この記事は、学校施設の設計・施工を行う株式会社光建舎が作成しています。設計(ウイングスペース一級建築士事務所)から施工まで一社で対応し、専門学校・高校・自治体の学校施設を手がけています。

学校のICT環境とは何か?【2026年版】整備すべき設備の一覧と国の目標水準

学校のICT環境とは、端末、ネットワーク、提示装置、校務システム、支援人材をあわせた学習と校務の基盤です。

端末だけを指す言葉ではありません。端末があってもネットワークが細ければ使えず、機器があっても支援する人がいなければ授業で使われません。したがって環境として一体で考えるものです。

国は整備すべき水準を示しています。学校のICT環境整備3か年計画(2025〜2027年度)では、学習者用端末と指導者用端末の1人1台整備、大型提示装置の各普通教室1台と特別教室用6台、インターネット・無線LANの100パーセント整備、ICT支援員の4校に1人配置などが示されています。

この記事では、①ICT環境の構成要素、②国の整備水準、③施設側で必要になること、④財源、⑤整備の進め方、の5点を整理します。

目次

この記事の要点

  • 学校のICT環境は端末、ネットワーク、提示装置、校務システム、支援人材で構成される
  • 整備水準は学習者用・指導者用端末の1人1台、大型提示装置の各普通教室1台と特別教室用6台
  • インターネット・無線LANは100パーセント整備、ネットワーク速度は令和7年度に100パーセント
  • ICT支援員は4校に1人配置。人の配置も水準に含まれる
  • 電源容量、配線ルート、充電保管庫の置き場所など施設側の対応が必要になる

ICT環境は何で構成されるのか?

5つの要素です。

要素 内容
端末 学習者用コンピュータ、指導者用端末、業務用ディスプレイ
ネットワーク 外部回線、校内LAN、無線アクセスポイント、スイッチ
提示装置 大型提示装置、実物投影機
システム 統合型校務支援システム、学習系のクラウドサービス
人・体制 ICT支援員、ヘルプデスク、運営支援センター
付帯設備 充電保管庫、モバイルバッテリ、電源、セキュリティ

端末だけでは環境にならない

1人1台端末が整備されても、ネットワークが細ければ動画が止まります。提示装置がなければ教員が画面を共有できません。支援する人がいなければ使い方が定着しません。

したがって端末の台数だけを見ても、ICT環境が整っているとは言えません。

学習系と校務系は別系統

児童生徒が使う学習系と、教職員が使う校務系は、ネットワークもセキュリティの扱いも別です。

統合型校務支援システムは校務系です。情報セキュリティポリシーの適用範囲が学習系と異なります。設計の段階で切り分けてください。

付帯設備が見落とされやすい

端末の充電保管庫をどこに置くか、電源容量が足りるか。こうした点は機器の調達では見えません。

学校のICT環境整備3か年計画では、充電保管庫・モバイルバッテリも整備の対象に挙げられています。

人の配置も環境の一部

ICT支援員は整備水準に含まれています。つまり国も、人の配置を環境の一部として位置づけています。

支援員の位置づけはICT支援員の配置に補助はあるか?で扱っています。

運用の費用が毎年かかる

クラウドサービスのライセンス、回線の使用料、保守の委託、支援員の人件費。これらは毎年発生します。

整備費だけで予算を組むと、運用の段階で足りなくなります。

国の整備水準はどうなっているのか?

項目ごとに示されています。

項目 整備水準
学習者用端末 1人1台整備
高校生端末 生徒数の3分の1程度
指導者用端末 1人1台整備
業務用ディスプレイ 計画の対象
大型提示装置・実物投影機 各普通教室1台、特別教室用として各学校に6台
インターネット・無線LAN 100パーセント整備
ネットワーク速度 100パーセント(令和7年度)
統合型校務支援システム 100パーセント(令和11年度)
ICT支援員 4校に1人配置
充電装置 充電保管庫・モバイルバッテリ

1人1台は義務教育段階の水準

学習者用端末の1人1台は義務教育段階です。高校生端末は生徒数の3分の1程度とされています。

高校段階の水準が異なるのは、保護者負担による端末の持込みを含む整備が想定されているためです。

指導者用端末は学習者用と別に必要

授業を担任する教師1人1台という水準です。学習者用端末とは別の整備です。

教員が児童生徒用の端末を共用している学校では、この水準を満たしていません。

大型提示装置の必要台数を計算する

各普通教室1台、加えて特別教室用として各学校に6台です。普通教室が18ある学校なら18台+6台で24台になります。

普通教室の数を数え直すと、想定より多くなる学校が出ます。

ネットワーク速度に期限がある

無線LANの100パーセント整備に加え、ネットワーク速度について令和7年度に100パーセントという目標が示されています。

第1期の設計では、1人1台端末が同時に動くと帯域が足りない学校が出ます。回線と校内機器の両方を見てください。

ネットワークの財源は学校の校内LAN・無線LAN整備に補助金は使えるのかで扱っています。

校務支援システムは令和11年度

統合型校務支援システムの100パーセント整備は令和11年度が目標です。3か年計画の期間を超える期限です。

水準は目標であり義務ではない

整備水準は国が示す目標です。達成が義務づけられているわけではありません。

一方、この水準をもとに地方財政措置の額が算定されます。したがって予算要求の根拠として使えます。計画の内容は学校のICT環境整備3か年計画とは何か?で扱っています。

施設側で必要になることは何か?

