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学校の防災機能強化

避難所となる学校施設の整備要点

「体育館は避難所に指定されているが、停電・断水したら何ができるのか説明できない」「備蓄倉庫も非常用電源も、担当課ごとにばらばらに検討している」——避難所となる学校施設の防災機能について、こうした状態のまま次の災害を迎えようとしていませんか。全国の公立学校の9割超が避難所に指定されている一方で、機能ごとの整備率には大きな差があり、しかも「何を、どこまで整えれば足りるのか」の基準は防災部局と教育委員会にまたがっているため、担当者だけでは決めきれないのが実情です。

この記事では、2026年8月時点で確認できる文部科学省・内閣府・国土交通省の一次情報をもとに、避難所となる学校施設の防災機能強化を①現在の整備率、②準拠すべき国の指針、③機能別の整備メニュー、④断水対策、⑤要配慮者への配慮、⑥財源と進め方、という順で整理します。校舎・体育館の改修そのものではなく、あくまで「避難所機能」という切り口に絞って解説しますので、施設整備計画の前段で使える判断材料として読み進めてください。

学校・教育施設の改修を軸に、調査から設計・施工までワンストップで全国対応する当社の現場知見も交えてお伝えします。自校・域内の学校について何から着手すべきかを整理したい方は、避難所となる学校施設の防災機能強化について光建舎に無料で相談することもできます。

避難所となる学校施設の防災機能強化とは?対象と全体像

避難所となる学校施設の防災機能強化とは、災害時に地域住民を受け入れる前提で、学校施設に電源・水・トイレ・冷暖房・通信・備蓄・生活スペースなどの機能を平時から備えておく取り組みのことです。結論から言えば、検討は「①避難者数の想定 → ②必要な機能と量の逆算 → ③足りない機能の整備・協定」という順序で進めるのが最も手戻りがありません。

制度上の位置づけを確認しておきます。市町村長は災害対策基本法第49条の7に基づいて指定避難所を指定し、同法第86条の6により、避難所に滞在する被災者の生活環境の整備に必要な措置を講じるよう努めることとされています。学校施設はこの指定避難所の中心的な受け皿であり、教育財産でありながら防災上の役割を担うという二重性を持っています。だからこそ、教育委員会の施設担当だけ、あるいは防災担当部局だけで完結しない設計が必要になります。

そのうえで、押さえるべき前提が3つあります。ひとつは、機能は必ずしも学校の敷地内に「保有」しなくてもよいという点です。文部科学省の調査では、近隣の公共施設や民間事業者との協定等により優先利用できる場合も「確保している」に含めて集計されています。ふたつめは、ハード整備と運用の両輪が必要な点です。設備を置いても、どの諸室をどう使うかを定めた「学校施設の利用方針」がなければ発災時に機能しません。みっつめは、平時の教育環境の改善と重なる部分が大きい点です。トイレの洋式化や体育館の空調、バリアフリー化は、そのまま避難所の質に直結します。

なお、体育館そのものの床・天井・空調の改修計画については「学校体育館の改修|床・天井・空調と補助制度の進め方【2026年版】」で詳しく解説しています。本記事は避難所機能に絞って整理します。

整備率で見る現在地|文部科学省調査が示す8つの防災機能

まず自分たちの位置を知ることから始めます。文部科学省「避難所となる公立学校施設の防災機能に関する調査」(令和6年11月1日時点、令和7年6月25日公表)は、全国の公立学校32,186校を対象とした悉皆調査で、この分野の到達点を示す基準資料です。

同調査によると、避難所に指定されている学校は29,529校で91.7%(前回・令和4年12月1日時点は91.5%)。校種別では小中学校が94.9%(26,166校/27,585校)、高等学校が79.6%(2,783校/3,496校)、特別支援学校が52.5%(580校/1,105校)と差があります。また、避難所指定校のうち「学校施設の利用方針」を策定しているのは20,827校・70.5%(前回68.9%)にとどまります。利用方針とは、災害時に校舎・屋内運動場・校庭等をどう利用するかを定めた方針・計画で、教育活動の再開を見据えて地域住民に開放する部分とそれ以外を区分し、避難者の居住スペースや運営に必要なスペースを設定してあるものを指します。

