オープン化と用途転用でつまずく2つの区画
校舎の改修で、設計の自由度を一番縛るのが防火区画です。
廊下と教室の間の壁を取り払ってオープンスペースにしたい。階段まわりを吹抜けにして明るくしたい。空き教室を地域開放施設に転用したい。
こうした計画は、防火区画の規定に直接ぶつかります。
この記事では、学校の改修で押さえるべき防火区画を整理します。
目次
防火区画は4種類
防火区画は、火災の拡大を防ぐために建築物内部を区切る区画です。建築基準法施行令第112条に定められています。
| 種類 | 条項 | 何を区画するか |
|---|---|---|
| 面積区画 | 第1項〜第6項 | 一定面積ごとに水平方向を区切る |
| 高層区画 | 第7項〜第10項 | 11階以上の部分を区切る |
| 竪穴区画 | 第11項〜第15項 | 階段・吹抜け・EVシャフト等の縦方向を区切る |
| 異種用途区画 | 第18項 | 異なる用途の部分どうしを区切る |
種類によって区画方法も緩和条件も異なります。
なお竪穴区画という言葉は通称で、建築基準法の本文には出てきません。
学校の改修で問題になりやすいのは、竪穴区画と異種用途区画です。
竪穴区画とオープン化
竪穴区画は、次の部分に対して炎と煙を遮る区画をつくるものです。
- 屋内階段
- 屋外階段
- 昇降機(エレベーター等)の昇降路
- 吹抜け
- ダクトスペース
主要構造部が準耐火構造で、地階または3階以上に居室のある建築物に適用されます。
注意すべきは、屋外階段にも竪穴区画が必要という点です。屋外階段に接する壁と開口部も防火区画の対象になります。
改修で起きること
学校でよくある計画と、竪穴区画の関係を整理します。
| 計画 | 竪穴区画への影響 |
|---|---|
| 階段室の壁を撤去してオープンにする | 区画が成立しなくなる。防火設備で区画する必要がある |
| 教室と廊下の間に吹抜けを設ける | 新たな竪穴が生じる。区画が必要になる |
| ラーニングコモンズとして階段まわりを開放する | 同上 |
| エレベーターを新設する | 昇降路の区画が必要 |
| 空調ダクトを新設して複数階を貫通させる | ダクトスペースの区画と防火ダンパーが必要 |
近年の学校建築では、階段まわりを開放的にして交流の場にする計画が増えています。ただし竪穴区画の要求を満たす必要があり、防火シャッターや防火戸の設置が前提になることがあります。
竪穴区画には緩和規定もあります。避難階から直上・直下に通じる吹抜け部分に限り、仕上げおよび下地を不燃材料にすることで免除されるとされています。
学校は内装制限の対象から除外されている部分がありますが、この緩和を使う場合は不燃材料が必要です。木質化を計画している場合、両立するかを確認してください。内装制限の考え方は学校の内装制限(K209)で解説しています。
異種用途区画と用途転用
異種用途区画は、一つの建物内に異なる用途の部分が存在し、それぞれ管理者や利用者が異なる場合に、用途に応じて区画するものです。
学校で該当するのは次のような計画です。
- 校舎の一部を地域開放施設にする
- 空き教室を放課後児童クラブに転用する
- 校舎の一部を福祉施設や事務所に貸す
- 廃校を複合施設に転用する
用途変更を伴う改修では、この区画の要否が設計の前提になります。用途変更の手続き自体は用途変更の確認申請は200㎡から(K204)をご覧ください。
異種用途区画では、面積区画や竪穴区画で必要とされるスパンドレルや50センチメートルの袖壁は不要とされています。
区画に必要な性能と設備
区画に用いる床・壁と開口部には、一定の性能が求められます。
面積区画では、床・壁は1時間準耐火構造、開口部は特定防火設備とされています。
区画に設ける防火設備の閉鎖機構は、区画の種類によって異なります。
| 区画 | 閉鎖機構 |
|---|---|
| 竪穴区画・異種用途区画 | 煙感知器連動 |
| 面積区画 | 熱感知器または煙感知器連動 |
閉鎖した場合に防火上支障のあるすき間が生じないことも求められます。
改修で防火シャッターや防火戸を設ける場合、感知器の種別と連動の仕様を確認してください。既存の自動火災報知設備との連動も設計項目になります。消防設備との関係は学校と消防法(K208)で整理しています。
区画貫通は改修で必ず出る
設備改修で最も頻繁に問題になるのがここです。
防火区画を配管やダクトが貫通する場合、次の措置が必要です。
- 配管の貫通部は、すき間を不燃材料で埋める
- ダクトの貫通部には防火ダンパーを設置する
空調更新、給排水更新、Wi-Fi配線、電気設備の更新。これらはすべて区画を貫通します。
既存校舎では、過去の工事で貫通部の措置が不十分なまま残っていることがあります。改修の際に現況を確認し、是正を含めて計画してください。
なお防火ダンパーの煙感知器は、間仕切壁等で区画された場所で、当該ダンパーに係る風道の換気口や空気吹き出し口等がある場合の扱いが定められています。詳細は所管消防と協議が必要です。
面積区画の緩和
学校の大規模な改修では、面積区画も検討対象になります。
階段やエレベーター、避難経路で、1時間耐火基準に適合する準耐火構造の床または壁、特定防火設備で区画された場所については、面積区画および高層階区画が免除されるとされています(施行令第112条第1項第二号)。
つまり、竪穴区画をきちんと設けることで、面積区画の負担が減る場合があります。区画計画は個別に検討せず、全体で組み立ててください。
