この記事は、学校施設の設計・施工を行う株式会社光建舎が作成しています。設計(ウイングスペース一級建築士事務所)から施工まで一社で対応し、専門学校・高校・自治体の学校施設を手がけています。

定期借家・定期借地・リースバックで校舎をどう活用するか?

学校が使える契約の選び方

空いた校舎を貸したいが、将来また教育に使うかもしれない。校地の一部に民間の施設を建ててもらいたいが、土地は手放したくない。校舎を売って資金を得たいが、学校は続けたい。

こうした学校の不動産の悩みには、契約の形で解決できるものがあります。期間が来れば必ず戻ってくる定期借家と定期借地、売った建物を借りて使い続けるリースバックです。

ただし、学校には校地・校舎の自己所有という原則があり、一般の企業と同じようには使えない場面もあります。この記事では、①それぞれの契約とは何か、②空き校舎を定期借家で貸す、③校地を定期借地で貸す、④リースバックの可否、⑤公立学校での活用、の5点を整理します。

この記事の要点

  • 定期借家は、更新がなく、期間の満了で確定的に終了する建物の賃貸借
  • 契約には書面と、更新がない旨の事前説明の書面が必要で、期間1年以上なら満了の1年前から6か月前までに終了の通知をする
  • 事業用定期借地は10年以上50年未満で、公正証書で契約する必要がある
  • 建物譲渡特約付借地権を使い、民間に寮を建ててもらい30年後に譲り受けた大学の事例がある
  • 校舎のリースバックは、私立学校の校地・校舎の自己所有原則との関係で、校舎本体には使いにくい

定期借家・定期借地・リースバックとは何か?

3つの仕組みの違いを整理します。

仕組み内容学校の立場
定期借家更新がなく、期間満了で終了する建物の賃貸借貸す側・借りる側の両方
定期借地更新がなく、期間満了で終了する土地の賃貸借主に貸す側
リースバック所有する不動産を売却し、買主から借りて使い続ける取引売って借りる側

普通の建物賃貸借では、借地借家法により、貸主が契約の更新を拒むには正当な事由が必要です。一度貸すと、貸主の都合で返してもらうのは容易ではありません。

定期借家と定期借地は、この更新の仕組みを外し、期間が来れば必ず契約が終わるようにしたものです。将来の再利用の可能性を残したい学校にとって、使いやすい仕組みです。

空き校舎を定期借家で貸すにはどうするか?

借地借家法の要件を満たして契約します。

定期借家の要件

国土交通省の案内では、定期建物賃貸借は、契約期間を定め、書面により契約を締結し、賃貸人が事前説明文書を交付することが必要とされています。

要件内容
期間期間を定める(1年未満も可)
契約書書面で契約する
事前説明契約前に、更新がなく期間満了で終了することを書面を交付して説明する
終了通知期間1年以上の場合、満了の1年前から6か月前までに終了を通知する

終了の通知を忘れて期間を過ぎた場合は、通知した日から6か月間は借り手が使い続けることができます。期限の管理を確実に行う必要があります。

普通借家からの切替え

居住用以外の建物については、従来の借家契約を合意のうえ解除し、新たに定期建物賃貸借契約を結ぶことができるとされています。既に普通借家で貸している校舎も、借り手の合意があれば定期借家に切り替えられます。

学校にとっての利点

在籍者数の回復や新しい学科の設置で、校舎が再び必要になる可能性がある場合に、期間の満了で確実に返ってくる点が大きな利点です。一方、借り手にとっては長期の利用が保証されないため、賃料は普通借家より低めになる傾向があります。

空き校舎を貸すときの税金の扱いは空き校舎を貸すと税金はどうなる?で扱っています。

校地を定期借地で貸すにはどうするか?

校地の一部に民間の施設を建ててもらう場合に使います。

定期借地の種類

借地借家法には、3種類の定期借地権があります。

種類期間契約の方式主な用途
一般定期借地権50年以上書面住宅、用途を問わない
事業用定期借地権10年以上50年未満公正証書事業用の建物(居住用は不可)
建物譲渡特約付借地権30年以上定めなし期間後に建物を地主が買い取る

事業用定期借地権は、専ら事業の用に供する建物の所有を目的とするもので、居住の用に供するものは除かれています。学生寮のような居住用の建物には使えません。

大学の事例

文部科学省の資料では、長崎大学が建物譲渡特約付きの定期借地権を使い、民間事業者に留学生宿舎を建設・運営してもらった事例が紹介されています。期間は30年間で、大学の経費負担はありません。

寮の民間活用については学校の寮・寄宿舎はどう収益化するか?にまとめています。

学校法人が貸す場合の注意

校地を定期借地で貸すと、その部分は学校法人が直接教育の用に供している土地ではなくなります。固定資産税の非課税が外れる可能性があり、地代は不動産貸付業の収益事業に当たる可能性があります。

また、校地の一部を貸した結果、設置基準の面積を下回らないかも確認が必要です。

校舎のリースバックはできるか?

