この記事は、学校施設の設計・施工を行う株式会社光建舎が作成しています。設計(ウイングスペース一級建築士事務所)から施工まで一社で対応し、専門学校・高校・自治体の学校施設を手がけています。

空き校舎を貸すと税金はどうなるのか?【2026年版】固定資産税・法人税・消費税

3つの税が関わります。

固定資産税は、直接教育の用に供する要件から外れる可能性があります。法人税は、不動産貸付業が収益事業に当たるため課税の対象になります。消費税も、建物の貸付けは課税の対象です。

空き教室を貸して収入を得る構想は、少子化のなかで自然に出てきます。しかし賃料収入から3つの税を引いた後に、何が残るのかを先に確認する必要があります。

収入より税と管理費のほうが大きい、という結果になることがあります。

この記事では、①固定資産税の扱い、②法人税の扱い、③消費税の扱い、④公立学校の場合、⑤判断の進め方、の5点を整理します。

この記事の要点

  • 固定資産税は、地方税法第348条第2項第9号の「直接保育又は教育の用に供する」要件から外れる可能性がある
  • 同項のただし書きにより、有料で借り受けた者が同項に掲げる固定資産として使用する場合は所有者に課することができる
  • 法人税法施行令第5条が定める収益事業は34業種あり、不動産貸付業はその第5号に含まれる
  • 学校法人は法人税法上の公益法人等に当たり、収益事業から生じた所得について法人税が課される
  • 建物の貸付けは消費税の課税の対象で、住宅の貸付けは非課税とされている

固定資産税はどうなるのか?

要件から外れる可能性があります。

地方税法第348条第2項第9号は、学校法人がその設置する学校において直接保育または教育の用に供する固定資産について固定資産税を課することができないと定めています。

貸した部分は、学校が直接教育の用に供しているとは言いにくくなります。したがって、その部分が課税の対象になる可能性があります。

貸し方 扱い
無償で地域に開放する 判断が分かれる
賃料を取って事業者に貸す 要件から外れる可能性
教育と関連する用途に貸す 個別の判断
グラウンドを駐車場として貸す 要件から外れる可能性
貸さずに空けておく 使用の実態で判断される

ただし書きに注意する

同法第348条第2項には、固定資産を有料で借り受けた者がこれを同項に掲げる固定資産として使用する場合には、当該固定資産の所有者に課することができるというただし書きがあります。

つまり借受人が非課税の用途に使っていても、有料で借り受けている場合は所有者への課税がなくなるとは限りません。所有と使用を分ける形で非課税を保とうとする構成は、ここで止まります。

課税される範囲は部分で判断される

1棟の校舎のうち一部を貸す場合、貸した部分が課税の対象になるという判断になります。建物全体が課税になるわけではありません。

ただし面積の按分の方法や、共用部の扱いは所管部署の判断によります。具体的な使い方を示して確認してください。

賦課期日は1月1日

固定資産税の賦課期日は、当該年度の初日の属する年の1月1日です(同法第359条)。1月1日時点の使用の状況で、その年度の扱いが決まります。

年度の途中で貸し始めても、その年度の扱いは変わりません。逆に、年度の途中で返却されても同じです。

学校法人の非課税の全体像

学校法人の固定資産税の扱いは学校法人に固定資産税はかかるのか?で整理しています。非課税の根拠と、要件から外れる場合をまとめています。

法人税はどうなるのか?

