この記事は、学校施設の設計・施工を行う株式会社光建舎が作成しています。設計(ウイングスペース一級建築士事務所)から施工まで一社で対応し、専門学校・高校・自治体の学校施設を手がけています。

用途変更にはどれくらいの期間がかかるのか?

逆算でつくる工程

「この校舎、来年の春から使えますか」。廃校の活用を検討する場面で、最初に出てくる質問です。

答えは、建物の状態と用途によって変わります。半年で済むこともあれば、2年かかることもあります。差を生むのは工事ではなく、その前段階です。

この記事では、①全体の流れと期間、②各段階に必要な日数、③期間が延びる要因、④逆算の組み立て方、⑤年度との関係、の5点を整理します。

この記事の要点

  • 確認申請が必要な場合、審査は受理から35日以内、35日の範囲内で延長されることがある
  • 工事の完了後は、建築主事等への届出が必要
  • 期間を左右するのは、調査と事前協議の段階
  • 検査済証や竣工図がない場合、現況の調査に数か月かかることがある
  • 使い始める日から逆算して、年度の区切りに合わせる

用途変更の全体はどう進むのか?

大きく6つの段階に分かれます。

段階主な内容
1. 構想どの用途に転用するかを決める
2. 調査既存の図書の確認、現況調査、法適合の確認
3. 事前協議所管行政庁、消防、他法令の窓口との協議
4. 設計・申請実施設計、確認申請、審査
5. 工事改修工事、中間検査(対象の場合)
6. 完了・開始工事完了の届出、他法令の許可、使用開始

用途変更の制度そのものは学校施設の用途変更とは何か?にまとめています。

各段階にどれくらいかかるのか?

建物の状態で幅が出ます。

構想の段階

何に使うかが決まらなければ、先に進めません。公立学校の廃校活用では、庁内の検討、地域への説明、事業者の募集が入ります。この段階だけで1年以上かかる例もあります。転用の方向性が複数残っている間は、調査の範囲も決められません。

民間事業者を募集する場合、募集の条件を決める前に、建物の法的な制約を把握しておく必要があります。条件が曖昧なまま募集すると、応募後に実現できないことが分かる事態になります。改修の費用をどちらが負担するかも、募集の条件として示しておきます。

調査の段階

確認済証、検査済証、竣工図がそろっていれば、短く済みます。そろっていない場合は、現況の調査から始めることになり、数か月を要することがあります。

調べる内容は、建物の形状と寸法、構造、防火区画、避難の経路、設備の状況です。増築や改修を重ねている建物ほど、当時の図面と現況が食い違っている箇所が出てきます。進め方は学校の法適合状況調査にまとめています。

事前協議の段階

所管行政庁との協議のほか、用途によっては消防、保健所、福祉の部局など、複数の窓口が関わります。窓口ごとに求められる資料が異なり、順番に回ると時間がかかります。ひとつの窓口の回答が、別の窓口の判断の前提になることもあります。

論点を先に洗い出し、関係する窓口を一度に集める形が取れると、期間は短くなります。公立学校であれば、庁内の調整として設定しやすい形です。

設計と申請の段階

実施設計に数か月、確認申請の審査に受理から35日以内。審査期間は35日の範囲内で延長されることがあります。事前の協議や補正の期間は、これとは別です。申請が受理されるまでの往復に、審査そのものより時間がかかることもあります。

手数料と期間の目安は確認申請にはいくら、どれだけかかるのか?で扱っています。

工事の段階

工事の内容によります。内装の変更だけなら数か月、避難階段の増設や防火区画の追加を伴えば、それ以上かかります。建物を使いながら工事をするのか、完全に空けて行うのかでも、期間は変わります。

完了から使用開始まで

工事が完了したら、建築主事等への届出を行います。あわせて、消防の検査、営業の許可など、他法令の手続きが必要です。これらが終わるまで、使用を開始できない場合があります。開業の日を先に告知してしまうと、手続きが間に合わないときに動けなくなります。

期間が延びる要因は何か?

