目次
基本金・資本的支出・除却の基本
校舎の改修に1億円をかける。この1億円は、会計上どう扱われるのでしょうか。費用として一度に落ちるのか、資産として計上されて毎年償却されるのか。さらに学校法人には、企業会計にはない「基本金」という仕組みがあります。
施設整備の判断は、会計の数字と切り離せません。理事会に出す資料も、決算への影響を説明できなければ通りにくくなります。
この記事では、①学校法人会計と施設整備の関係、②資本的支出と修繕費の区分、③第1号基本金、④第2号基本金、⑤除却と基本金の取崩し、⑥改正会計基準で変わった点、の6点を整理します。
この記事の要点
- 施設の価値を高めたり使用可能期間を延ばしたりする支出は資本的支出として資産に計上し、原状回復のための支出は修繕費とする
- 基本金は、学校法人が諸活動の計画に基づき必要な資産を継続的に保持するために維持すべきものとして、収入のうちから組み入れた金額
- 固定資産を取得すると第1号基本金に組み入れるが、借入金や未払金で取得した部分は返済・支払いまで組入れを繰り延べる
- 第2号基本金は、将来の固定資産の取得に充てるため、組入計画に基づいて先行して組み入れる
- 改正学校法人会計基準は令和7年4月1日から施行され、基本金明細書で組入対象額と取崩対象額が明示されるようになった
学校法人会計と施設整備はどう関係するか?
学校法人会計基準では、施設に関わる支出は、固定資産の取得、減価償却、基本金の組入れという3つの仕組みを通じて、計算書類に表れます。
| 仕組み | 施設整備との関係 |
|---|---|
| 固定資産の計上 | 校舎の新築や資本的支出を資産として計上する |
| 減価償却 | 取得した建物・設備の価額を耐用年数にわたって費用にする |
| 基本金の組入れ | 取得した固定資産の価額などを、維持すべき金額として収入から留保する |
減価償却と耐用年数については校舎の減価償却は更新時期の目安になるか?で詳しく扱っています。この記事では、主に基本金と支出の区分を扱います。
資本的支出と修繕費はどう分けるか?
支出の性質で分けます。
| 区分 | 内容 | 会計処理 | 例 |
|---|---|---|---|
| 資本的支出 | 固定資産の価値を高める、または使用可能期間を延ばす支出 | 資産に計上し、減価償却する | 長寿命化改修、増築、設備の高機能化 |
| 修繕費 | 固定資産を通常の状態に維持・回復するための支出 | その年度の費用とする | 破損箇所の補修、部分的な塗り替え |
同じ改修工事でも、内容によって資本的支出と修繕費が混在します。たとえば長寿命化改修では、構造躯体の補修や設備の更新は資本的支出、仮設や既存部分の軽微な補修は修繕費と分けることがあります。区分の方法は、監査を担当する公認会計士と事前に相談しておきます。
決算への影響
資本的支出として計上すれば、その年度の費用は減価償却費の分だけになり、単年度の収支への影響は小さくなります。修繕費として処理すれば、その年度の費用が大きくなります。どちらが有利かではなく、実態に合った区分が求められます。
基本金とは何か?
日本公認会計士協会の学校法人会計問答集(文部科学省のウェブサイトに掲載)では、基本金を、学校法人がその諸活動の計画に基づき必要な資産を継続的に保持するために維持すべきものとして、その収入のうちから組み入れた金額と定義しています。
基本金は、学校法人が教育活動を続けるために必要な資産の裏づけとなる金額です。収入のうち基本金に組み入れた部分は、日々の経費に使ってはならない留保金として扱われます。
基本金には4つの種類があります。
| 種類 | 内容 |
|---|---|
| 第1号基本金 | 設立当初に取得した固定資産や、新たな学校の設置、既設の学校の規模の拡大、教育の充実向上のために取得した固定資産の価額 |
| 第2号基本金 | 将来の固定資産の取得に充てるため、計画的に先行して組み入れる金額 |
| 第3号基本金 | 奨学基金や研究基金など、元本を継続的に保持・運用する基金の額 |
| 第4号基本金 | 恒常的に保持すべき運転資金の額 |
施設整備に直接関わるのは、第1号基本金と第2号基本金です。
第1号基本金はどう組み入れるか?
