原則は後払いです。
補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律第15条は、補助事業等の完了に係る成果の報告を受けた場合に、調査して交付すべき補助金等の額を確定し、通知しなければならないと定めています。つまり工事が終わって報告し、確定してから額が決まります。
したがって工事代金は先に支払うことになります。補助が入るまでの間、その分の資金を自前で用意する必要があります。
公立学校であれば地方債や基金で埋める方法があります。私立学校では、この立替えが経営の負担になります。
この記事では、①制度の流れ、②なぜ後払いになるのか、③立替えの期間、④資金の手当て、⑤注意点、の5点を整理します。
目次
この記事の要点
- 補助金適正化法第6条により、申請を審査して交付すべきものと認めたときに交付の決定が行われる
- 同法第14条により、補助事業等が完了したときは実績報告書を提出する
- 同法第15条により、報告を受けた後に調査し、交付すべき補助金等の額を確定して通知する
- したがって原則は後払いで、工事代金の支払いが先行する
- 交付要綱等で概算払が認められる場合があるため、資金計画を立てる前に所管部署に確認する
制度の流れはどうなっているのか?
申請、決定、工事、報告、確定、支払いの順です。
| 段階 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 交付の申請 | 設置者が申請する | 補助金適正化法 |
| 交付の決定 | 審査して交付すべきものと認めたときに決定 | 同法第6条 |
| 工事の実施 | 入札、契約、施工 | ー |
| 実績報告 | 完了したときに実績報告書を提出 | 同法第14条 |
| 額の確定 | 報告を調査し、額を確定して通知 | 同法第15条 |
| 支払い | 確定した額が支払われる | ー |
交付の決定があっても、その時点で金額が確定するわけではありません。決定は「この事業に補助を出す」という判断で、最終の額は完了後に確定します。
交付決定は支払いの約束ではない
交付の決定を受けると、補助が確定したと受け取られがちです。しかし決定の内容と条件に適合しているかは、完了後に調査されます。
同法第17条は、補助事業者等が交付の決定の内容または条件に違反したときは、交付の決定の全部または一部を取り消すことができると定めています。決定を受けた後も、内容と条件を守る必要があります。
実績報告は完了したときに行う
同法第14条は、補助事業等が完了したときは、補助事業等の成果を記載した実績報告書に定める書類を添えて報告しなければならないと定めています。
報告に必要な書類は、工事中に揃えておく必要があります。完了後に集め直すと手間が増え、報告が遅れ、支払いも遅れます。
額の確定で減ることがある
同法第15条の調査で、報告の内容が決定の内容および条件に適合しないと判断された部分は、確定額から外れます。
想定していた額より少なくなる場合があります。その差は設置者の負担になります。
なぜ後払いになるのか?
成果を確認してから額を決める仕組みだからです。
補助は、申請した内容の事業が実際に行われたことを前提に交付されます。工事が計画どおりに行われたか、対象となる工事が実施されたか、数量が合っているか。これを確認するのが実績報告と額の確定です。
| 確認されること | 内容 |
|---|---|
| 事業の内容 | 申請した工事が実施されたか |
| 数量 | 面積、延長、数量が申請と合っているか |
| 対象の範囲 | 対象外の工事が混ざっていないか |
| 契約の手続き | 入札と契約が適正に行われたか |
| 支払いの事実 | 工事代金が支払われているか |
支払いの事実が確認の対象になるため、構造的に後払いになります。
変更があれば手続きが必要
工事中に内容が変わることがあります。劣化が想定より進んでいた、アスベストが見つかった、数量が増えた。
こうした変更があった場合、交付の決定の内容と異なることになります。変更の手続きが必要かどうかを、その都度所管部署に確認してください。無断で変更すると、額の確定で外されます。
概算払が認められる場合がある
交付要綱等で、完了前に一部を支払う概算払が認められる場合があります。制度と事業の区分によって扱いが異なります。
資金計画を立てる前に、概算払の扱いを所管部署に確認してください。これがあるかどうかで、必要な立替えの額が変わります。
立替えの期間はどのくらいか?
