目次
34業種・税率・みなし寄附金
学校法人は、原則として法人税がかかりません。ただし、例外があります。駐車場を貸す、購買部で物品を売る、体育館を時間貸しする。こうした活動が一定の条件を満たすと、収益事業として法人税の対象になります。
施設の有効活用で収入を得ようとするほど、この線引きが重要になります。知らないうちに申告が必要な状態になっていた、というのは避けたいところです。
この記事では、①収益事業とは何か、②3つの要件と34業種、③学校法人に適用される税率、④みなし寄附金、⑤区分経理と申告、⑥私立学校法上の収益事業との違い、の6点を整理します。
この記事の要点
- 学校法人は公益法人等に当たり、収益事業から生じた所得にだけ法人税が課される
- 収益事業は、政令で定める34業種を、事業場を設けて、継続して営むもの
- 学校法人の税率は、年800万円以下の部分が15%、800万円超の部分が19%
- 収益事業から教育事業に繰り入れた金額は、所得の50%か年200万円の多い額まで損金算入できる(みなし寄附金)
- 私立学校法上の収益事業と、法人税法上の収益事業は範囲が異なる
学校法人の収益事業とは何か?
法人税法上の収益事業とは、販売業、製造業その他の政令で定める事業で、継続して事業場を設けて行われるものです。学校法人は法人税法上の公益法人等に当たり、この収益事業から生じた所得に対してだけ法人税が課されます。
言い換えれば、授業料や入学金など教育活動から得る収入には、法人税はかかりません。課税されるのは、政令に列挙された事業に当たる活動の所得だけです。
学校法人の税制全体の中での位置づけは学校法人の税制優遇の全体像にまとめています。
収益事業に当たる要件は何か?
3つの要件をすべて満たす場合です。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 業種 | 法人税法施行令第5条に定める34業種のいずれかに当たる |
| 継続性 | 継続して営まれている |
| 事業場 | 事業場を設けて営まれている |
34業種
政令に定める34業種は次のとおりです。
物品販売業、不動産販売業、金銭貸付業、物品貸付業、不動産貸付業、製造業、通信業、運送業、倉庫業、請負業、印刷業、出版業、写真業、席貸業、旅館業、料理店業その他の飲食店業、周旋業、代理業、仲立業、問屋業、鉱業、土石採取業、浴場業、理容業、美容業、興行業、遊技所業、遊覧所業、医療保健業、技芸教授業、駐車場業、信用保証業、無体財産権の提供等を行う事業、労働者派遣業。
学校の施設活用で関係しやすいのは、不動産貸付業、席貸業、駐車場業、物品販売業、物品貸付業、飲食店業です。
継続性と事業場
文部科学省が公表している監事研修の資料では、たまたま学校のグラウンドを外部の団体の運動会に貸したことがあっても、収益事業には該当しないとされています。一方、講堂や体育館を本来の目的に使わない間に随時、興行等のために利用させている場合は、事業場を設けているものとみなされるとされています。
単発か継続か、事業としての実態があるかが分かれ目です。駐車場やグラウンドの貸し方ごとの判定は学校の駐車場・グラウンドを貸すと税金はどうなるか?で扱っています。
34業種に当たっても除かれるものはあるか?
あります。業種ごとに、収益事業から除かれるものが政令で定められています。
不動産貸付業
国または地方公共団体に対して直接貸し付ける不動産の貸付は、不動産貸付業から除かれています。ほかに、主として住宅の用に供される土地の貸付で対価が低廉なもの、墳墓地の貸付なども除外されています。
たとえば、空き校舎を市町村に直接貸す場合は、この除外に当たる可能性があります。長期の賃貸の論点は空き校舎を貸すと税金はどうなる?で扱っています。
席貸業
席貸業は、不特定または多数の者の娯楽、遊興または慰安の用に供するための席貸と、それ以外の席貸に分かれます。後者については、次のようなものが除かれています。
- 国または地方公共団体の用に供するための席貸
- 社会福祉事業として行われる席貸
- 学校法人などが、その主たる目的とする業務に関連して行う席貸
- 法人の会員などの用に供するための席貸で、対価が実費の範囲を超えないもの
学校の教育目的に関連した貸出であれば、席貸業から除かれる余地があります。反対に、コンサートや興行などの娯楽目的で貸す場合は、この除外の対象になりません。
技芸教授業
学校教育法上の学校として行う教育は、技芸教授業には当たりません。ただし、学校の外で一般向けに開く講座などは、内容によって技芸教授業に当たる可能性があります。
学校法人に適用される税率はいくらか?
年800万円以下の部分が15%、800万円超の部分が19%です。
国税庁の案内では、公益法人等の税率は法人の種類によって分かれています。学校法人は、公益社団法人・公益財団法人・非営利型法人以外の公益法人等の区分に入ります。
| 区分 | 年800万円以下の部分 | 年800万円超の部分 |
|---|---|---|
| 公益社団法人・公益財団法人・非営利型法人 | 15% | 23.2% |
| 上記以外の公益法人等(学校法人など) | 15% | 19% |
| 普通法人(中小法人) | 15% | 23.2% |
年800万円以下の部分の15%は、租税特別措置による特例税率です。国税庁の案内では、令和7年4月1日以後に開始する事業年度で所得金額が年10億円を超える事業年度については、この部分の税率が17%になるとされています。
学校法人の800万円超の部分が19%と普通法人より低いのは、公益法人等に対する軽減税率です。
法人税のほかに、収益事業の所得には法人住民税や事業税もかかります。
みなし寄附金とは何か?
