この記事は、学校施設の設計・施工を行う株式会社光建舎が作成しています。設計(ウイングスペース一級建築士事務所)から施工まで一社で対応し、専門学校・高校・自治体の学校施設を手がけています。

廃校を道の駅にできるのか?

登録要件と駐車場・物販・厨房の計画

廃校を道の駅にする構想は、立地で決まります。

グラウンドがあるため駐車場は確保できます。校舎があるため物販と飲食のスペースも取れます。しかし道の駅は道路の休憩施設であり、幹線道路に面していなければ成立しません。

学校は通学の安全を優先して立地を決めてきました。幹線道路から離れた場所、集落の中、坂の上。この立地が、道の駅としては不利に働きます。

一方、直売所であれば道の駅の登録を取らずに運営できます。構想の初期に、どちらを目指すかを切り分けておく必要があります。

この記事では、①道の駅の登録要件、②立地の判断、③用途変更と消防法、④駐車場と屋外、⑤物販と厨房、の5点を整理します。

この記事の要点

  • 道の駅には、利用者が無料で24時間利用できる十分な容量の駐車場と清潔なトイレが必要
  • 道路及び地域に関する情報を提供する施設と、文化教養施設や観光レクリエーション施設などの地域振興施設が必要
  • 設置者は市町村または市町村に代わり得る公的な団体
  • 物品販売業を営む店舗は消防法施行令別表第一の(4)項、飲食店は(3)項ロで、いずれも特定防火対象物に該当する
  • 幹線道路に面していない立地では、道の駅ではなく直売所として組むほうが現実的

道の駅の登録要件は何か?

休憩機能、情報発信機能、地域連携機能の3つです。

機能 要件
休憩機能(駐車場) 利用者が無料で24時間利用できる十分な容量を持った駐車場
休憩機能(トイレ) 利用者が無料で24時間利用できる清潔なトイレ。障がい者用も設置
情報発信機能 道路及び地域に関する情報を提供する施設(道路情報、観光情報、緊急医療情報等)
地域連携機能 文化教養施設、観光レクリエーション施設などの地域振興施設
設置者 市町村または市町村に代わり得る公的な団体
バリアフリー 施設と施設間経路のバリアフリー化に配慮

ここで廃校活用との相性が問われるのが、24時間という条件です。駐車場とトイレを常時無料で開放する運用になります。

24時間のトイレ開放が負担になる

夜間もトイレを開放すると、清掃、照明、防犯、凍結対策が通年で必要になります。校舎の中のトイレを使う構成では、夜間に建物の一部を開けることになり、管理が難しくなります。

このため、屋外または建物の外周から直接入れる位置に、独立したトイレを設ける構成が一般的です。校舎内のトイレをそのまま使う計画は成立しにくくなります。

設置者が公的な団体に限られる

道の駅の設置者は、市町村または市町村に代わり得る公的な団体です。民間事業者が単独で道の駅を名乗ることはできません。

廃校を民間に売却または貸付して運営させる場合、道の駅としての位置づけは自治体が持ち、運営を委託または指定管理とする形になります。

バリアフリーへの配慮

施設と施設間の経路のバリアフリー化に配慮することが求められます。校舎は段差と階段が多く、屋外から建物内への経路に段差が残っていることが普通です。

バリアフリー改修の考え方は廃校のバリアフリー改修はどこまでやるのか?で扱っています。

立地はどう判断するのか?

通過交通量です。

道の駅は道路の休憩施設です。前面道路の交通量が少なければ、登録要件を満たしても利用されません。直売所としても、通りがかりの客がいなければ売上が立ちません。

確認項目 内容
前面道路の種別 国道、県道、市道
交通量 交通量調査の数値
通過交通の性質 通勤か、観光か、物流か
出入りの安全性 右折での進入が可能か
近隣の道の駅 距離と規模
大型車の対応 進入路の幅と回転半径

出入りの安全性は見落とされがちな項目です。交通量が多くても、中央分離帯があって右折進入できない立地では、片方向の客しか取れません。

学校の立地は不利なことが多い

学校は通学路の安全を前提に立地が決まってきました。幹線道路から離れ、集落の中にあることが多い。この立地は道の駅としては不利です。

逆に、旧街道沿いや幹線道路に面した学校であれば、条件は悪くありません。閉校した学校の位置を地図で確認してから構想に入ってください。

直売所という選択

道の駅の登録を取らずに、農産物の直売所として運営する形があります。24時間のトイレ開放が不要になり、設置者の制約もありません。

地域の農家が持ち込む形にすれば、仕入れのリスクも抑えられます。構想の規模を落とすことで成立する例があります。

用途変更と消防法はどうなるのか?

