目次
学校工事の手続きの流れ
校舎の増築、大規模な改修、用途変更。いずれも、着工の前に建築確認が必要になる場合があります。
手続きの存在は知られていても、どの段階で何が起き、どこで日数がかかるのかは、意外と共有されていません。夏休みの40日で終わらせる計画が崩れるのは、この部分の見通しが甘いときです。
この記事では、①確認申請、②審査と確認済証、③中間検査、④完了検査、⑤検査済証と使用の開始、の5段階で流れを整理します。
この記事の要点
- 確認の審査期間は、法第6条第1項第1号・第2号は受理から35日以内
- 審査期間は35日の範囲内で延長されることがある
- 中間検査は、特定工程の工事を終えた日から4日以内に申請
- 完了検査は、工事が完了した日から4日以内に到達するよう申請
- 完了検査は申請の受理から7日以内に実施される
建築確認とは何か?
工事に着手する前に、計画が法令に適合していることの確認を受ける手続きです。
建築基準法第6条は、一定の建築物について、工事に着手する前に建築主事等の確認を受けなければならないと定めています。確認を受けずに着工することはできません。
学校は特殊建築物に当たります。その用途に供する部分の床面積の合計が200平方メートルを超えるものは、法第6条第1項第1号の対象です。学校の校舎は、ほとんどがこれに該当します。学校の法令上の位置づけは学校は特殊建築物であるにまとめています。
誰が申請するのか
申請するのは建築主です。公立学校であれば自治体、私立学校であれば学校法人が建築主になります。
実務は設計者が行います。図面の作成、申請書の作成、審査への対応。建築主は、内容を確認して押印するという関わり方が一般的です。ただし、申請の責任を負うのは建築主なので、内容を把握しないまま進めるのは避けます。
申請先は、特定行政庁の建築主事または指定確認検査機関です。どちらに出すかは、設計者と相談して決めます。手数料と日程の両方に関わるため、設計の契約の段階で方針を決めておくと後が楽になります。
審査にはどれくらいかかるのか?
規模と用途で日数が変わります。
| 区分 | 対象 | 審査期間 |
|---|---|---|
| 法第6条第1項第1号 | 別表第一(い)欄の用途の特殊建築物で200平方メートル超 | 受理から35日以内 |
| 法第6条第1項第2号 | 2以上の階数を有し、または延べ面積200平方メートル超の建築物 | 受理から35日以内 |
| 法第6条第1項第3号 | 都市計画区域内等の建築物 | 受理から7日以内 |
第1号と第2号については、35日の範囲内で期間が延長されることがあります。延長する場合は、理由を記載した通知書が申請者に交付されます。
つまり、学校の工事では、最大で70日程度の審査期間を見込む必要があります。これは受理された後の日数です。受理される前の事前相談や補正の期間は、ここに含まれません。
事前相談が実質的な期間を決める
申請書が受理されるまでに、所管行政庁との事前の協議が入ります。用途地域、接道、日影、防火、避難。論点が多い案件ほど、この期間が長くなります。
学校では、敷地に複数の建物があり、増築の履歴も複雑です。既存の建物の扱いを整理するのに時間がかかることがあります。渡り廊下でつながっている棟を一の建築物として扱うかどうかも、論点になりやすい部分です。現況の調べ方は学校の法適合状況調査で扱っています。
確認済証が出たら何ができるのか?
工事に着手できます。
確認済証の交付を受けた後でなければ、工事に着手することはできません。逆に言えば、交付されれば着工できます。
工事の期間中は、工事現場に確認の表示をすることが必要です。また、設計図書を工事現場に備え置くことも求められます。児童生徒が通う敷地内での工事では、表示の位置と仮囲いの計画をあわせて確認しておきます。
中間検査はどんなときに行うのか?
