目次
制度・用途変更・改修の要点
インターナショナルスクールの施設整備は、日本の学校とは前提が違います。制度上の位置づけが異なり、使える補助も、求められる施設の条件も変わります。
加えて、既存の校舎を新築するより、オフィスビルや廃校を転用して開設する例が多くあります。つまり、改修と用途変更が施設整備の中心になります。
この記事では、①制度上の位置づけ、②施設の基準、③転用に伴う手続き、④施設に求められるもの、⑤改修の進め方、の5点を整理します。
この記事の要点
- 多くのインターナショナルスクールは、学校教育法第134条に基づく各種学校として認可を受けている
- 東京都の私立各種学校設置認可基準では、生徒150人以下の場合、校舎面積は生徒定員1人につき2.31平方メートルで算定
- 最低基準は生徒40人のときに116平方メートル
- 図書は生徒1人当たり5冊以上を自己所有することが求められる
- オフィスや廃校の転用では、用途変更の手続きが必要になることがある
制度上はどう位置づけられるのか?
多くは各種学校です。
学校教育法第1条に掲げる学校(幼稚園、小学校、中学校、高等学校、大学等)を一条校といいます。インターナショナルスクールの多くは、これに当たりません。
学校教育法第134条は、一条校以外で学校教育に類する教育を行うものを各種学校としています。都道府県知事の認可を受けて各種学校となる学校が多く、認可を受けていない施設もあります。
| 区分 | 位置づけ | 主な違い |
|---|---|---|
| 一条校 | 学校教育法第1条の学校 | 学習指導要領、設置基準、私学助成の枠組みが適用される |
| 各種学校 | 学校教育法第134条 | 都道府県の認可。基準は各種学校規程と都道府県の審査基準 |
| 認可なし | 制度上の学校ではない | 施設の基準は建築基準法・消防法などの一般の規制による |
この違いが、施設整備の財源にも影響します。一条校向けの補助制度の多くは、各種学校には適用されません。自己資金と授業料収入が中心になります。投資の回収を、在籍者数の見通しから組み立てる必要があります。
施設の基準はどうなっているのか?
各種学校規程と、都道府県の審査基準によります。
東京都の「私立各種学校設置認可基準一覧」では、次の基準が示されています。
| 項目 | 基準 |
|---|---|
| 校舎の面積 | 生徒150人以下の場合、2.31平方メートル×生徒定員 |
| 最低基準 | 生徒40人のとき116平方メートル |
| 必要な室 | 教室、実習室、医務室または休養室等 |
| 図書 | 生徒1人当たり5冊以上を自己所有 |
| 位置・環境 | 教育上・保健衛生上適切であること |
一条校の設置基準と比べると、面積の要件は緩やかです。一方、認可の基準は都道府県ごとに定められているため、所在地によって内容が変わります。計画の初期に、所管の私学担当課に確認しておきます。
認可を受けるかどうかの判断
各種学校の認可を受けると、施設の基準に従う必要が生じます。一方、認可や学校法人化によって、税制上の扱いや保護者からの信頼に関わる部分が変わります。
施設の計画は、この判断と切り離せません。どの位置づけを目指すかを決めてから、施設の条件を詰めます。
転用ではどんな手続きが必要か?
用途変更の確認が必要になる場合があります。
オフィスビル、商業ビル、廃校、事務所。インターナショナルスクールは、既存の建物を転用して開設される例が多くあります。
建築基準法第87条第1項により、用途を変更して200平方メートルを超える法第6条第1項第1号の特殊建築物とする場合は、確認申請が必要です。用途変更の考え方は学校施設の用途変更とは何か?にまとめています。
用途地域の確認が先
その場所に、学校として使える建物を置けるか。用途地域によって制限があります。ここで不可であれば、他の検討は意味を持ちません。用途地域と学校の関係は用途地域と学校の立地を参照してください。
遡及して適用される規定
用途変更では、防火と避難に関する規定が遡及して適用されます。避難階段、排煙設備、非常用の照明装置、内装制限。オフィスビルを転用する場合、この部分の工事が費用の中心になります。
建築基準法の全体像は学校の改修で関わる建築基準法の基礎にまとめています。
施設に何が求められるのか?