物販も飲食も特定防火対象物です。

学校は建築基準法施行令第137条の18の11区分のいずれにも含まれません。したがって物品販売業を営む店舗への変更は類似の用途に当たらず、用途を変更する部分の床面積が200平方メートルを超えれば、建築基準法第87条第1項により確認申請が必要になります。

消防法では、学校は消防法施行令別表第一の(7)項で特定防火対象物に含まれませんが、転用後は該当します。

用途 項 特定防火対象物
学校 (7)項 該当しない
百貨店、マーケット、店舗、展示場 (4)項 該当する
料理店、飲食店 (3)項ロ 該当する
複合用途(特定用途を含む) (16)項イ 該当する

特定防火対象物に該当すると、消防法第17条の2の5により消防用設備等が現行基準に適用されます。消防設備の要件は廃校の転用で消防設備はどこまで必要か?で扱っています。

既存不適格の遡及

確認申請を出すと、建築基準法第87条第3項により防火、避難、内装制限の規定が準用されます。既存不適格の扱いは廃校の既存不適格はどこまで遡るのか?で扱っています。

用途地域を先に確認する

物販の店舗は、用途地域によって建築できない地域があります。第一種低層住居専用地域に建つ校舎を物販店舗にする計画は、この段階で成立しません。

市街化調整区域の場合は都市計画法の開発許可が論点になります。建築基準法の検討より前の確認です。

駐車場と屋外はどう計画するのか?

グラウンドの造成が費用の柱になります。

項目 内容
舗装 アスファルト舗装の面積
区画線と車止め 普通車、大型車、障がい者用
排水 雨水の排水先と浸透の方法
照明 夜間の安全。24時間開放なら必須
進入路 前面道路からの取付け
大型車の動線 回転半径と車止め
植栽の処理 既存の樹木、桜の扱い

グラウンドは土のままでは駐車場として使えません。雨天時にぬかるみ、轍ができ、泥が道路に出ます。舗装の面積が大きくなれば、排水の計画も必要になります。

既存の樹木が論点になる

校庭の桜や記念樹は、地域にとって意味を持ちます。駐車場の計画で伐採が必要になると、合意形成の論点になります。

計画の初期に現地を確認し、残す樹木を決めてください。後から変更すると配置をやり直すことになります。

排水の放流先を確認する

舗装すると雨水が浸透しなくなり、流出量が増えます。放流先の水路や河川の管理者との協議が必要になることがあります。

放流先の能力が足りない場合は、敷地内に調整池や浸透施設を設ける必要が出ます。舗装の面積を決める前に、放流先の条件を確認してください。

物販と厨房はどう整えるのか?

生鮮を扱うかどうかで変わります。

扱うもの 必要になる設備
農産物(そのまま) 陳列棚、空調、冷蔵
加工品(仕入れ) 陳列棚、空調
精肉・鮮魚 専用の設備と営業許可
弁当・惣菜の製造 厨房と営業許可
飲食の提供 厨房と営業許可
冷凍品 冷凍設備と電源容量

教室を売場にする場合、まず電源の容量が問題になります。冷蔵と冷凍のケースは消費電力が大きく、学校の受電容量では足りないことがあります。

設備の考え方は廃校の設備更新はどこから手をつけるのか?で扱っています。受電設備の更新は金額が大きく、計画の初期に確認すべき項目です。

食品を扱うには営業許可が必要

調理や加工を行う場合、食品衛生法に基づく営業許可が必要です。許可の基準は都道府県等の条例で定められており、施設の構造と設備が審査されます。

令和3年6月1日から、原則としてすべての食品等事業者にHACCPに沿った衛生管理が義務づけられています。衛生管理計画の作成と記録の保存が必要になります。

家庭科室はそのままでは使えない

家庭科室には調理台とシンクがありますが、営業許可の施設基準を満たしていないことがほとんどです。区画、手洗い、床と壁の仕上げ、グリストラップを整えると、実質的に厨房の新設になります。