電源と配線と置き場所です。

項目 確認すること
電源容量 教室ごとの分電盤の容量、同時使用時の負荷
コンセントの数と位置 充電保管庫の設置場所、提示装置の電源
配線ルート 天井内、壁内、床下の配線経路
無線アクセスポイントの設置位置 教室ごとの電波の到達、天井への設置
充電保管庫の置き場所 教室内か別室か、動線の確保
提示装置の設置方法 壁掛け、天吊り、可動式

電源容量が足りない学校がある

1クラス分の端末を同時に充電すると、教室の分電盤の容量を超えることがあります。とくに築年数の古い校舎では、設計時の想定が現在の使用状況と合いません。

電気設備の更新が必要になる場合があります。

配線ルートの確保が工事費を左右する

天井内に配線スペースがあれば工事は容易です。一方、スペースがなければ露出配線やモールの設置になり、見栄えと費用に影響します。

既存の図面と現地の状況を確認してください。

無線アクセスポイントの位置で電波が変わる

鉄筋コンクリートの壁は電波を遮ります。廊下に1台置いて複数教室をカバーする設計では、教室の奥で電波が弱くなります。

実測で確認してください。

充電保管庫の置き場所が動線に影響する

教室内に置くと場所を取ります。別室に置くと持ち運びが必要です。

どちらにするかで、必要な台数と配置が変わります。

提示装置の設置方法で壁の補強が必要になる

大型のディスプレイを壁掛けする場合、壁の下地の補強が必要です。ボード壁では重量を支えられません。

設置方法を決める前に、壁の構造を確認してください。

大規模改造と同時に行うのが効率的

電気設備の更新、配線ルートの確保、壁の補強。これらは校舎の改修工事と同時に行う方が効率的です。

改修の計画がある学校では、ICT整備の時期を合わせることを検討してください。

財源はどうなっているのか?

補助金と地方財政措置の組合せです。

対象 財源
学習者用端末 公立学校情報機器整備事業費補助金(購入は国3分の2、補助基準額1台55,000円)
入出力支援装置 同補助金(国10分の10、定額補助・下限額10,000円)
校内LAN・無線LAN 地方財政措置(国庫補助は令和3年度で終了)
大型提示装置 地方財政措置
運営支援・ICT人材 GIGAスクール運営支援センター整備事業(国3分の1、市町村3分の2)
全体 3か年計画の事業費 単年度1,464億円に所要の地方財政措置

端末には補助金がある

公立学校情報機器整備事業費補助金が使えます。購入事業は国3分の2、補助基準額は学習者用コンピュータ1台当たり55,000円です。

55,000円を超えた分は実施者の負担になります。制度の内容はGIGAスクール構想の端末整備に使える補助金は何か?で扱っています。

ネットワークと提示装置は地方財政措置が基本

校内LANの国庫補助は令和3年度で終了しています。大型提示装置にも直接の補助金はありません。

したがって地方財政措置と一般財源で手当てします。

施設工事は補助の対象になる場合がある

電気設備の更新や配線の工事が、校舎の大規模改造の対象経費に含まれる場合があります。学校施設環境改善交付金の大規模改造は算定割合3分の1から2分の1です。

対象になるかは所管部署の判断によりますが、含まれれば補助の対象になります。

運用の体制には運営支援センター整備事業

ヘルプデスクの運営及びサポート対応、ネットワークのトラブル対応、ICT人材の確保及び育成。これらを行うための体制整備に要する経費が対象で、国3分の1、市町村3分の2という整理が示されています。

補助と地方財政措置を分けて予算を組む

補助金が使える部分は採択を前提に、地方財政措置の部分は一般財源として要求します。

財源の区分を分けて示すと、一般財源がいくら必要かが明確になります。

運用費を毎年の予算に入れる

ライセンス、回線料、保守、支援員。これらは整備費とは別に毎年必要です。

整備の計画と運用の計画を一体で作ってください。

整備はどう進めるのか?

