改修はできます。ただし調査が必要になります。
検査済証が見つからない校舎は、珍しくありません。昭和の校舎では、保管されていない、書庫の移動で紛失した、そもそも交付を受けていない、といった状況があります。
検査済証がないこと自体が、改修を禁じる理由にはなりません。問題になるのは、確認申請を伴う工事を計画したときです。既存の部分が建築基準法令に適合しているかを示せないと、審査が進みません。
このために、国土交通省がガイドラインを示しています。
この記事では、①検査済証とは何か、②なぜ問題になるのか、③現況調査ガイドライン、④調査の流れと費用、⑤進め方、の5点を整理します。
目次
この記事の要点
- 検査済証がないこと自体が改修を禁じる理由になるわけではない
- 確認申請を伴う工事では、既存部分の建築基準法令への適合状況を示す必要がある
- 国土交通省は「既存建築物の現況調査ガイドライン(第5版)」を令和6年12月に策定・公表した
- 従前の「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」(平成26年7月2日公表)は、令和7年4月1日をもって統合・一本化された
- 同ガイドラインは、既存建築物の増築、改築、移転、大規模の修繕・大規模の模様替をしようとする場合に、建築士が適合状況を調査するための手順と方法を示すもの
検査済証とは何か?
工事完了後の検査に合格したことを示す書面です。
建築基準法では、確認を受けた建築物の工事が完了したときに完了検査を受け、基準に適合していると認められると検査済証が交付されます。
| 書面 | 意味 |
|---|---|
| 確認済証 | 計画が基準に適合することの確認 |
| 中間検査合格証 | 中間検査に合格したこと |
| 検査済証 | 完了検査に合格したこと |
| 台帳記載事項証明 | 特定行政庁の台帳に記載された内容の証明 |
検査済証がない場合、台帳記載事項証明を特定行政庁から取得できることがあります。台帳に完了検査の記録が残っていれば、それで確認できます。
まず台帳を確認する
検査済証の原本が見つからなくても、特定行政庁の台帳に記録が残っていることがあります。台帳記載事項証明を請求すれば、確認済証と検査済証の交付の有無が分かります。
書類を探す前に、この請求を行うのが早い場合があります。
交付を受けていない場合がある
旧い建物では、完了検査を受けていない、または検査済証の交付を受けていないケースがあります。この場合、台帳にも記録がありません。
検査済証のない建築物の扱いは検査済証がない建物はどうするのか?で扱っています。
増築を繰り返した校舎
校舎は、児童生徒数の増減に応じて増築を繰り返してきた建物が多くあります。増築のたびに確認と検査があるため、棟や部分によって書類の有無が異なります。
どの部分にどの書類があるかを、棟ごと、増築ごとに整理してください。
なぜ問題になるのか?
確認申請の審査で既存部分が問われるからです。
確認申請を伴う工事を計画すると、既存の部分が建築基準法令に適合しているかが問われます。検査済証があれば、少なくとも建築時点での適合が示されます。これがないと、示す材料がありません。
| 工事 | 確認申請 | 既存部分の扱い |
|---|---|---|
| 内装の張り替え | 不要 | 問題にならない |
| 設備の更新 | 不要 | 問題にならない |
| 大規模の修繕・模様替 | 必要な場合がある | 適合状況の確認が必要 |
| 増築 | 必要 | 既存部分にも規定が及ぶ |
| 用途変更 | 必要な場合がある | 準用される規定への適合 |
確認申請が必要になる場合の線引きは学校の改修に建築確認は必要なのか?で扱っています。
確認が不要な工事なら論点にならない
内装の張り替えや設備の更新だけであれば、確認申請は不要です。この場合、検査済証の有無が手続きの障害になることはありません。
ただし実体規定を守る義務は残ります。手続きが不要なことと、基準に適合しなくてよいことは別です。
増築が最も重い
増築を計画する場合、既存部分にも現行の規定が及ぶことがあります。検査済証がないうえに適合状況も不明だと、増築の計画が立ちません。
増築を含む計画では、調査を前年度に済ませる段取りが必要です。
用途変更でも問われる
用途変更の確認申請を出す場合も、既存部分の適合状況が問われます。廃校の転用などで、この論点が出ます。
学校から他の用途への変更では、建築基準法施行令第137条の18が定める類似の用途に当たらないため、200平方メートルを超えれば確認申請が必要です。
現況調査ガイドラインとは何か?