5つあります。

既存の図書がない

最も影響が大きい要因です。図面を作り直すところから始まるため、費用も期間も読みにくくなります。建物の規模が大きいほど、作業量は増えます。図書がない場合の進め方は検査済証がない学校施設の改修の進め方にまとめています。

遡及する規定への対応が大きい

防火、避難、内装について現行基準に合わせる工事が必要になると、設計にも工事にも時間がかかります。避難階段の増設のように、建物の構造に関わる工事は特にそうです。

用途の分類が定まらない

同じ事業でも、建築基準法上の分類が定まらないことがあります。分類が変われば、必要な手続きも基準も変わります。所管行政庁との協議で時間がかかる部分です。複数の機能を併せ持つ施設では、区画ごとに分類が分かれることもあります。

関係する部局が多い

公立学校の転用では、教育委員会、財産の管理部局、まちづくりの部局、福祉の部局などが関わります。補助金を受けて整備した施設では、財産処分の手続きも並行します。部局をまたぐ判断が必要な場面では、意思決定の場をどこに置くかを先に決めておきます。

事業者の選定に時間がかかる

公募、審査、契約という手続きを経ます。応募がなければやり直しになります。条件を緩めて再募集する場合、その判断にも時間がかかります。

閉校前に何をしておくべきか?

閉校が決まった時点から、準備は始められます。

校舎が使われている間は、建物の状態がよく分かります。雨漏りの箇所、設備の不具合、使いにくい部分。これらを知っているのは、その学校の教職員です。

閉校の前に、次のことを済ませておくと、後の作業が軽くなります。

  • 竣工図、確認済証、検査済証、改修の記録を集めて整理する
  • 設備の機器の型番と設置年を台帳にまとめる
  • 不具合の箇所を写真で記録する
  • 敷地の測量図と境界の資料を確認する
  • 埋設の配管とインフラの引き込みの位置を確認する

閉校後に担当者が替わると、これらの情報は失われます。書類が倉庫に残っていても、どこに何があるか分からなくなります。

空き期間の管理も決めておく

閉校から転用までの間、建物は無人になります。通風、漏水の点検、除草、防犯。放置すると、転用のときに追加の費用が発生します。誰が、どの頻度で見るかを決めておきます。

逆算はどう組むのか?

使い始める日から順に戻します。

  • 使用開始日
  • その前に、他法令の許可・検査の完了
  • その前に、工事完了の届出
  • その前に、工事の完了
  • その前に、工事の着手(確認済証の交付後)
  • その前に、確認の審査(受理から35日以内、延長で最大70日程度)
  • その前に、申請書の作成と事前協議
  • その前に、実施設計
  • その前に、調査と基本方針の決定

工事の期間を3か月と見ても、その前に半年から1年が必要になる組み立てです。用途変更の要否の判断は用途変更の確認申請が必要なケースを参照してください。

余裕を持たせる場所

工事の期間を詰めるより、調査と協議に余裕を持たせる方が、結果として全体が早くなります。前段階の判断が固まっていないまま設計に入ると、やり直しが発生するためです。工事の途中で止まる方が、費用の面でも損失が大きくなります。

並行して進められる作業はあるか?

順番を守るべき作業と、同時に進められる作業があります。

確認申請の審査は、実施設計が終わらなければ始まりません。これは順番が決まっています。一方、次のような作業は、設計と並行して進められます。

  • 他法令の窓口との事前の相談
  • 事業者の募集の条件の整理
  • 財産処分の手続きの確認
  • 補助制度の要件の確認
  • 什器や設備の調達の検討

逆に、順番を飛ばせないものもあります。用途地域の確認は最初に行います。ここで不可であれば、他の作業がすべて無駄になります。

工程表を1枚にまとめる

関わる部局と事業者が多いほど、誰が何を待っているのかが見えなくなります。建築の手続き、他法令の手続き、契約の手続きを1枚に並べておくと、止まっている箇所がすぐ分かります。

月単位の粗い工程表で構いません。更新の担当を決めて、定例で確認する形にします。担当者が替わっても引き継げる形にしておきます。

年度とどう合わせるのか?

