目次
学校工事の費用と期間の目安
改修や増築の計画を立てるとき、工事費には目が向きます。一方、確認申請に関わる費用と期間は、見落とされがちです。
手数料そのものは、工事費に比べれば小さな金額です。しかし、期間は工程に直接効きます。そして、設計料や各種の判定の費用を合わせると、無視できない額になります。
この記事では、①手数料の水準、②設計料の考え方、③審査の期間、④期間が延びる要因、⑤予算の立て方、の5点を整理します。
この記事の要点
- 手数料は特定行政庁の条例または指定確認検査機関の料金で定まる
- 横浜市では延べ面積2,000平方メートル超5,000平方メートル以下で確認申請16万円(令和7年4月1日改正)
- 同じ区分の完了検査手数料は12万円
- 確認の審査期間は受理から35日以内、35日の範囲内で延長されることがある
- 設計や工事監理の報酬の基準は、令和6年国土交通省告示第8号で示されている
確認申請の手数料はいくらか?
延べ面積によって決まります。
手数料は、特定行政庁に申請する場合は自治体の条例で、指定確認検査機関に申請する場合は各機関の料金表で定められています。ここでは、横浜市の例を示します。令和7年4月1日改正のものです。
| 延べ面積 | 確認申請の手数料 |
|---|---|
| 30平方メートル以下 | 15,000円 |
| 30平方メートル超100平方メートル以下 | 28,000円 |
| 100平方メートル超200平方メートル以下 | 43,000円 |
| 1,000平方メートル超2,000平方メートル以下 | 93,000円 |
| 2,000平方メートル超5,000平方メートル以下 | 160,000円 |
| 5,000平方メートル超10,000平方メートル以下 | 280,000円 |
| 10,000平方メートル超30,000平方メートル以下 | 370,000円 |
| 30,000平方メートル超50,000平方メートル以下 | 460,000円 |
| 50,000平方メートル超 | 900,000円 |
完了検査の手数料は、別に定められています。
| 延べ面積 | 完了検査の手数料 |
|---|---|
| 30平方メートル以下 | 24,000円 |
| 1,000平方メートル超2,000平方メートル以下 | 78,000円 |
| 2,000平方メートル超5,000平方メートル以下 | 120,000円 |
| 10,000平方メートル超30,000平方メートル以下 | 240,000円 |
| 50,000平方メートル超 | 610,000円 |
小学校の校舎は、延べ面積が数千平方メートルの規模になることが一般的です。上の表で言えば、確認申請と完了検査を合わせて30万円前後という水準になります。体育館や給食室を含めて一体で申請する場合は、その分の面積が加わります。
金額は自治体や機関によって異なります。計画している建物の所在地で、必ず確認してください。
手数料は工事費に比べれば小さい
数億円規模の工事に対して、手数料は数十万円です。予算全体で見れば、比率は小さくなります。
ただし、中間検査、計画変更、仮使用の認定などが加わると、件数の分だけ積み上がります。当初の見積りに入っていないと、後から補正が必要になります。複数の棟を別々に申請する場合も、申請の件数に応じて必要です。
設計料はどう決まるのか?
面積と難易度で変わります。
建築士事務所が請求できる報酬の基準は、建築士法第25条に基づいて国土交通省の告示で示されています。現行のものは、令和6年国土交通省告示第8号です。
この基準は、業務にかかる時間に人件費の単価を乗じて算定する考え方を基礎としています。建物の用途と規模に応じた標準的な業務量が示されており、見積りの妥当性を判断する材料になります。金額を拘束するものではありませんが、極端に安い見積りが出てきたときに、何が抜けているかを確かめる手がかりになります。
学校の改修では、新築より業務量が読みにくくなります。既存の図面の整理、現況の調査、法適合の確認といった作業が加わるためです。設計者の役割と選び方は設計者(建築士)の役割と選び方にまとめています。
確認申請の業務は設計料に含まれるか
契約の内容によります。設計業務の一部として含める場合と、別に計上する場合があります。見積書の段階で、どこまでが含まれるかを確認しておきます。申請の代理、審査への対応、検査への立会いのそれぞれが対象に入っているかを見ます。
用途変更の場合、既存の建物の調査と法適合の検討に時間がかかります。新築の設計料の感覚で見積もると、実態と合いません。
審査にはどれくらいかかるのか?
