目次
床荷重と通信・音
できます。工事は内装と家具が中心になります。
ラーニングコモンズは、本を読む場所に加えて、グループで話す、調べる、発表する、作業するといった活動ができる空間です。既存の図書室を転用する場合、間仕切りを抜いて開き、書架を減らし、可動の家具を入れる形になります。
内装と家具の変更だけであれば、確認申請は不要です。ただし床の積載荷重、通信と電源、音の扱いという3つの論点が残ります。
そして運用です。誰が管理し、どう使うかが決まっていないと、机を並べ替えただけの部屋になります。
この記事では、①工事の範囲、②床荷重、③通信と電源、④音と照明、⑤運用、の5点を整理します。
この記事の要点
- 内装と家具の変更だけであれば確認申請は不要だが、内装制限の規定は守る必要がある
- 床の積載荷重は建築基準法施行令第85条が室の種類ごとに定めており、書架を減らすことで荷重の条件は緩やかになる
- 間仕切り壁を撤去する場合、その壁が主要構造部に当たるかを確認する
- 学校環境衛生基準では、教室の照度は300ルクス以上、500ルクス以上であることが望ましいとされている
- 話し声が発生する空間になるため、吸音の処理と隣室への配慮が必要
工事の範囲はどうなるのか?
内装と家具が中心です。
| 工事 | 内容 |
|---|---|
| 間仕切りの撤去 | 隣の室とつなげる場合 |
| 床の仕上げ | カーペット、長尺シートなど |
| 書架の再配置 | 数を減らし、低くする |
| 可動の家具 | 机、椅子、ホワイトボード |
| 電源の増設 | コンセントの位置と数 |
| 通信 | 無線と有線の配線 |
| 照明 | 配置と明るさ |
| 吸音 | 天井と壁の処理 |
確認申請は不要な場合が多い
内装の張り替え、家具の入替え、設備の更新だけであれば、確認申請は不要です。
ただし間仕切り壁を撤去する場合、その壁が主要構造部の壁に当たるかで判断が変わります。構造上の耐力壁であれば主要構造部で、過半を撤去すれば大規模の模様替に当たり得ます。
主要構造部は壁、柱、床、はり、屋根、階段の6つで、このうち一種以上について過半の修繕・模様替を行うと大規模の修繕・模様替に当たります。図面と現地でその壁が何であるかを確認してください。
内装制限は守る
手続きが不要であっても、建築基準法の内装制限の規定は守る必要があります。使う仕上げ材の性能を確認してください。
吸音材を追加する場合も、この確認が必要です。
隣接する室を取り込む
図書室1室では面積が足りない場合、隣の準備室や空き教室を取り込む方法があります。
この場合、間仕切り壁の撤去が必要になり、構造の確認を伴います。壁が抜けなければ、建具で開閉できる構成にする方法があります。
既存の図書室の構成
学校の図書室は、書架が壁沿いと中央に並び、閲覧席が窓際にある構成が一般的です。ラーニングコモンズでは、中央を空けてグループの活動に使う配置になります。
図書室の改修は学校図書館はどう改修するのか?で扱っています。ラーニングコモンズの考え方はラーニングコモンズとは何か?で扱っています。
床荷重はどうなるのか?
書架を減らせば条件は緩やかになります。
床の構造計算に用いる積載荷重は、建築基準法施行令第85条が室の種類ごとに定めています。書架は面積あたりの重量が大きく、詰めて並べると荷重が集中します。
| 変更 | 荷重への影響 |
|---|---|
| 書架の数を減らす | 荷重が下がる |
| 書架を低くする | 荷重が下がる |
| 通路を広くする | 面積あたりの荷重が下がる |
| 書架を壁沿いに寄せる | 梁の近くに集められる |
| 可動の家具を増やす | 書架より軽い |
| 閉架書庫を別室に設ける | その室の荷重が上がる |
ラーニングコモンズ化は荷重を下げる方向
書架を減らし、中央を空けて可動の家具を置く形は、床荷重を下げる方向に働きます。したがって構造の制約は小さくなります。
ただし減らした蔵書をどこに置くかが問題になります。
閉架書庫を設ける場合
開架を減らして閉架書庫を別に設ける場合、その室の荷重が上がります。1階に置くか、梁の近くに置くかの検討が必要です。
書架の荷重については、備蓄のスペースと同じ考え方になります。学校に防災備蓄スペースは新設できるのか?で扱っています。
蔵書を減らす判断
ラーニングコモンズ化に合わせて蔵書を減らす判断があります。出版年と状態で線を引き、使われていない本を処分する形です。
この作業には時間がかかります。工事の前年度から始めてください。
書架の転倒防止
低い書架にしても、転倒防止の固定は必要です。可動の書架を使う場合、キャスターのロックと配置の制約を確認してください。
通信と電源はどうするのか?