8つの防災機能の確保状況は次のとおりです(いずれも避難所指定校29,529校に対する割合)。

防災機能 確保している割合 前回(令和4年12月1日時点) 内訳の代表値
暖房機器 86.3% 79.3% 備え付け60.4%/ストーブ等を建物内に保有68.3%
冷房機器 85.5% 64.9% 備え付け57.2%/扇風機等を建物内に保有70.0%
通信設備 85.3% 82.9% うち相互通信が可能な設備を設置72.6%
飲料水の確保対策 83.4% 80.8% 耐震性貯水槽・プール浄水装置・井戸等を敷地内保有31.3%/ペットボトル等の備蓄67.8%
ガス設備 78.2% 73.3% 自家発電用26.1%/冷暖房用20.3%/調理用55.2%
非常用発電機等 77.2% 73.2% 自家発電設備等を保有65.4%/協定等による優先利用27.3%
断水時のトイレ対策 75.1% 73.6% マンホールトイレ設置21.0%/プール水・雨水等を洗浄水として使用できるトイレ15.2%
入浴・洗濯等生活用水 36.7% -(前回調査項目なし) シャワー・プール浄水装置・耐震性貯水槽・井戸等を敷地内保有33.0%

(出典:文部科学省「避難所となる公立学校施設の防災機能に関する調査の結果について」令和6年11月1日時点)

この表の読み方には注意が必要です。表面の数値は前回調査から軒並み改善していますが、内訳を見ると「協定による優先利用」や「可搬式機器の保有」に支えられている部分が小さくありません。たとえば冷房機器85.5%のうち、避難者が滞在する部屋等に冷房機器を備え付けているのは57.2%で、扇風機等を建物内に保有しているものが70.0%を占めます。同様に、非常用発電機等77.2%のうち27.3%は協定等による確保です。「確保済み」と整理されていても、大規模災害で近隣施設が同時被災した場合や、猛暑下で長期化した場合に本当に足りるのかは、別途の検証が要ります。

明確な弱点も見えます。入浴・洗濯等の生活用水は36.7%、断水時のトイレ対策のうちマンホールトイレを設置している学校は21.0%、プールの水や雨水等を洗浄水として使用できるトイレを設置している学校は15.2%です。水まわりが最大の未整備領域だという点は、後述する指針の要求水準とあわせて押さえておきたいところです。

準拠すべき国の指針|2024年12月改定の3点セットとスフィア基準

整備水準の根拠は、内閣府(防災担当)の指針・ガイドライン群にあります。結論として、2026年8月時点で参照すべき現行版は令和6年12月改定の3点セットです。名称が改定時に変更されているため、旧称のまま資料を作っていると議会説明で齟齬が出ます。

文書名(現行版) 改定時期 位置づけ・主な内容
避難生活における良好な生活環境の確保に向けた取組指針 令和6年12月改定(平成25年8月策定) 上位の取組指針。指定避難所の指定・整備、備蓄、要配慮者支援、生活空間・生活用水の確保などを平時/発災後に分けて記載
避難所運営等避難生活支援のためのガイドライン(チェックリスト) 令和6年12月改定 取組指針の下位で、避難所運営の具体的対応を示す
避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン 令和6年12月改定 災害用トイレの種類・必要数の考え方・衛生管理。必要数計算シートが別添
福祉避難所の確保・運営ガイドライン 令和3年5月改定 要配慮者のための指定福祉避難所の指定・受入対象者の公示等
マンホールトイレ整備・運用のためのガイドライン-2025年版- 令和7年10月(国土交通省) マンホールトイレの必要数算定、快適性・安全性への配慮事項、事前準備と訓練

(出典:内閣府「避難所の生活環境対策」掲載の各文書、国土交通省「マンホールトイレ整備・運用のためのガイドライン」)

施設整備の観点で重要なのは、取組指針が「面積」と「量」を具体的に示している点です。同指針は、平時から想定避難者数に対応するために指定避難所や協定・届出避難所を増やすこと等を進めておき、スフィア基準に沿って1人当たり最低3.5㎡の居住スペースとなるようにすることを求めています。内閣府と文部科学省が連名で発出した事務連絡「災害時の避難所としての公立学校の活用について」(令和7年11月5日)でも、この1人当たり最低3.5㎡が明示され、南海トラフ地震や首都直下地震等を想定した想定避難者数に対応するため、避難所指定されていない公立学校の活用等を検討するよう要請されています。つまり、体育館のアリーナ面積を3.5㎡で割った収容可能人数が、防災機能の必要量を決める起点になります。

