この記事は、学校施設の設計・施工を行う株式会社光建舎が作成しています。設計(ウイングスペース一級建築士事務所)から施工まで一社で対応し、専門学校・高校・自治体の学校施設を手がけています。

特別支援学校は改修か建替えか?

判断基準・費用比較・長寿命化の考え方

特別支援学校の施設には、他の学校種にない前提があります。教室が足りていません。

令和7年10月1日現在で3,192教室の不足が生じており、45都道府県に及びます。つまり、老朽化への対応と、教室の確保を同時に進める必要があります。

この記事では、①教室不足の現状、②判断の材料、③面積と設備の条件、④費用の比べ方、⑤進め方、の5点を整理します。

この記事の要点

  • 公立特別支援学校の教室不足は、令和7年10月1日現在で3,192教室
  • 45都道府県で不足が生じている
  • 前回調査(令和5年10月1日現在3,359教室)から167教室の減少
  • 令和8年度までに解消が計画されているのは395室
  • 各都道府県に対して集中取組計画の策定・実施が通知されている

教室不足はどの程度か?

3,192教室が不足しています。

文部科学省が令和8年4月10日に公表した「公立特別支援学校における教室不足調査の結果」(令和7年10月1日現在)によれば、45都道府県で3,192教室の不足が生じています。

項目内容
調査時点令和7年10月1日現在
公表日令和8年4月10日
不足教室数3,192教室
前回調査令和5年10月1日現在で3,359教室
増減167教室の減少
不足が生じている都道府県45都道府県
令和8年度までの解消計画395室

前回調査からは減少していますが、解消には至っていません。各都道府県に対しては、集中取組計画の策定・実施が通知されており、今後のフォローアップが予定されています。

老朽化と教室不足が同時に来る

他の学校種では、老朽化への対応が主な論点です。特別支援学校では、そこに教室の確保が加わります。

改修で対応するのか、増築するのか、建て替えるのか。教室数を増やせるかどうかが、判断の材料に入ります。

補助制度を含めた整備の進め方は特別支援学校の施設整備にはどの補助金が使えるか?にまとめています。

判断の材料は何か?

6つあります。

材料見るもの
教室数の不足何教室足りないか。今後の在籍者数の見通し
建物の状態躯体の劣化、耐震性能、設備の状態
敷地の条件増築の余地があるか。運動場の面積
設置基準への適合校舎、運動場、必要な施設が基準を満たすか
バリアフリーの水準エレベーター、便所、スロープ、動線
通学の条件スクールバスの発着、乗降の場所

教室不足の解消を優先する

教室が足りない状態では、特別教室を普通教室に転用したり、1つの教室を仕切って2学級で使ったりする対応が取られます。

これは教育環境として望ましい状態ではありません。老朽化への対応より、教室の確保が優先される場面があります。まず何教室足りないのかを確定します。

増築で対応できるか

敷地に余裕があれば、増築で教室を増やせます。建ぺい率、容積率、運動場の面積、既存部分への影響。設計者を通じて確認します。

増築の規模によって、既存部分に現行基準への適合が求められる範囲が変わります。この確認を先に済ませます。

判断の枠組みは学校は建替え・長寿命化改修・統合のどれを選ぶ?にまとめています。

面積と設備の条件は何が違うのか?

必要な空間が多くなります。

項目特別支援学校での条件
教室の広さ車椅子や介助のスペースが必要
廊下の幅車椅子のすれ違い、介助を伴う移動
便所介助できる広さ、ベッド、シャワー
更衣・着替えプライバシーに配慮した場所
医療的ケア処置の場所、静養の場所、看護職員の執務の場所
動線スクールバスの乗降から教室まで段差なく
収納個別の用具、教材、車椅子の置き場

既存の校舎では足りないことが多い

古い校舎では、廊下の幅、便所の広さ、エレベーターの有無が課題になります。長寿命化改修で対応できる範囲と、できない範囲を切り分けておきます。

廊下の幅は、躯体に関わるため改修では変えられません。この点が、改築を選ぶ理由になることがあります。

医療的ケアへの対応

医療的ケアが必要な児童生徒が在籍する場合、処置の場所、静養の場所、看護職員の執務の場所が必要になります。

既存の校舎に後から確保するのは難しい部分です。改修の計画に含められるかを、早い段階で確認します。給排水と電源の条件も関わります。

費用はどう比べるのか?

