この記事は、学校施設の設計・施工を行う株式会社光建舎が作成しています。設計(ウイングスペース一級建築士事務所)から施工まで一社で対応し、専門学校・高校・自治体の学校施設を手がけています。

寄宿舎の改修は何に気をつけるのか?

間仕切壁と水まわり

間仕切壁と水まわりです。

寄宿舎は、人が寝る建物です。火災が起きたときに逃げ遅れる危険があるため、建築基準法は間仕切壁について規定を設けています。建築基準法施行令第114条第2項により、寄宿舎等は防火上主要な間仕切壁を準耐火構造とすることなどが求められます。

一方、消防法施行令別表第一では寄宿舎、下宿、共同住宅は(5)項ロで、特定防火対象物には該当しません。旅館・ホテルの(5)項イとは扱いが違います。

そして改修の実務で費用の柱になるのは水まわりです。浴室、トイレ、洗面、洗濯。これらの更新が工事費の大きな部分を占めます。

この記事では、①間仕切壁の規定、②消防法の扱い、③水まわり、④居室の環境、⑤進め方、の5点を整理します。

この記事の要点

  • 建築基準法施行令第114条第2項により、寄宿舎等は防火上主要な間仕切壁を準耐火構造とすることなどが求められる
  • 寄宿舎、下宿、共同住宅は消防法施行令別表第一の(5)項ロで、特定防火対象物には該当しない
  • 旅館、ホテル、宿泊所は(5)項イで特定防火対象物に該当するため、宿泊料を受ける形にすると扱いが変わる
  • 改修の費用の柱は水まわりで、浴室、トイレ、洗面、洗濯の更新が中心になる
  • 用途を変更して200平方メートルを超える特殊建築物とする場合は確認申請が関わる

間仕切壁の規定はどうなっているのか?

準耐火構造が求められます。

建築基準法施行令第114条第2項により、寄宿舎等は防火上主要な間仕切壁を準耐火構造とすることなどが求められます。

確認項目 内容
間仕切壁の構造 準耐火構造とする
小屋裏・天井裏への達し方 規定に従った処理
既存の間仕切り 規定を満たしているか
新設する間仕切り 仕様を満たす構成にする
貫通部の処理 配管や配線が貫く部分

天井裏でつながっていると満たさない

旧い寄宿舎では、間仕切壁が天井までで止まっており、天井裏でつながっていることがあります。この状態では規定を満たしません。

間仕切壁を小屋裏または天井裏に達するまで立ち上げる工事が必要になります。既存の天井を開けて作業するため、天井の張り替えを伴います。

居室を分割する場合

大部屋を個室に分ける改修では、新設する間仕切りも規定を満たす仕様にする必要があります。

仕切るだけの軽い間仕切りでは足りません。設計の段階で仕様を確定してください。

貫通部の処理

給排水の配管、電気の配線、換気のダクト。これらが間仕切壁を貫通する部分は、所定の処理が必要です。

改修で新たに配管を通す場合も、同じ処理を行ってください。

防火区画の考え方

間仕切壁の規定と、防火区画の規定は別のものです。両方を確認する必要があります。

防火区画の考え方は防火区画の基本とは何か?で扱っています。

用途変更の扱い

既存の校舎を寄宿舎にする場合、用途変更の手続きが関わります。建築基準法施行令第137条の18の第5号は下宿、寄宿舎ですが、学校はこの11区分のいずれにも含まれていません。

したがって用途を変更する部分の床面積が200平方メートルを超えれば、建築基準法第87条第1項により確認申請が必要になります。確認申請の線引きは学校の改修に建築確認は必要なのか?で扱っています。

消防法ではどう扱われるのか?

