この記事は、学校施設の設計・施工を行う株式会社光建舎が作成しています。設計(ウイングスペース一級建築士事務所)から施工まで一社で対応し、専門学校・高校・自治体の学校施設を手がけています。

小中一貫校は改修か建替えか?

判断基準・費用比較・長寿命化の考え方

小中一貫校の判断は、他の校種と性質が違います。多くの場合、小学校と中学校の両方が更新の時期を迎えている状況から検討が始まります。

2つの学校をそれぞれ建て替えるのか、統合して1つの施設一体型にするのか。そして、どちらの校舎を残すのか。改修か建替えかという問いの前に、学校の数と配置を決める作業が入ります。ここを飛ばすと、投資そのものが無駄になります。

この記事では、①判断の順序、②施設形態の選択、③補助率の違い、④費用の比べ方、⑤進め方、の5点を整理します。

この記事の要点

  • 学校施設環境改善交付金では、学校統合に伴う既存施設の改修が補助率2分の1
  • 改築は3分の1、施設複合化等の場合は2分の1
  • 長寿命化改良は3分の1、複合化・集約化の場合は2分の1
  • 新築または増築は公立学校施設整備費負担金の対象で、負担率は原則2分の1
  • 施設形態には、施設一体型、施設隣接型、施設分離型がある

判断の順序はどうなるのか?

学校の数を先に決めます。

改修か建替えかを考える前に、次の順で決める必要があります。

順序決めること
1将来の児童生徒数と、必要な学校の数
2小中一貫にするのか、別々に維持するのか
3施設一体型・隣接型・分離型のどれにするか
4どの校舎を残し、どれを除却するか
5残す校舎を改築するのか、長寿命化改修するのか

1から4が決まらないまま5を検討すると、前提が崩れます。小学校の校舎を長寿命化改修した直後に、統合して中学校の校舎に移ることになれば、投資が無駄になります。順序を守ることが、最も確実な費用の抑え方です。

制度と施設の関係は小中一貫校の校舎はどう整えるか?にまとめています。

施設形態はどう選ぶのか?

3つの形態があります。

形態内容施設の判断
施設一体型小学校と中学校が同じ校舎を使う1つの校舎に集約。既存校舎の改修が中心
施設隣接型敷地が隣接し、別の校舎を使う両方の校舎を維持。移動の動線を整備
施設分離型離れた敷地で別々に運営するそれぞれの校舎を個別に判断

施設一体型は面積を減らせる

体育館、給食施設、職員室、特別教室を共用できるため、全体の延べ面積を減らせます。維持管理費と光熱費も減り、毎年の支出が軽くなります。

一方、既存の校舎に別の学校段階を受け入れる工事が必要になります。小学校の校舎に中学生を入れるなら特別教室の新設、中学校の校舎に小学生を入れるなら低学年向けの寸法への対応が発生します。

分離型は投資が2倍になる

施設が2か所に分かれたままでは、両方の校舎を維持することになります。交流の効果は得られても、施設の費用はまったく減りません。

児童生徒数が減っている地域では、この形態を長く続けるのは負担が大きくなります。将来の集約を前提に、当面の形として選ぶ考え方もあります。

補助率はどう違うのか?

事業の区分で変わります。

文部科学省の案内によれば、学校施設環境改善交付金では次の補助率が示されています。

事業補助率
改築(危険建物、耐震不足等)3分の1
改築(施設複合化等の場合)2分の1
長寿命化改良3分の1
長寿命化改良(複合化・集約化の場合)2分の1
学校統合に伴う既存施設の改修2分の1
大規模改造(内装改修、空調、バリアフリー化等)3分の1
地震補強(Is値0.3以上0.7未満)2分の1
地震補強(Is値0.3未満)3分の2