日本の学校とは、必要なものが変わります。
少人数での授業
1クラスの人数が少なく、教室ごとの面積は小さくて済む場合があります。一方、教室の数は多く必要になります。既存の大きな教室を分割する改修が発生し、空調と照明の系統もそれに合わせて分ける必要があります。
可動の間仕切りで柔軟に使う方法もありますが、遮音の性能が落ちます。授業の形態と静けさのどちらを優先するかを決めてから仕様を選びます。少人数の対話中心の授業では、音の問題が出やすくなります。
食事と食文化
給食室を持たず、カフェテリア形式をとる学校があります。宗教上の理由で食べられないものがある生徒、アレルギーのある生徒。区分して調理・提供できる設備が必要になる場合があります。
保護者が食事を持たせる前提であれば、温める設備と保管の場所が要ります。運営の方針によって、必要な設備が大きく変わります。厨房を設けるなら、給排水と排気の条件を建物側で満たせるかが前提になります。
セキュリティ
出入口の管理、受付、来訪者の動線。一般のビルを転用する場合、他のテナントとの動線の分離が課題になります。
エレベーターの階数制限、カードキー、カメラ。設備の追加が必要になることが多い部分です。既存のビルの設備で対応できるか、独立した系統を設けるかを確認します。
掲示と表示
複数の言語で表示する前提になります。サインの計画は、言語の数だけ情報が増え、掲示が読みにくくなります。文字を減らし、記号と色で分かるようにする設計が有効です。避難の経路図も同じ考え方で作ります。
内装の改修全般は学校施設の内装リフォームとは?を参照してください。
屋外の場所
都市部のビルを転用する場合、運動場がありません。屋上を使う、近隣の公共施設を借りる、体育の授業を外部の施設で行う。いずれも運営で補う方法で、施設の計画と合わせて決めます。
屋上を使う場合、手すりの高さ、防水、騒音、避難の経路を確認します。既存の建物の構造で荷重が持つかも検討が必要です。近隣への音の影響は、開校後に問題になりやすい部分です。
改修はどう進めるのか?
5つの段階になります。
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 1. 位置づけの決定 | 各種学校の認可を受けるか、どの課程を置くか |
| 2. 物件の確認 | 用途地域、建物の構造、既存の図書、面積 |
| 3. 法規の検討 | 用途変更の要否、遡及する規定、消防法の扱い |
| 4. 設計・工事 | 教室の構成、設備、セキュリティ、サイン |
| 5. 認可・開校 | 認可の申請、検査、開校の準備 |
物件を決める前に、法規の確認を済ませておくことが重要です。契約した後で用途変更ができないと分かると、損失が大きくなります。設計者に物件の資料を渡し、事前に見てもらう方が安全です。
検査済証の確認
転用する建物に検査済証があるかを確認します。ない場合、現況の調査から始めることになり、期間と費用が増えます。古いビルほど、そろっていないことが多くなります。
消防法の手続き
用途が変われば、消防法上の防火対象物の区分も変わります。自動火災報知設備、誘導灯、消火器、防火管理者の選任。建築基準法とは別に確認が必要です。
賃貸物件で改修するときの注意点は?
契約の条件が、改修の範囲を決めます。
ビルの一部を借りて開校する場合、できる工事に制約がかかります。契約の前に次を確認します。
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| 躯体に手を入れられるか | 開口の新設、床の貫通、外壁への設備設置 |
| 共用部の扱い | 廊下、階段、エレベーターの使用条件 |
| 電気・給排水の容量 | 増設できるか、他のテナントとの分担はどうか |
| 原状回復の範囲 | 退去時にどこまで戻すのか |
| 契約の期間 | 投資を回収できる年数が確保できるか |
避難階段の増設や防火区画の追加が必要になった場合、建物全体に関わる工事になります。貸主の同意が得られるか、費用を誰が負担するかを先に決めておきます。
原状回復の費用も見込む
内装に投資するほど、退去時の原状回復の費用も大きくなります。契約の年数と投資額の関係を、開校の前に整理しておきます。
他のテナントとの関係
学校は、人の出入りが多く、時間帯も限られます。送迎の車、児童生徒の声、放課後の利用。他のテナントや近隣との調整が、開校後の運営に影響します。
費用と財源はどうなるのか?
