廃校を貸すか売るかを比べるとき、見落とされるのが税です。
自治体が所有し続けて貸す場合と、売却して民間が所有する場合で、負担する税が変わります。買う側、借りる側の収支にも直接響きます。
そして事業者は、この部分を必ず見ます。年間の固定資産税がいくらになるかわからないまま、事業計画は立てられません。サウンディングで条件を示すときに、税の扱いを整理しておく必要があります。
この記事では、①誰に課税されるのか、②自治体が持ち続ける場合、③民間が取得する場合、④用途による非課税、⑤不動産取得税、の5点を地方税法の条文で整理します。
目次
この記事の要点
- 固定資産税の納税義務者は所有者で、賦課期日は毎年1月1日(地方税法第359条)
- 市町村は、国・都道府県・市町村等に対しては固定資産税を課することができない(同法第348条第1項)
- 標準税率は固定資産税1.4%、都市計画税の上限0.3%、不動産取得税4%
- 学校法人が直接保育または教育の用に供する固定資産は非課税(同法第348条第2項第9号)
- 不動産取得税の免税点は土地10万円、新築家屋23万円、その他の家屋12万円(同法第73条の15の2)
誰に課税されるのか?
所有者です。
固定資産税は、土地、家屋、償却資産の所有者に課されます。賦課期日は、地方税法第359条により当該年度の初日の属する年の1月1日です。
| 税 | 課す主体 | 標準税率・上限 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 固定資産税 | 市町村 | 標準税率100分の1.4 | 第350条 |
| 都市計画税 | 市町村 | 100分の0.3を超えられない | 第702条の4 |
| 不動産取得税 | 都道府県 | 標準税率100分の4 | 第73条の15 |
つまり1月1日に誰が持っているかで、その年度の固定資産税の負担者が決まります。年度の途中で所有が移っても、その年度の納税義務者は変わりません。売買契約で日割り精算するのは、当事者間の取り決めです。
免税点がある
課税標準が一定額に満たなければ課税されません。
| 税 | 対象 | 免税点 |
|---|---|---|
| 固定資産税 | 土地 | 30万円未満 |
| 固定資産税 | 家屋 | 20万円未満 |
| 固定資産税 | 償却資産 | 150万円未満 |
| 不動産取得税 | 土地 | 10万円未満 |
| 不動産取得税 | 家屋(建築) | 一戸につき23万円未満 |
| 不動産取得税 | 家屋(その他) | 一戸につき12万円未満 |
学校の敷地と校舎は規模が大きいため、免税点に収まることはほとんどありません。ただし建物の評価額は、老朽化していれば想定より低く出ることがあります。
自治体が持ち続ける場合はどうなるのか?
固定資産税はかかりません。
地方税法第348条第1項は、市町村は国並びに都道府県、市町村、特別区、これらの組合、財産区及び合併特例区に対しては固定資産税を課することができないと定めています。都市計画税も同法第702条の2で同じ範囲が非課税です。
所有権を自治体に残したまま貸す形であれば、固定資産税と都市計画税は発生しません。借りる側は賃料を払いますが、保有に伴う税は負担しません。
| 形態 | 所有者 | 固定資産税 |
|---|---|---|
| 貸付(賃貸借) | 自治体 | かからない |
| 指定管理 | 自治体 | かからない |
| 売却 | 取得者 | 取得者に課税(用途により非課税) |
| 無償譲渡 | 譲受者 | 譲受者に課税(用途により非課税) |
貸付と売却の比較は廃校は売却か貸付かどちらを選ぶのか?で扱っています。税の扱いは、この判断に効く要素の1つです。
貸付のほうが事業者の負担は軽い
事業者の立場では、固定資産税のかからない貸付のほうが毎年の負担が読みやすくなります。賃料は交渉できますが、税額は交渉できません。
一方で自治体には、保有し続ける限り管理責任と維持費が残ります。どちらが有利かは、賃料の水準と維持費の見込みで変わります。
賃料の設定で調整できる
自治体が所有を続ける場合、税負担が発生しない代わりに、賃料で収入を得ます。この賃料を近隣の相場より低く設定して誘致する例もあります。
収支の組み方は廃校活用の収支計画はどう立てるのか?で扱っています。
民間が取得する場合はどうなるのか?