新築または増築の場合は、公立学校施設整備費負担金の対象となり、負担率は原則2分の1とされています。

統合を伴えば2分の1の区分が使える

小中一貫校の整備は、多くの場合統合を伴います。学校統合に伴う既存施設の改修は2分の1の区分があり、通常の長寿命化改良の3分の1より有利になります。

同じ工事でも、どの区分で申請するかによって自己負担の額が変わります。設計の前に、都道府県の担当課と協議します。要件を満たすために、工事の範囲や時期を調整する場合もあります。

複合化も検討する

放課後児童クラブ、公民館、図書館の分室、子育て支援の施設。学校と一体で整備すれば、複合化の区分に該当する可能性があります。地域の施設全体の面積を減らす効果も出ます。

制度の全体像は公立学校施設整備費(国庫補助)の基礎知識にまとめています。

費用はどう比べるのか?

学校の数を含めて比べます。

2校をそれぞれ建て替える場合と、1校に集約する場合では、比べる対象が違います。工事費だけでなく、その後の維持管理費の差が大きくなります。

比較の項目2校を維持1校に集約
初期の工事費2校分1校分+受け入れのための改修
維持管理費2校分が毎年発生1校分に減る
光熱費面積に比例して2校分面積が減った分だけ減る
除却費発生しない残さない校舎の解体費が必要
通学費現状のままスクールバスが必要になる場合がある

除却費とスクールバスの運行費を含めずに比べると、集約が有利に見えすぎます。30年、40年の期間で、すべてを足し合わせて並べます。逆に、維持費を入れずに初期費用だけで比べると、2校の維持が有利に見えます。

長寿命化改修の内容は学校施設の長寿命化改修とは?を参照してください。判断の枠組みは学校は建替え・長寿命化改修・統合のどれを選ぶ?にまとめています。

どちらの校舎を残すのか?

5つの材料で判断します。

材料見るもの
建物の状態躯体の劣化、耐震性能、残りの使用年数
敷地の広さ増築の余地、運動場の面積、駐車場
立地通学距離の合計、通学路の安全、災害の危険度
受け入れの工事量特別教室の新設か、低学年対応か
地域との関係避難所としての機能、地域開放の実績

受け入れの工事量が意外に大きい

中学校の校舎に小学生を入れる場合、便器と手洗いの高さ、階段の段差、低学年が遊ぶ場所と安全な動線が課題になります。低学年のフロアを設定し、そこを集中的に改修する方法が現実的です。

小学校の校舎に中学生を入れる場合、理科室、技術室、音楽室といった特別教室の新設が中心になります。給排水、ガス、動力電源、排気の設備を伴うため、費用も工期も大きくなります。

どちらが安く済むかは建物によって違います。両方を試算したうえで判断します。感覚で決めると、後から差が出ます。

立地は通学距離の合計で見る

どちらの校舎を残すかで、通学距離が変わる児童生徒の数が違います。全体の通学距離の合計が小さい方を選ぶという考え方があり、説明にも使えます。

同時に、遠くなる児童生徒への対応も決めます。スクールバスの導入が必要なら、その費用と運行の体制を判断の材料に入れます。運行費は毎年発生するため、施設の費用と並べて見ます。

残さない校舎はどうするのか?

跡地の使い方を先に決めます。

統合すると、使われない校舎が残ります。閉鎖したまま維持するのが最も費用の面で不利です。光熱費の基本料金、警備、点検、除草、劣化の進行が続きます。

選択肢検討する点
他用途に転用用途変更の要否、遡及する規定、改修費
民間へ貸与・売却財産処分の手続き、価格、契約条件
除却して跡地を活用解体費の財源、跡地の使い道
除却して売却更地としての価格、周辺への影響
一時的に維持維持費と劣化の進行。期限を決める

財産処分の手続きを確認する

補助金を受けて整備した施設を転用、貸与、売却する場合、財産処分の手続きが必要になることがあります。処分制限の期間内かどうかで、取れる手段が変わります。

統合の計画を立てる段階で、過去に受けた補助の履歴を確認しておきます。転用の可否が、跡地の選択肢を決めます。

閉校前に情報を集める

竣工図、確認済証、検査済証、改修の記録、設備の台帳。校舎が使われている間に整理しておくと、後の転用や解体で役に立ちます。

閉校後に担当者が替わると、これらの情報は失われます。書類が倉庫に残っていても、どこに何があるか分からなくなります。

工程はどう組むのか?

