この記事は、学校施設の設計・施工を行う株式会社光建舎が作成しています。設計(ウイングスペース一級建築士事務所)から施工まで一社で対応し、専門学校・高校・自治体の学校施設を手がけています。

空き教室を地域に開放するにはどう設計・運用するか?

動線・管理区画・運営のルール

空き教室を、地域のサークル活動、高齢者の集い、子どもの居場所、自治会の会合に使ってもらう。学校を地域の拠点にする取組は、多くの自治体や学校で広がっています。

ただし、学校の中に外部の人が出入りする以上、子どもの安全と学校運営への影響を抑える工夫が欠かせません。開放がうまくいくかどうかは、どの教室を選び、どう区切り、誰が鍵を管理するかといった設計と運用の細部で決まります。

この記事では、①空き教室の地域開放とは何か、②法令上の根拠、③設計の注意点、④運用のルール、⑤私立学校の場合、の5点を整理します。

この記事の要点

  • 空き教室の地域開放は、学校教育に支障のない範囲で、空いた教室を地域住民の活動に使ってもらう取組
  • 学校教育法、社会教育法、スポーツ基本法に、学校施設を地域に開放する考え方が示されている
  • 小学校施設整備指針は、開放の内容、時間帯、空間の位置と範囲を考慮して計画することを求めている
  • 設計では、専用の出入口、施錠できる管理区画、トイレと設備の区分が要になる
  • 運用では、運営主体、鍵の管理、使用料、保険と事故の責任を事前に決める

空き教室の地域開放とは何か?

空き教室の地域開放とは、児童生徒数の減少などで使われなくなった教室を、学校教育に支障のない範囲で、地域住民の学習、文化、交流などの活動に使ってもらう取組です。

体育館や校庭の開放と違い、教室は校舎の中にあります。校舎の中に外部の人の動線ができるため、設計と運用の両面で、学校の安全を確保する工夫が必要です。

空き教室の使い道全体の中での位置づけは空き教室(余裕教室)の使い道は何か?にまとめています。

法令上の根拠は何か?

3つの法律に、学校施設を地域に開放する考え方が示されています。

法律内容
学校教育法学校教育上支障のない限り、学校の施設を社会教育その他公共のために利用させることができる
社会教育法学校の管理機関は、学校教育上支障がないと認める限り、学校の施設を社会教育のために利用に供するよう努めなければならない
スポーツ基本法学校の設置者は、学校教育に支障のない範囲内で、学校の体育施設を一般のスポーツのための利用に供するよう努めなければならない

いずれも、学校教育に支障がないことが前提です。開放によって授業や児童生徒の安全に影響が出るようであれば、開放の範囲や方法を見直す必要があります。

公立学校の施設を学校教育以外の用途に転用する場合は、国庫補助の財産処分の手続きが関係することがあります。一時的な開放にとどまるか、用途の転用に当たるかは、所管の教育委員会に確認します。

設計で何に気をつけるか?

文部科学省の小学校施設整備指針では、学校開放の内容、時間帯、地域住民の利用に供する空間の位置、範囲等を考慮して計画することが重要とされています。また、防犯対策を実施し安全性を確保したうえで、地域住民と共同利用ができる施設として計画することが示されています。

具体的には、次の5点を確認します。

開放する教室の位置

外部から直接出入りできる1階の教室、校舎の端にある教室が向いています。上階や校舎の中央にある教室を開放すると、利用者が校舎内を長く歩くことになり、管理が難しくなります。

専用の出入口

利用者が児童生徒と同じ昇降口を使わずに済むよう、開放する教室に近い位置に専用の出入口を設けます。既存の非常口や通用口を活用できる場合もあります。

整備指針では、通級による指導のために来校する児童や保護者について、在籍する児童と動線が交錯しないように区分したり、専用の昇降口を設けたりするなど、独立した動線を設定することが望ましいとされています。地域開放でも、同じ考え方が当てはまります。

