申請するのは施設の設置者です。
公立学校であれば市町村または都道府県、私立学校であれば学校法人。設計事務所や施工会社が申請者になることはありません。
ただし実務では、申請に添付する図書の多くを設計者が作成します。設置者が申請の主体でありながら、中身は設計者が組み立てる。この分担が曖昧だと、申請の期限に間に合わなくなります。
そして補助の制度は、設計が一定まで進まないと申請できません。設計の発注が遅れれば、その年度の申請を逃します。
この記事では、①申請の主体、②実務の分担、③年度のスケジュール、④設計者に求めること、⑤つまずきやすい点、の5点を整理します。
目次
この記事の要点
- 公立学校施設整備費負担金および学校施設環境改善交付金の申請者は、施設の設置者である市町村または都道府県
- 私立学校の補助金は学校法人が申請者になる
- 設計事務所や施工会社は申請者にはなれず、添付図書の作成を担う
- 公立学校では個別施設計画への位置づけが前提になる事業があるため、計画の整備が申請の前段にある
- 設計が一定まで進まないと申請できないため、設計の発注時期が申請の可否を決める
申請の主体は誰か?
施設の設置者です。
| 学校の種類 | 設置者 | 申請者 |
|---|---|---|
| 公立小中学校 | 市町村 | 市町村 |
| 公立高等学校 | 都道府県 | 都道府県 |
| 私立学校 | 学校法人 | 学校法人 |
| 国立学校 | 国立大学法人等 | 法人 |
公立学校施設整備費負担金および学校施設環境改善交付金は、施設費負担法に基づく制度です。申請は施設の設置者である地方公共団体が行います。
都道府県を経由する場合がある
市町村が申請する場合、都道府県を経由する手続きになることがあります。都道府県が取りまとめ、国へ提出する流れです。
この場合、都道府県への提出期限が実質的な締切になります。国の期限より前に動く必要があります。
庁内の担当部署
自治体の中では、教育委員会の施設担当が実務を担うのが通例です。財政部門との調整、議会への説明、契約の手続きが並行して進みます。
| 部署 | 役割 |
|---|---|
| 教育委員会 施設担当 | 申請の実務、設計の発注、工事の監理 |
| 財政部門 | 予算の確保、地方債の起債 |
| 契約部門 | 入札と契約の手続き |
| 議会 | 予算の議決 |
この4者の日程が噛み合わないと、申請も工事も進みません。施設担当だけが急いでも動きません。
私立学校は法人が担う
私立学校では、学校法人の事務局が申請を担います。理事会の決議、資金計画、金融機関との調整が並行します。
公立と違い、採択されなかった場合の資金を自前で用意する必要があります。この点で判断の重さが違います。
実務の分担はどうなるのか?
設置者が主体、設計者が図書の作成です。
| 作業 | 担う者 |
|---|---|
| 申請の意思決定 | 設置者 |
| 事業区分の判断 | 設置者(所管部署と協議) |
| 事業費の算定 | 設計者が積算し、設置者が確認 |
| 図面の作成 | 設計者 |
| 現況の調査結果 | 設計者または調査会社 |
| 個別施設計画との整合 | 設置者 |
| 申請書の作成と提出 | 設置者 |
| 所管部署との協議 | 設置者(設計者が同席する場合がある) |
設計者が申請書そのものを作ることはできません。一方、添付する図面、数量、工事の内容の説明は設計者がつくります。
設計者の選定が先に来る
申請に必要な図書を揃えるには、設計が進んでいる必要があります。したがって設計者の選定と契約が、申請の前段にあります。
補助を使う公立学校の工事では、設計と施工を分ける形が一般的です。設計の成果が申請の図書になるため、設計者が決まらないと申請の準備が始まりません。
発注者側の体制
申請の実務、設計者との協議、所管部署とのやりとり。これを担う人員が庁内に必要です。担当が1人で、他の業務と兼務している状態では回りません。
発注者側の体制の整え方は発注者側の体制はどう組むのか?で扱っています。
施工会社は申請に関与しない
補助の申請は設計の段階で行います。施工会社が決まるのは、申請と採択の後です。
したがって施工会社が申請に関与することはありません。「補助金の申請も手伝います」という提案があれば、どの範囲を指しているのかを確認してください。
年度のスケジュールはどうなるのか?