トイレについても数値の目安があります。トイレの確保・管理ガイドラインは、スフィア基準に沿って、災害発生当初は避難者50人当たり1基、避難が長期化する場合には20人当たり1基、女性用と男性用の比率は3対1、平均的な使用回数は1日5回として備蓄や確保計画を作成することを求めています。個数は施設のトイレの個室(洋式便器で携帯トイレを使用)と災害用トイレを合わせて算出し、バリアフリートイレはこの個数に含めず、避難者の人数やニーズに合わせて別途確保することが望ましいとされています。

また、取組指針は指定避難所となる施設の整備について、非構造部材の耐震対策が図られ災害により重大な被害が及ばないことが望ましいこと、生活面を考慮しバリアフリー化された学校等の公共施設とすることが望ましいことを挙げています。防災機能設備等については、平時に自らの整備状況を確認して災害時に必要となる容量や個数などを検討し、各種補助制度・地方財政措置等を活用して充実強化を推進すること、保有しない場合はあらかじめ近隣の公共施設や民間事業者と協定を締結しておくことが示されています。

【機能別】避難所となる学校施設の整備メニュー一覧

機能ごとに、整備の選択肢と検討時の勘所を一覧にします。文部科学省が令和7年6月に公表した「地域の実情・災害リスクに応じた学校施設の防災機能の強化・実装に向けて」のチェックリストでも、確認すべき防災機能として「備蓄・非常用電源・飲料水・冷暖房・ガス・通信・断水時のトイレ」が挙げられており、この7分類が実務上の骨格になります。

機能 主な整備メニュー 検討時の勘所
非常用電源 自家発電設備(軽油・ガス等)、可搬式発電機、太陽光発電+蓄電池、EVからの給電 燃料の種類と連続運転時間を先に決める。浸水想定区域では受変電設備・発電機の設置高さが論点
飲料水 耐震性貯水槽(高架水槽・受水槽等)、プールの浄水装置、井戸、応急給水栓、ペットボトル備蓄 敷地内保有は31.3%にとどまる。備蓄と協定だけに依存していないかを確認
生活用水 シャワー、プールの浄水装置、防災井戸、タンク・貯水槽 確保率36.7%で最大の弱点。取組指針は分散型の生活用水確保を平時から求めている
断水時のトイレ マンホールトイレ、少量の水で洗浄できる災害用タンク式トイレ、携帯・簡易トイレ備蓄、仮設トイレ・トイレカーの協定 既設トイレの洋式化・節水型化とセットで検討。必要数はスフィア基準から逆算
冷暖房 屋内運動場への空調新設(断熱性確保工事を含む)、都市ガス途絶時にLPガスへ切替可能なGHP、可搬式冷暖房機器 備え付けか可搬式かで避難所としての実力が変わる。断熱がないと能力が出ない
ガス設備 LPガス設備、中圧ガス配管の引込み、ガス変換器の接続口、カセットコンロ備蓄 自家発電・冷暖房・調理のどの用途に使うかで仕様が変わる
通信 防災行政無線、災害時優先電話、MCA無線、衛星電話、災害時に使用できるインターネット接続口 相互通信が可能な設備の設置は72.6%。単方向のみでないかを確認
備蓄 備蓄倉庫の新設、屋内運動場への隣接配置、空き教室の転用 屋内運動場に隣接させると搬出入と運営動線が短くなる
生活スペース 諸室の用途区分、間仕切り・更衣スペース、授乳室、要配慮者用スペース 1人当たり3.5㎡から収容人数を算出し、利用方針として文書化する

(出典:文部科学省「地域の実情・災害リスクに応じた学校施設の防災機能の強化・実装に向けて」、同「避難所となる公立学校施設の防災機能に関する調査の結果について」、内閣府「避難生活における良好な生活環境の確保に向けた取組指針」)

