この記事は、学校施設の設計・施工を行う株式会社光建舎が作成しています。設計(ウイングスペース一級建築士事務所)から施工まで一社で対応し、専門学校・高校・自治体の学校施設を手がけています。

学校プールの改修とは?工事内容・進め方・安全対策を専門会社が解説

プール槽の塗装が剥がれてきた。水を張ると水位が下がる。ろ過設備を動かしても水質が安定しない。プールサイドが滑りやすく、更衣室やシャワー室にも劣化が広がっている。

学校プールの不具合は、表面だけを見ても原因を特定できません。水漏れに見える症状でもどこに原因があるかで、必要な工事は変わります。

安全面では、排水口の蓋を固定するだけでは不十分です。二重構造の安全対策を基本としています。不備がある場合は、必要な改修が終わるまで利用を停止する考え方が示されています。

また、水質を維持するには、薬剤の調整だけでなく、プール容積や利用状況に合ったろ過装置、循環配管、消毒設備が必要です。

この記事では、学校のプール改修を「槽の塗り替え」ではなく、建築、防水、給排水、ろ過、安全設備、附属施設を一体で見直す工事として解説します。自校が部分補修で対応できるのか、設備を含む全面改修が必要なのかを判断するためのポイントを整理します。

学校プールの改修で、いま確認すべきこと

学校プールの状態は、見た目の劣化だけでは判断できません。使用前に水を張れても、水質を維持できない、排水口の安全構造が不足している、濡れた床が滑りやすいといった状態では、安全な授業環境とはいえません。

最初に確認したいのは、施設の状態と、使用中に満たすべき衛生・安全上の条件です。

確認項目基準・確認内容改修との関係
遊離残留塩素0.4mg/L以上。1.0mg/L以下が望ましい。消毒設備、薬剤注入、循環状態が安定しているかを確認する。
pH値5.8以上8.6以下。薬剤管理と消毒設備の制御が適切に行えるかを確認する。
循環ろ過装置の処理水出口の濁度は0.5度以下。0.1度以下が望ましい。ろ過装置の容量、ろ材、運転状態、配管の劣化を調べる。
屋内プールの空気環境二酸化炭素は1500ppm以下、塩素ガスは0.5ppm以下、水平面照度は200lx以上が望ましい。換気、排気、照明、薬剤保管室の配置を一体で見直す。
排水口の安全蓋等の固定と、配管取り付け口の吸い込み防止措置による二重構造。表面の蓋だけでなく、蓋の下にある配管開口部まで確認する。
使用中の水質管理遊離残留塩素は使用前と使用中1時間ごとに1回以上測定する。測定、薬剤補充、機器操作を安全に行える管理動線を確保する。

これらの数値は、水質担当者だけが見るものではありません。改修後も学校側が安全に運転、測定、点検できる設備になっているかを判断するための条件です。

ろ過装置を更新しても、既存配管が詰まっている、バルブが固着している、薬剤注入設備が不安定であるといった状態なら、水質は安定しません。建築部分と設備部分を別々に調査すると、不具合の原因を残すことがあります。

学校施設のプール改修とは

学校施設のプール改修は、プール槽、防水、プールサイド、ろ過設備、給排水配管、排水口、更衣室、トイレ、シャワー室などを、現在の利用方法に合わせて整える工事です。

文部科学省の施設整備指針では、屋内・屋外を問わず、利用内容に応じた水面積、水深、安全表示、浄化装置、排水口、通路、附属施設を一体で考えることが示されています。

プールの改修を考える際は、次の三つを分けて整理します。

  • 現在発生している漏水、剥離、腐食、機器故障などの不具合
  • 排水口、水質、床の滑りなど、安全・衛生上不足している部分
  • 今後の授業方法や維持管理に合わせて改善したい部分

この三つを混同すると、塗装補修のつもりで始めた計画が、配管やろ過設備の更新へ広がり、設計途中で予算と工程が崩れます。

部分補修で使い続けられるのか、プール槽と設備をまとめて更新する必要があるのかは、工事内容を決める前の現況調査で判断します。

学校プールで改修対象になる主な部位

プール槽・防水・仕上げ

プール槽の劣化では、塗膜の剥離やひび割れだけでなく、漏水原因の特定が優先されます。原因は槽本体とは限らず、配管やバルブの場合もあるため、下地、防水、仕上げを一体で調査します。

