この記事は、学校施設の設計・施工を行う株式会社光建舎が作成しています。設計(ウイングスペース一級建築士事務所)から施工まで一社で対応し、専門学校・高校・自治体の学校施設を手がけています。

品川区の学校改修

「就学人口の増加」に対応する改築という特殊解

全国の学校施設計画は、少子化を前提に組まれています。児童生徒数の減少、統廃合、余剰教室の活用。文部科学省の資料でも、出生数の減少を踏まえた計画の見直しが求められています。

品川区は、この前提が当てはまりません。

区は、学校施設の老朽化や「就学人口の増加」などに対応するため、計画的に学校改築を推進するとしています。減るのではなく、増える。だから建て替える。

この違いは、改修計画の組み方に直接影響します。

この記事では、品川区の学校改修について、区の計画・増加局面ならではの論点を整理します。

まず系統別の主体です。

系統施設整備の主体主な財源
区立小・中学校品川区(教育委員会)区予算+国庫補助
都立高校・都立特別支援学校東京都(教育庁)都予算
私立学校学校法人自己資金+私学助成・国庫補助

私たち光建舎は、教育施設の改修を専門とする建築会社です。グループ内に一級建築士事務所を擁し、調査・設計・施工まで一貫して対応しています。

品川区の計画体系

品川区は、「品川区公共施設等総合計画」および「品川区立学校施設長寿命化計画」を踏まえ、学校施設の老朽化や就学人口の増加などに対応するため、計画的に学校改築を推進しています。

目的は、児童・生徒が安全で快適な学校生活を送れるよう、良好な学習環境を整備することとされています。

あわせて区は「学校改築計画指針」を策定しています。改築に関する計画概要・建替計画、および旧校舎の記録が公表されています。

改修を検討する際は、次の3つを確認してください。

資料何が分かるか
品川区公共施設等総合計画公共施設全体の中での学校の位置づけ
品川区立学校施設長寿命化計画長寿命化改修の対象と時期
学校改築計画指針改築の考え方・建替計画

自校が「長寿命化改修」の対象か「改築」の対象かで、検討内容がまったく変わります。 どちらの計画に載っているかを最初に確認してください。

「増える」前提が改修に与える影響

児童生徒数が減る地域と増える地域では、施設計画の考え方が逆転します。

論点減少局面(全国的な前提)増加局面(品川区)
規模余剰教室の転用・統廃合教室数の確保が課題
改築の理由老朽化老朽化+規模拡大
長寿命化改修の適否建物の状態が主な判断軸既存規模で足りるかも判断軸になる
複合化統廃合跡地の活用敷地内で必要面積を確保できるか

ここが最も重要な違いです。建物として健全でも、教室数が足りなければ長寿命化改修では解決しません。

全国の議論では「築年数だけで建て替えを判断するな、長寿命化改修で足りることが多い」という流れになっています。これは正しいのですが、規模不足が理由の場合には当てはまりません。

品川区で改修を検討する際は、次の2つを分けて評価してください。

  1. 建物の健全性(コンクリート強度、中性化、劣化状況)
  2. 規模の充足性(現在および将来の必要教室数に対して足りているか)

1がクリアでも2が不足なら、増築か改築の検討が必要になります。

品川区の学校改修で押さえる論点

検討項目課題・発生するリスク解決の方向
規模の充足性建物の劣化評価だけで長寿命化改修を決めると、改修後に教室が足りなくなる就学人口の推計と必要教室数を、劣化評価と同時に確認する
改築か改修か区は改築計画と長寿命化計画の両方を持つ。自校がどちらの対象か把握せずに検討すると前提を誤る学校改築計画指針と長寿命化計画の両方で位置づけを確認する
敷地の余裕増築が必要でも、都心部の学校は敷地に余裕がなく建てる場所がない敷地の空き、校庭面積、法規上の制約(建蔽率・容積率・日影)を早期に確認する
工事中の教室確保児童数が多い状態で改修すると、仮設や振替に使える教室が少ない仮校舎の要否と設置場所を、改修/改築の判断より前に検討する
近隣対応住宅・商業が混在する市街地が多く、騒音・振動の苦情が出やすい事前挨拶、作業時間の限定、防音パネルの採用。近隣調整の体制を契約前に確認する
電力容量児童数増加に伴う空調負荷とICT機器で受変電設備の容量が不足する現況調査で電気容量を確認。将来の児童数を見込んだ容量計算を行う