建築士が適合状況を調査する手順を示したものです。
国土交通省は「既存建築物の現況調査ガイドライン(第5版)」を令和6年12月に策定・公表しています。既存建築物の増築、改築、移転、大規模の修繕・大規模の模様替をしようとする場合に、建築士が当該建築物の建築基準法令の規定への適合状況を調査するための手順と方法を示すものです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名称 | 既存建築物の現況調査ガイドライン(第5版) |
| 策定・公表 | 令和6年12月 |
| 調査の実施者 | 建築士 |
| 対象となる場面 | 増築、改築、移転、大規模の修繕・大規模の模様替をしようとする場合 |
| 目的 | 建築基準法令の規定への適合状況の調査 |
従前のガイドラインは統合された
平成26年7月2日に公表された「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」は、令和7年4月1日をもって現況調査ガイドラインに統合・一本化されました。
従前のガイドラインを前提にした資料が庁内に残っている場合、現行の枠組みと食い違います。計画の段階で現行のガイドラインを確認してください。
調査の結果が確認申請の材料になる
調査の結果は、確認申請の際に既存部分の適合状況を示す材料になります。ただし調査の結果をどう扱うかは、特定行政庁の判断に関わります。
調査を始める前に、特定行政庁に相談し、どの範囲の調査が必要かを確認してください。
既存建物の調査との関係
劣化の状況や設備の状態を見る調査と、法令への適合状況を見る調査は別のものです。両方が必要になります。
既存建物の調査の内容は既存建物の調査は何を見るのか?で扱っています。
調査の流れと費用はどうなるのか?
書類の確認から始まります。
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 1 | 庁内で書類を探す(確認済証、検査済証、竣工図、構造図、構造計算書) |
| 2 | 特定行政庁で台帳記載事項証明を請求する |
| 3 | 不足する情報を特定する |
| 4 | 図面と現地の照合を行う |
| 5 | 必要に応じて構造や仕様の確認を行う |
| 6 | 適合状況を整理する |
| 7 | 特定行政庁と協議する |
書類が揃っているかで費用が変わる
竣工図と構造計算書が残っていれば、調査の範囲は限られます。何も残っていなければ、現地での確認に多くの作業が必要になります。
したがって費用は建物の状態と書類の有無に大きく左右されます。見積りを取る前に、何が残っているかを庁内で確認してください。
期間を工程に入れる
調査には期間がかかります。確認申請の前に終わらせる必要があるため、設計の前段に置く作業です。
夏休みに工事を終える計画で、調査の期間を見込んでいないと間に合いません。前年度に調査を済ませる段取りにしてください。
適合しない部分が見つかることがある
調査の結果、現行の規定に適合しない部分が見つかることがあります。既存不適格として扱われる部分と、是正が必要な部分の切り分けが必要になります。
是正が必要な場合、その工事費が計画に上乗せされます。調査の段階で、この可能性を前提に予算を考えてください。
構造の確認が必要になる場合
構造計算書がない場合、構造の安全性を確認する作業が必要になることがあります。耐震診断と重なる部分もあります。
構造図が残っていれば検討の起点になります。何もなければ、現地での部材の寸法と配筋の確認から始めることになり、作業量が増えます。
どう進めるのか?
