この記事は、学校施設の設計・施工を行う株式会社光建舎が作成しています。設計(ウイングスペース一級建築士事務所)から施工まで一社で対応し、専門学校・高校・自治体の学校施設を手がけています。

学校の木質化のメリットは何か?

制度の背景と内装制限

内装の木質化は既存校舎でも進められます。

木造の校舎を新築する話と、既存の鉄筋コンクリート造の校舎の内装を木質化する話は別です。既存校舎の改修で現実的なのは後者で、床、腰壁、天井、建具に木材を使う形になります。

制度の背景としては、令和3年10月1日に「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が施行されました。従前は「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」(平成22年法律第36号)で、対象が公共建築物から建築物一般に広がりました。

ただし内装に木材を使う場合、内装制限の規定が関わります。使える範囲と仕様に制約があります。

この記事では、①制度の背景、②木質化の効果、③内装制限、④維持管理、⑤進め方、の5点を整理します。

この記事の要点

  • 令和3年10月1日に「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が施行された
  • 従前は「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」(平成22年法律第36号)で、対象が公共建築物から建築物一般に広がった
  • 既存の鉄筋コンクリート造の校舎でも、内装の木質化は進められる
  • 内装に木材を使う場合、建築基準法の内装制限の規定が関わるため、使える範囲と仕様に制約がある
  • 木材は定期的な手入れが必要で、維持管理の体制を前提に計画する

制度の背景はどうなっているのか?

法律が改称され、対象が広がりました。

項目 内容
現在の法律名 脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律
施行日 令和3年10月1日
従前の法律名 公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律(平成22年法律第36号)
基本方針 令和3年10月に木材利用促進本部により定められ、木材利用の目標等を示している

対象が広がった

従前の法律は公共建築物を対象としていました。改称後は建築物一般を対象とし、脱炭素社会の実現という目的が明示されています。

学校は公共建築物に当たるため、従前から対象でした。改称により、民間の建築物も含めた枠組みになっています。

基本方針が目標を示す

令和3年10月に木材利用促進本部により基本方針が定められ、木材利用の目標等が示されています。

自治体が独自の方針を定めている場合もあります。所在する自治体の方針を確認してください。

新築と改修で意味が違う

新築では、構造材に木材を使うか、内装に使うかの選択があります。既存の鉄筋コンクリート造の校舎の改修では、内装に使う形になります。

構造材としての木材利用は新築の論点で、改修では内装の話になります。

補助との関係

木材の利用に対する支援制度が設けられている場合があります。国の制度と自治体の制度の両方を確認してください。

ただし補助の有無で木質化の判断をするのではなく、建物の用途と維持管理の体制から考えてください。

木質化の効果は何か?

4つに整理できます。

効果 内容
触感と見え方 温かみのある質感
吸放湿 室内の湿度の変動を緩やかにする
衝撃の緩和 床材として転倒時の衝撃を和らげる
地域の木材の活用 地域の林業と結びつく

効果は定量的に示しにくい

木質化の効果として快適性や学習への影響が語られますが、これを数値で示すことは難しい部分があります。

したがって「木質化すれば学力が上がる」といった説明は避け、確認できる範囲で説明してください。

床材としての効果

床を木質化すると、転倒時の衝撃が和らぎます。また足触りが変わります。

一方、傷が付きやすく、水に弱い。清掃の方法が変わります。

吸放湿の性質

木材は湿度の変動に応じて水分を吸ったり放ったりします。これにより室内の湿度の変動が緩やかになります。

ただし効果は使う量と仕上げによります。塗装で表面を覆うと、この性質は小さくなります。

地域の木材を使う意味

地域の木材を使えば、地域の林業と結びつきます。学校の整備が地域の産業につながるという説明ができます。

ただし調達の時期と量の確保が必要です。計画の早い段階で、調達の見通しを確認してください。

内装の木質化の実務

内装の木質化の進め方は学校の内装木質化はどう進めるのか?で扱っています。

内装制限はどう関わるのか?

使える範囲に制約があります。

建築基準法は、火災時の延焼を抑えるため内装の材料に制限を設けています。学校は別表第一(い)欄の用途で、規模によって内装制限の対象になります。

確認項目 内容
対象となる部分 居室、通路、階段など
必要な性能 難燃材料、準不燃材料、不燃材料
木材の扱い そのままでは性能を満たさない場合がある
不燃処理 薬剤処理により性能を得る方法
使える範囲 腰壁より下など、範囲を限る方法

木材をそのまま使えない部分がある

内装制限の対象となる部分では、木材をそのまま使えないことがあります。難燃処理や準不燃の認定を受けた材料を使う必要があります。

認定を受けた材料は、無処理の木材より費用が高くなります。

腰壁より下に限る方法

内装制限には、壁の高さ1.2メートル以下の部分について制限の対象外とする扱いがあります。この範囲に木材を使えば、無処理の木材が使える場合があります。

腰壁の木質化は、この考え方に基づく形です。触れる部分に木材を使い、上部は内装制限に適合する材料とします。

床は内装制限の対象外

内装制限は壁と天井が対象で、床は対象外とされています。したがって床の木質化は、内装制限の制約を受けません。

床を木質化する方法が、取りやすい選択になります。

確認申請との関係

内装の変更だけであれば、確認申請は不要です。ただし内装制限の規定を守る義務は残ります。

確認申請の線引きは学校の改修に建築確認は必要なのか?で扱っています。手続きが不要なことと、基準に適合しなくてよいことは別です。

防火区画との関係

防火区画を構成する壁に木材を使う場合、区画の性能を損なわない構成が必要です。

防火区画の考え方は防火区画の基本とは何か?で扱っています。

維持管理はどうなるのか?