プールサイド・通路

プールサイドは、防滑性だけでなく、排水勾配や排水溝との納まりも確認します。床材だけを更新しても、水たまりや滑りやすさが残るため、床、防水、排水をまとめて検討します。

ろ過設備・給排水配管

ろ過設備は、ろ過装置だけでなく、ポンプ、配管、バルブ、薬剤注入設備まで含むシステムです。機器だけを更新せず、設備全体を調査して更新範囲を決めます。

給排水設備全体の更新と重なる場合は、学校施設の給排水設備の更新とは?老朽化のサインと進め方を解説(K011)も併せて確認してください。

排水口・循環口

排水口は、学校プールで最優先に確認する安全設備です。蓋の固定だけでなく、配管取り付け口に吸い込み防止金具等を設けた二重構造になっているかを確認します。

更衣室・トイレ・シャワー室

附属施設もプールと一体で改修します。耐水性、耐湿性、耐食性のある材料を選び、滑りにくい床、排水勾配、利用しやすい動線を整えます。

段差や出入口幅、トイレやシャワーの使い方を見直す場合は、学校施設のバリアフリー化とは?対象・進め方・関連法を解説(K033)との関係も確認します。

屋内プールの換気・結露・腐食

屋内プールでは、湿気と消毒剤による結露・腐食対策が必要です。換気設備だけでなく、給排気位置、気密性、耐湿・耐食材料まで含めて設計します。

屋外プールの囲障・上屋

屋外プールでは、囲障、防犯設備、見学場所、上屋も検討対象です。上屋を設ける場合は、柱基礎、構造、防水、排水、避難動線との取り合いを確認します。

学校プール改修の検討項目・課題・解決策

検討項目課題・発生するリスク解決の方向
漏水箇所の特定プール槽のひび割れと判断して全面防水を行っても、循環配管やバルブが原因なら水位低下が止まらない。水位変化、配管系統、バルブ、目地、槽本体を分けて調査し、槽補修と配管更新の範囲を決める。
既存仕上げと下地劣化した既存塗膜の上に新しい仕上げを重ねると、下地ごと浮き、再び剥離する。既存仕上げの付着状態を確認し、脆弱部を除去したうえで、下地補修、防水層、仕上げ層を再構成する。
プールサイド床材だけを更新しても、排水勾配が不十分なら水たまりが残り、滑りや汚れの原因になる。防滑性のある床材とともに、床勾配、排水溝、槽周囲の防水納まりを見直す。
ろ過・配管設備ろ過装置本体だけを更新すると、既存配管の詰まり、漏水、流量不足が残り、水質が安定しない。ポンプ、配管、バルブ、薬剤注入設備、制御盤まで系統調査を行い、必要な範囲を同時更新する。
排水口の吸い込み防止蓋が固定されていても、配管開口部が露出していれば、蓋の破損や脱落時に吸い込み事故が起きる。蓋等のボルト固定と、配管取り付け口の吸い込み防止金具等による二重構造を確認する。
屋内プールの湿気換気量や空気の流れが不足すると、結露と消毒剤の影響で天井、壁、金物、設備が腐食する。給排気経路、気密性、耐湿・耐食材料を一体で設計し、湿気が校舎側へ流出しない室構成にする。
附属施設の劣化プール本体だけを直しても、更衣室、シャワー室、トイレの床や金物が腐食・破損したままだと、安全性と使いやすさが改善しない。耐水・耐湿・耐食材料を選定し、排水勾配、換気、動線まで含めてプール本体と同時に改修する。