端末を使う前提にします。
| 項目 | 確認すること |
|---|---|
| 無線の電波 | 室内に届くか、同時接続の数 |
| 有線の配線 | 必要な場所への引込み |
| 電源の数 | 席数に対して足りるか |
| 電源の位置 | 床、壁、家具に内蔵 |
| 充電 | 端末の充電をどこで行うか |
| 配線の処理 | 床に這わせない構成 |
| 大型の表示装置 | 電源と通信、取付け |
電源の数が足りない
学校の教室のコンセントは、数が限られています。1クラス分の端末を同時に充電すると、回路の容量が足りなくなることがあります。
受電容量と回路の構成を確認してください。ICT環境の整備は学校のICT環境はどう整備するのか?で扱っています。
配線を床に這わせない
延長コードを床に這わせると、つまずきの原因になります。床にコンセントを設ける、家具に電源を内蔵する、天井から下げるといった方法があります。
家具の配置を変える前提であれば、床のコンセントの位置が制約になります。可動の家具と固定の電源の関係を、設計で整理してください。
無線の電波が届くか
書架が多いと電波が遮られます。また同時に多数の端末が接続すると、速度が落ちます。
アクセスポイントの位置と数を、実際の使い方から決めてください。
大型の表示装置
発表や共有のために大型の表示装置を置く場合、電源、通信、取付けの検討が必要です。壁に取り付けるなら下地の補強が必要になります。
音と照明はどうするのか?
話し声が出る空間です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 残響 | 硬い仕上げでは話し声が響く |
| 吸音 | 天井と壁の処理 |
| ゾーニング | 静かに読む場所と話す場所を分ける |
| 隣室への漏れ | 普通教室が隣接していれば配慮が必要 |
| 照度 | 学校環境衛生基準で基準がある |
| 照明の配置 | 書架の棚板で影ができる |
| 自然光 | 直射日光と眩しさの調整 |
静かな場所と話す場所を分ける
ラーニングコモンズでは、グループで話す活動と、静かに読む活動が同じ室で行われます。これを分けずに運用すると、どちらもしにくくなります。
書架で仕切る、床の高さを変える、建具で区画する。いずれかの方法でゾーニングしてください。
吸音の処理
硬い仕上げの室では、話し声が響いて聞き取りにくくなります。天井または壁に吸音の処理を加えてください。
ただし吸音しすぎると、発表のときに声が届きません。バランスを設計で確認してください。
隣室への配慮
図書室の隣が普通教室であれば、話し声が漏れます。間仕切り壁が天井裏でつながっている場合、特に伝わります。
天井裏まで立ち上げる工事、建具の交換が対応になります。音の扱いは音楽室と共通する論点です。
照度の基準
学校環境衛生基準では、教室の照度は300ルクス以上、500ルクス以上であることが望ましいとされています。またまぶしさについて、黒板の外側15度以内の範囲に輝きの強い光源がないこととされています。
書架の間は棚板で影ができるため、照明の配置を確認してください。
自然光の扱い
窓際の閲覧席は落ち着きますが、直射日光は眩しく、本を傷めます。遮光の調整が必要です。
運用はどう決めるのか?