特定工程を終えたときです。
建築基準法第7条の3は、中間検査について定めています。対象となるのは次の工程です。
- 階数が3以上である共同住宅の床および梁に鉄筋を配置する工事の工程のうち、政令で定める工程
- 特定行政庁が、区域、期間または建築物の構造、用途もしくは規模を限って指定する工程
学校の工事で中間検査の対象になるかどうかは、特定行政庁の指定によります。地域によって扱いが異なるため、設計者を通じて確認します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申請期限 | 特定工程に係る工事を終えた日から4日以内に到達するよう申請 |
| 検査の実施 | 申請を受理した日から4日以内 |
| 工事の制限 | 中間検査合格証の交付を受けた後でなければ、特定工程後の工程の工事を施工できない |
合格証が出るまで次の工程に進めないため、工程表にこの日数を織り込んでおく必要があります。夏休みのように期間が限られる工事では、この待ち時間が全体に影響します。
完了検査はどう進むのか?
工事が終わったら、速やかに申請します。
建築基準法第7条第2項は、完了検査の申請について、工事が完了した日から4日以内に建築主事等に到達するようにしなければならないと定めています。
そして第4項により、申請を受理した日から7日以内に、建築物およびその敷地が建築基準関係規定に適合しているかどうかの検査が行われます。
実務上の準備
検査の日程は、事前に予約するのが通例です。横浜市の案内では、完了検査の予定日の2週間前から10日前までに電話で予約し、検査日の7日前から前日までに書類を提出するとされています。運用は自治体や機関によって異なります。
検査では、図面どおりに施工されているかが確認されます。工事の途中で変更があった場合、計画変更の手続きが済んでいないと、検査に通りません。軽微な変更として扱える範囲は定められていますが、判断は設計者と所管行政庁に確認します。
特定行政庁と指定確認検査機関はどう違うのか?
申請先の選択肢が2つあります。
建築確認と検査は、特定行政庁の建築主事のほか、国土交通大臣または都道府県知事の指定を受けた指定確認検査機関でも行われます。どちらに申請しても、確認済証と検査済証の効力は同じです。
| 項目 | 特定行政庁(建築主事) | 指定確認検査機関 |
|---|---|---|
| 手数料 | 自治体の条例で定められる | 機関ごとの料金 |
| 日程 | 窓口の混み具合による | 比較的調整しやすいとされる |
| 他部局との調整 | 庁内で完結する部分がある | 別途、自治体への手続きが必要 |
公立学校では、同じ自治体の中で手続きが進む方が調整しやすい場面があります。一方、年度末に申請が集中する時期は、日程の確保が課題になります。
どちらを選ぶかは設計者の判断に委ねられることが多いのですが、工程に影響する事項なので、発注者としても方針を共有しておきます。
検査済証が出るまで使えないのか?
一定の建築物については、使用が制限されます。
建築基準法第7条の6は、法第6条第1項第1号または第2号に掲げる建築物を新築する場合などについて、検査済証の交付を受けた後でなければ使用し、または使用させてはならないと定めています。
増築、改築、移転、大規模の修繕、大規模の模様替の工事で、避難施設等に関する工事を含むものも対象です。
仮使用という方法
検査済証の交付前に使用する必要がある場合、仮使用の仕組みがあります。同条では、次の場合に仮に使用できるとしています。
- 特定行政庁が、安全上、防火上および避難上支障がないと認めたとき
- 建築主事等または指定確認検査機関が、国土交通大臣が定める基準に適合していることを認めたとき
- 完了検査の申請が受理された日から7日を経過したとき
学校では、新学期に間に合わせるために仮使用の認定を受ける場面があります。認定にも手続きと日数が必要なため、早い段階で設計者と相談します。工事が残る区画と使用する区画を明確に分け、動線が交わらない計画にすることが前提になります。
検査済証が残っていない既存の建物を改修する場合の考え方は検査済証がない学校施設の改修の進め方にまとめています。
学校の工程にどう組み込むか?