文部科学省が同資料で紹介している取組事例からは、設計上の工夫も読み取れます。長期間の浸水が想定される地域では、屋内運動場を2階に配置して想定最大浸水深でも使用可能とし、受変電設備やプロパンガスを屋上に設置したうえで、都市ガスが途絶した際にプロパンガスへ切り替えて稼働できるガス式冷暖房設備を採用した例があります。津波が想定される地域では、屋内運動場を校舎3階に整備して避難場所とし、施設管理者が不在でも住民が上階へ避難できるよう震度感知式の鍵ボックスを設置した例も示されています。老朽化した屋内運動場の改修では、屋根のふき替えや外壁の新設による断熱化、窓のペアガラス化、無線LANの整備、多目的トイレの設置、自家発電設備の設置を一体で行った例が挙げられています。

なお、令和6年能登半島地震では、学校施設に地震による倒壊はなかったものの、天井材や照明器具等の落下被害があり、空調設備が整備されておらず避難所に活用できなかった体育館もあったと文部科学省は整理しています。「建物が無事=避難所として使える」ではないという点は、優先順位づけの出発点として共有しておきたい事実です。

断水対策|マンホールトイレ・受水槽・生活用水をどう積み増すか

断水対策は、整備率と要求水準のギャップが最も大きい領域です。結論として、①既設トイレの洋式化・節水型化、②マンホールトイレ等の災害用トイレの整備、③生活用水の分散確保、の3つを同じ計画のなかで束ねるのが効率的です。

まずトイレの必要数を出します。トイレの確保・管理ガイドラインには「災害時のトイレの必要数計算シート」が別添されており、想定避難者数から当初(50人当たり1基)と長期化時(20人当たり1基)の必要数を試算できます。ここで算出した数から、既設トイレの使用可能な個室数(断水時は洋式便器に携帯トイレを設置して使用)を差し引いた分が、備蓄・整備・協定で埋めるべき量になります。既設が和式のままだと、高齢者や障害のある方にとって使用が極度に困難であるうえ、携帯トイレの設置にも板や段ボールで便器を封鎖する手間が生じます。同ガイドラインが「避難所となる施設の新設や大改修の際には洋式便器の設置や、災害時の水使用の観点から節水型に置き換えていくことを推進すべき」としているのは、この構造的な問題を踏まえたものです。

次にマンホールトイレです。下水道管路にあらかじめ接続した専用マンホールの上に便座と個室を設置するもので、日常使用しているトイレに近い環境を迅速に確保できる点が特徴とされています。避難所指定校での設置は21.0%(令和6年11月1日時点)で、前回調査の19.1%からの伸びは緩やかです。整備にあたっては、国土交通省「マンホールトイレ整備・運用のためのガイドライン-2025年版-」(令和7年10月)が、必要数の算定、女性や子ども、高齢者等が安全に安心して使えるための配慮事項、事前準備と訓練、使用後の片づけまでを整理していますので、設計条件の出発点として参照するのが確実です。あわせて、少量の水で洗浄できる災害用タンク式トイレや、プールの水・雨水を洗浄水として利用できる配管の工夫も選択肢になります。後者を設置している学校は15.2%にとどまりますが、前回調査の8.5%からは倍近い伸びを見せている領域です。

生活用水も忘れてはなりません。取組指針は、飲料水のほかにトイレや入浴、清掃、洗濯、器材の洗浄などに欠かせない生活用水の確保が必要だとしたうえで、感染症の防止等の衛生面の観点から、分散型の生活用水の確保として平時からタンク、貯水槽、防災井戸等の整備に努めておくことを求めています。学校施設で現実的な選択肢は、受水槽・高架水槽の耐震性確保と非常用取水口の設置、プールの浄水装置、防災井戸、シャワー設備の確保です。確保率36.7%という数字は、裏を返せば、ここに手を付けるだけで域内の避難所の質が大きく変わるということでもあります。

断水対策は土木・設備・建築が交差するため、単独工事より校舎・体育館の改修と同時施工にしたほうが仮設費も工期も抑えられます。既存の改修計画に何をどう組み込めるかを整理したい場合は、断水対策と避難所機能の同時整備について光建舎に相談するところから始めるのも一つの方法です。

