令第25条により都道府県教育委員会への届出が必要
- 判断の基準は学校教育法施行規則第41条の標準学級数(小中学校12学級以上18学級以下)
- 手引は令和8年8月5日に改訂され、広域化・総合化・現代化の3観点が加わった
学校統廃合とはどういう意味か?
統合と廃止を合わせた言葉です。
| 言葉 | 意味 |
|---|---|
| 統合 | 複数の学校を1つにまとめること |
| 廃止 | 学校を設置者が廃止すること |
| 統廃合 | 統合と廃止を合わせて指す言い方 |
| 再編 | 統廃合に加え、通学区域の見直しや新設も含む広い言い方 |
| 適正配置 | 学校の規模と位置を望ましい状態にすること |
制度上の用語ではない
法令に「統廃合」という言葉はありません。学校教育法は「設置」と「廃止」を定めており、統合は廃止と設置の組合せとして行われます。
したがって統廃合は実務と報道で使われる言い方です。
2つのパターンがある
A校とB校を統合する場合、やり方は2つあります。
| パターン | 内容 |
|---|---|
| 吸収型 | A校にB校を統合し、B校を廃止する |
| 新設型 | A校とB校を廃止し、新たにC校を設置する |
吸収型は校舎をそのまま使えるため費用が抑えられます。新設型は校名や校歌を新しくするため、地域の合意が得やすい場合があります。
小中一貫校への移行を伴う場合
統廃合に合わせて、小学校と中学校を一体化する形もあります。義務教育学校として設置する場合と、小中一貫型小学校・中学校として併設する場合があります。
義務教育学校の標準学級数は18学級以上27学級以下です。小中学校の12学級以上18学級以下とは基準が異なります。
「統廃合」と「廃校」の違い
統廃合は手続きや政策を指します。廃校はその結果として使われなくなった学校の建物や敷地を指すことが多い言い方です。
学校以外にも使われる
病院、支所、公民館といった公共施設の統合にも使われます。公共施設等総合管理計画のなかで、学校と他の施設を合わせて検討する団体もあります。
なぜ学校統廃合が行われるのか?
児童生徒数の減少です。
| 要因 | 内容 |
|---|---|
| 少子化 | 児童生徒数の減少により学級数が維持できない |
| 教育条件 | クラス替えができない、部活動が成立しないなど |
| 施設の老朽化 | 複数校の改築を同時に負担できない |
| 教職員の配置 | 学級数に応じた教職員定数の制約 |
| 財政 | 維持管理費と改修費の負担 |
教育条件が主たる理由とされる
文部科学省の手引は、学校規模適正化の検討は児童生徒の教育条件をより良くする目的で行うべきものとしています。
したがって財政の都合が前面に出る説明は、手引の考え方と合いません。議会や保護者への説明では、この点が論点になります。
小規模校の課題
手引では、小学校の学級数ごとに課題の整理が示されています。1から5学級は複式学級が存在する規模で教育上の課題が極めて大きい、6学級はクラス替えができない規模、7から8学級は全学年ではクラス替えできない規模という区分です。
複式学級とは、2つの学年を1つの学級に編制するものです。
施設の老朽化が引き金になる
児童生徒数が減っていても、校舎が使える間は統合の議論が進まないことがあります。改築の時期が来て、複数校を同時に建て替えられないと分かった段階で検討が始まる例が多くなります。
この場合、統合の判断と施設整備の判断が同時に動きます。財源の組み立ては学校統廃合の財源と起債で扱っています。
小規模校を残す選択もある
手引は統合を一律に求めるものではありません。小規模校を残しながら教育条件を改善する方策も示されています。
学校間の連携、ICTの活用、教職員の配置の工夫。地域の実情によって選択は変わります。
地域の存続との関係
学校がなくなると地域の人口流出が進むという懸念が示されます。一方、教育条件を優先すべきという意見もあります。
この対立は統廃合の議論で必ず出ます。どちらの立場にも根拠があるため、結論は地域ごとの判断になります。利点と課題の整理は学校統廃合のメリット・デメリットで扱っています。
判断の基準は何か?