改修で確認する順序
- 建物の主要構造部(耐火構造か準耐火構造か)を確認する
- 階数と各階の用途、居室の位置を整理する
- 既存の防火区画の位置を図面と現地で確認する
- 計画がどの区画に影響するかを特定する
- 必要な防火設備の仕様と閉鎖機構を決める
- 設備更新に伴う区画貫通部の措置を計画に含める
- 既存の貫通部で措置が不十分な箇所を是正対象に含める
3が重要です。既存図面に区画が記載されていても、過去の改修で開口が設けられている、防火戸が撤去されているといったケースがあります。現地確認が必要です。
調査の内容と費用は現況調査の費用(K901)で解説しています。
よくある質問
Q. 防火区画には何種類ありますか。
A. 面積区画、高層区画、竪穴区画、異種用途区画の4種類です。いずれも建築基準法施行令第112条に定められています。
Q. 階段まわりをオープンにできますか。
A. 竪穴区画の対象になります。区画を成立させる方法(防火設備の設置等)を検討する必要があります。避難階から直上・直下に通じる吹抜け部分については、仕上げおよび下地を不燃材料にすることで免除される緩和があります。
Q. 屋外階段も区画が必要ですか。
A. 必要です。屋外階段に接する壁・開口部も防火区画の対象になります。
Q. 空き教室を地域開放施設にする場合は何が必要ですか。
A. 異種用途区画の要否を確認してください。一つの建物内に異なる用途の部分が存在し、管理者や利用者が異なる場合に区画が求められます。
Q. 異種用途区画にもスパンドレルは必要ですか。
A. 異種用途区画では、面積区画や竪穴区画で必要なスパンドレルや50センチメートルの袖壁は不要とされています。
Q. 設備更新で区画を貫通する場合はどうしますか。
A. 配管貫通部はすき間を不燃材料で埋め、ダクト貫通部には防火ダンパーを設置します。既存の貫通部で措置が不十分な箇所があれば、是正を計画に含めてください。
まとめ
- 防火区画は面積区画・高層区画・竪穴区画・異種用途区画の4種類(施行令第112条)
- 学校の改修で問題になりやすいのは竪穴区画と異種用途区画
- 竪穴区画は屋内階段・屋外階段・昇降路・吹抜け・ダクトスペースが対象。屋外階段も含む
- 階段まわりのオープン化や吹抜けの新設は竪穴区画に直接影響する
- 避難階から直上・直下に通じる吹抜けは、仕上げ・下地を不燃材料にすることで免除される緩和がある
- 用途転用では異種用途区画の要否を確認する。スパンドレルや袖壁は不要
- 閉鎖機構は竪穴・異種用途が煙感知器連動、面積区画は熱感知器または煙感知器連動
- 設備更新は必ず区画を貫通する。配管はすき間の不燃詰め、ダクトは防火ダンパー
- 既存校舎では過去の工事で貫通部の措置が不十分なまま残っていることがある
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関連記事
- 学校の内装制限(K209)
- 用途変更の確認申請は200㎡から(K204)
- 学校と消防法(K208)
- 現況調査の費用(K901)
- 改修の進め方(K296)
参考・出典
- 建築基準法施行令第112条(面積区画 第1項〜第6項、高層区画 第7項〜第10項、竪穴区画 第11項〜第15項、異種用途区画 第18項)
- 一般財団法人 民間確認検査機構「防火区画規制について(建築基準法施行令第112条)」(区画の4分類と各項の対応、面積区画の床・壁1時間準耐火構造・開口部特定防火設備) https://www.mkj.or.jp/wp/wp-content/uploads/2024/02/1c6f52c3b7e50390c3b9d3a8739b741f.pdf
- ビューローベリタスジャパン株式会社「防火区画の4つの種類とは?区画方法や注意点」(竪穴区画の適用範囲=主要構造部が準耐火構造で地階または3階以上に居室のある建築物、異種用途区画の考え方、施行令第112条第1項第二号による面積区画・高層階区画の免除) https://www.buil-repo.com/column/220804.html
- 確認申請ナビ「竪穴区画とは|区画が必要な建築物・構造・緩和基準を総まとめ」(竪穴区画の対象=屋内階段・屋外階段・昇降路・吹抜け・ダクトスペース、屋外階段も対象である点) https://kakunin-shinsei.com/tateanakukaku-teigi/
- 久留米市消防本部「第3 防火区画」(防火ダンパーの閉鎖方式、竪穴区画・異種用途区画は煙感知器連動、面積区画は熱感知器または煙感知器連動、閉鎖時にすき間が生じないこと) http://www.fire-city.kurume.fukuoka.jp/media/001/202003/第2章 第2節 第3 防火区画.pdf
- 株式会社ネグロス電工「『防火区画』とは?概要や区画の種類について解説」(異種用途区画ではスパンドレル・50cmの袖壁が不要、竪穴区画の不燃材料による免除) https://toughlock.negurosu.co.jp/column/column-147/
※記載の制度は公表時点のものです。区画の要否や緩和の適用は建物の構造・規模・用途により異なります。設計に当たっては必ず建築士および所管の特定行政庁・消防にご確認ください。
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