要配慮者への配慮|バリアフリー化・福祉避難所・多様性への対応

避難所の質を決めるのは、平均値ではなく最も使いにくい人にとっての使いやすさです。結論として、屋内運動場のバリアフリートイレと動線の確保が、要配慮者対応の最優先事項になります。

文部科学省「学校施設のバリアフリー化に関する実態調査」(令和6年9月1日時点)によると、公立小中学校の屋内運動場でバリアフリートイレが整備されているのは13,011校・47.9%(令和4年度調査は41.9%)です。校舎の74.4%と比べて大きく低い水準にとどまっています。同調査では、令和7年度末までの整備目標として、バリアフリートイレは「避難所に指定されている全ての学校に整備」することが掲げられていました。屋内運動場を避難所として使う前提に立てば、体育館側のバリアフリートイレ整備は避難所機能そのものだと位置づけられます。なお、バリアフリー化全般の進め方は別記事「学校施設のバリアフリー化とは?整備目標・対象設備・進め方を自治体向けに解説【2026年版】」で扱います。

運用面の配慮事項も、設計段階で拾っておくと効果が高いものが多くあります。トイレの確保・管理ガイドラインは、配慮すべき事項として次のような項目を挙げています。

  • 女性・子ども:男性用と女性用を分ける、生理用品の処分用ゴミ箱、鏡や荷物置きの棚・フック、子どもと一緒に入れるトイレ、オムツ替えスペース、使用待ちの行列のための目隠し
  • 高齢者・障害のある方:洋式便器の確保、使い勝手の良い場所への設置、動線の確保、段差の解消、介助者も入れるトイレ
  • 外国人:トイレの使い方・手洗い方法・消毒方法等の外国語掲示
  • その他:多目的トイレや男女共同トイレ、人工肛門・人工膀胱保有者のための装具交換スペース、幼児用の補助便座

さらに、指定一般避難所では生活が困難な要配慮者のためには、指定福祉避難所という仕組みがあります。取組指針は、必要な人員の確保という観点から老人福祉センター、障害福祉施設および特別支援学校等の施設を活用することが望ましいとし、指定したときは受入対象者を特定して公示することによって、受入対象者とその家族のみが避難する施設であることを明確化するよう求めています。特別支援学校の避難所指定率は52.5%と小中学校より低いものの、福祉避難所としての役割を含めて検討する余地があります。

財源|学校施設環境改善交付金「防災機能の強化に関する事業」の使い方

国庫補助の中心は、学校施設環境改善交付金です。防災機能に関わる主なメニューを、2026年8月時点の交付要綱(平成23年4月1日 23文科施第3号/最終改正 令和8年4月13日 8文科施第49号)別表1で確認すると次のようになります。

事業メニュー 算定割合(原則) 主な対象
防災機能の強化に関する事業(別表1・33の項) 1/3 幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校及び特別支援学校の防災機能を強化するための施設整備。自家発電設備の整備は避難所指定校に限る。高等学校及び中等教育学校の後期課程は屋外防災施設の整備に限る
屋内運動場の空調設備整備事業(別表1・35の項) 1/2 小学校、中学校、義務教育学校、中等教育学校の前期課程及び特別支援学校(いずれも避難所指定校に限る)
太陽光発電等の整備に関する事業(別表1・34の項) 1/3(令和10年度までに行われるものは1/2) 太陽光発電、風力発電、太陽熱利用、蓄電池等の整備。蓄電池を単独で整備する場合は太陽光発電設置校に限る
大規模改造〈質的整備〉(別表1・6の項) 1/3(バリアフリー化等は要件により1/2) 内部環境改善、トイレ改修、空調設置、バリアフリー化等

(出典:文部科学省「学校施設環境改善交付金交付要綱」別表1、同「国庫補助事業について」)

実務上のポイントは3つです。第一に、防災機能の強化に関する事業の対象は幅広く、文部科学省の解説では「非構造部材の耐震対策、避難経路・備蓄倉庫の整備、避難所指定校への自家発電設備の整備 等」と例示されています。備蓄倉庫や自家発電といった、これまで防災部局の単費で整備しがちだったものが、学校施設として国庫補助の対象になり得るという点は共有しておく価値があります。第二に、自家発電設備の整備は避難所指定校に限られ、屋内運動場の空調設備整備事業も避難所指定校が要件です。避難所指定の有無が財源に直結するため、防災部局との事前調整が必須になります。第三に、算定割合や対象期間は年度ごとの交付要綱改正で変わり得ます。実施前に必ず最新の要綱を確認し、都道府県の担当課を通じて照会してください。