標準学級数と通学距離です。
| 基準 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 小中学校の標準学級数 | 12学級以上18学級以下 | 学校教育法施行規則第41条 |
| 義務教育学校の標準学級数 | 18学級以上27学級以下 | 同規則 |
| 小学校の通学距離 | おおむね4キロメートル以内 | 文部科学省の手引 |
| 中学校の通学距離 | おおむね6キロメートル以内 | 同手引 |
| 通学時間 | おおむね1時間以内を一応の目安 | 同手引 |
標準は弾力的なもの
学校教育法施行規則第41条には「ただし、地域の実態その他により特別の事情のあるときは、この限りでない」という規定があります。手引も、学校規模の標準は弾力的なものと説明しています。
したがって12学級を下回れば統合しなければならない、という基準ではありません。
通学時間は市町村が判断する
手引は通学時間をおおむね1時間以内を一応の目安とした上で、各市町村において判断するとしています。
スクールバスを導入すれば距離の制約は緩みますが、乗車時間と運行費用が新たな論点になります。
手引は令和8年8月5日に改訂された
文部科学省は令和8年8月5日、8文科初第1125号「公立小学校・中学校の適正規模・適正配置等に関する手引の改訂等について(通知)」により、平成27年1月27日版の手引を改訂しました。10年ぶりの改訂です。
平成27年版から10年が経過し、市町村が検討するにあたっての状況が大きく変化していることを踏まえた改訂とされています。基本的な考え方の妥当性は維持されています。
| 観点 | 内容 |
|---|---|
| 広域化 | 各市町村がそれぞれの域内だけを念頭に検討するのではなく、周辺の市町村を巻き込んだ圏域で検討する観点 |
| 総合化 | 学校を設置する教育委員会の視点で検討するのではなく、首長部局も含めた各市町村全体でその地域の未来を考える視点で検討する観点 |
| 現代化 | 学習指導要領の改訂、GIGAスクール構想の推進等学校教育の状況が変化していることを踏まえ、それに対応した学校教育となる記載に改める観点 |
数値の基準は変わっていない
標準学級数、通学距離、通学時間の基準は改訂版でも維持されています。変わったのは検討の枠組みです。
広域化の意味
これまで統廃合は市町村の域内で検討されてきました。改訂版は周辺市町村を巻き込んだ圏域での検討を求めています。
つまり隣接する市町村の学校との統合も検討の範囲に入ります。事務の共同処理や組合立学校の設置が論点になり得ます。協議には時間がかかるため、検討の初期段階で打診してください。
総合化の意味
教育委員会だけでなく、首長部局を含めた市町村全体で検討することが求められています。
学校の配置は、まちづくり、公共交通、公共施設の全体計画と結びつきます。したがって教育委員会の所管を超えた検討体制が必要になります。
適正規模・適正配置の考え方は学校の適正規模・適正配置とはで扱っています。
手続きの流れはどうなるのか?
条例の改正が中心です。
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 1 | 児童生徒数の将来推計と現状の整理 |
| 2 | 基本方針・基本計画の策定 |
| 3 | 保護者・地域への説明と協議 |
| 4 | 統合の対象校と時期の決定 |
| 5 | 学校設置条例の改正(廃止・設置) |
| 6 | 都道府県教育委員会への届出 |
| 7 | 校舎の整備、通学手段の確保 |
| 8 | 統合の実施 |
条例の改正が必要
市町村立の小中学校は条例で設置されています。したがって廃止には条例の改正が必要です。
都道府県の規則では、廃止の届出に「廃止に関する当該地方公共団体の条例の写し」の添付を求める例があります。つまり条例が先に成立している必要があります。
都道府県教育委員会への届出
学校教育法施行令第25条「市町村立小中学校等の設置廃止等についての届出」は、市町村の教育委員会または公立大学法人の理事長が、設置する小学校、中学校または義務教育学校について一定の事由があるとき、都道府県の教育委員会に届け出なければならないと定めています。
届出の事由は、設置または廃止しようとするとき、新たに設置者となるまたはやめようとするとき、名称または位置を変更しようとするとき、分校を設置または廃止しようとするとき、二部授業を行おうとするときです。
認可ではなく届出
市町村立の小中学校については届出です。学校教育法第4条の認可が必要になるのは、私立学校など別の区分です。
ただし都道府県の規則で手続きや添付書類が定められているため、早めに照会してください。
議会の議決が必要
条例の改正は議会の議決を経ます。したがって議会の日程が統合の時期を左右します。
議案の提出時期から逆算して、説明と協議の期間を確保してください。
説明と協議に時間がかかる
実務上、最も時間がかかるのは保護者・地域への説明と協議です。数年にわたる例が珍しくありません。
進め方の全体像は学校統廃合の進め方で扱っています。
施設はどうなるのか?