管理区画

開放する教室と、その出入口、トイレまでを一つの区画としてまとめ、学校側の区画との間を施錠できる扉やシャッターで区切ります。開放時間中も、利用者が学校側に入れない状態を作るのが基本です。

トイレと設備

利用者が使うトイレを、開放区画の中に確保します。学校側のトイレを使わせると、区画の意味がなくなります。

照明、空調、電気のスイッチやブレーカーも、開放区画だけで操作できるようにしておくと、運用が楽になります。光熱水費を利用者側に負担してもらう場合は、メーターを分けることも検討します。費用の把握の方法は学校施設の維持管理コストはどう見える化するか?を参照してください。

防犯とバリアフリー

開放区画の出入口に防犯カメラやインターホンを設けます。開放時間外に開放区画の扉が開いた場合に、警備会社や管理者に通知が届く仕組みにしておくと安心です。高齢者や障害のある人が利用する場合は、段差の解消、手すり、多目的トイレなどのバリアフリー化も検討します。

運用のルールはどう決めるか?

5つの点を事前に決めます。

運営主体

学校が直接管理するのか、教育委員会や首長部局が管理するのか、地域の団体に管理を任せるのかを決めます。学校の教職員に管理の負担がかからない形にすることが、開放を長く続ける鍵です。運営主体と学校との連絡の窓口も一本にしておきます。

運営主体利点課題
学校学校の事情に合わせやすい教職員の負担が増える
教育委員会・首長部局複数の学校で仕組みを統一できる現場の事情が伝わりにくい
地域の団体地域の実情に合った運営ができる担い手の確保と継続性

鍵の管理

誰が、いつ、どの鍵を使うかを記録します。鍵を利用団体に預けたままにすると、紛失や複製のおそれがあります。暗証番号式や電子錠にすると、鍵の受け渡しの手間が省け、利用の記録も残せます。

利用のルール

利用できる時間帯、利用できる団体の範囲、禁止事項、片付けと戸締まりの手順を決め、利用者に書面で示します。授業や学校行事と重なる時間帯は利用できないことを明確にしておきます。学校行事で急に利用を断る場合の連絡方法も決めておくと、利用団体との関係がこじれにくくなります。

使用料

公立学校では、使用料は条例で定めます。地域の活動を促すために無料や低額とする例もありますが、光熱水費の負担をどうするかは決めておきます。

保険と事故の責任

利用中の事故について、誰が責任を負うかを決めます。利用団体に傷害保険や賠償責任保険への加入を求めるのが一般的です。施設の不具合による事故に備え、設置者側の賠償責任保険の範囲も確認します。

開放までの手順はどう進めるか?

5つの段階で進めます。

1. 地域の需要を聞く

自治会、社会福祉協議会、子ども食堂や学習支援の団体、サークル活動の団体などから、どんな活動の場を求めているかを聞き取ります。需要がはっきりしないまま開放すると、使われない部屋が増えるだけになります。利用したい曜日や時間帯、人数も合わせて聞いておきます。

2. 開放する教室と範囲を決める

需要と、校舎の中の空き教室の位置を照らし合わせ、開放する教室を選びます。出入口、トイレ、管理区画の範囲を図面に落とします。

3. 改修の内容と費用を決める

扉の追加、錠の交換、トイレの改修、防犯カメラの設置など、必要な改修を洗い出し、費用を見積もります。長期休暇中に工事ができるよう、時期を調整します。

4. 運用のルールを定める

運営主体、鍵の管理、利用のルール、使用料、保険を決め、要綱や利用規約にまとめます。

5. 試行してから本格化する

最初は利用団体や時間帯を限って試行し、問題点を洗い出してから本格的に開放します。試行期間中に、教職員と保護者の意見も聞いておきます。

よくある失敗は何か?