逆算で考えます。
夏休みに工事をして2学期から使う、という計画であれば、検査済証の交付または仮使用の認定が2学期の開始前に終わっている必要があります。
そこから逆算すると、次のようになります。
- 2学期の開始前に検査済証または仮使用の認定
- その前に完了検査(申請の受理から7日以内)
- その前に工事の完了
- その前に着工(確認済証の交付後)
- その前に確認の審査(受理から35日以内、延長で最大70日程度)
- その前に事前協議と申請書の作成
設計から着工までに数か月を見ておくのが現実的です。前年度のうちに設計を終えておく発注の仕方が、無理のない工程につながります。補助金の交付決定の時期とも重なるため、教育委員会の内部でも早めに共有しておきます。建築基準法の全体像は学校の改修で関わる建築基準法の基礎を参照してください。
公立と私立で違いはあるか?
手続きは同じですが、前段階が違います。
公立学校
設計の委託と工事の発注が、それぞれ入札の手続きを経ます。予算の議決、契約の締結を含めると、確認申請にたどり着くまでに時間がかかります。年度内に完了させる計画では、この前段階が工程を圧迫します。債務負担行為や繰越の手続きを使って、年度をまたぐ組み立てにする方法もあります。
私立学校
理事会の決定が済めば、発注は速く進みます。ただし、補助金を受ける場合は、交付の決定前に着工できないという制約があります。確認済証の交付と交付決定の両方がそろう時期を見て、着工の日を決めることになります。
よくある質問
Q. 確認申請の審査期間はどれくらいですか。
A. 法第6条第1項第1号・第2号は受理から35日以内です。35日の範囲内で延長されることがあります。
Q. 完了検査はいつまでに申請しますか。
A. 工事が完了した日から4日以内に到達するよう申請します。
Q. 完了検査はいつ行われますか。
A. 申請を受理した日から7日以内に実施されます。
Q. 検査済証が出る前に建物を使えますか。
A. 対象となる建築物では使用が制限されます。仮使用の認定を受ける方法があります。
Q. 中間検査は必ずありますか。
A. 政令で定める工程のほか、特定行政庁が指定した工程が対象です。地域によって異なります。
Q. 工事の途中で設計を変えたらどうなりますか。
A. 内容によっては、計画変更の確認が必要です。手続きをしないまま完了検査を受けると、適合が確認できません。
Q. 指定確認検査機関に出すと審査は早くなりますか。
A. 法定の審査期間は同じです。日程の調整のしやすさに差が出ることはあります。
Q. 学校の改修工事はすべて確認申請が必要ですか。
A. 大規模の修繕や大規模の模様替に当たるかどうか、増築を伴うかどうかで変わります。内装の更新のみであれば不要な場合もあります。
Q. 確認済証や検査済証を紛失したらどうなりますか。
A. 再発行はされません。特定行政庁で台帳の記載事項の証明を受ける方法があります。
まとめ
建築確認から完了検査までの流れは、確認申請、審査、確認済証、着工、中間検査、完了検査、検査済証という順に進みます。
審査期間は、法第6条第1項第1号・第2号で受理から35日以内、35日の範囲内で延長されることがあります。完了検査は、工事完了の日から4日以内に申請し、受理から7日以内に検査が行われます。中間検査は、特定工程の工事を終えた日から4日以内に申請し、受理から4日以内に検査が行われ、合格証の交付を受けるまで次の工程に進めません。
学校の工事では、使い始める日から逆算して工程を組みます。審査の日数、検査の日数、そして事前協議の期間。これらを見込まずに夏休みだけで組み立てると、2学期の開始に間に合いません。設計を前年度に終えておくことが、最も効く対策です。
参考・出典
- e-Gov法令検索「建築基準法」 https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000201
- 横浜市「検査手続きの流れ」 https://www.city.yokohama.lg.jp/business/bunyabetsu/kenchiku/tetsuduki/kakunin/kosaku/tetuduki.html
- 建築基準法第6条、第7条、第7条の3、第7条の6
記載の制度は公表時点のものです。個別の適用は所管の行政庁または指定確認検査機関にご確認ください。
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