制度全体の申請フローと施設整備計画への計上の仕方は「学校施設環境改善交付金とは?対象事業・補助率・申請の流れを自治体向けに解説【2026年版】」で解説しています。他施設との複合化を伴う場合の考え方は「学校施設の複合化とは?類型・設計要点・財政支援を自治体担当者向けに解説」もあわせてご覧ください。

学校施設の防災機能強化を進める7つのステップ

進め方は、文部科学省が令和7年6月に公表したチェックリストの枠組みに沿うのが確実です。同資料は、学校設置者が所管の学校について①学校周辺の災害種ごとの災害リスク、②学校施設の脆弱性や必要な対策、③避難所として必要な防災機能を概括的に確認できるよう作られています。これを施設整備の実務手順に落とし込むと、次の7ステップになります。

  1. 災害リスクの確認 — ハザードマップポータルサイトや地震ハザードカルテを活用し、学校周辺の土砂災害警戒区域、津波・洪水等の浸水想定区域、液状化の可能性、周辺道路の通行規制・冠水の想定を確認します。孤立の可能性も防災部局と共有します。
  2. 施設の脆弱性の確認 — 構造体の耐震化、屋内運動場等の吊り天井の落下防止対策、その他の非構造部材の対策状況を確認したうえで、浸水深・浸水時間から発災後に使用できないおそれのある施設・箇所、受変電設備等の設備を洗い出します。
  3. 想定避難者数の共有 — 防災部局と連携し、想定される災害ごとの最大規模の避難者数を確定します。ここが決まらないと必要量が出せません。
  4. 必要量の逆算 — 1人当たり最低3.5㎡から収容可能人数を算出し、トイレは当初50人当たり1基・長期化時20人当たり1基、女性用と男性用は3対1で必要数を試算します。電源・飲料水・生活用水・冷暖房・通信・備蓄も同様に、容量と個数で表現します。
  5. ギャップの整理と手当ての選択 — 不足分について、施設整備で埋めるのか、備蓄で埋めるのか、近隣の公共施設や民間事業者との協定で埋めるのかを機能ごとに決めます。協定で埋める場合は、同時被災の可能性を必ず検討します。
  6. 整備方針と概算の作成、施設整備計画への計上 — 「体育館の断熱+空調+バリアフリートイレ」「備蓄倉庫+マンホールトイレ+非常用電源」など、工種をまたぐパッケージを複数案つくり、交付金メニューと対応させたうえで施設整備計画に載せます。
  7. 利用方針の策定と訓練による検証 — 校舎・屋内運動場・校庭等をどう使うかを利用方針として文書化し、地域との避難所運営訓練で実際に機能するかを確かめます。文部科学省も、状況確認に加えて訓練による効果検証が効果的だとしています。

止まりやすいのはステップ3とステップ6です。ステップ3は所管が防災部局にあるため教育委員会だけでは動かせず、ステップ6は概算がないと予算要求に載せられないという事情があります。前者は文部科学省のチェックリストを共通言語にして会議体を作ること、後者は現況調査と概算作成を外部の設計・施工の知見で補うことが、実務的な突破口になります。

よくある質問

Q1. 防災機能は必ず学校の敷地内に整備しなければなりませんか。
A. 必ずしもそうではありません。文部科学省の調査では、防災機能設備等を敷地内に保有しているほか、近隣の公共施設や民間事業者との協定等により優先して利用できることとなっている学校も「確保している」に含めて集計されています。内閣府の取組指針も、防災機能設備等を指定避難所等に保有しない場合には、あらかじめ近隣の公共施設や民間事業者と協定を締結しておくことを求めています。ただし大規模災害では同時被災の可能性があるため、協定に依存する範囲は慎重に見極める必要があります。