法定の期間と、実際の期間は違います。
建築基準法第6条第4項により、法第6条第1項第1号・第2号に係るものは、受理した日から35日以内に審査が行われます。第3号に係るものは7日以内です。
さらに、同条により、35日の範囲内で期間が延長されることがあります。延長する場合は、理由を記載した通知書が申請者に交付されます。
| 段階 | 日数の目安 |
|---|---|
| 事前協議 | 案件による。論点が多いほど長い |
| 申請書の作成・提出 | 設計の進捗による |
| 審査(第1号・第2号) | 受理から35日以内。35日の範囲内で延長あり |
| 確認済証の交付 | 審査の完了後 |
手続きの全体の流れは建築確認から完了検査まで何をするのか?で扱っています。
受理されるまでが読みにくい
法定の期間は、受理された後の日数です。受理される前に、所管行政庁との協議や、書類の補正が入ります。
学校の敷地は広く、建物の数も多いため、既存部分の扱いをめぐる協議に時間がかかることがあります。この期間は案件によって大きく変わります。数週間で済むこともあれば、数か月に及ぶこともあるため、設計者に見通しを確認しておきます。
期間が延びる要因は何か?
4つあります。
既存の図書が不足している
確認済証、検査済証、竣工図がそろっていない場合、現況の調査から始めます。調査の期間だけで数か月かかることもあります。
判定の手続きが加わる
一定規模以上の建築物では、構造計算適合性判定の手続きが必要になる場合があります。また、省エネ基準への適合性判定が必要な場合もあります。
これらは確認の審査と並行して進みますが、判定の結果が出なければ確認済証は交付されません。その分、日数が必要です。手数料も別に発生します。
用途変更で論点が多い
廃校の転用など、用途が大きく変わる案件では、遡及して適用される規定の確認に時間がかかります。用途変更の要否の判断は用途変更の確認申請が必要なケースを参照してください。
申請が集中する時期に当たる
年度末や、補助金の交付決定の後は、申請が集中します。窓口の混雑や、検査の予約が取りにくい状況が起きます。
期間を短くする方法はあるか?
前倒しできる作業を先に済ませることです。
審査そのものの日数は法定で決まっているため、縮めることはできません。短縮できるのは、その前後にある作業です。
現況の調査を先に済ませる
既存の図書の有無、建物の増築の履歴、法適合の状況。これらは設計の契約の前でも調べられます。調査だけを別に発注しておけば、設計に入ってからの手戻りが減ります。
事前協議を早く始める
論点が見えた段階で、所管行政庁に相談します。設計が固まってから相談すると、やり直しになる部分が出ます。
申請の時期を分散する
年度末や補助金の交付決定の直後は、申請が集中します。可能であれば、その時期を避けて申請します。工事の時期をずらせない場合でも、申請だけ先に済ませる組み立てができることがあります。
分けて発注する
棟ごと、工区ごとに分けて申請する方法があります。ひとつの申請が止まっても、他の工区は進められます。ただし、手数料と設計料は件数の分だけ増えます。
予算はどう立てるのか?