不動産貸付業は収益事業です。

法人税法施行令第5条は、収益事業の範囲を34業種として定めています。この中に不動産貸付業が含まれています。

学校法人は法人税法上の公益法人等に当たり、収益事業から生じた所得について法人税が課されます。したがって空き校舎を貸して賃料を得れば、その部分は収益事業として課税の対象になります。

確認項目 内容
事業の区分 不動産貸付業に当たるか
経理の区分 収益事業と非収益事業を区分して経理する
所得の計算 収入から対応する費用を差し引く
申告 収益事業がある場合の申告義務
税率 公益法人等の収益事業に適用される税率
対応する費用 減価償却費、修繕費、管理費などの配分

経理を区分する必要がある

収益事業を行う場合、収益事業に係る経理と、それ以外の経理を区分する必要があります。この区分がないと、所得の計算ができません。

事務の負担が増えます。1室を貸すだけでも、この手続きが必要になります。

対応する費用を配分する

賃料収入に対応する費用を差し引いて所得を計算します。貸した部分の減価償却費、修繕費、光熱費、管理費などが対象になります。

配分の方法は合理的な基準によります。面積按分が一般的ですが、費用の性質によって異なります。

所得が小さければ税負担も小さい

賃料収入から費用を引いた所得が小さければ、法人税の負担も小さくなります。ただし経理の区分と申告の手間は、所得の大小に関わらず発生します。

少額の賃料のために事務の負担が増えるなら、貸さない判断もあります。

業種の判定は個別に確認する

同じ「貸す」行為でも、どの業種に当たるかの判定は内容によります。施設の利用に伴って役務を提供する場合、別の業種に該当することもあります。

税務の専門家に確認してください。

消費税はどうなるのか?

建物の貸付けは課税の対象です。

建物の貸付けは消費税の課税の対象になります。ただし住宅の貸付けは非課税とされています。

貸付けの対象 消費税
事務所、店舗等としての建物の貸付け 課税
住宅の貸付け 非課税
土地の貸付け 非課税(一時的な貸付け等を除く)
駐車場としての貸付け 施設の利用に伴うものは課税

課税売上高で判断が変わる

消費税の申告義務は、課税売上高の規模によって判断されます。学校法人全体の課税売上高で見るため、既に他の課税売上がある場合と、これが初めての課税売上になる場合で扱いが変わります。

経理の所管部署または税務の専門家に確認してください。

土地と建物を分けて考える

グラウンドを貸す場合、土地の貸付けとして非課税になる場合と、施設の利用に伴う貸付けとして課税になる場合があります。

駐車場として整備した部分を貸す場合は、施設の利用に伴うものとして課税の扱いになることがあります。

賃料の設定に影響する

課税の対象になる場合、賃料に消費税が乗ります。借り手に提示する金額が変わるため、賃料の設定の段階で確認してください。

公立学校の場合はどうなるのか?

固定資産税はかかりません。

地方税法第348条第1項は、市町村は国並びに都道府県、市町村、特別区、これらの組合、財産区及び合併特例区に対しては固定資産税を課することができないと定めています。

したがって自治体が所有を続けて貸す場合、固定資産税は発生しません。都市計画税も同法第702条の2で同じ範囲が非課税です。

項目 公立学校を貸す場合
固定資産税 かからない(第348条第1項)
都市計画税 かからない(第702条の2)
法人税 地方公共団体には課されない
消費税 貸付けの内容により課税の対象になり得る
貸付けの手続き 行政財産の貸付け、または公の施設としての使用許可

手続きが論点になる

公立学校では税よりも、貸付けの手続きが論点になります。行政財産の貸付けとして契約で貸すのか、公の施設として条例で設置して使用許可を出すのか。

どちらを取るかで、料金の決め方と手続きが変わります。庁内の財産管理の所管部署に確認してください。

消費税は発生し得る

地方公共団体でも、貸付けの内容によって消費税の課税の対象になります。賃料の設定の段階で確認してください。

余裕教室の活用

公立学校の余裕教室の活用は余裕教室はどう活用するのか?で扱っています。手続きの選択が計画の進め方を決めます。

判断はどう進めるのか?