3つあります。

教職員に管理を任せてしまう

鍵の開け閉め、利用の受付、苦情の対応を教職員が担うと、本来の業務を圧迫します。負担が大きくなると、開放そのものが続かなくなります。

区画があいまい

扉はあるが施錠されていない、トイレが学校側にしかない、といった状態では、利用者が学校側に入り込むことを防げません。保護者の不安にもつながります。

将来の使い方を考えていない

児童生徒数の推計によっては、数年後に教室が再び必要になることもあります。開放の協定には期間を定め、見直しの時期を設けておきます。

学校以外の公共施設を校舎に取り込む形まで進める場合は、学校施設の複合化とは?も参照してください。

私立学校ではどう考えるか?

私立学校でも、地域との関係づくりとして空き教室を開放する例があります。

学校法人の場合、無償での一時的な開放であれば大きな問題は生じにくいと考えられますが、使用料を取って継続的に貸す場合は、法人税法上の席貸業や不動産貸付業に当たる可能性があります。また、教育に使わない状態が続けば、固定資産税の非課税の扱いに影響する可能性もあります。詳しくは学校の駐車場・グラウンドを貸すと税金はどうなるか?を参照してください。

よくある質問

Q. 開放する教室を選ぶとき、最も重視すべき点は何ですか。

A. 外部から直接出入りでき、学校側と区切れる位置にあることです。教室の広さや設備より、動線と区画の作りやすさを優先します。

Q. 改修の費用はどれくらいかかりますか。

A. 既存の出入口や扉を活用できれば小規模で済みますが、専用の出入口やトイレを新設する場合は費用が大きくなります。開放の頻度と利用者数に見合った範囲で計画します。

Q. 開放を始めた後に問題が起きたらどうすればよいですか。

A. 学校、運営主体、利用団体の三者で定期的に話し合う場を設け、問題があればルールを見直します。重大な問題が生じた場合に開放を一時停止できる条項を、あらかじめ決めておきます。

Q. 放課後児童クラブとの違いは何ですか。

A. 放課後児童クラブは、特定の運営主体が継続的に教室を使う形で、学校教育以外の用途への転用として扱われることが多くあります。地域開放は、複数の団体が時間を区切って利用する形が一般的です。どちらに当たるかで、必要な手続きや改修の範囲が変わります。

Q. 災害時に開放区画を使うことはできますか。

A. 避難所に指定されている学校では、開放区画を避難者の受け入れや備蓄に使える場合があります。地域防災計画との関係を確認しておきます。

まとめ

空き教室の地域開放は、学校教育に支障のない範囲で、空いた教室を地域住民の活動に使ってもらう取組です。学校教育法、社会教育法、スポーツ基本法に開放の考え方が示されており、小学校施設整備指針は、開放の内容、時間帯、空間の位置と範囲を考慮して計画することを求めています。

設計では、外部から直接出入りできる教室を選び、専用の出入口、施錠できる管理区画、区画内のトイレと設備を確保します。運用では、運営主体、鍵の管理、利用のルール、使用料、保険と事故の責任を事前に決めます。

学校の安全と教職員の負担に配慮した仕組みを最初に作っておくことが、開放を長く続け、学校を地域の拠点として育てることにつながります。

参考・出典

記載の制度は公表時点のものです。最新の内容は所管省庁の公表資料でご確認ください。

CONTACT

学校施設のご相談

その工事、補助金が使えるか無料でチェックします

トイレ・空調・体育館・玄関・耐震など、検討中の工事に使える国や都道府県の補助制度を、公表資料をもとに確認して3営業日以内にご回答します。「補助金が使えないか調べるよう言われた」という段階のご相談で構いません。

補助金の無料チェックを依頼する

株式会社光建舎は、設計(ウイングスペース一級建築士事務所)から施工まで一社で対応しています。図面や仕様が固まっていない計画段階からのご相談も承っています。概算だけ先に欲しい、という段階でも構いません。

受付時間 平日 9:00〜18:00