この記事は、学校施設の設計・施工を行う株式会社光建舎が作成しています。設計(ウイングスペース一級建築士事務所)から施工まで一社で対応し、専門学校・高校・自治体の学校施設を手がけています。

学童保育施設は改修か建替えか?

判断基準・費用比較・長寿命化の考え方

学童保育施設の判断は、他の校種と性質が違います。専用の建物を持つクラブもあれば、学校の余裕教室を使うクラブ、児童館の一室を使うクラブもあるためです。

建物を所有していなければ、建て替えるという選択肢はありません。判断は、どこでどう場所を確保するかという話になります。まず自分たちの立場を確認する必要があります。

この記事では、①基準の確認、②場所の形態による違い、③判断の材料、④補助制度、⑤進め方、の5点を整理します。

この記事の要点

  • 専用区画の面積は、児童1人につきおおむね1.65平方メートル以上
  • 一の支援の単位を構成する児童の数は、おおむね40人以下
  • 放課後児童支援員の数は、支援の単位ごとに2人以上(うち1人は補助員で代替可能)
  • 専用区画には、遊び及び生活の場と静養する場所の機能が必要
  • 学校施設内か専用施設かで、判断の枠組みが変わる

基準はどうなっているのか?

放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準で定められています。

こども家庭庁が示す同基準によれば、専用区画の面積は児童1人につきおおむね1.65平方メートル以上とされています。

項目基準
専用区画の面積児童1人につきおおむね1.65平方メートル以上
支援の単位一の支援の単位を構成する児童の数はおおむね40人以下
放課後児童支援員支援の単位ごとに2人以上。うち1人は補助員で代替可能
専用区画の機能遊び及び生活の場、静養する場所

静養する場所は別室の設置も認められていますが、保健室を必要時のみ開放する場合は面積の算定に含めないとされています。

面積が受け入れ人数を決める

専用区画の面積が、受け入れられる児童数を決めます。40人の支援の単位を1つ置くには、おおむね66平方メートル以上が必要になる計算です。教室1室分に相当する広さです。

利用希望者が増えている地域では、この面積の確保が課題になります。逆に、児童数が減っている地域では、支援の単位を減らす判断が出てきます。地域によって状況がまったく違う事業です。

学校施設の活用については空き教室(余裕教室)の使い道は何か?にまとめています。

場所の形態で判断はどう変わるのか?

3つに分かれます。

形態選択肢
専用施設を所有改築、長寿命化改修、部分改修、移転
学校施設内学校の改修計画に合わせる。専用区画の確保を交渉
他施設の一部を使用改修は施設の管理者が判断。使用条件の交渉

専用施設を所有している場合

他の施設と同じ判断になります。躯体の状態、利用児童数の見通し、財源。そして、その建物を何年使うかを決めます。

木造の小規模な施設が多く、耐用年数も比較的短くなります。建物の規模が小さいため、大規模な改修より建替えの方が合理的な場合もあります。

学校施設内の場合

建物の判断は学校側が行います。学童保育としてできるのは、専用区画の確保と、その区画の使い勝手の改善です。

学校の改築や長寿命化改修の計画があるなら、その機会に専用区画を組み込めるかを交渉します。設計が固まってからでは、間に合いません。

複合化の区分で補助率が上がる可能性もあるため、学校側の担当部局と早い段階で協議します。

他施設の一部を使用している場合

児童館、公民館、民間の建物。改修の判断は施設の管理者が行います。使用の条件と期間を確認したうえで、投資できる範囲を決めます。

判断の枠組みは学校は建替え・長寿命化改修・統合のどれを選ぶ?にまとめています。

判断の材料は何か?

5つあります。

材料見るもの
建物の状態躯体の劣化、耐震性能、設備の状態
利用児童数の見通し10年後の支援の単位の数
専用区画の面積基準を満たしているか。余裕があるか
場所の形態所有か、学校内か、他施設か
補助の区分どの制度が使えるか

支援の単位の数から必要面積を出す

利用児童数の見通しから、支援の単位がいくつ必要かを置きます。そこに1人あたりおおむね1.65平方メートル以上を乗じて、必要な専用区画の面積を算定します。

現在の面積と比べて、足りるかどうかを判断します。足りない場合、増築、別の場所の確保、支援の単位の分割といった対応になります。

静養する場所を確保できるか

専用区画には、遊び及び生活の場のほか、静養する場所の機能が必要です。体調を崩した児童が横になれる場所です。

既存の区画が1部屋だけの場合、この機能をどう確保するかが課題になります。仕切りで対応するのか、別室を設けるのか。改修の内容に直接関わる部分です。

補助制度はどうなっているのか?

放課後児童クラブの施設整備に関する制度があります。

補助の区分と補助率は、設置主体や事業の内容によって異なります。公立と民立で扱いが分かれるほか、学校施設内に整備する場合の区分もあります。

詳しくは保育園・学童の施設整備にはどの補助金が使えるか?にまとめています。申請の窓口は市区町村です。

学校の整備と一体で申請する

学校施設内に専用区画を整備する場合、学校の改修の事業として申請できる区分があります。学校施設環境改善交付金では、複合化の区分で補助率が上がる場合があります。

どの制度を使うかによって、工事の内容や時期の調整が必要になります。設計の前に、教育委員会と子育て支援の部局の両方に確認します。

待機児童と面積の関係をどう説明するか?

