目次
法人本体と寄附者の措置を一覧で整理
学校法人には、公共性・公益性を理由に、さまざまな税制上の優遇措置が設けられています。法人税、固定資産税、不動産取得税、登録免許税。施設の取得や保有にかかる税の多くが、教育に使う限りかかりません。
一方で、優遇には条件があります。教育に使わない不動産、収益事業から生じる所得、外部への貸付。条件から外れると課税されます。施設の活用や取得を考えるときは、どこまでが優遇の範囲かを把握しておく必要があります。
この記事では、①学校法人の税制優遇とは何か、②法人本体に対する措置、③不動産に関する措置、④寄附者に対する措置、⑤優遇が外れる場面、の5点を整理します。
この記事の要点
- 学校法人本体には、法人税・事業税・住民税・登録免許税・不動産取得税・固定資産税・都市計画税・印紙税・消費税の優遇措置がある
- 法人税などは、収益事業から生じた所得にだけ課税される
- 直接保育または教育の用に供する不動産は、不動産取得税と固定資産税が非課税
- 個人が要件を満たす学校法人に寄附すると、所得控除か税額控除(寄附額−2,000円の40%)を選べる
- 教育に使わない不動産や、継続的な外部貸付は、優遇の範囲から外れる可能性がある
学校法人の税制優遇とは何か?
学校法人の税制優遇とは、私立学校を設置する学校法人の公共性・公益性を考慮して、学校法人本体と、学校法人に寄附する個人・法人に対して設けられている税の軽減・非課税の措置です。
文部科学省は、学校法人本体に対する措置として、法人税(収益事業を除く)、事業税、住民税、登録免許税、不動産取得税、固定資産税・都市計画税、印紙税、消費税の優遇を挙げています。寄附者に対しては、所得税の寄附金控除・税額控除、法人の損金算入、相続税の非課税などが設けられています。
優遇は大きく2つの方向に分かれます。
| 対象 | 主な措置 | 効果 |
|---|---|---|
| 学校法人本体 | 法人税、固定資産税、不動産取得税、登録免許税など | 教育活動と教育用資産に税がかからない |
| 寄附者 | 所得控除、税額控除、損金算入、相続税非課税 | 学校法人への寄附が集まりやすくなる |
学校法人本体にはどんな措置があるか?
税目ごとに整理します。
| 税目 | 学校法人の扱い |
|---|---|
| 法人税 | 収益事業から生じた所得にのみ課税 |
| 法人住民税・事業税 | 収益事業に係るものに課税 |
| 所得税 | 受け取る利子・配当等は非課税 |
| 消費税 | 授業料、入学金、施設設備費、入学検定料などは非課税 |
| 印紙税 | 学校法人が作成する受取書(領収証)は非課税 |
| 登録免許税 | 校舎・寄宿舎・図書館等や敷地・運動場の取得登記が非課税 |
| 不動産取得税 | 直接保育または教育の用に供する不動産等が非課税 |
| 固定資産税・都市計画税 | 直接保育または教育の用に供する不動産等が非課税 |
法人税
学校法人は法人税法上の公益法人等に当たり、法人税は収益事業から生じた所得にだけ課されます。収益事業とは、政令で定める34業種を、事業場を設けて継続して営むものです。
収益事業に該当した場合の税率は、年800万円以下の部分が15%、800万円超の部分が19%です。収益事業の判定、税率、みなし寄附金の詳細は学校法人の収益事業にはどう法人税がかかるか?で扱っています。
消費税
文部科学省の監事研修資料では、学校等における授業料、入学金、施設設備費、入学検定料、学籍証明等手数料を対価とする役務の提供が、消費税の非課税取引として示されています。
一方、学校法人は課税売上と非課税売上の両方を持つため、仕入税額控除の計算では按分が必要になります。施設の改修工事で支払った消費税は、全額が控除できるわけではありません。
所得税
学校法人が受け取る預金の利子などは、所得税が課されません。所得税法で、公共法人等が支払を受ける利子等は非課税とされているためです。
不動産に関する優遇はどこまで及ぶか?
施設に直接関わる3つの税があります。
登録免許税
監事研修資料では、学校法人が校舎、寄宿舎、図書館その他保育または教育に直接必要な附属建物の所有権を取得した場合の登記、敷地、運動場、実習用地などの権利の取得登記が非課税とされています。
校地を買い増す、校舎を新築して保存登記をする、といった場面で登録免許税がかかりません。
不動産取得税
学校法人がその設置する学校において直接保育または教育の用に供する不動産、および寄宿舎の用に供する不動産を取得した場合は、不動産取得税が課されません。
固定資産税・都市計画税
同様に、学校法人がその設置する学校において直接保育または教育の用に供する固定資産、および寄宿舎の用に供する固定資産は、固定資産税と都市計画税が課されません。
ポイントは「直接」保育または教育の用に供するという条件です。校舎、体育館、運動場は通常この範囲に入りますが、職員住宅、将来用地として保有しているだけの土地、第三者に貸している駐車場などは、範囲から外れる可能性があります。
非課税の判断は、固定資産税は市町村(東京23区は都)、不動産取得税は都道府県が行います。
寄附者にはどんな措置があるか?