教室数の確保を前提に並べます。

項目改築増築長寿命化改修
教室数の増加必要な数を確保できる敷地の条件による転用の範囲に限られる
廊下の幅・動線設計に織り込める増築部分のみ既存の躯体に制約される
初期費用大きい中程度小さい
工事中の教育活動仮設または移転が必要既存部分は使える区画を分けて施工
バリアフリー現行水準で計画増築部分のみ部分的な対応

工事費、修繕費、光熱費を同じ期間で足し合わせます。特別支援学校では、空調と換気の運転時間が長くなる傾向があり、光熱費の比重が大きくなります。

長寿命化改修の内容は学校施設の長寿命化改修とは?を参照してください。

分校・分教室という選択肢

本校の増築が難しい場合、分校や分教室を設ける方法があります。高等学校や廃校となった小中学校の施設を活用する例があります。

通学の負担を減らせる場合もあります。一方、施設が分散すれば、管理と職員の配置の負担が増えます。両方を並べて比べます。

バリアフリーはどこまで求められるのか?

移動の全経路で考えます。

部分的にスロープを付けても、途中に段差があれば移動できません。スクールバスの乗降から教室、便所、体育館、運動場まで、一連の経路として確認します。

経路確認する点
乗降場所から昇降口屋根、段差、勾配、雨天時の状態
昇降口から教室廊下の幅、扉の開閉、床の仕上げ
階の移動エレベーターの有無、かごの広さ、操作盤の高さ
便所介助の広さ、手すり、ベッド、シャワー
体育館・運動場段差、扉の幅、床の仕上げ
避難車椅子での避難経路、一時待避の場所

エレベーターの設置が難しい場合

既存の校舎にエレベーターを設置するには、位置の確保と構造の検討が必要です。設置できない場合、階の使い方で対応することになります。

低層階に必要な機能を集める、移動を伴わない時間割にする。運用で補える範囲を確認したうえで、施設の判断に戻ります。

避難の計画

車椅子を使う児童生徒の避難は、階段では難しくなります。一時待避の場所、介助の体制、避難用の設備。改修の計画に含めます。

財源はどう組むのか?

公立は都道府県の予算が中心です。

特別支援学校の設置は都道府県が中心です。学校施設環境改善交付金の対象に特別支援学校が含まれる区分があります。

補助の区分と要件は事業によって異なります。教室不足の解消に関する事業の扱いも含め、都道府県の担当課に確認します。制度の全体像は公立学校施設整備費(国庫補助)の基礎知識を参照してください。

集中取組計画との関係

各都道府県に対して、集中取組計画の策定・実施が通知されています。個別の学校の整備は、この計画の中に位置づけられます。

計画と現場の状況がずれている場合、計画の見直しが必要になります。在籍者数の推計は数年で前提が変わるため、定期の更新が欠かせません。

在籍者数の見通しはどう立てるのか?

障害の種別ごとに分けます。

特別支援学校の在籍者数は、学校全体の合計では動きが読めません。障害の種別ごと、学部ごとに分けて見る必要があります。

区分見るもの
学部小学部、中学部、高等部それぞれの在籍者数
障害の種別知的障害、肢体不自由、病弱など
通学区域近隣の学校との関係、通学の範囲
医療的ケア対象となる児童生徒の数の推移
進学の動向小中学校の特別支援学級からの進学

高等部の在籍者が増えている地域もあります。学部によって必要な教室の種類と数が違うため、合計だけでは計画が立てられません。

小中学校の特別支援学級から見通す

小中学校の特別支援学級の在籍者数を追えば、数年後の特別支援学校の規模が予測しやすくなります。教育委員会の中で情報を共有します。

通学の範囲も見直す

在籍者が増えている学校では、通学区域の見直しや分校の設置で対応する方法があります。施設の整備と通学区域の検討は、同時に進めます。

工事はどう進めるのか?