探す、聞く、相談する、の順です。
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| 1 | 庁内の書庫、教育委員会、施設所管部署で書類を探す |
| 2 | 特定行政庁に台帳記載事項証明を請求する |
| 3 | 計画の内容を特定行政庁に相談する |
| 4 | 必要な調査の範囲を確認する |
| 5 | 建築士に調査を依頼する |
| 6 | 結果を踏まえて設計に入る |
書類は複数の場所にある
確認済証と検査済証は施設の所管部署、竣工図は設計者または施工会社、構造計算書は別の場所。こうしたばらつきがあります。
当時の設計者や施工会社が現存していれば、図面が残っている場合があります。
相談を先に行う
調査を発注してから特定行政庁に相談すると、必要な範囲と違う調査をしてしまうことがあります。
計画の内容を示して相談し、どの範囲の調査が必要かを確認してから発注してください。
工事の範囲を調整する選択
調査に時間と費用がかかりすぎる場合、確認申請が不要な範囲に工事を絞る選択もあります。
内装と設備の更新だけであれば、確認申請は不要です。大規模修繕の考え方は学校の大規模修繕とは何か?で扱っています。
書類の整理を平時に行う
検査済証が見つからない状況は、工事の計画が出てから発覚します。その時点で探し始めると、工程が押します。
施設ごとの書類の有無を平時に整理しておけば、計画の段階で判断ができます。
よくある質問
Q. 検査済証がないと改修できませんか。
A. できます。検査済証がないこと自体が改修を禁じる理由にはなりません。問題になるのは、確認申請を伴う工事を計画したときです。
Q. 内装の改修だけなら問題になりますか。
A. なりません。確認申請が不要な工事であれば、検査済証の有無が手続きの障害になることはありません。ただし実体規定を守る義務は残ります。
Q. 検査済証の代わりになる書面はありますか。
A. 特定行政庁の台帳に記録が残っていれば、台帳記載事項証明を請求できます。まずこれを確認してください。
Q. どのガイドラインを参照しますか。
A. 国土交通省の「既存建築物の現況調査ガイドライン(第5版)」です。令和6年12月に策定・公表され、従前の検査済証のない建築物向けガイドラインは令和7年4月1日をもって統合・一本化されました。
Q. 調査は誰が行いますか。
A. 建築士です。既存建築物の増築、改築、移転、大規模の修繕・大規模の模様替をしようとする場合に、建築基準法令の規定への適合状況を調査します。
Q. 調査の費用はどのくらいですか。
A. 残っている書類の量と建物の状態で大きく変わります。竣工図と構造計算書があれば範囲は限られ、何も残っていなければ現地での確認に多くの作業が必要になります。
まとめ
検査済証がないこと自体が、改修を禁じる理由にはなりません。内装の張り替えや設備の更新だけであれば、確認申請が不要なので手続きの障害にもなりません。
問題になるのは、確認申請を伴う工事を計画したときです。大規模の修繕・模様替、増築、用途変更。これらでは既存の部分が建築基準法令に適合しているかが問われ、検査済証がないと示す材料がありません。
このために国土交通省が「既存建築物の現況調査ガイドライン(第5版)」を令和6年12月に策定・公表しています。既存建築物の増築、改築、移転、大規模の修繕・大規模の模様替をしようとする場合に、建築士が適合状況を調査するための手順と方法を示すものです。平成26年7月2日公表の従前のガイドラインは、令和7年4月1日をもって統合・一本化されました。
進め方は、探す、聞く、相談するの順です。まず庁内で確認済証、検査済証、竣工図、構造図、構造計算書を探す。次に特定行政庁に台帳記載事項証明を請求する。そして計画の内容を示して相談し、必要な調査の範囲を確認してから発注してください。
調査には期間と費用がかかり、残っている書類の量に大きく左右されます。夏休みに工事を終える計画では、前年度に調査を済ませる段取りが必要です。そして施設ごとの書類の有無を平時に整理しておけば、計画の段階で判断ができます。
参考・出典
- 国土交通省「既存建築物の現況調査ガイドライン」 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/jutakukentiku_house_fr_000061.html
- 国土交通省「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドラインの策定について(平成26年7月2日)」 https://www.mlit.go.jp/report/press/house05_hh_000488.html
- e-Gov法令検索「建築基準法」 https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000201
- e-Gov法令検索「建築基準法施行令」 https://laws.e-gov.go.jp/law/325CO0000000338
記載の制度およびガイドラインは公表時点のものです。必要な調査の範囲、調査結果の取扱いおよび台帳記載事項証明の請求方法は特定行政庁により異なります。個別の適用は特定行政庁および建築士にご確認ください。
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