固定資産を取得したときに組み入れます。
新たに取得した場合
校舎を新築したり、教育の充実のために設備を導入したりした場合は、取得した固定資産の価額を第1号基本金に組み入れます。
取替更新の場合
既に保有している固定資産と同種の資産に取り替えた場合は、取替更新として扱います。除却した資産の分は既に基本金に組み入れられているため、原則として新たな組入れは不要で、取得額が除却額を上回る部分を組み入れます。
たとえば、古い校舎を取り壊して同じ規模の校舎に建て替える場合、旧校舎の取得価額と新校舎の取得価額の差額が組入れの対象になります。
借入金や未払金で取得した場合
固定資産を借入金や未払金で取得した場合、その借入金や未払金に相当する金額は、返済や支払いが行われた年度に組み入れます。取得した年度にまとめて組み入れるのではなく、返済に合わせて段階的に組み入れる形になります。
施設整備を借入金で行う場合、毎年の返済に合わせて基本金の組入れが続くため、長期にわたって収支差額に影響します。
第2号基本金はどう使うか?
将来の施設整備のための計画的な積立に使います。
仕組み
第2号基本金は、将来の固定資産の取得に充てる資金を、計画に基づいて先行して基本金に組み入れるものです。問答集では、組入計画表の作成、理事会の決議、特定資産としての資金の積立てが要件として整理されています。
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 計画 | 取得予定の固定資産、取得時期、所要資金を定め、理事会で決議する |
| 組入れ | 計画に基づき、毎年度一定額を第2号基本金に組み入れる |
| 積立て | 組み入れた額に相当する資金を、特定資産として区分して保有する |
| 振替え | 固定資産を取得した時点で、第2号基本金を第1号基本金に振り替える |
施設計画との連動
第2号基本金を使うと、将来の施設整備の資金を、日々の運転資金と分けて管理できます。どの建物をいつ、いくらで更新するかを施設計画で定め、それを組入計画に反映させることで、会計と施設計画がつながります。
計画的な積立ては、私学事業団の経営判断指標の積立率にも関係します。私立学校の経営の中での施設の位置づけは私立学校の経営改善で施設はどう位置づけるか?にまとめています。
建物を除却したときはどうなるか?
基本金を取り崩す場合があります。
建物を除却し、その後同種の資産を取得しない場合は、除却した資産に対応する基本金を取り崩すことができます。問答集の平成17年の改正では、学校・学部の廃止や定員の減少だけでなく、経営の合理化や将来計画の見直しを行った場合にも取り崩すことができるよう、取崩しの要件が緩和されています。
キャンパスの集約や校舎の減築で面積を減らした場合、この取崩しが関係します。取崩しの対象となる金額の算定は、監査を担当する公認会計士と確認しながら進めます。
改正会計基準で何が変わったか?
令和7年4月1日から、改正された学校法人会計基準が施行されています。文部科学省の資料では、次の点が示されています。
| 項目 | 改正の内容 |
|---|---|
| 目的 | 補助金の適正な配分のための基準から、私立学校法に基づくステークホルダーへの情報開示のための基準へ |
| セグメント情報 | 内訳表に代わり、学校、附属施設などの部門別の情報を計算書類で表示 |
| 基本金明細書 | 組入対象額と取崩対象額を明示し、計算過程を透明化 |
| 固定資産明細書 | 記載対象の基準を、3,000万円から総資産の1%に統一 |
| 財産目録 | 作成の基準を初めて法定化し、収益事業の資産・負債の区分を追加 |
基本金明細書で組入対象額と取崩対象額が明示されるようになったことで、施設の取得や除却が基本金にどう影響したかが、外部からも読み取りやすくなりました。
施設整備の会計への影響はどう説明するか?