(5)項ロで非特定です。

用途 消防法施行令別表第一 特定防火対象物
寄宿舎、下宿、共同住宅 (5)項ロ 該当しない
旅館、ホテル、宿泊所 (5)項イ 該当する
学校 (7)項 該当しない
複合用途(特定用途を含む) (16)項イ 該当する

寄宿舎は特定防火対象物に該当しません。このため消防用設備等の遡及適用の負担は、旅館・ホテルより小さく収まる可能性があります。

宿泊料を受ける形にすると変わる

寄宿舎を短期の宿泊に使い、宿泊料を受ける形にすると(5)項イの扱いになる可能性があります。この場合、特定防火対象物として設備の要件が変わります。

夏季休業中に外部に貸す構想がある場合、この点を消防本部に確認してください。

要件は規模と階数で変わる

必要な消防用設備等は、延べ面積と階数によって変わります。自動火災報知設備の要否は、居室の数と階数に関わります。

計画の構成を消防本部に示して確認してください。

用途を問わず現行基準が適用される設備

消火器、避難器具、誘導灯などは用途を問わず現行基準が適用されます。特定防火対象物でなくても、これらは必要です。

学校と消防法の関係は学校と消防法はどう関わるのか?で扱っています。

避難の経路

寄宿舎では、就寝中の火災に備えた避難の計画が必要です。階段の数と位置、廊下の幅、避難上有効なバルコニー。

既存の建物で階段が1つしかない場合、使える階と居室の数に制約が出ることがあります。

水まわりはどうするのか?

費用の柱になります。

項目 確認すること
浴室 防水層、給湯の熱源、換気
トイレ 個数、洋式化、床の仕上げ
洗面 個数、給湯
洗濯 洗濯機の台数、給排水、排水の経路
給湯 熱源の能力、貯湯の容量
配管 給水管と排水管の劣化
浄化槽 人槽と能力

給湯の使用が集中する

入浴と洗濯は、夕方から夜に集中します。給湯の瞬間的な使用量が大きくなるため、熱源の能力と貯湯の容量を合わせて検討してください。

能力が足りないと、湯が出ない時間が生じます。

浴室の防水を確認する

浴室の床と壁の防水層が切れていると、階下に漏水します。旧い寄宿舎では、防水層の劣化が進んでいることがあります。

改修では防水の全面やり直しになることが多く、これが費用の柱になります。

配管の劣化

給水管の赤水、排水管の詰まり、配管の漏水。旧い寄宿舎では配管の劣化が進んでいます。

給排水設備の更新は給排水設備はどう更新するのか?で扱っています。配管の経路が壁や床の中にある場合、仕上げの解体を伴います。

浄化槽の能力

郊外の学校では浄化槽で処理していることがあります。人槽は在寮者数で決まっており、定員を増やすと能力を超えます。

定員の変更を伴う改修では、浄化槽の能力を確認してください。

個室化で水まわりが増える

大部屋を個室に分けると、必要なトイレと洗面の数が変わることがあります。共用のままにするか、各室に設けるかで配管の量が大きく変わります。

共用を基本とし、既存の配管の位置を活かす計画が費用を抑えます。

居室の環境はどうするのか?

断熱と遮音です。

項目 内容
断熱 通年で居住するため光熱費に直結
遮音 隣室と廊下の音
空調 居室ごとの制御
換気 就寝中の空気の質
収納 個人の荷物の量
照明 学習に必要な明るさ
建具 施錠、遮音

断熱が光熱費に直結する

寄宿舎は通年で居住する建物です。学校の校舎と違い、夜間も休業期間も使われます。

壁に断熱材がなく単板ガラスのアルミサッシの建物では、光熱費が大きくなります。内窓の設置と最上階の天井断熱から検討してください。

遮音は生活の質に関わる

隣室の音、廊下の音、水まわりの音。寄宿舎では生活音が問題になります。

間仕切壁を天井裏まで立ち上げる工事は、防火の規定への対応と遮音の改善を同時に満たします。あわせて建具の遮音と、配管の防音を検討してください。

空調は居室ごとに制御する

居室ごとに空調を制御できる構成にしないと、使っていない室も冷暖房することになります。

電気の容量を確認してください。居室の数だけ空調を入れると、受電設備の容量が問題になります。

換気の確保

就寝中は窓を閉めるため、換気が必要です。居室ごとの換気の経路を確認してください。

ただし換気口が廊下に直接つながっていると、音が通ります。遮音と換気の両立が必要です。

共用部の計画

食堂、談話室、学習室、洗濯室、廊下。共用部の配置と設備が、寄宿舎の使いやすさを決めます。

個室の改修だけでなく、共用部も計画に含めてください。

どう進めるのか?