残す校舎の整備と、使わなくなる校舎の扱いが分かれます。
| 対象 | 検討事項 |
|---|---|
| 統合後に使う校舎 | 児童生徒数の増加に対応した改修、普通教室の確保 |
| 使わなくなる校舎 | 他用途への転用、貸付、売却、解体 |
| 跡地 | 売却、公共用途への転用、暫定利用 |
| 通学 | スクールバス、通学路の安全確保 |
統合後の校舎は手狭になる
2校を1校にまとめると、普通教室が足りなくなることがあります。特別教室の普通教室への転用、増築、仮設校舎の設置といった対応が必要です。
転用には建築基準法上の確認が必要になる場合があります。設計の段階で確認してください。
使わなくなる校舎をどうするか
転用、貸付、売却、解体の4択です。どれも時間と費用がかかります。
文部科学省の廃校施設活用状況実態調査(令和6年5月1日現在)では、累計8,850校のうち現存7,612校、活用5,661校(74.4パーセント)、未活用1,951校(25.6パーセント)です。令和3年5月1日現在の未活用理由では、老朽化が46パーセント、要望がないが42パーセント、財源が19パーセントでした。
つまり4分の1は使われないまま残っています。
国庫補助を受けた施設は処分の制限がある
国庫補助を受けて整備した施設には、処分制限期間が設定されます。財産処分手続ハンドブック(令和7年3月)では、処分制限期間はRC造47年、木造22年とされています。
完了後10年以上経過し無償で処分する場合は報告のみで足りますが、有償の場合は国庫納付が原則です。ただし学校施設整備費の基金に積み立てる場合は不要とされています。
通学手段の確保が費用になる
統合により通学距離が伸びると、スクールバスの導入が必要になります。車両の購入または借上げ、運行の委託、乗降場所の整備。
これらは統合後に毎年発生する費用です。初期費用だけでなく運行費も見積もってください。
よくある質問
Q. 学校統廃合とはどういう意味ですか。
A. 複数の学校を統合し、使わなくなった学校を廃止することです。「統合」と「廃止」を合わせた言葉で、法令上の用語ではありません。
Q. 何学級を下回ると統合になりますか。
A. 一律の基準はありません。学校教育法施行規則第41条は小中学校12学級以上18学級以下を標準としていますが、「特別の事情のあるときは、この限りでない」とされ、手引も弾力的なものと説明しています。
Q. 通学距離の基準はありますか。
A. 文部科学省の手引で、小学校はおおむね4キロメートル以内、中学校はおおむね6キロメートル以内が示されています。通学時間はおおむね1時間以内を一応の目安とし、各市町村が判断するとされています。
Q. 廃止に議会の議決は必要ですか。
A. 必要です。市町村立の小中学校は条例で設置されているため、廃止には条例の改正が必要で、議会の議決を経ます。
Q. 都道府県の認可が必要ですか。
A. 市町村立の小中学校については届出です。学校教育法施行令第25条により都道府県の教育委員会に届け出ます。ただし都道府県の規則で添付書類が定められているため、早めに照会してください。
Q. 手引はいつ改訂されましたか。
A. 令和8年8月5日です。8文科初第1125号により平成27年1月27日版が10年ぶりに改訂され、広域化・総合化・現代化の3つの観点が加わりました。標準学級数や通学距離の数値は維持されています。
まとめ
学校統廃合とは、複数の学校を統合し、使わなくなった学校を廃止することです。法令上の用語ではなく、学校教育法が定める「設置」と「廃止」の組合せとして行われます。やり方には、片方の校舎に統合する吸収型と、両方を廃止して新たに設置する新設型があります。
行われる理由は児童生徒数の減少です。ただし文部科学省の手引は、学校規模適正化の検討は児童生徒の教育条件をより良くする目的で行うべきものとしており、財政の都合を前面に出す説明は手引の考え方と合いません。
判断の基準は、学校教育法施行規則第41条の標準学級数(小中学校12学級以上18学級以下、義務教育学校18学級以上27学級以下)と、手引が示す通学距離(小学校おおむね4キロメートル以内、中学校おおむね6キロメートル以内)です。いずれも弾力的なもので、一律の基準ではありません。
手引は令和8年8月5日に10年ぶりに改訂されました。広域化(周辺市町村を巻き込んだ圏域での検討)、総合化(首長部局も含めた市町村全体での検討)、現代化(学習指導要領の改訂やGIGAスクール構想への対応)の3つの観点が加わっています。数値の基準は維持されており、変わったのは検討の枠組みです。広域化は周辺市町村との協議に時間がかかるため、検討の初期段階で打診してください。
手続きは条例の改正が中心です。市町村立の小中学校は条例で設置されているため廃止には条例の改正が必要で、議会の議決を経ます。あわせて学校教育法施行令第25条により都道府県の教育委員会に届け出ます。実務上は保護者・地域への説明と協議に最も時間がかかり、数年にわたる例が珍しくありません。
施設面では、統合後に使う校舎の改修と、使わなくなる校舎の扱いが分かれます。廃校施設活用状況実態調査では現存7,612校のうち1,951校が未活用で、4分の1は使われないまま残っています。統合の方針を決める段階で、残す施設と手放す施設を併せて整理してください。
参考・出典
- 文部科学省「公立小学校・中学校の適正規模・適正配置等に関する手引の改訂等について(通知)」(8文科初第1125号、令和8年8月5日) https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tekisei/1413885_00007.htm
- 文部科学省「公立小学校・中学校の適正規模・適正配置等に関する手引~少子化に対応した活力ある学校づくりに向けて~」(平成27年1月27日) https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2015/07/24/1354768_1.pdf
- e-Gov法令検索「学校教育法」 https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000026
- e-Gov法令検索「学校教育法施行令」 https://laws.e-gov.go.jp/law/328CO0000000340
- e-Gov法令検索「学校教育法施行規則」 https://laws.e-gov.go.jp/law/322M40000080011
- 文部科学省「廃校施設等活用状況実態調査」 https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyosei/1296809.htm
- 文部科学省「財産処分手続ハンドブック」 https://www.mext.go.jp/a_menu/shisetu/shobun/1289170.htm
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