前年度から動きます。
| 時期 | 作業 |
|---|---|
| 2年前 | 個別施設計画への位置づけ、優先度の整理 |
| 前年度前半 | 現況の調査、基本構想 |
| 前年度後半 | 設計者の選定、基本設計 |
| 前年度末から当年度初 | 事業の要望・申請 |
| 当年度 | 採択、実施設計、入札、契約 |
| 当年度(夏季等) | 工事 |
| 当年度末 | 完了、実績報告 |
実際の日程は制度と自治体によって異なりますが、前年度から動き始める構造は共通です。
設計の発注が間に合わないと1年ずれる
申請に必要な図書が揃わなければ、その年度の申請を見送ることになります。設計の発注が数か月遅れると、工事が1年遅れます。
逆算して、いつまでに設計者を決めるかを先に確定してください。
工事の時期は夏休みに集中する
学校の工事は、授業への影響を避けるため夏休みや冬休みに集中します。この時期に合わせると、設計と入札の期間が圧縮されます。
工事の進め方は学校の改修工事はどう進めるのか?で扱っています。
計画がないと申請できない事業がある
長寿命化改良など、個別施設計画への位置づけが前提になる事業があります。計画がなければ、その年度の申請はできません。
計画の作り方は学校の個別施設計画はどう作るのか?で扱っています。計画の整備自体に時間がかかるため、2年前から動く項目です。
設計者に何を求めるのか?
事業区分に合った図書です。
| 求めるもの | 内容 |
|---|---|
| 事業区分に合った工事内容 | 大規模改造、長寿命化改良、耐震補強などの区分に沿った整理 |
| 補助対象と対象外の切り分け | 総事業費の内訳 |
| 数量の根拠 | 面積、延長、数量の算定根拠 |
| 現況の調査結果 | 劣化の状況、耐震性能 |
| 工程の案 | 授業への影響を踏まえた工程 |
| 所管部署との協議への同席 | 技術的な説明 |
ここで重要なのは、補助の対象と対象外の切り分けです。この整理がないと、必要な一般財源の額が出ません。
事業区分の経験があるかを確認する
学校施設の補助制度は、一般の建築の設計とは別の知識が必要です。事業区分の選び方、数量の算定、所管部署との協議。経験のない設計者に任せると、申請の段階で手戻りが出ます。
設計者の選定では、学校施設の補助を使った実績を確認してください。業者選定のチェックポイントは学校改修の業者選びは何を見るのか?で扱っています。
耐震補強は別の手続きが絡む
耐震補強については、耐震診断の結果と補強の計画について、判定を受ける手続きが関わることがあります。
判定を受ける手続きには期間がかかります。補強の計画を固める前に、必要な手続きと所要期間を所管部署に確認してください。
調査結果がないと数量が出ない
劣化の範囲、アスベストの有無、構造の状態。これらが分からないと、工事の数量が出ません。数量が出なければ事業費も出ず、申請できません。
調査を前年度に済ませる段取りが必要です。
概算と実施設計の差
申請の段階では、まだ実施設計が終わっていないことがあります。この段階の事業費は概算で、実施設計の結果と差が出ます。
| 段階 | 事業費の精度 |
|---|---|
| 基本構想 | 大まかな見込み |
| 基本設計 | 数量の概算 |
| 実施設計 | 積算の根拠が揃う |
| 入札 | 実際の契約額 |
申請の事業費と実際の契約額に差が出た場合の扱いは、制度の区分によって異なります。差が大きくなりそうな場合は、所管部署に相談してください。
つまずきやすい点はどこか?