自己資金が中心になります。
各種学校は、一条校向けの国庫補助の枠組みの対象外となるものが多くあります。都道府県によっては、各種学校向けの助成制度がある場合もあります。所管の私学担当課に確認します。
財源は、自己資金、借入、授業料収入、寄附が中心です。開校の時期と入学者数の見通しから、投資できる額を決めます。
転用の場合、賃貸か購入かで資金計画が変わります。賃貸では、内装の投資を何年で回収できるかが論点になります。契約の期間と、原状回復の条件を確認したうえで、改修の範囲を決めます。
よくある質問
Q. インターナショナルスクールは学校ですか。
A. 多くは学校教育法第134条の各種学校です。同法第1条の学校(一条校)には当たりません。
Q. 校舎の面積基準はありますか。
A. 東京都の認可基準では、生徒150人以下の場合、生徒定員1人につき2.31平方メートルで算定するとされています。基準は都道府県ごとに定められます。
Q. オフィスビルを転用できますか。
A. 用途地域と建物の条件によります。用途変更の確認申請が必要になる場合があり、防火と避難の規定が遡及して適用されます。
Q. 補助金は使えますか。
A. 一条校向けの補助制度の多くは対象外です。都道府県に各種学校向けの制度がある場合もあるため、私学担当課に確認します。
Q. 運動場がなくても開設できますか。
A. 施設の基準と運営の方法によります。所管の私学担当課に確認してください。
Q. 物件を決める前に何を確認しますか。
A. 用途地域、検査済証の有無、用途変更の要否、遡及して適用される規定です。契約の前に確認します。
Q. 賃貸のビルでも開校できますか。
A. できますが、躯体に手を入れられるか、原状回復の範囲、契約の期間を先に確認します。
Q. 教室を可動間仕切りで分けてもよいですか。
A. 柔軟に使える一方、遮音の性能は落ちます。授業の形態から判断してください。
Q. 消防の手続きは別に必要ですか。
A. 必要です。用途が変われば防火対象物の区分も変わるため、消防署への確認が要ります。
まとめ
インターナショナルスクールの多くは、学校教育法第134条に基づく各種学校です。一条校とは制度上の位置づけが異なり、施設の基準も財源も変わります。
東京都の私立各種学校設置認可基準では、生徒150人以下の場合、校舎面積は生徒定員1人につき2.31平方メートルで算定し、最低基準は生徒40人のときに116平方メートルとされています。図書は生徒1人当たり5冊以上の自己所有が求められます。基準は都道府県ごとに定められるため、所管の私学担当課への確認が前提になります。
施設整備は、既存の建物の転用が中心になります。用途地域、用途変更の要否、遡及して適用される防火・避難の規定。これらを物件の契約前に確認することが、最も重要な作業です。
少人数の教室、食事の提供方法、セキュリティ、多言語のサイン、屋外の場所。日本の学校とは必要なものが変わります。運営の方針を固めてから、施設の仕様を決める順序になります。
参考・出典
- 東京都生活文化局「私立各種学校設置認可基準一覧」 https://www.seikatubunka.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/seikatubunka/41kakusyu_kijyunichiran
- e-Gov法令検索「各種学校規程」 https://laws.e-gov.go.jp/law/331M50000080031
- e-Gov法令検索「建築基準法」 https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000201
- 学校教育法、消防法
記載の制度・基準は公表時点のものです。認可の基準は都道府県によって異なります。個別の適用は所管の私学担当課および行政庁にご確認ください。
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