原則として課税されます。
売却または譲渡で所有権が民間に移れば、翌年の1月1日から取得者が納税義務者になります。土地と家屋の評価額に税率を掛けた額が、毎年かかります。
| 確認すること | 内容 |
|---|---|
| 土地の評価額 | 地目と現況で判断される |
| 家屋の評価額 | 構造、延床面積、経過年数 |
| 都市計画税の有無 | 市街化区域内かどうか |
| 用途による非課税の該当 | 第348条第2項各号 |
| 条例による減免 | 第367条に基づく各市町村の条例 |
校舎は延床面積が大きいため、家屋の評価額が想定を超えることがあります。事前に資産税の所管部署に確認してください。
更地にすると土地の負担が変わる
解体して更地にすると、建物の評価はなくなります。ただし土地については、住宅用地の特例が適用されていた場合、その適用から外れることがあります。
廃校の跡地では、学校用地として非課税だった土地が、民間所有になった時点で課税対象になります。評価の前提が変わるため、個別に確認が必要です。
用途によって非課税になるのは何か?
地方税法第348条第2項の各号に該当する用途です。
| 用途 | 号 |
|---|---|
| 学校法人がその設置する学校で直接保育または教育の用に供する固定資産 | 第9号 |
| 保護施設の用に供する固定資産 | 第10号 |
| 児童福祉施設の用に供する固定資産 | 第10号の3 |
| 認定こども園の用に供する固定資産 | 第10号の4 |
| 老人福祉施設の用に供する固定資産 | 第10号の5 |
| 障害者支援施設の用に供する固定資産 | 第10号の6 |
| 公共の用に供する道路、運河用地、水道用地 | 第5号 |
廃校を学校法人が引き継いで学校として使う場合、社会福祉法人が福祉施設に転用する場合は、この規定により非課税となる余地があります。
福祉施設への転用は廃校を福祉施設に転用できるのか?で扱っています。制度上の要件は税以外にもあるため、合わせて確認してください。
直接その用に供していることが要件
条文は「直接」保育または教育の用に供する固定資産としています。法人が所有していれば自動的に非課税になるわけではありません。
実際にその用途で使っている部分が対象です。一部を別の用途に使っている場合、その部分は課税対象になり得ます。
ただし書きに注意
第348条第2項には、固定資産を有料で借り受けた者がこれを同項に掲げる固定資産として使用する場合には、当該固定資産の所有者に課することができるというただし書きがあります。
つまり所有者が民間で、学校法人に有料で貸している場合、所有者への課税がなくなるとは限りません。所有と使用が分かれる形を組むときは、ここを確認してください。
減免は条例で決まる
非課税に当たらない場合、減免の余地があります。地方税法第367条は、市町村長は天災その他特別の事情がある場合において固定資産税の減免を必要とすると認める者、貧困に因り生活のため公私の扶助を受ける者その他特別の事情がある者に限り、当該市町村の条例の定めるところにより固定資産税を減免することができると定めています。
要件と範囲は各市町村の条例で決まります。公益性の高い事業について減免を設けている市町村もあるため、該当するかは条例を確認してください。
不動産取得税はどうなるのか?