増加局面では「仮設」がボトルネックになる

児童生徒数が減っている自治体では、空き教室や近隣の統廃合校を工事中の受け入れ先に使えます。

増加局面ではこれが使えません。 どの学校も教室に余裕がなく、受け入れ先がない。結果として仮校舎が必要になり、その設置場所も敷地の余裕がないため確保が難しい。

つまり品川区のような区では、仮設の可否が改修/改築の判断そのものを左右します。

現況調査の段階で、次を確認してください。

  • 校庭に仮校舎を建てられる面積があるか
  • 建てた場合、体育の授業や避難場所をどう確保するか
  • 近隣に代替施設があるか
  • 段階施工で仮設を不要にできないか

「単独でやるな、束ねろ」

足場・仮設・養生は共通費です。外壁改修で足場を組むなら、同じタイミングで屋上防水とサッシ交換もやる。天井を触る工事(照明のLED化、空調ダクト、Wi-Fi配線、非構造部材の耐震対策)は全部同じ場所を触ります。

品川区では、仮設校舎のコストも束ねる対象です。

仮校舎を建てる年度に、その期間でできる工事は全部やる。外壁だけ直して仮設を撤去し、数年後に設備更新でまた仮設を建てるのは、最も高くつくパターンです。

改修の進め方

1. 区の計画で自校の位置づけを確認する 品川区公共施設等総合計画、品川区立学校施設長寿命化計画、学校改築計画指針の3つです。

2. 建物の健全性と規模の充足性を分けて評価する 劣化調査だけでは、増加局面の課題は見えません。

3. 仮設の可否を先に検討する これが改修/改築の判断を左右します。

4. 工事を束ねる 仮設が必要な工事は同一期間にまとめます。

調査の種類と費用は現況調査の費用(K901)で解説しています。全体の流れは改修の進め方(K296)、大規模修繕については学校の大規模修繕(K003)、東京都全体の構造は東京都の学校改修(K388)、改修単価の考え方は目黒区の学校改修(K859)、大規模自治体の計画運用は世田谷区の学校改修(K855)をご覧ください。

よくある質問

Q. 品川区はなぜ学校改築を進めているのですか。
A. 区は、学校施設の老朽化や就学人口の増加などに対応するため、計画的に学校改築を推進しているとしています。老朽化だけが理由ではありません。

Q. 自校は改築と長寿命化改修のどちらですか。
A. 品川区立学校施設長寿命化計画と学校改築計画指針の両方をご確認ください。区の教育委員会が窓口です。

Q. 建物が健全なら長寿命化改修で足りますか。
A. 建物の健全性と、規模の充足性は別問題です。教室数が不足していれば、長寿命化改修では解決しません。 増築や改築の検討が必要になります。

Q. 工事中の教室はどう確保しますか。
A. 児童数が多い区では空き教室が少なく、仮校舎が必要になるケースがあります。設置場所の確保が課題になるため、改修/改築の判断より前に検討してください。

Q. 旧校舎の記録は残っていますか。
A. 区が改築に関する計画概要・建替計画とあわせて、旧校舎の記録を公表しています。

まとめ

  • 品川区は老朽化に加えて「就学人口の増加」に対応するため学校改築を推進。全国の少子化前提とは逆の構造
  • 区の計画は公共施設等総合計画・学校施設長寿命化計画・学校改築計画指針の3層
  • 建物の健全性と規模の充足性は別の評価軸。健全でも教室が足りなければ改修では解決しない
  • 増加局面では空き教室がなく、仮設校舎がボトルネックになる
  • 仮設の可否が改修/改築の判断そのものを左右する
  • 仮設が必要な工事は同一期間に束ねるのが最大の費用対策

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規模の充足性を含む現況調査、仮設の可否を踏まえた改修/改築の比較までご提案します。「まず何から着手すべきか」という構想段階のご相談も歓迎しています。

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参考・出典

※記載の制度や計画は公表時点のものです。計画は改定されることがあります。最新情報は品川区教育委員会の公表資料をご確認ください

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