売場の面積を抑える

物販は在庫と仕入れの管理が必要です。売場を広くすると品数を揃える必要が出て、在庫のリスクが増えます。

教室1室から2室分に絞って始め、売れる品目が見えてから広げる形が現実的です。閉じておいた教室は、売場を広げるときの余地として残ります。

運営の担い手を先に決める

直売所は、農産物を持ち込む生産者がいて初めて成立します。何戸の農家が、どの品目を、どの季節に出せるのかを先に確認してください。

確認すること 内容
出荷する生産者の数 現在何戸が出せるか
品目と季節 端境期に何を並べるか
価格の決め方 生産者が決めるか、施設が決めるか
手数料の率 施設の収入になる部分
残品の扱い 誰が引き取るか
当番と人員 生産者が交代で入るか、雇用するか

棚が埋まらない直売所は、客が減って続きません。生産者の数と品目の確認は、建物の計画より先に行う作業です。

よくある質問

Q. 直売所で先に確認することは何ですか。

A. 出荷する生産者の数と品目です。棚が埋まらない直売所は客が減って続きません。建物の計画より先に確認する作業です。

Q. 道の駅の登録には何が必要ですか。

A. 無料で24時間利用できる駐車場とトイレ、道路及び地域に関する情報を提供する施設、地域振興施設です。設置者は市町村または市町村に代わり得る公的な団体です。

Q. 民間事業者が道の駅を運営できますか。

A. 設置者は公的な団体に限られます。民間が関わる場合は、自治体が設置者となり運営を委託または指定管理とする形です。

Q. 校舎内のトイレを24時間開放できますか。

A. 夜間に建物の一部を開けることになり、管理が難しくなります。屋外または外周から直接入れる独立したトイレを設ける構成が一般的です。

Q. 学校の立地は道の駅に向いていますか。

A. 多くの場合は不利です。学校は通学路の安全を前提に立地が決まってきたため、幹線道路から離れていることが多くなります。

Q. 道の駅にこだわらない選択はありますか。

A. 直売所として運営する形があります。24時間のトイレ開放が不要になり、設置者の制約もありません。

Q. グラウンドはそのまま駐車場にできますか。

A. 土のままでは雨天時にぬかるみ、轍ができます。舗装が必要で、舗装すれば雨水の排水計画も必要になります。

まとめ

廃校を道の駅にする構想は、立地で決まります。道の駅は道路の休憩施設であり、前面道路の交通量と出入りの安全性が成否を決めます。学校は通学路の安全を前提に立地してきたため、幹線道路から離れていることが多く、この点が不利に働きます。

登録要件は、無料で24時間利用できる駐車場とトイレ、道路及び地域に関する情報を提供する施設、文化教養施設や観光レクリエーション施設などの地域振興施設です。設置者は市町村または市町村に代わり得る公的な団体に限られます。

24時間のトイレ開放は運用の負担になります。校舎内のトイレを使う構成は管理が難しく、屋外または外周から直接入れる独立したトイレを設ける形が現実的です。

幹線道路に面していない立地であれば、道の駅の登録を取らず直売所として組むほうが成立します。24時間の開放が不要になり、設置者の制約もありません。

工事では、グラウンドの舗装と排水が費用の柱になります。そして売場の電源容量です。冷蔵と冷凍のケースは消費電力が大きく、学校の受電容量で足りないことがあります。食品の加工や調理を行うなら食品衛生法の営業許可が必要で、家庭科室はそのままでは施設基準を満たしません。

参考・出典

記載の制度および登録要件は公表時点のものです。道の駅の登録に関する判断は道路管理者が行い、営業許可の施設基準は都道府県等の条例により異なります。個別の適用は道路管理者、所管行政庁、保健所および消防本部にご確認ください。

CONTACT

学校施設のご相談

その工事、補助金が使えるか無料でチェックします

トイレ・空調・体育館・玄関・耐震など、検討中の工事に使える国や都道府県の補助制度を、公表資料をもとに確認して3営業日以内にご回答します。「補助金が使えないか調べるよう言われた」という段階のご相談で構いません。

補助金の無料チェックを依頼する

株式会社光建舎は、設計(ウイングスペース一級建築士事務所)から施工まで一社で対応しています。図面や仕様が固まっていない計画段階からのご相談も承っています。概算だけ先に欲しい、という段階でも構いません。

受付時間 平日 9:00〜18:00