定員と配管から決めます。

手順 内容
1 現在と今後の定員を確認する
2 個室化するか共用のままかを決める
3 既存の配管の位置と状態を調査する
4 間仕切壁の現状を確認する
5 避難の経路を確認する
6 水まわりの配置を決める
7 断熱と遮音の範囲を決める

定員の見通しを確認する

在寮者数が減っている場合、使う範囲を絞る判断があります。全館を改修するのではなく、1棟または数階に集約する形です。

使わない範囲は閉じて、暫定的な管理に移します。

配管の位置が計画を左右する

水まわりの配置は、既存の配管の位置で決まります。意匠や使い勝手だけで位置を決めると、配管の経路が長くなり費用が増えます。

調査で配管の位置を把握してから、配置を決めてください。

工事の時期

寄宿舎の改修は、在寮者がいる間は進めにくくなります。長期休業に寄せる、または別の建物に移る段取りが必要です。

工区を分けて複数年度に割り振る計画になることがあります。

消防本部と特定行政庁に相談する

間仕切壁の規定、避難の経路、消防用設備等。これらは計画の初期に相談してください。

設計を進めてから相談すると、やり直しになります。

よくある質問

Q. 寄宿舎の改修で最も気をつけることは何ですか。

A. 間仕切壁と水まわりです。建築基準法施行令第114条第2項により、寄宿舎等は防火上主要な間仕切壁を準耐火構造とすることなどが求められます。

Q. 既存の間仕切壁はそのまま使えますか。

A. 天井裏でつながっている場合は規定を満たしません。間仕切壁を小屋裏または天井裏に達するまで立ち上げる工事が必要になります。

Q. 消防設備の負担は大きくなりますか。

A. 寄宿舎、下宿、共同住宅は消防法施行令別表第一の(5)項ロで特定防火対象物には該当しません。旅館・ホテルの(5)項イより負担は小さく収まる可能性があります。

Q. 夏休みに外部に貸せますか。

A. 宿泊料を受ける形にすると(5)項イの扱いになる可能性があります。特定防火対象物として設備の要件が変わるため、消防本部に確認してください。

Q. 工事費の柱はどこですか。

A. 水まわりです。浴室の防水の全面やり直し、配管の更新、トイレの洋式化が中心になります。

Q. 大部屋を個室に分けられますか。

A. 分けられますが、新設する間仕切りも準耐火構造の要件を満たす仕様にする必要があります。あわせて避難の経路と換気を確認してください。

まとめ

寄宿舎の改修では、間仕切壁と水まわりが中心になります。

建築基準法施行令第114条第2項により、寄宿舎等は防火上主要な間仕切壁を準耐火構造とすることなどが求められます。旧い寄宿舎では間仕切壁が天井までで止まり天井裏でつながっていることがあり、この状態では規定を満たしません。小屋裏または天井裏に達するまで立ち上げる工事が必要です。

消防法では、寄宿舎、下宿、共同住宅が(5)項ロで特定防火対象物には該当しません。旅館、ホテル、宿泊所の(5)項イとは扱いが違います。ただし宿泊料を受ける形にすると(5)項イの扱いになる可能性があるため、夏季休業中に外部に貸す構想がある場合は消防本部に確認してください。

費用の柱は水まわりです。浴室の防水層の劣化、給水管の赤水、排水管の詰まり。旧い寄宿舎では配管の劣化が進んでいます。給湯は入浴と洗濯が夕方から夜に集中するため、熱源の能力と貯湯の容量を合わせて検討してください。

居室の環境では断熱と遮音です。寄宿舎は通年で居住する建物で、夜間も休業期間も使われます。断熱の性能が光熱費に直結します。間仕切壁を天井裏まで立ち上げる工事は、防火の規定への対応と遮音の改善を同時に満たします。

進め方では、まず定員の見通しを確認してください。在寮者数が減っているなら、使う範囲を絞って1棟または数階に集約する判断があります。そして水まわりの配置は既存の配管の位置で決まるため、調査で位置を把握してから決めてください。

参考・出典

記載の法令および制度は公表時点のものです。間仕切壁の仕様、避難の計画および消防用設備等の要件は建物の状況と所管の運用により異なります。個別の適用は特定行政庁、消防本部および設計者にご確認ください。

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