配慮すべき点が多くなります。

児童生徒の特性によって、環境の変化が大きな負担になる場合があります。音、におい、動線の変更、見慣れない人の出入り。

  • 工事の音が出る時間帯を、授業と個別の対応から決める
  • 動線の変更は、段階を追って慣らす
  • 仮囲いや掲示は、分かりやすい表示にする
  • 工事関係者の出入りを、児童生徒の動線から分離する
  • 変更を事前に丁寧に伝える

移転が難しい

仮設校舎への移転は、児童生徒への負担が大きくなります。バリアフリーの条件を満たす仮設を用意する必要もあります。

区画を分けて段階的に進める方法が、現実的な場合が多くなります。

スクールバスの動線

工事車両とスクールバスの動線が交差しないようにします。乗降の場所が変わる場合、保護者と運行の事業者にも早めに伝えます。

よくある質問

Q. 特別支援学校の教室不足はどの程度ですか。

A. 令和7年10月1日現在で3,192教室の不足が生じており、45都道府県に及びます。

Q. 前回調査から改善していますか。

A. 令和5年10月1日現在の3,359教室から167教室の減少です。解消には至っていません。

Q. 解消の見込みはありますか。

A. 令和8年度までに解消が計画されているのは395室です。各都道府県に集中取組計画の策定・実施が通知されています。

Q. 廊下の幅は改修で変えられますか。

A. 躯体に関わるため、改修では変えられません。改築を選ぶ理由になることがあります。

Q. 増築で教室を増やせますか。

A. 敷地の条件によります。増築の規模によって、既存部分への適合が求められる範囲も変わります。

Q. 工事中の移転はできますか。

A. 児童生徒への負担が大きく、バリアフリーの条件を満たす仮設も必要です。区画を分けて進める方が現実的な場合が多くなります。

Q. 在籍者数の見通しはどう立てますか。

A. 学部ごと、障害の種別ごとに分けて見ます。小中学校の特別支援学級の在籍者数からも予測できます。

Q. 分校や分教室は選択肢になりますか。

A. 本校の増築が難しい場合の方法です。高等学校や廃校の施設を活用する例があります。

Q. 医療的ケアの場所は改修で確保できますか。

A. 処置の場所、静養の場所、看護職員の執務の場所が必要です。既存の校舎では難しい場合があります。

まとめ

公立特別支援学校の教室不足は、令和7年10月1日現在で3,192教室、45都道府県に及びます。前回調査の3,359教室から167教室の減少ですが、解消には至っていません。令和8年度までに解消が計画されているのは395室です。

この状況では、老朽化への対応と教室の確保を同時に進める必要があります。改修で転用できる範囲には限りがあるため、増築や改築が選択肢に入ります。

特別支援学校では、必要な空間が他の学校種より多くなります。教室の広さ、廊下の幅、介助できる便所、医療的ケアの場所、スクールバスからの動線。このうち廊下の幅は躯体に関わるため、改修では変えられません。この点が判断を分けます。

工事の進め方でも配慮が要ります。環境の変化が児童生徒の負担になる場合があり、仮設への移転も難しくなります。区画を分けて段階的に進める方法が現実的です。集中取組計画の中で、個別の学校をどう位置づけるかを都道府県と確認してください。

参考・出典

記載の制度・数値は公表時点のものです。最新の内容は所管省庁および都道府県の公表資料でご確認ください。

CONTACT

学校施設のご相談

その工事、補助金が使えるか無料でチェックします

トイレ・空調・体育館・玄関・耐震など、検討中の工事に使える国や都道府県の補助制度を、公表資料をもとに確認して3営業日以内にご回答します。「補助金が使えないか調べるよう言われた」という段階のご相談で構いません。

補助金の無料チェックを依頼する

株式会社光建舎は、設計(ウイングスペース一級建築士事務所)から施工まで一社で対応しています。図面や仕様が固まっていない計画段階からのご相談も承っています。概算だけ先に欲しい、という段階でも構いません。

受付時間 平日 9:00〜18:00