手入れが前提になります。

項目 内容
清掃 水拭きの可否、洗剤の種類
塗装の塗り替え 周期と範囲
傷と凹み 補修の方法
水濡れ 雨漏りと結露への弱さ
日射による変色 直射日光が当たる部分
部分的な交換 傷んだ部分だけ替えられるか

水に弱い

木材は水に弱く、濡れた状態が続くと腐朽します。雨漏り、結露、水をこぼす場所。

トイレ、調理室、プールの周辺といった水を使う場所は、木質化に向きません。

塗装の塗り替えが必要

表面を保護する塗装は、経年で劣化します。塗り替えの周期と範囲を、計画の段階で見込んでください。

塗り替えを行わないと、汚れが染み込み、見た目が悪くなります。

傷は付くもの

学校では、床や腰壁に傷が付きます。これを許容するか、補修するかの方針を決めてください。

無垢材であれば削って補修できますが、薄い化粧材では交換になります。

維持管理の体制が前提

木質化は、手入れをする体制があって初めて効果が続きます。清掃の方法を学校に伝え、塗り替えを計画に入れてください。

手入れがなければ、数年で汚れて傷んだ内装になります。内装改修の基本的な考え方は学校の内装改修の基本とは何か?で扱っています。

清掃の方法を伝える

水拭きの可否、使える洗剤、ワックスの種類。これらを学校に伝えてください。

従来と同じ清掃を続けると、木材が傷みます。

どう進めるのか?

範囲を絞ります。

手順 内容
1 木質化の目的を決める
2 使う範囲を決める(床、腰壁、天井、建具)
3 内装制限を確認する
4 水を使う場所を除外する
5 維持管理の方法を決める
6 材料を選ぶ
7 設計に入る

全面ではなく範囲を絞る

校舎全体を木質化すると、費用と維持管理の負担が大きくなります。効果が見える範囲に絞ってください。

範囲 評価
床 内装制限の対象外。効果が分かりやすい
腰壁 触れる部分。内装制限の扱いを確認
玄関・昇降口 来校者の印象に関わる
図書室・多目的室 滞在時間が長い
天井 内装制限の確認が必要
トイレ・調理室 水に弱いため避ける

目的を言葉にする

快適性の向上、地域の木材の活用、脱炭素への対応、学習環境の改善。目的によって使う範囲と量が変わります。

目的を言葉にしないと、「木を使った」だけの結果になります。

調達の見通しを確認する

地域の木材を使う場合、必要な量と時期の確保が必要です。乾燥に期間がかかる材もあります。

計画の早い段階で、調達の見通しを確認してください。

維持管理の費用を見込む

塗り替え、部分的な交換、清掃の手間。これらを維持管理の計画に含めてください。

初期の工事費だけで判断すると、数年後に手入れができず劣化します。

よくある質問

Q. 木質化の制度上の背景は何ですか。

A. 令和3年10月1日に「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が施行されました。従前は「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」(平成22年法律第36号)です。

Q. 鉄筋コンクリート造の校舎でも木質化できますか。

A. できます。既存校舎の改修では、床、腰壁、天井、建具に木材を使う内装の木質化が現実的です。

Q. 内装制限は関わりますか。

A. 関わります。内装制限の対象となる部分では、木材をそのままでは使えないことがあります。難燃処理や準不燃の認定を受けた材料が必要になります。

Q. 床の木質化にも制限はありますか。

A. 内装制限は壁と天井が対象で、床は対象外とされています。床の木質化は取りやすい選択になります。

Q. 木質化に向かない場所はありますか。

A. 水を使う場所です。トイレ、調理室、プールの周辺は、木材が濡れた状態が続くと腐朽するため向きません。

Q. 維持管理で何が必要ですか。

A. 清掃の方法の変更、塗装の塗り替え、傷の補修です。手入れがなければ数年で汚れて傷んだ内装になります。

まとめ

学校の木質化では、既存の鉄筋コンクリート造の校舎でも内装の木質化が進められます。構造材に木材を使う話は新築の論点で、改修では床、腰壁、天井、建具に木材を使う形になります。

制度の背景としては、令和3年10月1日に「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が施行されました。従前は「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」(平成22年法律第36号)で、対象が公共建築物から建築物一般に広がっています。

内装に木材を使う場合、内装制限の規定が関わります。対象となる部分では木材をそのままでは使えないことがあり、難燃処理や準不燃の認定を受けた材料が必要になります。一方、内装制限は壁と天井が対象で床は対象外とされているため、床の木質化が取りやすい選択になります。

効果は、触感と見え方、吸放湿、床材としての衝撃の緩和、地域の木材の活用です。ただし定量的に示しにくい部分があるため、確認できる範囲で説明してください。

維持管理が前提になります。木材は水に弱く、濡れた状態が続くと腐朽します。トイレ、調理室、プールの周辺は向きません。そして塗装の塗り替えと傷の補修が必要で、手入れがなければ数年で傷んだ内装になります。清掃の方法を学校に伝えてください。

進め方では、範囲を絞ってください。校舎全体を木質化すると費用と維持管理の負担が大きくなります。床、腰壁、玄関、図書室といった効果が見える範囲から始め、維持管理の費用を計画に含めることです。

参考・出典

記載の法令および制度は公表時点のものです。内装制限の適用、使用できる材料および支援制度の内容は建物の規模、用途および所管の運用により異なります。個別の適用は特定行政庁、所管部署および設計者にご確認ください。

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