誰が管理するかです。
| 項目 | 決めること |
|---|---|
| 開室の時間 | 授業中、休み時間、放課後 |
| 管理の担い手 | 司書、教職員、当番 |
| 利用のルール | 飲食、会話の可否、予約 |
| 家具の配置 | 戻すルール、配置の記録 |
| 端末の管理 | 貸出し、充電、紛失への対応 |
| 蔵書の管理 | 貸出し、返却、点検 |
| 清掃 | 誰が行うか |
家具を戻すルール
可動の家具は、使った後に戻さないと配置が崩れます。基本の配置を記録し、戻すルールを決めてください。
写真を壁に貼っておく方法が簡単です。
管理の担い手がいないと機能しない
司書や司書教諭が常駐していない学校では、開室の時間が限られます。その結果、設備を整えても使われないことがあります。
誰がいつ管理するかを、工事の計画と同時に決めてください。
利用のルール
飲食の可否、会話の可否、予約の方法。これらを決めて表示してください。
ルールがないと、使い方が人によって変わり、苦情の原因になります。
使い方を先に決める
何の活動に使うのかを先に決めてください。グループ学習、調べ学習、発表、読書、自習。活動によって必要な家具と設備が変わります。
活動を決めずに空間を作ると、使われない部屋になります。
段階的に進める
一度に全面改修するのではなく、家具の入替えから始めて、使い方が見えてから内装と設備を整える方法があります。
家具だけであれば費用が小さく、やり直しもできます。
よくある質問
Q. 図書室をラーニングコモンズにできますか。
A. できます。工事は内装と家具が中心で、内装と家具の変更だけであれば確認申請は不要です。
Q. 間仕切り壁を抜けますか。
A. その壁が主要構造部の壁に当たるかで判断が変わります。構造上の耐力壁であれば、過半を撤去すれば大規模の模様替に当たり得ます。図面と現地で確認してください。
Q. 床荷重は問題になりますか。
A. 書架を減らす方向であれば、荷重は下がります。ただし減らした蔵書を閉架書庫に移す場合、その室の荷重が上がります。
Q. 電源は足りますか。
A. 学校の教室のコンセントは数が限られています。1クラス分の端末を同時に充電すると回路の容量が足りなくなることがあります。受電容量を確認してください。
Q. 話し声が隣の教室に漏れませんか。
A. 漏れます。間仕切り壁が天井裏でつながっている場合、特に伝わります。天井裏まで立ち上げる工事と建具の交換が対応になります。
Q. 照度の基準はありますか。
A. 学校環境衛生基準では、教室の照度は300ルクス以上、500ルクス以上であることが望ましいとされています。
まとめ
図書室のラーニングコモンズ化はできます。工事は内装と家具が中心で、内装と家具の変更だけであれば確認申請は不要です。ただし間仕切り壁を撤去する場合は、その壁が主要構造部に当たるかを確認してください。
床荷重については、書架を減らす方向であれば条件が緩やかになります。建築基準法施行令第85条が室の種類ごとに積載荷重を定めていますが、書架の数を減らし、低くし、通路を広くすれば荷重が下がります。ただし減らした蔵書を閉架書庫に移す場合、その室の荷重が上がります。
通信と電源では、端末を使う前提で計画してください。学校の教室のコンセントは数が限られ、1クラス分を同時に充電すると回路の容量が足りなくなることがあります。配線を床に這わせないよう、床のコンセント、家具に内蔵する電源、天井からの配線のいずれかで対応してください。
音は話し声が出る空間であることが前提です。静かに読む場所と話す場所をゾーニングし、吸音の処理を加えてください。隣が普通教室であれば、間仕切り壁を天井裏まで立ち上げる工事が必要になることがあります。照度は学校環境衛生基準で300ルクス以上、500ルクス以上であることが望ましいとされています。
そして運用です。誰がいつ管理するか、可動の家具を戻すルール、利用のルール。これらが決まっていないと、机を並べ替えただけの部屋になります。何の活動に使うのかを先に決めてください。
段階的に進める方法もあります。家具の入替えから始めて、使い方が見えてから内装と設備を整える。家具だけであれば費用が小さく、やり直しもできます。
参考・出典
- 文部科学省「学校環境衛生管理マニュアル」 https://www.mext.go.jp/a_menu/kenko/hoken/1292482.htm
- 茨城県教育委員会「学校環境衛生基準」 https://kyoiku.pref.ibaraki.jp/wp-content/uploads/2026/04/kijun-list.pdf
- e-Gov法令検索「建築基準法」 https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000201
- e-Gov法令検索「建築基準法施行令」 https://laws.e-gov.go.jp/law/325CO0000000338
- e-Gov法令検索「学校図書館法」 https://laws.e-gov.go.jp/law/328AC1000000185
- 文部科学省「学校施設整備指針」 https://www.mext.go.jp/a_menu/shisetu/shuppan/index.htm
記載の法令および基準は公表時点のものです。確認申請の要否、内装制限の適用および積載荷重の判断は工事の内容と特定行政庁の運用により異なります。個別の適用は特定行政庁および設計者にご確認ください。
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