工事の支払いから確定までです。
| 時点 | 内容 |
|---|---|
| 前払金・部分払 | 工事の進行に応じて支払う |
| 工事完了 | 検査を経て最終の支払い |
| 実績報告 | 書類を揃えて提出 |
| 額の確定 | 調査を経て通知 |
| 補助の入金 | 確定後 |
工事の支払いは、前払金や部分払で工期中から始まります。一方、補助が入るのは完了して報告し、確定した後です。この間が立替えの期間になります。
年度末に工事が終わる場合
学校の工事は、授業への影響を避けて夏休みや冬休みに行われ、年度末に完了することが多くあります。
年度末に完了して報告すれば、確定と入金はその後になります。年度をまたぐ資金の手当てが必要です。
工程が遅れると期間が延びる
工事が遅れて完了が後ろにずれれば、報告も確定も遅れます。立替えの期間が延びます。
天候、資材の調達、想定外の劣化の発覚。遅れる要因は複数あります。工程に余裕を持たせてください。
複数校をまとめた場合
複数の学校をまとめて実施した場合、すべての報告が揃うまで確定しないことがあります。1校の遅れが全体の入金を遅らせます。
学校ごとに事業を分けるか、まとめるかの判断には、この点も関わります。
資金はどう手当てするのか?
公立と私立で手段が違います。
公立学校の場合
| 手段 | 内容 |
|---|---|
| 地方債 | 事業の区分に応じた充当 |
| 基金 | 施設整備基金などの取崩し |
| 一般財源 | 当年度の予算から |
| 繰越し | 年度をまたぐ場合の手続き |
地方債の充当率と交付税措置の有無は、事業の区分によって異なります。財政の所管部署と早い段階で調整してください。
発注者側の体制の整え方は発注者側の体制はどう組むのか?で扱っています。施設担当だけでなく財政部門を巻き込む必要があります。
私立学校の場合
| 手段 | 内容 |
|---|---|
| 自己資金 | 手元資金からの支出 |
| 金融機関からの借入れ | つなぎの資金 |
| 日本私立学校振興・共済事業団の融資 | 学校法人向けの融資制度 |
| 寄付金 | 募集の時期と工事の時期の整合 |
私立学校では、立替えの資金を自前で用意する必要があります。補助が入るまでのつなぎを、借入れで埋める形が一般的です。
借入れの金利と期間が、実質的な事業費に乗ってきます。補助額だけを見て判断せず、この費用も含めて検討してください。
工程と資金の山を合わせる
工事の支払いは、前払金、部分払、完成払の3回程度に分かれます。この支払いの時期と、手元資金の推移を並べて確認してください。
見積りの読み方は見積書はどこを見るのか?で扱っています。支払いの条件は見積りの段階で確認する項目です。
繰越しの手続き
年度内に工事が終わらない見込みになった場合、繰越しの手続きが関わります。公立学校では、予算の繰越しと補助の年度区分を合わせる必要があります。
| 確認すること | 内容 |
|---|---|
| 繰越しの要件 | やむを得ない事由に当たるか |
| 手続きの時期 | いつまでに申し出るか |
| 予算の扱い | 歳出予算の繰越し |
| 補助の年度区分 | 事業年度の扱い |
繰越しは年度末に慌てて判断できる手続きではありません。工程に遅れが見えた段階で、財政部門と所管部署に相談してください。
注意点はどこか?