私立学校の校舎本体には使いにくいのが実情です。

自己所有原則との関係

都道府県が定める私立学校の設置等の審査基準では、校地と校舎等は設置者の自己所有であることが原則とされています。校舎等の借用が認められるのは、国・地方公共団体の所有で、自己所有できない特別の事情がある場合などに限られるのが一般的です。

校舎を民間に売却して借りる形は、この原則から外れます。所轄庁の審査基準は設置の認可だけでなく、その後の運営にも関わるため、事前の相談なしに進めることはできません。

基本財産と補助金の制約

校舎や校地は、寄附行為で基本財産とされていることが多く、処分には理事会などの手続きと所轄庁への届出が必要になることがあります。補助金を受けて整備した建物を売却する場合は、財産処分の承認と補助金の返還が必要になる可能性もあります。

使える場面

リースバックが検討の対象になり得るのは、教育に直接使っていない不動産です。

  • 職員宿舎や、収益目的で保有している不動産
  • 移転を予定している旧キャンパスの一時的な継続使用
  • 所轄庁が認める範囲での附属施設

いずれの場合も、税務、所轄庁、金融機関の条件を確認してから進めます。校地の取得と自己所有原則の関係は学校法人が校地を取得・拡張するにはどう進めるか?を参照してください。

学校が借りる側になる場合はどうか?

定期借家は、学校が建物を借りる場面でも使われます。

仮校舎として借りる

改築工事の期間中、近隣の民間建物を仮校舎として借りる場合、工事期間に合わせた定期借家契約にすれば、貸主にとっても期間が明確になり、借りやすくなります。

サテライト教室として借りる

駅前のビルの一室をサテライト教室として借りる例もあります。この場合も、所轄庁の基準で校舎等の借用として認められるかを事前に確認します。

契約で何を決めておくべきか?

学校の建物を貸す場合、一般の貸しビルとは違う配慮が必要です。

改修と原状回復

借り手が用途に合わせて間仕切りや設備を変える場合、どこまで認めるか、契約終了時にどこまで元に戻すかを決めます。借り手が設置した造作を貸主が買い取るよう求められる造作買取請求権は、特約で排除できます。将来、学校として使い直す前提なら、教室の構造を大きく変える改修は制限しておきます。

賃料の改定

定期借家では、賃料の改定について特約を定めた場合、賃料の増減を請求する権利の規定は適用されないとされています。期間中の賃料を固定するか、一定の指標に連動させるかを決めておくと、双方にとって見通しが立ちやすくなります。

転貸と用途

借り手が第三者に又貸しできるか、どの用途まで認めるかを定めます。学校の敷地内や隣接地であれば、在学生の安全や学校の評判に影響する用途を除外しておきます。

維持管理の分担

屋根や外壁、構造躯体の修繕は貸主、内装と設備の日常的な修繕は借り手、というように分担を明確にします。古い校舎を貸す場合は、引き渡し前に劣化状況を確認し、記録を残しておきます。

公立学校ではどう使われるか?

公立学校の施設は行政財産で、そのままでは原則として貸し付けられません。

余裕教室や学校の余剰地を民間に使わせるには、目的外使用許可の範囲で行うか、用途を廃止して普通財産にしたうえで貸し付けます。普通財産の貸付では、定期借家や定期借地の契約を使う自治体もあります。

廃校となった施設の貸付・売却の進め方は廃校の売却・貸付と公募の進め方で扱っています。

よくある質問

Q. 定期借家の期間中に、学校側の都合で解約できますか。

A. 契約で中途解約の条項を定めていなければ、原則としてできません。将来の再利用の見通しが不確かな場合は、期間を短めに設定し、再契約で延ばす形が安全です。

Q. 定期借家で貸した校舎を、期間満了後にもう一度同じ相手に貸せますか。

A. 双方が合意すれば、改めて再契約できます。

Q. 定期借家の期間はどれくらいに設定するのが一般的ですか。

A. 学校の再利用の見通しに合わせて決めます。在籍者数の推計や施設計画の見直しの周期に合わせ、3年から10年程度で設定し、必要に応じて再契約する形が考えられます。

Q. 定期借地で貸した土地に建てられた建物は、期間後どうなりますか。

A. 一般定期借地権と事業用定期借地権では、借り手が建物を取り壊して土地を返すのが原則です。建物譲渡特約付借地権では、期間後に地主が建物を買い取ります。

Q. リースバックで得た資金を校舎の建替えに使えますか。

A. 教育に直接使っていない不動産のリースバックであれば、資金の使い道に制限はありません。ただし、将来の賃料負担が続くため、長期の収支を試算してから判断します。

まとめ

定期借家と定期借地は、期間の満了で確実に契約が終わる仕組みで、将来の再利用の可能性を残したい学校にとって使いやすい契約です。定期借家は書面と事前説明、期間1年以上なら終了の通知が必要です。定期借地には一般定期借地権、事業用定期借地権、建物譲渡特約付借地権の3種類があり、事業用定期借地権は公正証書で契約します。

一方、校舎のリースバックは、私立学校の校地・校舎の自己所有原則との関係で、校舎本体には使いにくいのが実情です。教育に直接使っていない不動産で検討するのが現実的です。

どの契約を選ぶ場合も、固定資産税の非課税と収益事業の扱い、設置基準の面積、所轄庁の基準を事前に確認することが大切です。私立学校の経営改善の中での施設の位置づけは私立学校の経営改善で施設はどう位置づけるか?にまとめています。

参考・出典

記載の制度は公表時点のものです。実際の契約にあたっては、所轄庁・専門家にご確認ください。

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