目次
発注の方式と注意点
できます。ただしまとめる対象を分けて考える必要があります。
まとめられるのは、計画、調査、設計、工事、維持管理です。このうち計画と調査はまとめる効果が大きく、工事はまとめ方によって効果が変わります。
工事をまとめれば、業者の手配と仮設の計画で効率が上がります。一方、受注できる業者の規模が限られ、地元の業者が参加できなくなることがあります。
そして補助の申請は、学校ごとに図書が必要です。1校分の作業が校数分になります。
この記事では、①まとめられる対象、②設計をまとめる、③工事の発注方式、④補助の扱い、⑤進め方、の5点を整理します。
この記事の要点
- まとめられるのは、計画、調査、設計、工事、維持管理の5つで、それぞれ効果が異なる
- 計画と調査はまとめる効果が大きく、優先度の判断に必要な情報が一度に揃う
- 工事をまとめると受注できる業者の規模が限られ、地元の業者が参加しにくくなる
- 補助の申請は学校ごとに図書が必要で、1校分の作業が校数分になる
- PFIなどの手法では、設計、施工、維持管理を一体で長期の契約にする形がある
まとめられる対象は何か?
5つに分けて考えます。
| 対象 | まとめる効果 |
|---|---|
| 計画 | 大きい。優先度の判断ができる |
| 調査 | 大きい。同じ基準で比較できる |
| 設計 | 中。標準化できる部分がある |
| 工事 | 内容による。業者の規模に影響 |
| 維持管理 | 大きい。点検と保守の効率が上がる |
計画をまとめる効果
全校の状態を一覧にすれば、どこから手をつけるかの判断ができます。1校ずつ個別に判断すると、優先度の高い学校が後回しになることがあります。
個別施設計画の作り方は学校の個別施設計画はどう作るのか?で扱っています。全校を対象にした計画が前提になります。
調査をまとめる効果
同じ基準で調査すれば、学校間の比較ができます。別の年度に別の会社が調査すると、基準が揃わず比較しにくくなります。
優先度を決めるための概略調査は、全校を一度に行う意味があります。一方、工事のための詳細な調査は、工事の対象となる学校だけで足ります。
維持管理をまとめる効果
点検、保守、小修繕。これらを複数校まとめて委託すれば、巡回の効率が上がります。
ただし緊急の対応の速さは、委託の条件によります。
設計の標準化
同じ年代に建った校舎であれば、構造と平面が似ていることがあります。この場合、設計の考え方を標準化できます。
トイレの改修、空調の設置、照明のLED化。仕様を揃えれば、設計と積算の作業が効率化します。
設計をまとめるとどうなるのか?
標準化できる部分とできない部分があります。
| 項目 | 標準化 |
|---|---|
| 仕様(材料、機器の種類) | できる |
| 考え方(優先順位、工法の選択) | できる |
| 図面(配置、寸法) | 学校ごとに異なる |
| 数量 | 学校ごとに異なる |
| 既存の状態への対応 | 学校ごとに異なる |
仕様を揃える効果
トイレの便器、空調の機器、照明器具、床材。仕様を揃えれば、保守の部品が共通になり、将来の更新も容易になります。
学校ごとに違う機器が入ると、保守の体制が複雑になります。
図面は学校ごとに必要
建物の配置、寸法、既存の設備の位置は学校ごとに違います。図面は個別に作成する必要があります。
したがって設計の業務量は、校数に比例する部分が残ります。
設計者の体制を確認する
複数校の設計を一括して発注する場合、設計者の体制が足りるかを確認してください。1校ずつなら対応できても、5校同時では人員が足りないことがあります。
発注者側の体制も同じです。担当が1人で5校の設計を同時に見ることはできません。
既存の状態の違い
同じ年代に建った校舎でも、改修の履歴と劣化の状況は違います。標準の仕様がそのまま当てはまらない学校が出ます。
標準を決めたうえで、個別の調整を許す形にしてください。
工事の発注方式はどうするのか?