取得した時点で一度かかります。
道府県が課す税で、標準税率は不動産の価格の100分の4です(第73条の15)。毎年の税ではなく、取得のときだけの負担です。
| 取得者 | 扱い |
|---|---|
| 国、都道府県、市町村、特別区、地方独立行政法人など | 課税できない(第73条の3) |
| 学校法人が設置する学校で直接保育または教育の用に供する不動産 | 非課税(第73条の4第1項第3号) |
| 保護施設の用に供する不動産 | 非課税(同項第4号) |
| 児童福祉施設の用に供する不動産 | 非課税(同項第4号の3) |
| 認定こども園の用に供する不動産 | 非課税(同項第4号の4) |
| 老人福祉施設の用に供する不動産 | 非課税(同項第4号の5) |
| 障害者支援施設の用に供する不動産 | 非課税(同項第4号の6) |
| 上記以外の民間事業者 | 課税 |
学校法人の第3号には、寄宿舎における使用も含まれます。校舎と寮が一体で残る廃校では、この点が関わります。
無償譲渡でも課税される
取得が無償か有償かは問いません。無償で譲り受けた場合も不動産取得税の課税対象になります。
無償だから負担がないと考えていると、取得後に通知が届いて驚くことになります。譲渡の条件を示す段階で、取得側に伝えておくべき内容です。地域団体に無償で譲渡する場合も同じで、団体に支払いの余力があるかを含めて検討してください。
事業者への説明に含める
サウンディングで条件を示すとき、取得した場合の不動産取得税と毎年の固定資産税の見込みを示せると、事業者は判断しやすくなります。
サウンディングの進め方は廃校活用のサウンディング調査とは何か?で扱っています。
よくある質問
Q. 自治体が持ち続けて貸す場合、固定資産税はかかりますか。
A. かかりません。地方税法第348条第1項により、市町村は市町村等に対して固定資産税を課することができません。都市計画税も同法第702条の2で非課税です。
Q. 売却したら誰が払いますか。
A. 取得者です。賦課期日は1月1日なので、翌年の1月1日に所有している者がその年度の納税義務者になります。
Q. 学校法人が引き継ぐ場合はどうなりますか。
A. その設置する学校で直接保育または教育の用に供する固定資産は、同法第348条第2項第9号により非課税です。不動産取得税も第73条の4第1項第3号で非課税です。
Q. 福祉施設に転用する場合は非課税になりますか。
A. 保護施設、児童福祉施設、老人福祉施設、障害者支援施設などの用に供する固定資産は、同法第348条第2項の該当号により非課税となる余地があります。
Q. 無償で譲り受ければ不動産取得税はかかりませんか。
A. かかります。取得が有償か無償かは問われません。
Q. 減免は受けられますか。
A. 同法第367条に基づく各市町村の条例で要件が決まります。該当するかは条例と所管部署に確認してください。
まとめ
固定資産税の納税義務者は所有者で、賦課期日は毎年1月1日です。したがって貸すか売るかで、税の負担者が変わります。
自治体が所有を続けて貸す場合、固定資産税と都市計画税はかかりません。地方税法第348条第1項が、市町村は市町村等に対して固定資産税を課することができないと定めているためです。借りる側は賃料だけを負担します。
売却または譲渡で民間に所有が移れば、原則として取得者に課税されます。標準税率は固定資産税1.4%、都市計画税の上限0.3%です。校舎は延床面積が大きいため、家屋の評価額が想定を超えることがあります。
ただし用途による非課税があります。学校法人がその設置する学校で直接保育または教育の用に供する固定資産は第348条第2項第9号、福祉施設は同項第10号以降の各号で非課税です。要件は「直接その用に供している」ことで、法人が所有していれば自動的に非課税になるわけではありません。
不動産取得税は取得時に一度かかります。標準税率は100分の4、免税点は土地10万円、新築家屋23万円、その他の家屋12万円です。無償で譲り受けた場合も課税対象になります。
事業者への条件提示には、取得時の不動産取得税と毎年の固定資産税の見込みを含めてください。税額は交渉できないため、ここが不明なままでは事業計画が立ちません。
参考・出典
- e-Gov法令検索「地方税法」 https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000226
- 総務省「地方税制度 固定資産税」 https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/149767_14.html
- 総務省「地方税制度 不動産取得税」 https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/149764_11.html
- 文部科学省「廃校施設活用状況実態調査」 https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyosei/yoyuu_00002.htm
記載の法令および税率は公表時点のものです。税率は各地方公共団体の条例により標準税率と異なる場合があり、非課税および減免の適用は個別の事実関係によって判断されます。個別の適用は資産税の所管部署および税務の専門家にご確認ください。
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