公立学校では、年度の区切りが工程を決めます。

年度主な内容
1年目構想、調査、基本方針の決定
2年目設計、事前協議、確認申請、工事の発注
3年目工事、完了、使用開始

3か年で組む例が多くなります。これを2か年に圧縮するには、調査を前倒しするか、設計と工事を一体で発注するといった工夫が必要です。いずれにしても、前倒しできるのは調査と協議の部分です。

年度をまたぐ工事では、債務負担行為や繰越の手続きが関わります。財政部局との調整を、早い段階で始めます。補助金を受ける場合は、交付決定の時期と工事の時期をそろえる必要もあります。

公立と私立で違いはあるか?

期間の使い方が違います。

公立学校

議会の議決、入札、地域への説明といった手続きが加わります。決定に時間がかかる一方、複数年度で計画を組む枠組みが整っています。

閉校から転用までの間、建物を維持する費用も発生します。空いたまま置く期間が長いほど、劣化が進みます。光熱費や警備の費用も、使われていない建物に対して発生し続けます。

私立学校

意思決定は速く進みますが、財源は自前です。転用によって収益を生む計画であれば、開始の時期が収支に直結します。

学校法人の財産としての扱い、収益事業との関係、寄附行為の変更の要否も、並行して確認が必要です。

よくある質問

Q. 用途変更の手続きだけならどれくらいですか。

A. 確認申請の審査は受理から35日以内です。ただし、申請に至るまでの調査と設計の期間が別に必要です。

Q. 工事をしない転用なら早く済みますか。

A. 工事の有無にかかわらず、用途が変われば手続きが必要です。ただし、現行基準に適合させる工事が不要であれば、期間は短くなります。

Q. 廃校が決まってから準備を始めれば間に合いますか。

A. 閉校の前から調査と検討を始めておく方が確実です。閉校後に始めると、空き期間が長くなります。

Q. 民間に貸す場合、手続きは誰が行いますか。

A. 建築主が誰になるかによります。契約の内容として、どちらが手続きと費用を負担するかを決めておきます。

Q. 一部だけ先に使い始めることはできますか。

A. 工区を分けて手続きを進める方法があります。工事中の区画と使用する区画を分ける計画が必要です。

Q. 期間を短くする最も効く方法は何ですか。

A. 調査を前倒しすることです。建物の状態が分かれば、その後の判断が速くなります。

Q. 設計と工事を一括で発注すれば早くなりますか。

A. 発注の回数が減る分、期間を詰められる場合があります。ただし、設計の内容を発注者側で確認する仕組みが必要です。

Q. 確認申請の審査中に工事の準備を進めてよいですか。

A. 確認済証の交付を受けるまで、工事に着手することはできません。準備と着手の区別を、設計者と確認します。

Q. 他法令の許可はいつ申請しますか。

A. 用途によって時期が異なります。建物の完成を前提とするものもあるため、所管の窓口に早めに確認します。

まとめ

用途変更にかかる期間は、建物の状態と用途で大きく変わります。確認申請が必要な場合、審査は受理から35日以内で、35日の範囲内で延長されることがあります。工事の完了後は、建築主事等への届出が必要です。

期間を左右するのは、審査や工事ではなく、その前の調査と事前協議です。既存の図書がそろっていない場合、現況の調査だけで数か月かかります。遡及して適用される規定への対応が大きければ、設計にも工事にも時間がかかります。

公立学校では3か年で組む例が多くなります。使い始める日から逆算し、調査と協議に余裕を持たせること。これが、結果として全体を早くする組み立て方です。

参考・出典

記載の制度は公表時点のものです。個別の適用は所管の行政庁にご確認ください。

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