開校の日から逆算します。

小中一貫校は、開校の年度が先に決まることが多くなります。4月の開校に間に合わせるには、前年度中に工事を終える必要があります。

  • 開校の日を確定する
  • 検査、引渡し、備品の搬入、移転の期間を引く
  • 工事の期間を置く
  • 設計と確認申請の期間を置く
  • 逆算して、設計に着手すべき時期を決める

空く校舎で工事ができると有利

統合により空く校舎で工事ができる場合、条件が良くなります。工期も短くなり、安全面の負担も減り、作業の時間帯の制約もありません。

どちらの校舎を残すかの判断に、工事のしやすさも材料として加えます。在校生がいる状態での工事は、区画の分離と時間帯の制約が加わります。

住民への説明

統合を伴う場合、施設の話と統合の話が同時に進みます。通学距離、校名、校歌、制服、行事。施設はその一部にすぎません。

改修によって何がどう良くなるのかを、図と写真で示します。校舎がなくなる側の地域にも、同じ説明を行います。跡地の使い方を示せると、受け止め方が変わります。

よくある質問

Q. 改修か建替えかの前に何を決めますか。

A. 将来の児童生徒数と必要な学校の数、施設形態、どの校舎を残すかです。この順で決めます。

Q. 統合に伴う改修の補助率は。

A. 学校施設環境改善交付金では、学校統合に伴う既存施設の改修が2分の1とされています。

Q. 長寿命化改良との違いは何ですか。

A. 長寿命化改良は3分の1ですが、複合化・集約化の場合は2分の1です。どの区分で申請するかで金額が変わります。

Q. どちらの校舎を残すべきですか。

A. 建物の状態、敷地の広さ、立地、受け入れの工事量、地域との関係で判断します。両方の工事量を試算します。

Q. 集約すると費用は減りますか。

A. 維持管理費と光熱費は減ります。ただし除却費とスクールバスの運行費が加わるため、総額で比べます。

Q. 開校までにどれくらいかかりますか。

A. 設計、確認申請、工事、備品搬入、移転を積み上げて逆算します。統合の合意形成の期間も加わります。

Q. 使わなくなる校舎はどうしますか。

A. 閉鎖したまま維持するのが最も不利です。転用、貸与・売却、除却のいずれかを早めに決めます。

Q. 財産処分の手続きは必要ですか。

A. 補助金を受けて整備した施設では必要になることがあります。処分制限の期間内かどうかを確認します。

Q. 施設分離型のままでもよいですか。

A. 交流の効果は得られますが、両方の校舎を維持するため施設の費用は減りません。児童生徒数が減る地域では負担が続きます。

まとめ

小中一貫校の判断は、改修か建替えかの前に、学校の数と配置を決める作業から始まります。将来の児童生徒数、施設形態、残す校舎。この順で決めなければ、投資が無駄になる可能性があります。

補助率では、学校統合に伴う既存施設の改修が2分の1、改築と長寿命化改良は3分の1で複合化・集約化等の場合は2分の1です。新築または増築は公立学校施設整備費負担金の対象で負担率は原則2分の1。統合を伴う小中一貫校の整備は、有利な区分に該当する可能性があります。

費用の比較では、工事費だけでなく、維持管理費、光熱費、除却費、スクールバスの運行費まで含めます。集約すれば維持費は減りますが、除却と通学の費用が加わります。

残す校舎の選択では、受け入れのための工事量を両方について試算します。中学校の校舎に小学生を入れる場合と、小学校の校舎に中学生を入れる場合で、必要な工事はまったく違います。

参考・出典

記載の制度は公表時点のものです。補助の対象と補助率は年度により変わるため、最新の内容は所管省庁および都道府県の公表資料でご確認ください。

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