みなし寄附金とは、収益事業に属する資産のうちから、収益事業以外の事業のために支出した金額を、収益事業の寄附金とみなして損金に算入できる仕組みです。
学校法人の場合、損金算入の限度は、所得金額の50%と年200万円のいずれか多い額です。
| 所得金額 | 損金算入の限度 |
|---|---|
| 300万円 | 200万円(50%の150万円より多い) |
| 1,000万円 | 500万円 |
| 3,000万円 | 1,500万円 |
収益事業で得た利益を教育事業に繰り入れれば、課税所得を圧縮できます。所得が年200万円以下であれば、全額を繰り入れることで課税所得をゼロにできる計算です。
繰入の対象は教育事業全般なので、施設の修繕や改修の財源に充てることもできます。施設の維持費を収益事業で補うという考え方と、税負担の圧縮を同時に実現できる仕組みです。
区分経理と申告はどうするか?
収益事業を行う場合は、収益事業に関する経理を、それ以外の事業と区分して行う必要があります。
区分経理
法人税法施行令では、公益法人等は収益事業から生ずる所得に関する経理と、収益事業以外の事業から生ずる所得に関する経理とを区分して行わなければならないとされています。
建物を教育と収益事業の両方に使っている場合は、共通費用を面積比や使用時間比などの合理的な基準で按分します。按分の根拠は記録として残しておきます。
申告
収益事業を始めた場合は、所轄の税務署に収益事業開始届出書を提出します。事業年度終了後は、収益事業に係る法人税の申告を行います。
非課税資産の処分
監事研修の資料では、相当期間(おおむね10年以上)保有していた土地・建物等の不動産の売却益は課税対象外とされています。収益事業に使っていた不動産を売る場合でも、この扱いが適用されるかを確認します。
私立学校法上の収益事業とはどう違うか?
別の制度で、範囲が異なります。
私立学校法では、学校法人は教育に支障のない限り、その収益を学校の経営に充てるため、収益を目的とする事業を行うことができるとされています。行う事業の種類は寄附行為に定め、所轄庁の認可を受けます。認められる業種は告示で定められています。
| 項目 | 法人税法上の収益事業 | 私立学校法上の収益事業 |
|---|---|---|
| 目的 | 課税の範囲を決める | 学校法人が行える事業を決める |
| 範囲 | 政令の34業種 | 告示で定める業種 |
| 手続き | 税務署への届出と申告 | 寄附行為への記載と所轄庁の認可 |
法人税法上は収益事業に当たっても、私立学校法上は教育活動に付随する活動(補助活動)として扱われるものもあります。反対に、私立学校法上の収益事業として行うものは、通常は法人税法上も課税されます。
両者の整理は、所轄庁と税理士の両方に相談して行うのが確実です。私立学校の経営の中での施設活用は私立学校の経営改善で施設はどう位置づけるか?にまとめています。
始める前に何を決めておくべきか?
3つあります。
どの業種に当たるかを先に判定する
同じ体育館の貸出でも、教育目的に関連した貸出か、興行目的の貸出かで扱いが変わります。貸出の目的、相手、料金、頻度を整理し、どの業種に当たるかを税理士と確認してから始めます。
共通費用の按分基準を決める
収益事業に使う建物の光熱水費、清掃費、減価償却費を、どの基準で按分するかを決めます。面積比、使用時間比など、実態に合った基準を選び、毎年同じ基準で計算します。
収入と税負担を試算する
見込み収入から追加の費用と税負担を差し引いた手取りを試算します。手取りが小さければ、区分経理や申告の事務負担に見合わない場合もあります。
よくある質問
Q. 購買部で文房具を売っていますが、収益事業になりますか。
A. 物品販売業に当たる可能性があります。販売の実態や対象によって判断が分かれるため、税理士に確認してください。
Q. 収益事業の赤字は、教育事業の黒字と通算できますか。
A. できません。法人税は収益事業の所得にだけ課されるため、教育事業の収支とは関係なく計算します。
Q. 所得が少額でも申告は必要ですか。
A. 収益事業を行っている場合は、所得の多寡にかかわらず申告が必要です。
Q. みなし寄附金を使うには、実際にお金を動かす必要がありますか。
A. 収益事業に属する資産のうちから、収益事業以外の事業のために支出した金額が対象です。会計上の繰入の記録を残しておきます。
Q. 公立学校にも収益事業の課税はありますか。
A. 地方公共団体は法人税の納税義務がないため、この記事で扱う課税の対象にはなりません。
まとめ
学校法人は公益法人等として、収益事業から生じた所得にだけ法人税が課されます。収益事業は、政令で定める34業種を、事業場を設けて継続して営むものです。施設活用で関係しやすいのは、不動産貸付業、席貸業、駐車場業、物品販売業です。
業種ごとに除外があり、国や地方公共団体への直接の不動産貸付、学校法人がその主たる目的とする業務に関連して行う席貸などは、収益事業から除かれます。
学校法人の税率は、年800万円以下の部分が15%、800万円超の部分が19%です。収益事業から教育事業に繰り入れた金額は、所得の50%か年200万円の多い額まで損金に算入できます。施設の有効活用を始める前に、業種の判定、区分経理の方法、私立学校法上の手続きを整理しておくことが大切です。
参考・出典
- 国税庁「No.5759 法人税の税率」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5759.htm
- 財務省「公益法人等に係る課税関係」 https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/corporation/c05_1.pdf
- 文部科学省「監事が知っておきたい 学校法人の税務」(平成29年10月13日 監事研修会資料) https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2017/10/18/1397326_4.pdf
- 国税庁「法人税基本通達 第6款 不動産貸付業」 https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/15/15_01_06.htm
- 法人税法、法人税法施行令、租税特別措置法、私立学校法
記載の税制は公表時点のものです。実際の課税関係は、税務署・税理士にご確認ください。
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