理事会や評議員会に施設整備を諮るときは、次の3点を示すと、決算への影響が伝わりやすくなります。
年度ごとの費用の増え方
資本的支出として計上する額と、修繕費として処理する額を分け、翌年度以降の減価償却費の増加額を示します。
基本金の組入れの見通し
自己資金で取得する部分、補助金で賄う部分、借入金で賄う部分を分け、基本金の組入れが何年度にいくら発生するかを示します。借入金で取得する場合は、返済期間にわたって組入れが続くことを明記します。
資金の残高の推移
第2号基本金の特定資産を取り崩して充てる場合、取得後の特定資産と運用資産の残高がどう変わるかを示します。積立率への影響もあわせて示すと、経営指標との関係が分かります。
よくある質問
Q. 補助金を受けて校舎を建てた場合、基本金はどうなりますか。
A. 固定資産の取得価額全体が第1号基本金の組入れの対象になるのが原則です。補助金は収入として計上されます。
Q. 第2号基本金の計画を途中で変更できますか。
A. 理事会の決議を経て変更することができます。施設計画の見直しに合わせて、組入計画も見直します。
Q. 基本金の組入れが大きいと、どんな影響がありますか。
A. 事業活動収支計算書で、基本金組入後の収支差額がマイナスになりやすくなります。施設整備を積極的に行っている年度は、この点を理事会や評議員会に説明できるようにしておきます。
Q. 施設整備の会計処理は誰に相談すればよいですか。
A. 監査を担当する公認会計士に相談するのが基本です。工事の内容を資本的支出と修繕費に分ける際は、施工会社から工事の内訳を詳しく出してもらうと判断しやすくなります。
まとめ
学校法人会計では、施設整備の支出は、資本的支出か修繕費かの区分、減価償却、基本金の組入れを通じて計算書類に表れます。施設の価値を高めたり使用可能期間を延ばしたりする支出は資本的支出として資産に計上し、原状回復のための支出は修繕費とします。
固定資産を取得すると第1号基本金に組み入れますが、取替更新では差額のみ、借入金で取得した部分は返済に合わせて組み入れます。将来の施設整備には、組入計画と特定資産を伴う第2号基本金を使って計画的に備えることができます。
令和7年度から適用の改正会計基準では、基本金明細書で組入対象額と取崩対象額が明示されるようになりました。施設計画と会計を連動させ、理事会で決算への影響を説明できるようにしておくことが大切です。資料の作り方は理事会で施設投資を通すための資料はどう作るか?、長期の費用の比べ方は施設投資のROIはどう考えるか?を参照してください。
参考・出典
- 日本公認会計士協会「学校法人会計問答集(Q&A)第16号 基本金に係る実務上の取扱いについて」 https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shinkou/07021403/001/002/004.htm
- 文部科学省「1.基本金の定義」 https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shinkou/07021403/001/002/004/001.htm
- 文部科学省「学校法人会計基準の改正等について」 https://www.mext.go.jp/content/20240312-mxt_sigsanji-000031923_2.pdf
- 文部科学省「学校法人会計基準等」 https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shinkou/1362110.htm
- 学校法人会計基準
記載の会計基準は公表時点のものです。実際の会計処理は、監査を担当する公認会計士にご確認ください。
学校施設のご相談
その工事、補助金が使えるか無料でチェックします
トイレ・空調・体育館・玄関・耐震など、検討中の工事に使える国や都道府県の補助制度を、公表資料をもとに確認して3営業日以内にご回答します。「補助金が使えないか調べるよう言われた」という段階のご相談で構いません。
補助金の無料チェックを依頼する株式会社光建舎は、設計(ウイングスペース一級建築士事務所)から施工まで一社で対応しています。図面や仕様が固まっていない計画段階からのご相談も承っています。概算だけ先に欲しい、という段階でも構いません。
受付時間 平日 9:00〜18:00