工事費とは別の項目として積みます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 設計料 | 基本設計、実施設計。告示の基準が見積りの目安になる |
| 工事監理料 | 工事期間中の監理業務 |
| 確認申請手数料 | 延べ面積の区分による |
| 中間検査・完了検査手数料 | 対象となる場合 |
| 構造計算適合性判定手数料 | 対象となる場合 |
| 省エネ適合性判定手数料 | 対象となる場合 |
| 既存建物の調査費 | 図書が不足している場合 |
| 計画変更・仮使用認定の手数料 | 発生した場合 |
当初の予算に計画変更や仮使用の費用まで入れておくのは難しい面があります。それでも、可能性がある案件では、予備の枠を設けておく方が手戻りが少なくなります。特に既存建物の改修では、着工後に想定外の事項が出やすくなります。
建築基準法の全体像は学校の改修で関わる建築基準法の基礎にまとめています。
公立と私立で違いはあるか?
予算の手続きが違います。
公立学校
設計と工事を別々の年度で予算化することが一般的です。設計を前年度に済ませておけば、工事の年度に入ってから審査の期間で詰まることがありません。
手数料は、自治体が自らの特定行政庁に納付する場合と、他の自治体や指定確認検査機関に納付する場合で、会計上の扱いが変わることがあります。財政部局に確認しておきます。
私立学校
理事会の承認を得る予算に、設計料と手数料を含めて計上します。補助金を受ける場合、対象となる経費の範囲が制度によって異なります。設計料が対象になるかどうかを、交付の要綱で確認します。
よくある質問
Q. 確認申請の手数料はどこで決まりますか。
A. 特定行政庁に申請する場合は自治体の条例、指定確認検査機関に申請する場合は各機関の料金表によります。
Q. 指定確認検査機関の方が高いですか。
A. 機関によって異なります。金額だけでなく、日程の調整のしやすさも比べて選びます。
Q. 審査の期間はどれくらい見ておけばよいですか。
A. 法第6条第1項第1号・第2号は受理から35日以内で、35日の範囲内で延長されることがあります。事前協議の期間は別に見込みます。
Q. 設計料の相場はありますか。
A. 一律の相場はありません。令和6年国土交通省告示第8号の基準が、見積りの妥当性を判断する材料になります。
Q. 計画変更の手数料はかかりますか。
A. かかります。金額は自治体や機関の定めによります。
Q. 既存の図面がない場合、どのくらい費用が増えますか。
A. 建物の規模と残っている資料の量によります。調査の範囲を決める段階で、設計者に見積りを求めます。
Q. 手数料は誰が支払いますか。
A. 建築主です。設計者が立て替えて後から精算する場合もあるため、契約の内容を確認します。
Q. 審査の途中で計画を変えると手数料は戻りますか。
A. 納付した手数料は、原則として返還されません。取扱いは自治体や機関の定めによります。
Q. 構造計算適合性判定はどの建物で必要ですか。
A. 構造の種別と規模によります。対象となるかどうかは、設計者を通じて確認します。
まとめ
確認申請の手数料は、延べ面積の区分で決まります。横浜市の例では、延べ面積2,000平方メートル超5,000平方メートル以下で確認申請が16万円、完了検査が12万円です(令和7年4月1日改正)。金額は自治体や機関によって異なります。
審査の期間は、法第6条第1項第1号・第2号で受理から35日以内、35日の範囲内で延長されることがあります。事前協議や書類の補正の期間は、これとは別に見込む必要があります。
設計料については、令和6年国土交通省告示第8号が基準を示しています。学校の改修では、既存の調査や法適合の確認が加わるため、新築の感覚では収まりません。
手数料は小さくても、期間は工程を左右します。使い始める日から逆算し、設計料、判定の手数料、調査費まで含めて予算を組むことが、後から困らないための準備になります。
参考・出典
- 横浜市「建築確認申請・検査等の手数料」 https://www.city.yokohama.lg.jp/business/bunyabetsu/kenchiku/tetsuduki/kakunin/tesuryoudir/tesuryou.html
- 国土交通省「設計、工事監理等に係る業務報酬基準について」 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/jutakukentiku_house_tk_000082.html
- e-Gov法令検索「建築基準法」 https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000201
記載の金額と制度は公表時点のものです。手数料は自治体および指定確認検査機関によって異なります。個別の適用は所管の行政庁または機関にご確認ください。
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