税を引いた後の残りを見ます。

手順 内容
1 貸す範囲と賃料の水準を仮に置く
2 固定資産税の扱いを資産税の所管部署に確認する
3 法人税の扱いを税務の専門家に確認する
4 消費税の扱いを確認する
5 管理費と修繕費を見込む
6 賃料から税と費用を引いた残りを出す
7 貸すかどうかを判断する

ここで重要なのは6です。賃料収入の額だけで判断すると、税と管理費を引いた後に残らないことがあります。

管理の手間も費用に含める

貸せば、鍵の管理、共用部の清掃、入居者との連絡、トラブルの対応が発生します。これらを担う人員の負担も、実質的な費用です。

空ける場合の費用と比べる

貸さずに空けておく場合も、維持管理の費用はかかります。貸した場合の収支と、空けておく場合の費用を並べて比較してください。

遊休資産の考え方は学校の遊休資産はどう活用するのか?で扱っています。

経営判断として整理する

施設の保有と活用は、学校法人の経営判断の一部です。私立学校の施設経営は私立学校の施設経営はどう考えるのか?で扱っています。

貸す、売る、空けておく、解体する。この4つを並べて比較してください。

確認は書面で残す

所管部署や専門家への確認は、内容と日付を記録してください。担当者が変わると見解が変わることがあります。

よくある質問

Q. 空き校舎を貸すと固定資産税はかかりますか。

A. 貸した部分は、地方税法第348条第2項第9号の「直接保育又は教育の用に供する」要件から外れる可能性があります。具体的な使い方を資産税の所管部署に確認してください。

Q. 無償で貸せば非課税のままですか。

A. 判断が分かれます。同項のただし書きは有料で借り受けた場合の規定ですが、無償であっても直接教育の用に供しているかは別に判断されます。

Q. 法人税はかかりますか。

A. 不動産貸付業は法人税法施行令第5条が定める収益事業の34業種に含まれます。学校法人は公益法人等に当たり、収益事業から生じた所得について法人税が課されます。

Q. 消費税はどうなりますか。

A. 建物の貸付けは課税の対象です。住宅の貸付けは非課税とされています。課税売上高の規模によって申告の扱いが変わります。

Q. 公立学校を貸す場合はどうですか。

A. 固定資産税と都市計画税はかかりません。論点は税ではなく、行政財産の貸付けとするか公の施設として使用許可を出すかという手続きの選択です。

Q. 判断で見落としやすい点は何ですか。

A. 賃料収入の額だけで判断することです。税、管理費、修繕費、人員の負担を引いた後に残るかを確認してください。

まとめ

空き校舎を貸すと、固定資産税、法人税、消費税の3つが関わります。

固定資産税は、地方税法第348条第2項第9号の「直接保育又は教育の用に供する」要件から外れる可能性があります。さらに同項のただし書きにより、有料で借り受けた者が同項に掲げる固定資産として使用する場合は所有者に課することができるため、所有と使用を分ける構成で非課税を保つことはできません。

法人税では、不動産貸付業が法人税法施行令第5条の収益事業34業種に含まれます。学校法人は公益法人等に当たり、収益事業から生じた所得について課税されます。収益事業に係る経理を区分する必要があり、1室を貸すだけでも事務の負担が生じます。

消費税では、建物の貸付けが課税の対象です。住宅の貸付けは非課税とされています。土地の貸付けは原則として非課税ですが、施設の利用に伴う貸付けは課税の扱いになることがあります。

公立学校の場合、同法第348条第1項により固定資産税はかかりません。論点は税ではなく、行政財産の貸付けとするか公の施設として使用許可を出すかという手続きの選択になります。

判断で見落としやすいのは、賃料収入の額だけを見ることです。税、管理費、修繕費、鍵と連絡の手間を引いた後に何が残るかを確認してください。そして貸す、売る、空けておく、解体するの4つを並べて比較することです。

参考・出典

記載の法令および制度は公表時点のものです。非課税の適用、収益事業の判定および消費税の課税関係は個別の事実関係によって判断されます。個別の適用は所在する市町村の資産税の所管部署、所轄の税務署および税務の専門家にご確認ください。

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