まとめ方で結果が変わります。
| 方式 | 内容 |
|---|---|
| 1校ごとに発注 | 地元の業者が参加しやすい |
| 複数校を1件で発注 | 大規模な業者向け。管理は1本 |
| 工種ごとに発注 | 設備工事を複数校まとめるなど |
| 年度ごとに発注 | 計画に沿って毎年発注 |
| PFIなどの手法 | 設計、施工、維持管理を一体で長期契約 |
まとめると地元の業者が参加しにくい
複数校を1件の工事としてまとめると、工事の規模が大きくなります。受注するには一定の施工能力と技術者の配置が必要になり、地元の中小の業者が参加しにくくなります。
地域の業者を育てる観点では、分割して発注する判断があります。
工種ごとにまとめる方法
建築の工事は学校ごとに発注し、設備の工事は複数校をまとめる方法があります。
空調の設置、照明のLED化、ICTの配線。これらは学校ごとの差が小さいため、まとめる効果が出ます。
技術者の配置が制約になる
工事の規模によって、専任の技術者の配置が必要になります。建設業法に基づく技術者の配置要件は、工事の請負代金によって変わります。
令和7年2月1日施行の建設業法施行令の改正では、特定建設業許可が必要となる下請代金の下限が5,000万円(建築工事業は8,000万円)に、専任の監理技術者等の配置が必要となる金額が4,500万円(建築一式工事は9,000万円)に引き上げられました。
まとめることで金額が上がり、要件が変わることがあります。業者選定の確認事項は工事業者はどう選べばいいか?で扱っています。
PFIなどの手法
設計、施工、維持管理を一体で長期の契約にする手法があります。複数校をまとめて対象にする例があります。
考え方は学校施設のPPP・PFIとは何か?で扱っています。長期の契約になるため、児童生徒数の見通しと契約期間の整合が論点になります。
補助の扱いはどうなるのか?
学校ごとに図書が必要です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申請 | 学校ごとに工事の内容と事業費を示す |
| 事業区分 | 学校ごとに判断される |
| 採択 | 学校ごとに判断される場合がある |
| 実績報告 | 学校ごとに必要 |
| 額の確定 | すべての報告が揃うまで確定しない場合がある |
1校分の作業が校数分になる
申請に必要な図書は、学校ごとに作成します。5校なら5校分の図面、数量、事業費の内訳が必要です。
設計者の体制と、庁内の担当者の人数を確認してください。
1校の遅れが全体に影響する
工事が遅れた学校があると、その学校の実績報告が遅れます。すべての報告が揃うまで額が確定しない場合、入金が全体で遅れます。
学校ごとに事業を分けるか、まとめるかの判断には、この点も関わります。
事業区分が学校ごとに違うことがある
同じ工事内容でも、学校の状況によって事業区分が変わることがあります。長寿命化改良に当たる学校と、大規模改造に当たる学校が混在します。
区分が違えば算定割合も違います。申請の実務は学校の補助金申請は誰がやるのか?で扱っています。
採択されない学校が出る可能性
すべての学校が採択されるとは限りません。一部だけ採択された場合に、工事をどう進めるかを決めておいてください。
採択された学校だけ進める、全体を翌年度に延期する、単独で実施する。この判断を申請の前に決めてください。
統合の計画と重ねる
複数校を対象にする計画では、統合の見通しを重ねてください。今後10年で統合する学校に20年分の改修を行う判断は、説明がつきません。
| 学校の区分 | 手入れの水準 |
|---|---|
| 今後も残す学校 | 長寿命化改修を行う |
| 統合先になる学校 | 受入れの整備を含めて改修する |
| 統合して閉じる学校 | 安全の確保と雨漏りの対策に絞る |
| 判断が未定の学校 | 当面の安全を確保し、判断を待つ |
判断が未定の学校に大きな改修を行うと、後から無駄になることがあります。計画の中で、判断の期限を決めてください。
どう進めるのか?