4つあります。
| 注意点 | 内容 |
|---|---|
| 交付決定前の着工 | 原則として認められない |
| 書類の整備 | 工事中に揃える |
| 変更の手続き | 無断の変更は額の確定で外される |
| 保管義務 | 完了後も書類を保管する |
交付決定前に着工しない
交付の決定を受ける前に着工すると、補助の対象外になることがあります。工程を急ぐために先に始めるという判断は、取り返しがつきません。
決定の通知を受けてから契約し、着工する順序を守ってください。
書類は工事中に揃える
契約書、設計図書、工事写真、数量の根拠、検査の記録、支払いの証拠。これらが実績報告に必要です。
工事写真は、工事が終わってから撮り直せません。施工会社に撮影の範囲と方法を指示し、工事中に提出させてください。工事の進め方は学校の改修工事はどう進めるのか?で扱っています。
計画との整合を保つ
個別施設計画に位置づけた内容と実際の工事が食い違うと、整合の説明が必要になります。計画の作り方は学校の個別施設計画はどう作るのか?で扱っています。
完了後も書類を保管する
補助の対象となった施設には、処分の制限がかかります。完了後も、関係する書類を保管しておく必要があります。
数年後に用途を変える、売却する、解体するという場面で、この書類が必要になります。
よくある質問
Q. 年度内に工事が終わらない場合はどうなりますか。
A. 繰越しの手続きが関わります。年度末に慌てて判断できる手続きではないため、工程に遅れが見えた段階で財政部門と所管部署に相談してください。
Q. 補助金は前払いですか後払いですか。
A. 原則は後払いです。補助金適正化法第15条により、完了に係る成果の報告を受けた後に調査し、交付すべき額を確定して通知する仕組みです。
Q. 交付決定を受ければ金額は確定しますか。
A. 確定しません。決定は交付すべきものと認めた判断で、最終の額は完了後の調査を経て確定します。
Q. 工事代金はいつ払いますか。
A. 工事の進行に応じて前払金や部分払で支払います。補助が入るのは完了して報告し、確定した後です。この間が立替えの期間になります。
Q. 完了前に一部を受け取れますか。
A. 交付要綱等で概算払が認められる場合があります。制度と事業の区分によって扱いが異なるため、資金計画を立てる前に所管部署に確認してください。
Q. 交付決定前に着工できますか。
A. 原則として認められません。補助の対象外になることがあります。決定の通知を受けてから契約し、着工してください。
Q. 想定より補助額が少なくなることはありますか。
A. あります。報告の内容が決定の内容および条件に適合しないと判断された部分は、確定額から外れます。その差は設置者の負担になります。
まとめ
学校施設整備の補助金は、原則として後払いです。補助金適正化法第15条が、完了に係る成果の報告を受けた後に調査し、交付すべき額を確定して通知する仕組みを定めているためです。
流れは、交付の申請、交付の決定(第6条)、工事の実施、実績報告(第14条)、額の確定(第15条)、支払いの順です。交付の決定は「この事業に補助を出す」という判断で、金額の確定ではありません。同法第17条により、決定の内容または条件に違反したときは取り消すことができるとされています。
したがって工事代金の支払いが先行します。前払金や部分払は工期中から始まる一方、補助が入るのは完了して報告し、確定した後。この間の資金を自前で用意する必要があります。
公立学校では地方債、基金、一般財源で埋めます。充当率と交付税措置は事業の区分で異なるため、財政部門と早い段階で調整してください。私立学校では借入れでつなぐ形が一般的で、金利と期間が実質的な事業費に乗ります。
注意点は4つです。交付決定前に着工しない。実績報告に必要な書類を工事中に揃える。工事中の変更は所管部署に確認する。完了後も書類を保管する。特に工事写真は後から撮り直せないため、施工会社に撮影の範囲と方法を指示してください。
参考・出典
- e-Gov法令検索「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」 https://laws.e-gov.go.jp/law/330AC0000000179
- 埼玉県「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」 https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/179381/tekiseikahou.pdf
- 文部科学省「公立学校施設費国庫負担金等に関する関係法令等の運用細目・交付要綱等」 https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyosei/unyou/index.htm
- 文部科学省「公立学校施設整備に関する実務」 https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyosei/zitumu.htm
- 日本私立学校振興・共済事業団 https://www.shigaku.go.jp/
記載の法令および制度は公表時点のものです。概算払の取扱い、実績報告に必要な書類および支払いの時期は制度の区分と所管の運用により異なります。個別の適用は文部科学省および都道府県・市町村の施設整備所管部署、財政所管部署にご確認ください。
学校施設のご相談
その工事、補助金が使えるか無料でチェックします
トイレ・空調・体育館・玄関・耐震など、検討中の工事に使える国や都道府県の補助制度を、公表資料をもとに確認して3営業日以内にご回答します。「補助金が使えないか調べるよう言われた」という段階のご相談で構いません。
補助金の無料チェックを依頼する株式会社光建舎は、設計(ウイングスペース一級建築士事務所)から施工まで一社で対応しています。図面や仕様が固まっていない計画段階からのご相談も承っています。概算だけ先に欲しい、という段階でも構いません。
受付時間 平日 9:00〜18:00