学校プール改修における実務の勘所

水を抜いた状態だけで漏水原因を決めない

プール槽を空にすると、ひび割れや仕上げの浮きは確認できます。しかし、実際に水圧がかかった状態でなければ現れない漏水もあります。

調査では、水を張った状態での水位変化と、配管系統の運転状況を記録します。ろ過設備の運転中だけ水位が下がるのか、停止中も下がるのかによって、疑う箇所が変わります。

給水、循環、排水の各系統を切り分け、バルブの状態も確認します。見えているひび割れだけを補修すると、工事後に別の系統から漏水が続くことがあります。

既存仕上げを撤去してから追加工事が発生しやすい

プール槽やプールサイドは、表面材を撤去して初めて下地の状態が分かる部分が多くあります。

塗膜の下でコンクリートが脆弱化している、目地周辺にひび割れが広がっている、床下地へ水が回っている場合は、当初想定より補修範囲が広がります。

設計段階で部分的な撤去調査を行い、既存下地と仕上げ材の付着状態を確認します。全面撤去後に判断を始めると、限られた休業期間中に追加工事が集中します。

機械室は機器が入るかではなく、交換できるかで判断する

新しいろ過装置を機械室内に設置できても、将来の点検や交換ができなければ維持管理上の問題が残ります。

搬入経路では、扉、段差、階段、曲がり角、既存配管との干渉を確認します。機器を分割して搬入できるか、壁や屋根の一部を解体する必要があるかも設計時に整理します。

機器の周囲には、バルブ操作、ろ材交換、部品交換に必要な作業空間を確保します。配管を機器の前面へ集中させると、日常点検はできても、故障時に部品を取り出せないことがあります。

防水と設備の工事範囲を分断しない

プール槽やプールサイドの防水工事と、循環配管や排水口の設備工事は、同じ部位で重なります。

防水工事を先に完了してから排水口や配管を更新すると、新しい防水層を再び切断することになります。反対に、設備配管だけを更新しても、周囲の防水納まりが不十分なら漏水が発生します。

配管貫通部、排水口、目地、槽周囲の納まりを建築・設備で共有し、施工順序と責任範囲を設計図に明記します。

プールはどこまで改修すべきか

プール改修の範囲は、塗装の剥がれや機械の故障だけでは決まりません。次の順序で施設全体を確認します。

  1. プール槽、配管、ろ過設備、排水口、附属施設の状態を調査する
  2. 漏水、安全、水質、動線のうち、どの問題が授業実施を妨げているか整理する
  3. 部分補修で対応できる範囲と、全面改修が必要な範囲を分ける
  4. 防水工事と設備工事が重なる部分の施工順序を整理する
  5. 改修後の点検、薬剤管理、機器交換まで含めて維持管理方法を確認する

槽の仕上げに限定した劣化であれば、下地補修と防水・仕上げ更新で対応できる場合があります。

一方、漏水箇所が複数に及び、配管、ろ過設備、排水口、附属施設にも不具合がある場合は、部分補修を繰り返すより、全体を一つの改修計画としてまとめる必要があります。

学校プールの老朽化が広範囲に及ぶ場合は、近隣校や公営・民間プールの利用が比較対象になることもあります。まずは現況を調査し、安全に使い続けられる状態へ改修できるかを判断します。

学校全体の長寿命化改修や給排水更新と同時に行えば、配管ルート、機械室、防水、附属施設を一体で整理できます。防水工事の基本は、学校施設の屋上・屋根防水とは?工法・耐用年数・進め方を解説(K005)も参考になります。

発注方法や設計から施工までの流れは、学校改修の進め方ガイド(K296)をご参照ください。建築、防水、設備を横断して判断できる会社を選ぶ際は、失敗しない施工会社の選び方(K297)も併せて確認できます。

株式会社光建舎にご相談ください

光建舎は教育施設の設計・改修を専門とし、現況調査から設計・施工管理までを一貫して対応します。プール槽や防水だけでなく、ろ過設備、配管、排水口、プールサイド、更衣室まで一体で調査し、部分補修と全面改修のどちらが適切かを整理します。全国対応・現地調査とオンライン協議の併用で、構想段階からのご相談を承ります。

関連記事

参考・出典

  • 文部科学省「小学校施設整備指針」https://www.mext.go.jp/content/20220624-mxt_kouhou01-000023406_02.pdf
  • 文部科学省「中学校施設整備指針」https://www.mext.go.jp/content/20220624-mxt_kouhou01-000023406_03.pdf
  • 文部科学省「高等学校施設整備指針」https://www.mext.go.jp/content/20220624-mxt_kouhou01-000023406_04.pdf
  • 文部科学省「持続可能な水泳授業の実施に向けた参考資料 ~学校プールの管理・運用等の視点を含めた水泳授業に係るポイント~」https://www.mext.go.jp/sports/content/20260212-spt_sseisaku02-000047318_0000002.pdf
  • 文部科学省「学校環境衛生基準」文部科学省・国土交通省「プールの安全標準指針」https://www.mext.go.jp/sports/content/20230427_spt_kensport01_000029443_05.pdf

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