学校法人に寄附する側の負担を軽くする措置です。施設整備の資金を寄附で集める場合に関係します。
個人の寄附
学校法人は特定公益増進法人に当たり、個人が寄附すると、所得税の寄附金控除を受けられます。
さらに、一定の要件を満たす学校法人への寄附については、所得控除に代えて税額控除を選ぶことができます。国税庁の案内では、税額控除額は(その年中の寄附金額−2,000円)×40%で、所得税額の25%が限度とされています。
| 方式 | 計算 | 向いている寄附 |
|---|---|---|
| 所得控除 | (寄附金額−2,000円)を所得から控除 | 所得が高い人の寄附 |
| 税額控除 | (寄附金額−2,000円)×40%を税額から控除 | 小口の寄附 |
寄附金の額は、いずれも総所得金額等の40%が上限です。
税額控除の対象になる学校法人の要件
税額控除の対象になるには、学校法人が所轄庁の証明を受ける必要があります。文部科学省の手引きでは、要件として次のものが示されています。
- 絶対値要件:3,000円以上の寄附者が年平均100人以上、かつ寄附金額が年平均30万円以上
- 相対値要件:経常収入金額に占める寄附金収入の割合が5分の1以上
- 情報公開要件:寄附行為、計算書類、財産目録等の閲覧、寄附金を充当する予定の具体的な事業内容を記載した書類の作成など
絶対値要件と相対値要件はいずれかを満たせばよく、学校の規模が小さい場合は絶対値要件を緩和する計算が設けられています。証明の有効期間は5年間です。
法人の寄附
法人が学校法人に寄附した場合は、一般の寄附金とは別枠で、特別損金算入限度額まで損金に算入できます。
また、日本私立学校振興・共済事業団を通じた受配者指定寄付金の制度を使うと、寄附金の全額を損金に算入できます。
現物寄附と相続
土地・建物・株式などを寄附した場合、国税庁長官の承認を受ければ、寄附した人にかかる譲渡所得税(みなし譲渡課税)が非課税になる特例があります。
相続や遺贈で取得した財産を、相続税の申告期限までに学校法人に寄附した場合は、その寄附した財産に相続税がかかりません。
優遇が外れるのはどんな場面か?
3つの場面に注意が必要です。
収益事業を行うとき
駐車場の貸付、体育館の時間貸し、購買部での物品販売などが収益事業に当たると、その所得に法人税・住民税・事業税がかかります。貸し方ごとの判定は学校の駐車場・グラウンドを貸すと税金はどうなるか?を参照してください。
教育に使わなくなった不動産
在籍者の減少で使わなくなった校舎や、第三者に貸し出した校舎は、「直接教育の用に供する」とは言いにくくなり、固定資産税の非課税が外れる可能性があります。空き校舎の賃貸については空き校舎を貸すと税金はどうなる?で扱っています。
取得した土地をすぐに使わないとき
将来の校舎用地として取得しても、実際に教育の用に供していない期間は、不動産取得税や固定資産税の非課税の対象にならないことがあります。取得の時期と使用開始の時期を、事前に都道府県・市町村に確認しておきます。
施設整備の判断にどう関わるか?
優遇の範囲を知っておくと、施設の持ち方の判断が変わります。
たとえば、使わない校舎を保有し続けると、維持費がかかるうえ、将来的に非課税が外れて固定資産税が発生する可能性があります。反対に、校地を拡張して教育に使うのであれば、取得にかかる税の負担は小さく済みます。
寄附による資金調達を考えるなら、税額控除の証明を受けているかどうかで、小口の寄附の集まり方が変わります。施設整備の財源の一つとして検討する価値があります。
学校法人の経営全体の中での施設の位置づけは私立学校の経営改善で施設はどう位置づけるか?にまとめています。
よくある質問
Q. 学校法人は税金を一切払わなくてよいのですか。
A. いいえ。収益事業の所得には法人税等がかかり、教育に使わない不動産には固定資産税がかかる可能性があります。職員の給与の源泉徴収義務も一般企業と同様にあります。
Q. 職員寮にも固定資産税がかかりませんか。
A. 非課税の対象は、直接保育または教育の用に供する不動産と、寄宿舎の用に供する不動産です。職員の住宅は対象外となるのが一般的です。所在地の市町村に確認してください。
Q. 税額控除の証明はどこで受けますか。
A. 所轄庁で証明を受けます。大学などを設置する学校法人は文部科学省、高校以下のみを設置する学校法人は都道府県が所轄庁です。
Q. 公立学校にもこうした優遇はありますか。
A. 地方公共団体はそもそも法人税の納税義務がなく、公立学校の施設は固定資産税の課税対象にもなりません。この記事の内容は私立学校を設置する学校法人向けです。
まとめ
学校法人には、法人本体と寄附者の両方に税制上の優遇措置があります。法人本体では、法人税・事業税・住民税は収益事業の所得にだけ課され、直接保育または教育の用に供する不動産は、登録免許税・不動産取得税・固定資産税がかかりません。授業料などは消費税も非課税です。
寄附者側では、個人は所得控除か税額控除を選べ、法人は別枠の損金算入や受配者指定寄付金による全額損金算入が使えます。
ただし、優遇は教育に使うことが前提です。収益事業を始める、使わない校舎を貸す、取得した土地をすぐに使わない、といった場面では優遇が外れる可能性があります。施設の活用や取得を検討する段階で、所轄庁・税務署・地方公共団体の税務担当に確認しておくことが大切です。
参考・出典
- 文部科学省「私立学校関係税制」 https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shiritsu/shigakuzeisei.html
- 文部科学省「監事が知っておきたい 学校法人の税務」(平成29年10月13日 監事研修会資料) https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2017/10/18/1397326_4.pdf
- 文部科学省「学校法人に対する寄附の税額控除に係る証明申請の手引き」 https://www.mext.go.jp/content/20240919-mxt_sigakugy-000020281_0002.pdf
- 国税庁「No.1266 公益社団法人等に寄附をしたとき」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1266.htm
- 国税庁「No.5759 法人税の税率」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5759.htm
- 法人税法、所得税法、地方税法、登録免許税法、租税特別措置法
記載の税制は公表時点のものです。実際の課税関係は、所轄庁・税務署・地方公共団体の税務担当・税理士にご確認ください。
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