Q2. 避難所として必要な広さは、どのくらいを見込めばよいですか。
A. 内閣府「避難生活における良好な生活環境の確保に向けた取組指針」(令和6年12月改定)は、スフィア基準に沿って1人当たり最低3.5㎡の居住スペースとなるようにすることを求めています。内閣府・文部科学省の事務連絡(令和7年11月5日)でも同じ数値が示されています。この面積で収容可能人数を算出し、想定避難者数に足りない場合は、避難所指定されていない公立学校の活用等も含めて検討することが要請されています。

Q3. 断水時のトイレは、何基くらい確保すればよいですか。
A. 内閣府「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン」(令和6年12月改定)は、スフィア基準に沿って、災害発生当初は避難者50人当たり1基、避難が長期化する場合は20人当たり1基、女性用と男性用の比率は3対1、平均的な使用回数は1日5回として計画を作成することを求めています。個数は施設のトイレの個室と災害用トイレを合わせて算出し、バリアフリートイレはこれに含めず別途確保することが望ましいとされています。同ガイドラインには必要数計算シートが別添されています。

Q4. 備蓄倉庫や非常用電源の整備に、国庫補助は使えますか。
A. 学校施設環境改善交付金の「防災機能の強化に関する事業」(交付要綱別表1・33の項、算定割合1/3)が該当します。文部科学省の解説では、非構造部材の耐震対策、避難経路・備蓄倉庫の整備、避難所指定校への自家発電設備の整備等が例示されています。自家発電設備の整備は避難所指定校に限られる点、高等学校および中等教育学校の後期課程は屋外防災施設の整備に限られる点に注意してください(2026年8月時点)。年度ごとの要綱改正で扱いが変わり得るため、実施前に最新版をご確認ください。

Q5. 何から手を付けるべきか、優先順位の付け方が分かりません。
A. 文部科学省「地域の実情・災害リスクに応じた学校施設の防災機能の強化・実装に向けて」(令和7年6月)のチェックリストが目安になります。①学校周辺の災害種ごとの災害リスク、②学校施設の脆弱性や必要な対策、③避難所として必要な防災機能、の順に確認する構成です。全国的な整備率から見れば、入浴・洗濯等の生活用水(36.7%)、マンホールトイレ(21.0%)、屋内運動場のバリアフリートイレ(47.9%)が相対的に低い水準にあり、まだ手を付けていなければ検討の候補になります。ただし、浸水想定区域内にある学校では受変電設備の位置など、リスクに応じた項目が先に来ることもあります。

まとめ|想定避難者数から逆算し、改修と束ねて整える

避難所となる学校施設の防災機能強化は、設備を単品で買い足していく話ではありません。想定避難者数を防災部局と共有し、1人当たり3.5㎡やトイレ50人/20人当たり1基といった国の目安から必要量を逆算し、足りない分を施設整備・備蓄・協定のどれで埋めるかを機能ごとに決める——この順序を踏むだけで、予算要求の説得力は大きく変わります。

そのうえで、工事は校舎・体育館の改修と束ねるのが得策です。断熱と空調、トイレの洋式化とバリアフリートイレ、受水槽と非常用取水口、備蓄倉庫と動線。これらは別々に発注すると仮設費も工期も重複します。全国的に見ても、生活用水・マンホールトイレ・屋内運動場のバリアフリートイレは整備率が低く、伸びしろが大きい領域です。

本記事で紹介した制度・数値は2026年8月時点で確認できた文部科学省・内閣府・国土交通省の一次情報に基づきます。整備率は令和6年11月1日時点(バリアフリー化は令和6年9月1日時点)の調査結果であり、交付要綱の事業メニューや算定割合は年度ごとの改正で変わり得ますので、実施の際は必ず最新の資料と所管課への確認を行ってください。なお、工事費の相場は建物条件による差が大きいため、本記事では金額の目安を示していません。

株式会社光建舎は、内装仕上げ・改修を軸に、企画から設計・施工・アフターまで一貫して対応する建設会社です(運営:株式会社ウイングスペース/一級建築士事務所)。学校・教育施設の改修に強みを持ち、在校中でも止めない安全・工程管理、耐震補強・バリアフリー・省エネ改修、補助金・交付金の活用支援まで全国で対応しています。現況調査から防災機能の整備方針の整理、概算、設計・施工までを一つの窓口で進めたい場合は、避難所となる学校施設の整備計画づくりから施工まで光建舎に問い合わせることができます。

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