数字で示します。

学童保育の待機が出ている地域では、面積の確保が最優先の課題になります。市区町村や学校に対して、必要性を説明する材料が要ります。

  • 現在の登録児童数と、支援の単位の数
  • 現在の専用区画の面積と、1人あたりの面積
  • 待機している児童の数
  • 今後5年、10年の利用見込み
  • 必要な面積と、不足している面積

1人あたりの面積を計算して示すと、状況が伝わります。基準はおおむね1.65平方メートル以上ですが、実際にはこれを下回る運用になっている場合もあります。

学校側に伝わる形にする

学校にとって、余裕教室を渡すことは自分たちの面積が減ることを意味します。将来の学級数の見通しと合わせて示さないと、話が進みません。

児童数が減っていく見通しであれば、その数字を共有します。どの教室をいつから使えるのかを、時系列で示します。

一時的な対応と恒久的な対応を分ける

面積が足りない状態を解消するには時間がかかります。当面どうするか、最終的にどうするかを分けて示すと、議論が前に進みます。

費用はどう比べるのか?

その場所を何年使うかで割ります。

項目専用施設の改築専用施設の改修学校内への整備
初期費用大きい小さい区画の改修費のみ
面積の自由度高い既存の範囲学校の余裕次第
工事中の運営代替の場所が必要区画を分けて対応学校の工事に合わせる
将来の変更難しい限定的学校の状況で変わる

学童保育は、利用児童数の変動が大きい事業です。専用施設を建てると、児童数が減ったときに面積が余り、維持費だけが残ります。学校施設の活用であれば、必要な区画を調整しやすくなります。

長寿命化改修の内容は学校施設の長寿命化改修とは?を参照してください。

学校施設内で何を確保するのか?

専用区画と、その周辺です。

余裕教室を転用する場合、教室そのものだけでは運営できません。周辺の条件も確保する必要があります。

項目確認する点
専用区画面積、静養できる場所、収納
便所近接した位置にあるか。低学年が使える高さか
手洗い区画内または近接した位置にあるか
給湯おやつの提供と清掃に必要
出入口学校の管理区画と分けられるか
屋外の遊び場校庭を使える時間帯と範囲
動線保護者の迎えの経路。学校の施錠との関係

管理区画を分けられるか

学童保育の時間帯は、学校の教職員が減っていきます。学校全体を開けたままにはできません。

専用区画と出入口を学校の管理区画から分けられるかが、運営の前提になります。分けられない場合、施錠と鍵の管理をどうするかを取り決めます。

長期休業中の使用

長期休業中は朝から夕方まで使います。空調、給湯、便所の清掃。学校が休みの間も使える体制が必要です。

光熱費の負担の考え方も、学校側と取り決めておきます。計量できる形にしておくと、後の調整が楽になります。

工事はどう進めるのか?

平日の午後と長期休業が制約になります。

学童保育は、学校の授業がある日の放課後と、長期休業中の朝から夕方まで開所します。つまり、学校が休みの日ほど利用が多くなります。

  • 平日の午前中に作業を集中させる
  • 長期休業中は開所しているため、工事の期間として使いにくい
  • 代替の場所を確保できるなら、まとめて工事ができる
  • 区画を分けて段階的に進める方法もある

代替の場所を先に決める

学校内の別の教室、児童館、近隣の公共施設。工事中にどこで受け入れるかを先に決めます。移動が伴う場合、児童の安全と職員の配置に影響するため、経路も確認します。

保護者への説明

利用する場所が変わる場合、送迎や迎えの場所も変わります。期間と場所を、早めに具体的に伝えます。

よくある質問

Q. 専用区画の面積基準は何平方メートルですか。

A. 児童1人につきおおむね1.65平方メートル以上とされています。

Q. 支援の単位は何人までですか。

A. 一の支援の単位を構成する児童の数は、おおむね40人以下とされています。

Q. 放課後児童支援員は何人必要ですか。

A. 支援の単位ごとに2人以上です。うち1人は補助員で代替することができるとされています。

Q. 静養する場所は別室が必要ですか。

A. 別室の設置も認められています。保健室を必要時のみ開放する場合は、面積の算定に含めないとされています。

Q. 学校施設内の場合、改修は誰が判断しますか。

A. 建物の判断は学校側です。学童保育としては、専用区画の確保と使い勝手の改善を交渉します。

Q. 専用施設を建てるべきですか。

A. 利用児童数の変動が大きい事業です。児童数が減ったときに面積が余る点も含めて判断します。

Q. 余裕教室を使う場合、教室だけ確保すればよいですか。

A. 便所、手洗い、給湯、出入口、屋外の遊び場、保護者の動線もあわせて確保します。

Q. 学校の管理区画と分けられない場合は。

A. 施錠と鍵の管理をどうするかを、学校側と取り決めます。運営の前提になる部分です。

Q. 工事はいつ行いますか。

A. 長期休業中も開所するため、期間として使いにくくなります。平日の午前中か、代替の場所を確保して行います。

まとめ

放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準では、専用区画の面積は児童1人につきおおむね1.65平方メートル以上、一の支援の単位を構成する児童の数はおおむね40人以下、放課後児童支援員は支援の単位ごとに2人以上とされています。専用区画には、遊び及び生活の場と静養する場所の機能が必要です。

判断の枠組みは、場所の形態で変わります。専用施設を所有していれば他の施設と同じ判断になりますが、学校施設内や他施設の一部を使っている場合、建物の判断は自分たちでは行えません。専用区画の確保と使い勝手の改善が、できることの範囲になります。

学校の改築や長寿命化改修の計画があるなら、その機会に専用区画を組み込めるかを交渉します。複合化の区分で補助率が上がる可能性もあるため、計画が動き出す前に協議することが重要です。

利用児童数の変動が大きい事業であることも、判断に影響します。専用施設を建てると、児童数が減ったときに面積が余ります。学校施設の活用であれば、必要な区画を調整しやすくなります。

参考・出典

記載の制度は公表時点のものです。個別の適用は市区町村にご確認ください。

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