現状の把握から入ります。

手順 内容
1 項目ごとに自団体の整備状況を調べる
2 国の水準との差を数値で出す
3 施設側の制約(電源、配線、設置場所)を学校ごとに確認する
4 校舎の改修計画との調整を行う
5 補助金が使える部分と地方財政措置の部分を分ける
6 運用の費用を同時に見積もる
7 年度ごとの予算に落とす

項目ごとに整備率を出す

端末、指導者用端末、業務用ディスプレイ、大型提示装置、無線LAN、速度、校務支援システム、支援員。一覧にして整備率を出してください。

どこが遅れているかが一目で分かります。

施設の制約を学校ごとに確認する

同じ機器を入れても、学校によって必要な工事が変わります。電源容量、配線ルート、壁の構造。

一律に積算すると、工事が必要な学校で予算が足りなくなります。

改修計画と突き合わせる

大規模改造や長寿命化改良の計画がある学校では、ICT整備の工事を合わせられます。

計画の年度を並べて、まとめられる学校を探してください。

運用の体制を先に決める

機器を入れても、障害に対応する体制がなければ授業が止まります。支援員とヘルプデスクの役割分担を決めてください。

教員への研修を組み込む

機器を入れても使われなければ投資が活きません。校内研修の実施を計画に入れてください。

支援員の業務に研修を含めるかは、仕様の設計次第です。

更新のサイクルを決めておく

端末もネットワーク機器も、いずれ更新が必要です。機器の種類ごとに更新の目安年数を決め、計画に落としてください。

場当たりで更新すると、年度ごとの負担が読めません。

よくある質問

Q. 学校のICT環境とは何を指しますか。

A. 端末、ネットワーク、提示装置、校務システム、支援人材をあわせた学習と校務の基盤です。端末だけを指す言葉ではありません。

Q. 端末は何台整備すればよいですか。

A. 義務教育段階は学習者用端末1人1台、指導者用端末も1人1台が水準です。高校生端末は生徒数の3分の1程度とされています。

Q. 大型提示装置は何台必要ですか。

A. 各普通教室1台、加えて特別教室用として各学校に6台が水準です。普通教室が18ある学校なら24台になります。

Q. 無線LANの整備目標はどうなっていますか。

A. インターネット・無線LANは100パーセント整備です。あわせてネットワーク速度について令和7年度に100パーセントという目標が示されています。

Q. 施設側で何を確認すればよいですか。

A. 電源容量、コンセントの数と位置、配線ルート、無線アクセスポイントの設置位置、充電保管庫の置き場所、提示装置を設置する壁の構造です。築年数の古い校舎では電気設備の更新が必要になる場合があります。

Q. 整備水準は守らなければなりませんか。

A. 義務ではありません。国が示す目標です。一方、この水準をもとに地方財政措置の額が算定されるため、予算要求の根拠として使えます。

まとめ

学校のICT環境とは、端末、ネットワーク、提示装置、校務システム、支援人材をあわせた学習と校務の基盤です。端末があってもネットワークが細ければ使えず、機器があっても支援する人がいなければ授業で使われません。したがって環境として一体で考えるものです。

国の整備水準は、学習者用端末と指導者用端末の1人1台整備、高校生端末は生徒数の3分の1程度、大型提示装置は各普通教室1台と特別教室用6台、インターネット・無線LANの100パーセント整備、ネットワーク速度の令和7年度100パーセント、統合型校務支援システムの令和11年度100パーセント、ICT支援員の4校に1人配置です。人の配置も水準に含まれています。

見落とされやすいのが施設側の対応です。1クラス分の端末を同時に充電すると教室の分電盤の容量を超えることがあり、築年数の古い校舎では電気設備の更新が必要になります。天井内に配線スペースがなければ露出配線になり、大型のディスプレイを壁掛けするには壁の下地の補強が必要です。機器の調達だけでは見えない部分です。

財源は補助金と地方財政措置の組合せです。端末には公立学校情報機器整備事業費補助金(購入は国3分の2、補助基準額1台55,000円)が使えますが、校内LANの国庫補助は令和3年度で終了しており、大型提示装置にも直接の補助金はありません。電気設備や配線の工事が校舎の大規模改造の対象経費に含まれる場合があるため、改修の計画と合わせる形を検討してください。

整備の進め方としては、項目ごとに整備率を出して国の水準との差を数値にし、学校ごとの施設の制約を確認することが出発点です。あわせて運用の費用を同時に見積もってください。ライセンス、回線料、保守、支援員の人件費は毎年発生します。整備費だけで予算を組むと運用の段階で足りなくなります。

参考・出典

記載の整備水準および財源の制度は公表時点のものです。対象経費の範囲および地方財政措置の扱いは所管部署の運用により異なります。個別の適用は文部科学省および都道府県・市町村の所管部署にご確認ください。

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