4つあります。
| つまずき | 内容 |
|---|---|
| 設計の発注が遅い | 申請に必要な図書が揃わない |
| 個別施設計画がない | 位置づけが前提の事業に申請できない |
| 補助対象の切り分けがない | 必要な一般財源が出ず、予算が組めない |
| 庁内の日程が合わない | 財政、契約、議会の日程と噛み合わない |
いずれも制度の知識ではなく、段取りの問題です。
採択されない場合を決めておく
申請しても採択されないことがあります。国の予算の範囲があり、全国の申請が優先度で判断されます。
採択されなかった場合に工事を延期するのか、単独で実施するのかを、申請の前に決めてください。この判断が決まっていないと、採択の結果が出てから庁内で議論が始まり、工事の時期を逃します。
実績報告まで含めて考える
工事が終われば終わりではありません。実績報告と額の確定という手続きが残ります。
報告に必要な書類は、工事中に揃えておく必要があります。完了後に集め直すことになると、手間が増えます。
複数校をまとめる場合
複数の学校の工事をまとめて申請する場合、学校ごとに図書が必要になります。1校分の作業が校数分になります。
設計者の体制と、庁内の担当者の人数を確認してください。
よくある質問
Q. 申請時の事業費と契約額に差が出たらどうなりますか。
A. 申請の段階では実施設計が終わっていないことがあり、概算と契約額に差が出ます。扱いは制度の区分によって異なるため、差が大きくなりそうな場合は所管部署に相談してください。
Q. 補助金は誰が申請しますか。
A. 施設の設置者です。公立小中学校は市町村、公立高等学校は都道府県、私立学校は学校法人が申請者になります。
Q. 設計事務所が代わりに申請できますか。
A. できません。申請者は設置者です。設計者は添付する図面、数量、工事内容の説明を作成する役割です。
Q. 施工会社が申請を手伝えますか。
A. 申請は設計の段階で行い、施工会社が決まるのはその後です。関与することはありません。
Q. いつから動けばよいですか。
A. 前年度からです。個別施設計画への位置づけが前提になる事業では、2年前から動く必要があります。
Q. 設計の発注が遅れるとどうなりますか。
A. 申請に必要な図書が揃わず、その年度の申請を見送ることになります。数か月の遅れが、工事の1年の遅れになります。
Q. 設計者を選ぶときに何を確認しますか。
A. 学校施設の補助を使った実績です。事業区分の選び方、数量の算定、所管部署との協議には、一般の建築の設計とは別の知識が必要です。
まとめ
補助金を申請するのは施設の設置者です。公立小中学校は市町村、公立高等学校は都道府県、私立学校は学校法人。設計事務所や施工会社が申請者になることはありません。
ただし実務では、申請に添付する図面、数量、工事内容の説明を設計者が作成します。設置者が主体でありながら中身は設計者が組み立てるため、この分担を早い段階で明確にしてください。
スケジュールは前年度から動きます。現況の調査、基本構想、設計者の選定、基本設計。これらが揃わないと申請できません。設計の発注が数か月遅れると、工事が1年遅れる構造です。長寿命化改良のように個別施設計画への位置づけが前提になる事業では、2年前から動く必要があります。
設計者に求めるのは、事業区分に合った工事内容の整理と、補助の対象と対象外の切り分けです。この切り分けがないと、必要な一般財源の額が出ません。選定では学校施設の補助を使った実績を確認してください。
つまずくのは制度の知識ではなく段取りです。設計の発注の遅れ、個別施設計画の不在、補助対象の切り分けの欠落、庁内の日程の不整合。そして採択されなかった場合の対応を、申請の前に決めておくことです。
参考・出典
- 文部科学省「公立学校施設整備に関する実務」 https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyosei/zitumu.htm
- 文部科学省「公立学校施設費国庫負担金等に関する関係法令等の運用細目・交付要綱等」 https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyosei/unyou/index.htm
- e-Gov法令検索「義務教育諸学校等の施設費の国庫負担等に関する法律」 https://laws.e-gov.go.jp/law/333AC0000000081
- 文部科学省「私立学校施設整備費補助金等の交付要綱等」 https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shinkou/07021403/002/005.html
- e-Gov法令検索「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」 https://laws.e-gov.go.jp/law/330AC0000000179
記載の制度および手続きは公表時点のものです。申請の経路、提出期限および必要な書類は制度の区分と自治体の運用により異なります。個別の適用は文部科学省および都道府県・市町村の施設整備所管部署にご確認ください。
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