計画から順に広げます。
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| 1 | 全校の状態を調査し、一覧にする |
| 2 | 優先度を決め、年度ごとに割り振る |
| 3 | 仕様を標準化する範囲を決める |
| 4 | 設計の発注方式を決める |
| 5 | 工事の発注方式を決める |
| 6 | 補助の申請を学校ごとに行う |
| 7 | 工程を調整する |
まず全校を一覧にする
棟ごとの築年数、構造、面積、耐震性能、改修の履歴、劣化の状況。これを一覧にすることが出発点です。
この一覧がないまま個別に判断すると、優先度の判断ができません。
標準化と個別対応を分ける
仕様と考え方は標準化し、図面と数量は個別に作成する。この切り分けを先に決めてください。
すべてを標準化しようとすると、現場で合わない部分が出ます。すべてを個別にすると、効率化の効果がなくなります。
地元の業者の参加を考える
工事をまとめると地元の業者が参加しにくくなります。地域の業者を育てる観点と、効率化の観点を並べて判断してください。
工種ごとにまとめる、年度ごとに分けるなど、中間の方式があります。
工程の調整が増える
複数校を同時に進めると、学校ごとの行事予定、工事不可期間、使用の予定を調整することになります。
1校でも調整は必要ですが、校数分の調整が発生します。この作業を担う人員を確保してください。
よくある質問
Q. 統合を予定している学校も対象に含めますか。
A. 残す年数で手入れの水準を分けてください。今後10年で統合する学校に20年分の改修を行う判断は説明がつきません。判断が未定の学校については、判断の期限を計画の中で決めてください。
Q. 複数校をまとめて改修できますか。
A. できます。ただしまとめる対象を分けて考えてください。計画、調査、設計、工事、維持管理の5つで、それぞれ効果が異なります。
Q. まとめる効果が大きいのはどれですか。
A. 計画と調査です。全校の状態を同じ基準で把握すれば、優先度の判断ができます。維持管理も巡回の効率が上がります。
Q. 工事をまとめる問題点は何ですか。
A. 工事の規模が大きくなり、受注するには一定の施工能力と技術者の配置が必要になります。地元の中小の業者が参加しにくくなります。
Q. 設計はどこまで標準化できますか。
A. 仕様と考え方は標準化できます。図面と数量は学校ごとに異なるため、個別に作成する必要があります。
Q. 補助の申請はまとめられますか。
A. 申請に必要な図書は学校ごとに作成します。実績報告も学校ごとに必要で、すべての報告が揃うまで額が確定しない場合があります。
Q. 一部の学校だけ採択された場合はどうしますか。
A. 採択された学校だけ進める、全体を翌年度に延期する、単独で実施する。この判断を申請の前に決めてください。
まとめ
複数校をまとめて改修することはできますが、まとめる対象を分けて考える必要があります。計画、調査、設計、工事、維持管理の5つで、それぞれ効果が異なります。
効果が大きいのは計画と調査です。全校の状態を同じ基準で把握すれば、どこから手をつけるかの判断ができます。別の年度に別の会社が調査すると基準が揃わず、比較しにくくなります。維持管理も、複数校まとめて委託すれば巡回の効率が上がります。
設計では、仕様と考え方を標準化できます。トイレの便器、空調の機器、照明器具、床材の仕様を揃えれば、保守の部品が共通になり将来の更新も容易になります。ただし図面と数量は学校ごとに異なるため、業務量は校数に比例する部分が残ります。
工事をまとめると、工事の規模が大きくなり地元の業者が参加しにくくなります。令和7年2月1日施行の建設業法施行令の改正で、特定建設業許可が必要となる下請代金の下限と、専任の監理技術者等の配置が必要となる金額が引き上げられました。まとめることで金額が上がり、要件が変わることがあります。
補助の申請は学校ごとに図書が必要で、1校分の作業が校数分になります。実績報告も学校ごとで、すべてが揃うまで額が確定しない場合があるため、1校の遅れが全体の入金を遅らせます。
進め方は、まず全校を一覧にすることです。そのうえで標準化する範囲と個別に対応する範囲を分け、発注の方式を決めてください。校数分の工程調整が発生するため、それを担う人員の確保も必要です。
参考・出典
- 文部科学省「学校施設の長寿命化計画(個別施設計画)」 https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyosei/1334433.htm
- 文部科学省「公立学校施設整備に関する実務」 https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyosei/zitumu.htm
- e-Gov法令検索「建設業法」 https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC0000000100
- e-Gov法令検索「建設業法施行令」 https://laws.e-gov.go.jp/law/331CO0000000273
- 内閣府「PPP/PFI推進」 https://www8.cao.go.jp/pfi/
- e-Gov法令検索「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」 https://laws.e-gov.go.jp/law/330AC0000000179
記載の法令および制度は公表時点のものです。技術者の配置要件、補助の申請および採択の判断は工事の内容と所管の運用により異なります。個別の適用は所管部署、特定行政庁および設計者にご確認ください。
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